著者
Yoshiki CHUJO Kazuo TANAKA
出版者
合成樹脂工業協会
雑誌
ネットワークポリマー (ISSN:13420577)
巻号頁・発行日
vol.32, no.5, pp.233-244, 2011-09-10 (Released:2014-04-22)
参考文献数
19

かご型シルセスキオキサン(POSS)は一辺が0.3 ナノメートル(nm)のシリカの立方体構造を中心に,各頂点に有機官能基を持つ物質の総称である。剛直な立方体核から放射線状に側鎖が配置されており,ネットワークポリマーやデンドリマーなど,多分岐型高分子材料構築のビルディングブロックとして有用である。また,官能基導入により修飾を加えることで多種多様な機能の付与が可能である。以上の特性から,POSS はさまざまな機能性材料構築に応用が図られている。本稿ではまず,POSS によるプラスチックの熱的・機械的特性の向上のための添加剤としての応用について述べる。次に,POSS を用いた低屈折率化の機構について詳述する。また,最近著者らが見出したPOSS イオン液体の特異な熱力学について説明する。最後に,POSS を基盤とした水溶性のデンドリマーとネットワークポリマーについて述べる。特に近年注目を集めている生体材料への応用展開をふまえ,POSS 含有水溶性高分子の興味深い性質について説明する。
著者
大塚 恵子 木村 肇 松本 明博
出版者
合成樹脂工業協会
雑誌
ネットワークポリマー (ISSN:13420577)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.24-30, 2014-01-10 (Released:2014-04-23)
参考文献数
19
被引用文献数
3

ジアリルフタレート樹脂の接着性と靭性向上を目的として,ポリエチレングリコールユニットの異なるアクリル酸エステルをジアリルフタレート樹脂に配合し,ラジカル重合で同時に反応させることで相互侵入高分子網目構造(IPN)を形成させた。破壊靭性値,およびはく離接着強度とせん断接着強度は,アクリル酸エステルのポリエチレングリコールユニットの分子量や配合割合が大きくなるに従って大きく向上した。特にポリエチレングリコールユニットの分子量が大きい場合に,破壊靭性値と接着強度はジアリルフタレート樹脂と比較して2 倍以上の値を示した。これは,ポリエチレングリコールユニットの導入による柔軟性付与,および柔軟性付与により硬化過程で生じる接着剤層の内部応力が緩和されるためであると考えられ,動的粘弾性挙動と一致した。また,ポリエチレングリコールユニットの分子量の小さいアクリル酸エステルを配合した場合やポリエチレングリコールユニットの分子量の大きいアクリル酸エステルの配合割合が小さい場合には,ジアリルフタレート樹脂にアクリル酸エステルが相溶したIPN を形成した。一方,ポリエチレングリコールユニットの分子量の大きいアクリル酸エステルを20 wt% 以上配合した場合には,ジアリルフタレート樹脂架橋構造中にアクリル酸エステルが分子レベルで微分散した相分離型IPN を形成した。
著者
谷口 竜王
出版者
合成樹脂工業協会
雑誌
ネットワークポリマー (ISSN:13420577)
巻号頁・発行日
vol.32, no.4, pp.197-204, 2011-07-10 (Released:2014-04-22)
参考文献数
73

近年,高分子微粒子は,塗料,接着剤,熱可塑性プラスチック,繊維,製紙,電子素子,そして体外診断薬などの応用分野で注目されている。不均一相ラジカル重合の発展とともに,様々な表面機能化粒子が精力的に調製されている。これらの重合方法のなかでも,技術的(容易な操作方法,高いモノマー転化率,そして様々な製品への応用性)および経済的(良好な生産性,低コストな試薬,そして安価な投資金)観点から,サブミクロンサイズのラテックス粒子調製法として,乳化重合,ソープフリー乳化重合,ミニエマルション重合などの乳化重合をベースとする手法が最もよく用いられている。制御された構造と表面官能基を有する機能性高分子微粒子の調製方法に関する数多くの論文が報告されている。本総説では,機能性モノマーとの乳化重合による表面機能性ラテックス粒子合成の最近の進展について紹介する。また,粒子表面からのグラフト重合に制御/リビングラジカル重合(原子移動ラジカル重合,可逆的付加開裂連鎖移動重合,ニトロキシド媒介重合など)を適用した手法についても述べる。
著者
仙北谷 英貴 山本 秀朗 党 偉栄 久保内 昌敏 津田 健
出版者
合成樹脂工業協会
雑誌
ネットワークポリマー (ISSN:13420577)
巻号頁・発行日
vol.23, no.4, pp.178-187, 2002 (Released:2012-08-20)
参考文献数
11
被引用文献数
1

