著者
清水 麻由 今井 孝成 山崎 さやか 矢川 綾子 宮沢 篤生 中村 俊紀 北條 菜穂 石川 良子 神谷 太郎 板橋 家頭夫
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.65, no.2, pp.128-133, 2016 (Released:2016-04-16)
参考文献数
20

【目的】インフルエンザ予防接種ガイドラインには,鶏卵完全除去中や鶏卵摂取後にアナフィラキシー歴がある児は専門施設へ紹介するとし,安全性についての記載はない.今回,特に重症な鶏卵アレルギー児を対象に当科でインフルエンザワクチンを接種した後の副反応について検討し,17例のケースシリーズとして報告する.【方法】対象は平成25年度にインフルエンザワクチンを希望し,当該ワクチンの接種歴がなくかつ重症な鶏卵アレルギー児(鶏卵完全除去中かつ卵白またはOvomucoid(OVM)特異的IgE値がスコア4以上である児〔以下完全除去児〕,または鶏卵摂取にてSampson分類でGrade III以上の強いアナフィラキシー症状の既往のある児〔以下アナフィラキシー児〕)とした.接種前に10倍希釈ワクチン液でプリックテストを施行し,2分割接種を行った.主要評価項目は,接種後30分以内,24時間以内の副反応の出現状況とした.【結果】17例(完全除去児9例,アナフィラキシー児8例)を対象に,のべ33回接種を行い,接種後の副反応は,分割接種30分以内,24時間以内とも認めなかった.【結論】重症な鶏卵アレルギーであっても,インフルエンザワクチンは安全に接種できる可能性が高い.
著者
髙木 俊敬 前田 麻由 山下 恒聖 國上 千紘 岡田 祐樹 中村 俊紀 神谷 太郎 今井 孝成 水野 克己
出版者
一般社団法人日本小児アレルギー学会
雑誌
日本小児アレルギー学会誌 (ISSN:09142649)
巻号頁・発行日
vol.35, no.3, pp.228-232, 2021-08-20 (Released:2021-08-20)
参考文献数
16

症例は5か月の男児.ゴマ摂取歴はなく両親にゴマを積極的に摂取する嗜好はない.生後1か月から脂漏性湿疹を顔面に認め,生後4か月には全身に皮疹が拡大した.保護者にステロイド忌避があり自己判断で市販のゴマ油含有外用薬を日常的に広範囲に塗布していた.生後5か月に湿疹増悪と活気低下,体重減少を認め当院に入院した.入院時血液検査で,血清総IgE値,ゴマ特異的IgE抗体価の高値を認めた.ゴマ油含有外用薬を中止,適切な治療にて皮疹は軽快した.乳児期はゴマを完全除去し,1歳3か月時にゴマ0.3gの食物経口負荷試験を実施した.結果,全身に膨疹と掻痒を速やかに認め,ゴマアレルギーと診断確定した.乳児早期からゴマ油含有外用薬を湿疹部に塗布したことにより経皮感作が誘導され即時型アレルギーを発症した可能性がある.皮膚のバリア機能が障害されている患者において食物成分を含む外用を行う際には食品成分に対して経皮感作が起こりうる可能性を考慮し,医薬品をはじめ一般用医薬品や医薬部外品に含まれる食品成分に注意する必要がある.
著者
松原 優里 阿江 竜介 大矢 幸弘 穐山 浩 今井 孝成 松本 健治 福家 辰樹 青山 泰子 牧野 伸子 中村 好一 斎藤 博久
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.67, no.6, pp.767-773, 2018 (Released:2018-07-18)
参考文献数
24

