著者
福井 健策 唐津 真美
出版者
文化経済学会〈日本〉
雑誌
文化経済学 (ISSN:13441442)
巻号頁・発行日
vol.1, no.3, pp.39-48, 1999

筆者らは、97年、芸術団体98団体を対象に、各団体の会員に対するリーガルエイド (法律扶助) の実態調査を実施した。本稿の前半では、上記実態調査の結果を題材に、果たして日本において芸術家の法的ニーズは充分に充たされているか, 芸団協による最近の調査結果や法社会学分野における議論の状況を参考に検討を加える。本稿の後半では、仮に日本において芸術家の法的ニーズが充足されていないとした場合、芸術家に対するリーガルエイドの充実に向けて具体的な改善案を提示することを試みる。
著者
阪本 崇
出版者
Japan Association for Cultural Economics
雑誌
文化経済学 (ISSN:13441442)
巻号頁・発行日
vol.1, no.4, pp.35-45, 1999-09-30 (Released:2009-12-08)
参考文献数
25

消費者の選好を変化させる要因の一つとして消費の持つ学習効果が挙げられる。本稿では、短期的効用最大化、確率論的学習という2つの仮定の下に、マルコフ連鎖を利用してこの現象をモデル化する。その上で、市場には人的資本レベルの異なる複数タイプの個人が存在することを前提に市場における人口分布と需要量に関するシミュレーション分析を行い、その分析結果を踏まえ、文化的財の需要に対する価格政策と教育政策との効果を比較する。
著者
大橋 敏博
出版者
Japan Association for Cultural Economics
雑誌
文化経済学 (ISSN:13441442)
巻号頁・発行日
vol.1, no.2, pp.25-29, 1998-10-31 (Released:2009-12-08)
参考文献数
19

書籍、新聞等の出版物 (著作物) の再販制度の存続の是非については、その文化的な意義と経済的な競争政策の両面から様々な議論が見られるところである。本稿では、我が国で出版物 (著作物) 再販制度が設けられた歴史とその背景となった海外の状況や現状等を中心に再販制度の文化的意義を考察するものである。
著者
端 信行
出版者
Japan Association for Cultural Economics
雑誌
文化経済学 (ISSN:13441442)
巻号頁・発行日
vol.1, no.4, pp.11-17, 1999-09-30 (Released:2009-12-08)
参考文献数
10

本稿は、中央省庁再編関連法の成立にともなって、文化庁の下部組織である国立美術館・博物館が2001年より独立行政法人への移行が決まったことを受けて、あらためて美術館・博物館の抱える今日的課題を明らかにしておこうとするものである。とりわけ今日の美術館・博物館における運営上の〈独立性〉の欠如がすべての今日的課題の根元にあるとの認識に立って、〈独立性〉をいかに実現するかをめぐって議論を展開した。
著者
塩田 眞典
出版者
Japan Association for Cultural Economics
雑誌
文化経済学 (ISSN:13441442)
巻号頁・発行日
vol.3, no.3, pp.107-120, 2003-03-31 (Released:2009-12-08)
参考文献数
56

セルゲイ・ディアギレフ率いるバレエ・リュスの活動は20世紀前半の文化状況に大きな足跡を残した。本稿では、興行師としてのディアギレフの活動を文化史的視点と経済学的視点とを交えて考察する。この作業を通して、特定の文化ビジネスに企業者の果たす役割を分析する。また、文化企業者ディアギレフを異分野仲介者 (境界人) として把握することにより、文化・芸術を享受する人々の眼には視えにくい彼の仕事の意味を明らかにする。
著者
青野 智子
出版者
文化経済学会〈日本〉
雑誌
文化経済学 (ISSN:13441442)
巻号頁・発行日
vol.3, no.3, pp.51-64, 2003