ケミカルリサイクルを行う目的で3種類のエポキシ樹脂を80℃の4mol/1およひ6mol/1の硝酸水溶液により分解した.DDM (diaminodiphenylmethane) 硬化ビスフェノールF型エポキシ樹脂では, 樹脂は4molAで約400時間, 6mol/1で80時間の分解時間を要した.DDS (diaminodiphenylsulfone) 硬化TGDDM (tetraglycidyldiaminodiphenylmethane) 型エポキシ樹脂は, 4mol/1では約50時間, 6mol/1では約15時間で分解した.硝酸水溶液から酢酸エチルによって抽出された化合物の分析の結果, C-N結合の開裂とニトロ化が起こっていることが明らかになった.また, 一般的に耐酸性の高い酸無水物硬化エポキシ樹脂について, 樹脂主剤の化学構造の中にC-N結合をもつ無水メチルハイミック酸硬化TGDDM型エポキシ樹脂を硝酸水溶液で分解させた.4molA硝酸水溶液では約80時間, 6mol/1では約250時間で分解し, 本手法が酸無水物硬化エポキシ樹脂にも応用可能であることが明らかになった.分解生成物の分析結果から, 回収された分解生成物を再重合する目的であればビスフェノールF型エポキシ樹脂の4mol/1硝酸水溶液による分解が優れ, 単純に廃棄物処理するだけであればDDS硬化TGDDM型エポキシ樹脂を6mol/1硝酸水溶液で分解させる方法が最も適していることが明らかになった.
著者
平野 啓之
出版者
合成樹脂工業協会
雑誌
ネットワークポリマー (ISSN:13420577)
巻号頁・発行日
vol.36, no.1, pp.38-46, 2015-01-20 (Released:2015-03-17)
参考文献数
29

エポキシ樹脂は優れた機械特性,耐熱性および炭素繊維との接着性から,CFRP のマトリックス樹脂として幅広く用いられている。CFRP の成形法の進歩は,エポキシ樹脂に成形法に応じた多様な特性を要求するに至っている。本項では,CFRP に汎用される成形法を紹介し,それぞれの手法における樹脂設計の留意点を,最近の技術動向を含めながら説明する。
著者
森下 暢也 新井 亮 笹川 知里 岡本 直樹 池田 順一 Lim Pang Boey 井上 光輝
出版者
合成樹脂工業協会
雑誌
ネットワークポリマー (ISSN:13420577)
巻号頁・発行日
vol.32, no.4, pp.179-187, 2011

DVD と同じサイズのディスクに10TB を超えるような大容量次世代ホログラムの開発記録システム開発としてフェーズロックコリニアホログラムメモリシステム(MEXT キーテクノロジー事業)の開発を進め,最終的には20TB の可能性を示唆することが出来た。本報では,1)脂環式エポキシとポリエーテルからなるネットワークポリマーマトリックス中で,2)ナノレベルの相分離を利用してドットライク精密なホログラム記録のできるナノゲルフォトポリマー(NGPP)を開発したので報告する。
著者
白井 博史 松田 孝昭
出版者
合成樹脂工業協会
雑誌
ネットワークポリマー (ISSN:13420577)
巻号頁・発行日
vol.33, no.5, pp.250-258, 2012-09-10 (Released:2014-04-23)
参考文献数
20

省資源・省エネルギーの見地から,自動車タイヤに要求される重要な性能として省燃費性が大きくクローズアップされている。自動車の走行抵抗に大きく寄与するのはタイヤの転がり抵抗であり,この転がり抵抗を低減する技術開発が活発に行われており,多くの新しい素材が提案されている。シリカ配合タイヤは,省燃費性とウェットグリップのバランスを飛躍的に向上できることから,近年,タイヤトレッドにシリカを配合したエコタイヤの普及が目覚ましい。しかしながら,シリカは表面シラノール基の水素結合による凝集でカーボンブラックと比較して分散しにくいという問題がある。アニオン重合を利用した溶液重合スチレン・ブタジエン共重合体(S-SBR)は,タイヤの転がり抵抗を低減できる材料としてシリカタイヤトレッドに多用されており,更に官能基を導入した変性SBR を用いることで,シリカの分散性を改良しシリカタイヤの性能を向上させることが可能となった。 本報では,アニオン重合技術を活用した末端変性SBR,両末端変性SBR,マルチファンクショナルSBR の最近の変性技術について述べた。
著者
金 演鎬 中野 義夫
出版者
合成樹脂工業協会
雑誌
ネットワークポリマー (ISSN:13420577)
巻号頁・発行日
vol.30, no.2, pp.115-121, 2009 (Released:2013-03-29)
参考文献数
16