【背景・目的】日本における食物アレルギー患者数は年々増加しているが,食物アレルギー患者数の頻度分布(有病率)は,未だ明らかではない.本研究では,それらを明らかにし,新たな調査方法を検討する.【方法】政府統計等利用可能な資料を用いて,食物アレルギー患者数を推計する.【結果】乳幼児期では「自己申告」で約80万人,「医師の診断」で約30万~50万人,学齢期では「自己申告」で約60万人,「医師の診断」で約35万人と推計された.成人では,消費者庁が即時型症状の受診者数を調査しているが,対象が限定されており,患者数の推計は困難であった.【結語】乳幼児はエコチル調査に症状や診断の有無・血液検査を追加することで,年次変化を把握でき,学齢期では文部科学省の調査が有効である.成人期では大規模調査は少なく,国民健康・栄養調査や国民生活基礎調査などに付随した調査が有効である.一方で個々の情報源の抱える問題点も明らかにした.
著者
河上 淳一 後藤 昌史 松浦 恒明 寄谷 彩 政所 和也 永松 隆 今井 孝樹 烏山 昌起 原田 伸哉 工藤 憂 志波 直人
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
pp.11783, (Released:2020-09-08)
参考文献数
26

【目的】本研究の目的は,腱板断裂患者に対し患者立脚評価を用いた治療方針の予測をすることである。【方法】対象は腱板断裂患者229 名で,初診1 ヵ月以降の治療方針(手術または保存)を目的変数,患者立脚評価を説明変数とした決定木分析と傾向スコア分析を行い,治療方針のオッズ比を算出した。【結果】決定木分析にてもっとも手術療法が選択される手術療法傾向群と,もっとも保存療法が選択される保存療法傾向群に分け,それ以外を中間群とした。傾向スコア分析を考慮したオッズ比は,保存療法傾向群に対して手術療法傾向群で11.50 倍,中間群に対して手術療法傾向群で3.47 倍の手術療法が選択された。【結論】腱板断裂患者の治療方針の予測には,SST における4 つの質問の重要性が示唆された。
著者
今井 孝祐
出版者
一般社団法人 日本集中治療医学会
雑誌
日本集中治療医学会雑誌 (ISSN:13407988)
巻号頁・発行日
vol.16, no.4, pp.503-504, 2009-10-01 (Released:2010-04-20)
参考文献数
7
被引用文献数
1
著者
徳永 剛 今井 孝樹 流合 慶多
出版者
公益社団法人 佐賀県理学療法士会
雑誌
理学療法さが (ISSN:21889325)
巻号頁・発行日
vol.6, no.1, pp.7-13, 2020-02-28 (Released:2020-12-18)
参考文献数
15

[目的]教育を充実させた方が良い項目を特定する目的で臨床能力の主観的評価を実施した。[対象]臨床経験 3年未満の理学療法士50名とした(総合病院32名,整形外科,クリニック 7名,脳血管障害中心の回復期施設 5名)。[方法]①臨床評価能力と②臨床技術において主観的評価表を用いて各項目を点数化した。①臨床評価能力,②臨床技術のそれぞれの項目間を多重比較で比較した。また①臨床評価能力と②臨床技術の項目の中で,今後学びたい,勉強会に参加したい項目について複数回答で調査し,項目ごとに百分率にて算出した。[結果]多重比較では,①臨床評価能力は,姿勢・動作観察及び統合と解釈が他項目と比べ有意に低値であった。②臨床技術は,特殊テクニックが他項目と比べ有意に低値であった。今後学びたい,勉強会に参加したい項目は姿勢・動作観察及び分析が95.1%であった。[結語]臨床経験3年未満の理学療法士は姿勢・動作観察及び分析の自己評価が低く,苦手で学びたいと感じていることが明らかになった。
著者
清水 美恵 今井 孝成 松本 勉 野々村 和男 神谷 太郎 岡田 祐樹 本多 愛子
出版者
一般社団法人日本小児アレルギー学会
雑誌
日本小児アレルギー学会誌 (ISSN:09142649)
巻号頁・発行日
vol.36, no.5, pp.499-507, 2022-12-20 (Released:2022-12-20)
参考文献数
29

