著者
甲斐 達男
出版者
西南女学院大学
雑誌
西南女学院大学紀要 (ISSN:13426354)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.87-98, 2007

パンは発酵時間が長いほど柔らかく硬化速度も遅くて良いということが経験的に信じられてきた。これは発酵生産物である有機酸やアルコール類がパン骨格を適度に潤滑させるためと説明されている。またパンの硬化速度には、発酵時間だけでなく生地のミキシング方法も影響すると考えられている。っまり、緩やかに時間をかけて生地を捏ね上げて作ったパンは、高速ミキサーで一気に捏ね上げたものよりも硬化速度が遅い。しかしながら製パン法の違いによって適する基本配合は大きく異なり、さらに加工者の質目標や好みによって用いる原材料や使用量が異なる。従って一般に経験的に認識されている製パン方法とパンの硬化速度の関係は、発酵時間やミキシング方法の影響だけを純粋に反映しているわけではない。そこで本報では、生地発酵時間の長短とミキシング法の違いがどの程度パンの硬化速度に影響を与えるのかを検証した。ここではパンの硬化速度に影響を与える3つの因子(製パン配合、パンの比容積、パンの残糖)を考慮して実験を行った。その結果、発酵時間の最も長い中種法と最も短い短時間法との間には僅かな差しか見られなかった。通常のミキシング法と高速ミキシング法の差も僅かであった。この事実はパンの硬化特性は配合による影響が大きいことを示唆するものである。
著者
前田 由紀子 立石 和子 谷岸 悦子 松林 太朗
出版者
西南女学院大学
雑誌
西南女学院大学紀要 (ISSN:13426354)
巻号頁・発行日
vol.22, pp.11-21, 2018-03-01

【目的】本研究は、精神科に勤務する看護師が認定看護師の資格を取得する過程とその後の経験を明らかにすることを目的とする。【方法】精神科病棟に勤務する認定看護師7 名を対象とし、個別に半構成的面接を実施した。精神科を選択した理由、認定看護師課程を受講した理由と過程、資格取得後の経験についての語りをデータとし、質的帰納的に分析した。【結果】精神科認定看護師を目指した理由は、<専門性の向上><精神科看護師としての自己の人生への問い><職場の改革><役割遂行の向上>の4 カテゴリーに分類された。認定後の経験は、<看護実践能力の向上><認定看護師としての役割遂行><実践におけるジレンマ><精神科認定看護師への評価の低さ>の4 カテゴリーが抽出された。【考察】資格取得の過程は、組織的な目標管理の下ではなく、個々の問題意識からキャリアアップを目指すという特徴があり、認定後の活動への影響が考えられる。組織における精神科認定看護師への理解や活動への支援により更なる活動実績が期待される。
著者
ブラウン馬本 鈴子
出版者
西南女学院大学
雑誌
西南女学院大学紀要 (ISSN:13426354)
巻号頁・発行日
vol.21, pp.153-162, 2017

フェミニズムでは、女友達の存在は、女性が自立を図る上で重要であると考えられている。作家ジェイン・オースティンの作品では女性同士の" real friendship"は存在するのであろうか。本稿では初期の作品であるNorthanger Abbey(1818)の女主人公Catherine Morland とその友人Isabella Thorpe やTilney 兄妹との友情を中心に、オースティン作品の中で女友達を登場させる意義の解読を試みた。Isabella との浅はかな友情を通して、彼女の狡猾で浮気性な本性が露呈されると同時に、主人公の〈単純〉〈純粋〉〈未熟〉な性格が強調される現象を確認した。また精読によってIsabella の友情の動機が、Catherine を利用して結婚相手を獲得することであることを明らかにした。やがてCatherineの友情は、IsabellaからTilney兄妹へと舵を切るが、Claudia L. Johnsonの指摘" The band of good friends is all related by marriage in the end"にあるように、結末ではHenry Tilney はCatherine の夫となる。道徳的に堕落したIsabella との友情の終焉と平行して、ゴシック小説の低俗さを悟ったCatherine が、自己成長によって究極の男女愛を手に入れる様子を検証した。Isabella は小説の3分の2でいなくなり、他の登場人物からも読者からも忘れられる。以上の考察から、オースティン作品の中における女性同士の友情には限界があるという結論に至った。
著者
金丸 英子
出版者
西南女学院大学
雑誌
西南女学院大学紀要 (ISSN:13426354)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.52-58, 2004

