著者
青木 幸子
出版者
Japan Association for Cultural Economics
雑誌
文化経済学 (ISSN:13441442)
巻号頁・発行日
vol.5, no.3, pp.135-144, 2007-03-31 (Released:2009-12-08)
参考文献数
15

高校における表現教育のアポリアの1つに、何を表現していいかわからないという生徒の反応がある。生徒が自己の見方に自信を持ち、想いを言葉にして他者に届けるにはどうすればよいか? ラジオドラマ制作を通して生徒に反映された効果を分析したところ、(1) 物語創出能力 (2) 物語構築能力 (3) 物語表現能力 (4) 物語共感能力が検証された。その4つの能力を表現教育に敷術化する試みの中で、生徒は想いを言語化することが可能となった。
著者
工藤 安代
出版者
Japan Association for Cultural Economics
雑誌
文化経済学 (ISSN:13441442)
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.27-37, 2006-03-31 (Released:2009-12-08)
参考文献数
42

1930年代のニューディール芸術文化政策は、現代米国社会の文化政策の基盤となっていると言える。ニューディールの芸術政策は2つの性格を持っており、一つは国民の芸術享受の機会を創出し、大不況のなかで芸術家を救済するという社会福祉的視点であり、二つ目は国家の芸術レベルを向上させ精神的アイデンティティを構築していく国家の文化向上政策の視点である。後者の担い手となったのは財務省の管轄下で実施された「セクション」である。ニューディール芸術政策は、第二次大戦と共に中断されるが、セクションの思想は1962年に設立した「米国公共施設管理庁 (GSA)」によるパブリックアート政策に引き継がれる。本稿はまず、ニューディール芸術政策の目的と各プログラムの特色を概観した後、「セクション」の政策に的を絞り、プログラムの目的、作品選定の手順・評価方法等の特性を考察する。その上で「セクション」の思想が現代パブリックアート政策の基礎を形成したことを論じる。
著者
中西 穂高
出版者
Japan Association for Cultural Economics
雑誌
文化経済学 (ISSN:13441442)
巻号頁・発行日
vol.4, no.3, pp.77-86, 2005

北海道歌志内市は、1995 (平成7) 年に市の基幹産業であった炭鉱が閉山したことにより、市経済は衰退し人口も減少した。本稿では地域経済の衰退が地域イベントの開催に与える影響について調査、分析を行った。<br>炭鉱閉山の危機が高まった時期には、危機感を背景に市民を中心に行政の支援も受けて新規イベントの発足、既存イベントの活性化が図られた。しかし、その後の自治体財政の窮迫に伴い、イベントへの助成が打ち切られ、多くのイベントが中止となった。中止となったイベントには、他のイベントと内容が類似している、歴史が浅く市民への認知度が低い、主催者の意識が明確でない、と言った特徴がある。<br>近年の自治体財政が厳しい状況のもとで地域の文化活動が継続していくには、特色あるイベントの企画、市民の認知度を高める広報活動、目的意識を持ってイベント開催を推進する実施主体が重要である。
著者
川又 啓子
出版者
Japan Association for Cultural Economics
雑誌
文化経済学 (ISSN:13441442)
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.55-62, 1998-05-31 (Released:2009-12-08)
参考文献数
26

本稿は、松竹、東宝に並び称されるほどの演劇興行会社へと商業的に成功した劇団四季の事例研究論文である。劇団のこれまでの歩みを概観した後に、劇団四季という組織の運営形態に検討を加え、最後に顧客とのコミュニケーション行為としての劇団四季のマーケティング戦略を分析し、芸術性と営利性という二律背反的関係を超えた文化・芸術活動とマーケティングの融合について検討を加えるものである。
著者
徳永 高志
出版者
Japan Association for Cultural Economics
雑誌
文化経済学 (ISSN:13441442)
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.39-46, 1998

戦前日本の私設劇場の経営形態は次の4つに分類できる。第一は、松竹に代表される興行会社による興行の器としての劇場経営である。第二は、帝国劇場に代表される演劇改良運動を背景とし国立劇場構想を視野に入れた劇場経営である。第三は、阪急による宝塚大劇場建設に代表される異業種企業による劇場経営である。第四が、地域の有力者たちによって自ら楽しみ興行する場所として建設された芝居小屋に代表される劇場経営である。
著者
玉利 智子
出版者
Japan Association for Cultural Economics
雑誌
文化経済学 (ISSN:13441442)
巻号頁・発行日
vol.2, no.2, pp.71-84, 2000