【目的】心理的葛藤のさなかにある思春期アレルギー児が療養生活を送るうえでレジリエンス,すなわちダメージからの回復力は重要である.しかしアレルギー児のレジリエンスを測定する尺度はない.本研究では,思春期アレルギー児のレジリエンス尺度を作成し,その信頼性と妥当性を検証する.【方法】対象は,協力医療施設に通院中の小4から中3のアレルギー児とした.調査は質問紙を用いて2021年9~11月に実施した.尺度原案を作成し,項目分析で得られた尺度項目に対する探索的因子分析,確認的因子分析を行った.【結果】621部を配布し,有効回答179名を分析対象とした.対象アレルギー疾患は,気管支喘息136名,食物アレルギー83名,アトピー性皮膚炎80名であった.思春期アレルギー児レジリエンス尺度は4因子(問題解決志向,探究志向,自然体志向,ネガティブ感情の共有)15項目で構成され,信頼性と妥当性が確認された.【考察】アレルギー児のレジリエンス尺度を開発した.移行支援など関係する研究で活用が期待される.
著者
佐藤 さくら 田知本 寛 小俣 貴嗣 緒方 美佳 今井 孝成 富川 盛光 宿谷 明紀 海老澤 元宏
出版者
一般社団法人日本小児アレルギー学会
雑誌
日本小児アレルギー学会誌 (ISSN:09142649)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.187-195, 2007-06-01 (Released:2007-12-26)
参考文献数
17
被引用文献数
4 2

アナフィラキシー補助治療薬のエピペン®が我が国で発売され,2004年5月から2005年10月まで当科で同薬を処方した食物アレルギー患者は50名(男33名,女17名,0.3mg:15名,0.15mg:35名)に上る.対象の平均年齢は6.8歳でアトピー性皮膚炎合併が78%,気管支喘息合併が52%であった.原因食品摂取時に呼吸器症状を96%,皮膚症状を92%に認めた.アナフィラキシー症例は48例で,食物アレルギー発症時の臨床型は36例が“食物アレルギーの関与する乳児アトピー性皮膚炎”,即時型症状8例,食物依存性運動誘発アナフィラキシー4例であった.アナフィラキシーを起こした理由は,初回,2回目以降も誤食によるものが最多であった.アナフィラキシー反復例は31例で,複数抗原に対してアナフィラキシーを起こした例や原因不明例も存在した.今回の処方50例中実際に使用された例は1例あり,17歳のナッツアレルギー患者において使用され著効していた.医師,コメディカルにおいてまだ認識が不十分なエピペンであるが,アナフィラキシーを起こす可能性のある食物アレルギー児に対して保護者と相談の上で処方していくべきである.
著者
河上 淳一 後藤 昌史 松浦 恒明 寄谷 彩 政所 和也 永松 隆 今井 孝樹 烏山 昌起 原田 伸哉 工藤 憂 志波 直人
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.47, no.6, pp.587-592, 2020 (Released:2020-12-18)
参考文献数
26

【目的】本研究の目的は,腱板断裂患者に対し患者立脚評価を用いた治療方針の予測をすることである。【方法】対象は腱板断裂患者229 名で,初診1 ヵ月以降の治療方針(手術または保存)を目的変数,患者立脚評価を説明変数とした決定木分析と傾向スコア分析を行い,治療方針のオッズ比を算出した。【結果】決定木分析にてもっとも手術療法が選択される手術療法傾向群と,もっとも保存療法が選択される保存療法傾向群に分け,それ以外を中間群とした。傾向スコア分析を考慮したオッズ比は,保存療法傾向群に対して手術療法傾向群で11.50 倍,中間群に対して手術療法傾向群で3.47 倍の手術療法が選択された。【結論】腱板断裂患者の治療方針の予測には,SST における4 つの質問の重要性が示唆された。
著者
野白 有里子 今井 孝 酒井 牧子 河野 通盛
出版者
松江市立病院
雑誌
松江市立病院医学雑誌 (ISSN:13430866)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.33-35, 2019 (Released:2019-07-01)
参考文献数
6