近代アメリカ・プロテスタント教界を代表するワルター・ラウシェンプッシュ(Walter Rauschenbusch,1861-1918)の代表的な著作、『Christianity and Social Crisis』(1907年出版)から、ラウシェンブッシュが唱導した社会的福音において、社会福祉がどのように捉えられていたかを探る。また、ラウシェンブッシュの主張の中に、キリスト教の使信と社会福祉理念を切り結ぶ哲学的な接点を見出してゆき、キリスト教主義大学で福祉を学ぶ人たちにキリスト教から提供しうる視点を模索する。
著者
吉田 あや子
出版者
西南女学院大学
雑誌
西南女学院大学紀要 (ISSN:13426354)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.90-99, 2003-03-29

本研究は,小学2年生の描画と説明文を中心に分析した結果,健康教育の実践に役に立ついくつかの考慮すべき児童の健康認識が促えられた。多くの子どもが,友達と楽しそうに遊んでいる様子を描いており,遊びや運動が心と体を元気にする上で重要と考えており,ケンカしないことや生き物を大切にすることも,心を元気にすることにつながるのだと捉えていた。一方,早寝・早起き,好き嫌いのない食事,うがいや手洗いなどはあまり実行されていなかったが,重要なことと理解し,実行しようとする姿勢がみられた。以上のことから,小学校低学年においては,心の中にある印象・記憶をそのまま描画で表現しようとする子どもの特性を活かし,描画を取り入れた授業が効果的な健康教育になり得る事が示唆された。
著者
穴井 めぐみ
出版者
西南女学院大学
雑誌
西南女学院大学紀要 (ISSN:13426354)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.57-64, 2003-03-29

目的:看護学生の視覚遮断体験の実態を明らかにすることに加えて,その体験からの気づきを検討する。方法:看護学生の視覚遮断体験後の感想文から内容分析を行い抽出された項目の検討を行った。対象:本大学看護学科2年生63名に研究の目的について説明し,研究に使用することに同意が得られた63名の学生の感想文。結果:1.学生は視覚以外の感覚の鋭敏化や時間・空間感覚的体験,不安・緊張感・いらいらの感情などの感覚遮断体験をしていた。2.感覚遮断体験から,食べ物は視覚によっても味わっていること,空間的感覚の喪失は危険予知力の低下につながることに気づいていた。3.感覚遮断体験から,介助者の非言語的・言語的コミュニケーションに安心感を見出していた。
著者
金丸 英子
出版者
西南女学院大学
雑誌
西南女学院大学紀要 (ISSN:13426354)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.51-56, 2007

ニューイングランド植民地で長年、社会のマイノリティーに留まっていたバプテストは、独立戦争の際、植民地の公的宗教権威である植民地教会と共に対英姿勢を顕著にし、独立戦争を支持し参戦することで、社会的マジョリティーとなっていった。バプテストは自らの伝統的な特長である信教の自由と政教分離の主張のゆえに、植民地教会かと相容れず、迫害を受けてきたにもかかわらず、アメリカの自由と独立の獲得という共通の目的のもとに共に戦う仲間となった。これによってバプテストは社会的マジョリティーとなったが、同時に、独立国となったアメリカという政治的・社会的文脈において、信教の自由と政教分離の主張に、新しい解釈が要求されるようになった。それはいかなるものであったか。バプテストが社会的マジョリティーとなった時、喪失したものがあるとすれば、それは何か。この小論で問うてみたい。
著者
新木 真理子 大津 厚子 吉原 悦子 高木 真理
出版者
西南女学院大学
雑誌
西南女学院大学紀要 (ISSN:13426354)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.10-18, 2006-02-28
被引用文献数
3

本研究は、「高齢者の自発性を高めるアプローチ」に関する学内演習および臨地実習の学習成果を明らかにした上で、演習と実習の望ましい連動について検討したものである。大学3年次の看護学生を対象とし、学内演習と臨地実習における学生の自己評価および記録を分析した結果、20の学びの項目が抽出された。また、学生の演習自己評価と実習自己評価には相関があり、実習時の「満足感」に関する自己評価高・低得点群と、演習時の「GW参加度」に関する自己評価高・低得点群は、有意な関連がみられた。「高齢者の自発性のアプローチ」に関して、実習の教育効果を高めるには、演習において、基本的な患者-援助者間の相互作用や個別性の重視について、学びを深めることの必要性が示唆された。