この論文は, 1900年代初期に成立した消費社会に誕生する百貨店と「職業婦人」の社会的関係を政治的, 経済的かつまた都市文化論的視点から考察する。「職業婦人」のなかでも, 百貨店につとめる「女性店員」に焦点を当て, 彼女たちが何を目的にどのように教育されてきたか, また, その結果どのようなジェンダー・イデオロギーが形成されてきたかについて論じ, また近代化の進行する中, 百貨店がいかに都市空間を変容させ, 新しい都市的文化を形成していったかを「ショップ・ガール」(北澤秀一, 1925) の出現を通して考察し, そこにみられる百貨店の社会文化的機能について論じる。
著者
出口 正之
出版者
Japan Association for Cultural Economics
雑誌
文化経済学 (ISSN:13441442)
巻号頁・発行日
vol.3, no.4, pp.19-25, 2003

大恐慌時に大統領に就任したフランクリン・ローズベルトはいわゆるニューディール政策を展開した。日本では1933年からの第一期ニューディール政策はよく紹介されている。1935年に始まる第二期ニューディール政策では、雇用促進局 (WPA) を中心に連邦美術プロジェクト、連邦演劇プロジェクト、連邦音楽プロジェクト、連邦作家プロジェクトなどの芸術・文化政策が展開された。これらの政策は日本ではほとんど紹介されたことはない。本論文では、不況期の財政政策として社会資本整備の公共投資だけではなく、文化資本整備とも言うべき芸術・文化政策が存在していたことを紹介し、現在の日本の芸術・文化政策、景気対策へのヒントとしたい。
著者
伊藤 大介
出版者
Japan Association for Cultural Economics
雑誌
文化経済学 (ISSN:13441442)
巻号頁・発行日
vol.5, no.3, pp.101-110, 2007

最近、大量の自然言語データを迅速に処理できる手法として、テキストマイニングが注目されている。本稿では、美術館来館者の生活における美術館の存在意義を明らかにするとともに、大量の自然言語データの迅速な処理が可能であるテキストマイニング手法のアンケート調査データ処理への応用可能性も同時に検討する。本稿で用いたデータは、静岡県立美術館において開催された企画展観覧者を対象としたアンケート調査データのうち、自由回答設問への回答を使用する。
著者
徳永 高志
出版者
Japan Association for Cultural Economics
雑誌
文化経済学 (ISSN:13441442)
巻号頁・発行日
vol.1, no.4, pp.65-81, 1999-09-30 (Released:2009-12-08)
参考文献数
29

宝塚少女歌劇の伴奏オーケストラから発展し、1926年に設立された宝塚交響楽団は、戦前の関西地方における唯一のプロオーケストラであった。このオーケストラは、大資本阪急の後ろ盾を得たことにより、急速な発展を遂げたものの、それゆえに、1930年代半ばになると、阪急と少女歌劇の動向によって活動の停滞をも余儀なくされた。本稿では、今まで、ほとんど知られていなかった宝塚交響楽団の運営の実態を、未刊行史料を用いて明らかにする。
著者
瞿 芳馨 池田 真利子
出版者
文化経済学会〈日本〉
雑誌
文化経済学 (ISSN:13441442)
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, pp.10-22, 2023-03-31 (Released:2023-03-31)
参考文献数
27

本稿の目的は、金沢市民芸術村を対象に施設での活動および市民ディレクターの実態を分析することにより、その現状および課題を解明する。金沢市民芸術村は地域内部での文化交流のための創造の場として形成され、市民ディレクターは工房の活性化に重要な役割を果たす存在である。しかし,創造の場の持続にあたり、管理者側の役割不足、ディレクターの力の限界と、内部空間の分断、外部ネットワークの欠如など問題が明らかになった。
著者
江上 美幸
出版者
文化経済学会〈日本〉
雑誌
文化経済学 (ISSN:13441442)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.20-33, 2022-03-31 (Released:2022-04-19)
参考文献数
35

日本のファッション市場が縮小する中、日本政府がファッションを含んだクリエイティブ産業推進のためにクールジャパン機構を設立してから10余年が経過した。これらを考慮し、グローバルな視座でファッションビジネスを捉える上で、最大の海外販売対象である中国市場において、いかに日本のファッションが受容されているのか、日本のファッションのイメージとブランド認知の特徴を、競合する韓国と比較しながら明らかにした。