せん妄は入院期間の延長,転倒事故リスクの増大,医療従事者の負担増加に繋がり,医療現場において問題とされている.そのためせん妄のリスク因子を把握し,事前のせん妄対策を行うことが重要となる.本研究の目的は,せん妄発症患者における,患者背景及びせん妄リスク薬の使用状を調査し,それらがせん妄の発症に及ぼす影響を明らかにすることである.調査期間中の消化器内科病棟全入院患者は1,389 名であり,そのうちせん妄治療目的での投薬が行われた対象患者は22名であった.対象患者のうち,せん妄発症直前に服用していた,せん妄誘発リスクが高いとされる薬剤は0 剤の患者が8 名,1 剤が5 名,2 剤が5 名,3 剤が4 名であった.せん妄リスク薬のうち,BZ系及び非BZ系睡眠薬・抗不安薬服用患者,オピオイド系鎮痛薬服用患者の人数が多い傾向にあった.一方,高齢者ではせん妄リスク薬が0 剤であってもせん妄を発症していた.また,せん妄リスク薬を3 剤服用している患者は0 ~ 2 剤の患者に比べ平均年齢が低い傾向にあった.このことから,せん妄リスク薬を多剤併用している患者に対しては,年齢に関わらずせん妄発症リスクがあることを考慮し,薬剤の適正使用を検討することにより,せん妄発症を回避できる可能性が示唆された.
著者
柳田 紀之 今井 孝成 海老澤 元宏
出版者
日本小児アレルギー学会
雑誌
日本小児アレルギー学会誌 (ISSN:09142649)
巻号頁・発行日
vol.24, no.1, pp.39-46, 2010 (Released:2010-07-09)
参考文献数
13
被引用文献数
5 4

経口減感作療法の有効性の報告は増えてきているが,現在,経口減感作療法に標準化された方法はない.当院では学童期以降で少量の原因食物の摂取でアナフィラキシー症状が誘発される児を対象に初期量を閾値と同量,1日2回摂取,100%増量とする急速法を6~9日間かけて行なっている.当院の経験とこれまでの報告を交えて適応や方法について検討し,経口減感作療法の標準化の可能性を探ってみたい.
著者
今井 孝成 飯倉 洋治
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.52, no.10, pp.1006-1013, 2003
被引用文献数
33

目的 食物アレルギーの臨床は混乱している.これは詳細な病態生理が未だ不明であることはもちろん,その疫学データが少ない点も一因となっている.我々は今後の基礎研究,臨床診療に寄与することを目的とし,即時型食物アレルギーに関する全国疫学調査を行った.方法 国内100床以上で小児科を有する病院2689施設に対し,"何らかの食物摂取後60分以内に症状が出現し,かつ医療機関を受診したもの"を対象とし調査分析を行った.結果 回収率は60.4%で,該当症例のあった498施設の1420症例を対象として検討した。平均年齢は6.7歳±13.1 (平均±標準偏差)であった.頻度の多かった原因食品は鶏卵,乳製品,小麦であり,以下ソバ,魚類,果物類,エビが多かった.症状は原因食品摂取後24.2分±19.4(平均±標準偏差)で出現し,皮膚,呼吸器症状が多く見られた.結論 本結果を基に厚生労働省はアレルギー表示制度に関する省令を一部改正し,卵,乳,小麦,ソバ,落花生の表示を義務化した.
著者
子安 ゆうこ 酒井 菜穂 今井 孝成 神田 晃 川口 毅 小田島 安平
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.53, no.5, pp.484-493, 2004
被引用文献数
5

【目的】シックハウス症候群(sick house syndrome;SHS)とは,建物の室内環境が原因で健康被害を呈するものである.SHSは社会的には認知されているが,医学的な定義はなく疾病概念も曖昧である.今回,SHSの病態解明のために大規模疫学調査を行った.【方法】厚生労働科学研究費補助金生活安全総合研究事業シックハウス症候群に関する疫学的研究班における調査用紙を用いた.【結果】成人8737人,小児9387人の回答が得られた.疾患の定義の仕方により,SHSと判断されたのは成人女性で3.0〜23.3%,成人男性2.9〜16.1%,小児で5.6〜19.8%であった.原因環境因子は小児・成人とも「シャンプ- ・化粧・香水」,「壁や床の建材のにおい」,「塗料」が上位であった.住居の築年数,増改築の状況でSHS発症に有意差はなかった.ライフスタイルの特徴として,ストレスが多く,においに敏感なものに有病率が高かった.【考察】SHSをどのように定義するかによって,有病率が大きく異なった.SHSを解明するためには,国際的な基準もふまえた定義づけが必要と考える.