ポリフェニル基を有するタンニンゲルは金属イオンに対して親和性が高いことから,二次資源(廃電子部品等)から貴金属の再資源化を図るゲル/液抽出への応用が期待される。タンニンゲルの貴金属吸着機構は酸化還元反応であり,貴金属イオンの酸化還元電位差を利用し,Au(Ⅲ) を含むPd(Ⅱ),Pt(Ⅳ) 共存系からAu(Ⅲ) のみを選択的に分離回収することができる。さらに貴金属イオンとの親和性を高めるために,SCN-イオンをゲル内に導入した SCN-内包型タンニンゲルは Pd(Ⅱ),Pt(Ⅳ) 吸着能の向上やPd(Ⅱ)に対して高い選択性を示した。タンニンゲル,SCN-内包型タンニンゲルを組み合わせた貴金属回収システムは Ag(Ⅰ),Au(Ⅲ),Pd(II),Pt(Ⅳ)の連続的および選択的分離回収が可能であり,吸着,分離,濃縮,還元といった一連の単位操作をゲルネットワーク上で行うことができるため,還元剤,凝集剤等の添加剤が不要,かつ,シンプルなゲル/液抽出プロセスの技術開発につながる。
著者
吉川 俊夫 山田 英介 中原 崇文
出版者
合成樹脂工業協会
雑誌
ネットワークポリマー (ISSN:13420577)
巻号頁・発行日
vol.23, no.3, pp.128-133, 2002

エポキシ/研磨粉系の導電性硬化物について, 150℃での加熱サイクルテストを行い, 抵抗の熱安定性を測定した。その結果, 高いプレキュア温度を用いて硬化させた試料ほど熱安定性が高いことがわかった。一方, 抵抗値と温度の関係を測定したところ, 極小値を持つU字型曲線を示すことがわかった。更に, 高いプレキュア温度で硬化させた試料ほど曲線が高温側にシフトし, 抵抗値の温度変化が少ないことがわかった。

1 0 0 0 OA 重縮合

著者
東原 知哉 上田 充
出版者
合成樹脂工業協会
雑誌
ネットワークポリマー (ISSN:13420577)
巻号頁・発行日
vol.30, no.5, pp.261-272, 2009 (Released:2013-03-29)
参考文献数
28

重縮合は高分子生成反応の中で重要な反応のひとつである。ここでは重縮合の基礎を簡単に述べた後に,最近のこの分野の進展,すなわち,精密重縮合に関するi)分子量および分子量分布の精密制御 ii)ハイパーブランチポリマーの分岐度の制御 iii)位置選択的カップリング重縮合,更にはこれまでの理論と異なる iv)非等モルのモノマーからの高分子量ポリマーの合成について紹介する。
著者
大久保 明浩 斎藤 裕昭 斎藤 正幸 渡邊 英樹 山崎 倫康 八木 優紀
出版者
合成樹脂工業協会
雑誌
ネットワークポリマー (ISSN:13420577)
巻号頁・発行日
vol.32, no.2, pp.97-100, 2011-03-10 (Released:2014-03-31)
参考文献数
6

環境に配慮した高耐久・高耐熱バイオマス樹脂の開発を主眼とし,澱粉を出発原料としたフェノール樹脂を合成した。このフェノール樹脂のエポキシ硬化物は従来のフェノールノボラックのエポキシ硬化物に匹敵する耐熱性及び機械特性を発現し,優れた耐水性を有することを確認した。さらに本樹脂をエポキシ化したバイオマス樹脂を合成した。得られたバイオマス樹脂同士の硬化物を作製し物性を確認したところ,優れた機械特性が得られた。
著者
吉川 俊夫 岩田 博之 中原 崇文
出版者
合成樹脂工業協会
雑誌
ネットワークポリマー (ISSN:13420577)
巻号頁・発行日
vol.23, no.2, pp.92-100, 2002

研磨粉とエポキシプレポリマーの混合物の注型成形によって導電性硬化物を得た。導電性は研磨粉量の約1.5乗に比例した。硬化前に磁場を印加して研磨粉を磁化することにより, 硬化物の導電性を増加させることができた。この系の導電性は系の硬化収縮と連動して発生していることがわかった。硬化反応でのプレキュア温度が高いほど導電性の高い硬化物を得た。研磨粉量が80phr以下では樹脂層と研磨粉層に分離するが, 80phr以上では均一な組成の硬化物を得た。