アメリカ演劇と言えば従来、ブロードウエイのミユージカルやオフ・オフ・ブロードウエイの実験演劇等が関心を持たれてきたが、今日のアメリカ演劇文化の一翼を担うもう一つの主要な演劇カテゴリーとして、リージョナルシアターが存在している。本稿においては、1960年代後半から1980年代までの、リージョナルシアターにおける上演作品の変化を分析することで、当初ブロードウエイから独立した演劇活動を目指したリージョナルシアターが、ブロードウエイを中心とした、演劇作品の全国的な生産・流通構造の中に組み込まれてゆく過程を検証する。
著者
山田 浩之 新井 益洋 安田 秀穂
出版者
Japan Association for Cultural Economics
雑誌
文化経済学 (ISSN:13441442)
巻号頁・発行日
vol.1, no.2, pp.49-55, 1998-10-31 (Released:2009-12-08)
参考文献数
29

東京都内の芸術文化活動による経済波及効果を産業連関表を用いて分析したところ、東京都地域内では、建設工事や土木工事に投資するよりも芸術文化に投資した方が大きな効果をもつことが判明した。また、芸術文化活動による経済波及効果を東京都地域とニューヨーク・ニュージャージ大都市圏とで比較すると、東京都地域の方が経済波及効果が低くなっており、東京都地域において芸術文化が経済を活性化する力は今後一層、強まる可能性がある。
著者
増淵 敏之
出版者
Japan Association for Cultural Economics
雑誌
文化経済学 (ISSN:13441442)
巻号頁・発行日
vol.4, no.3, pp.19-29, 2005-03-31 (Released:2009-12-08)
参考文献数
38
被引用文献数
1

国内の音楽ソフト産業は転換期を迎えている。市場規模の縮小傾向の中で、消費者の多様化、配信のビジネス化などの問題に直面し、メジャー各社は試行錯誤を繰り返しているように見える。しかしその傍でメジャーとは一線を画したインディーズ (独立系音楽ソフト会社) が活発化し始めていて、特に地域に依拠する企業の成功事例も出てきている。本稿ではそういった音楽産業の国内地域での産業化の可能性を、事例を挙げて考察する。
著者
加藤 康子
出版者
文化経済学会<日本>
巻号頁・発行日
vol.14, no.2, pp.46-54, 2017-09

本研究が対象事例として注目する群馬県前橋市の中心市街地では、商店街の遊休不動産を利用して、民間非営利の市民集団やアーティストが、趣味縁やアートの拠点を構える動きが見られるようになった。本稿は、従来は社会学の領域で扱われてきた趣味縁を、概念の系譜を再確認し、そのうえでまちづくりの文脈において捉え直し、新たな理論的視座を提供することを目的とする経験的研究である。
著者
河口 淑子 多治見 左近
出版者
Japan Association for Cultural Economics
雑誌
文化経済学 (ISSN:13441442)
巻号頁・発行日
vol.2, no.1, pp.63-77, 2000

本研究では、地域の文化活動の実態をとらえることを目的とし、奈良市内の公民館における自主グループ活動に注目した。グループ活動の目的は大別すると3つに分類され、これらの目的はグループが結成される段階で大方決まっていた。目的別に活動の形態、頻度などに特徴があり、また、問題点はそれらの間で異なっていた。公民館を使用する最大の理由として、無料で使用できること、立地条件のよさなどがあげられた。しかし、場所取りや駐車場に関する不満が多く、自由に使用できる空間の整備が必要である様子がうかがえた。
著者
大木 裕子
出版者
文化経済学会〈日本〉
雑誌
文化経済学 (ISSN:13441442)
巻号頁・発行日
vol.3, no.2, pp.87-96, 2002

日本の文化交流は、芸術家・文化人の派遣、招聘など人的交流を中心に始められ、その後オーケストラや歌舞伎の公演、日本古美術展など単発の催し物事業、近年では次第に大規模な文化事業として展開されるようになった。「フジヤマ・ゲイシャ」に代表された日本の姿から、現在の世界に認められる日本文化は、歌舞伎をはじめとした日本伝統文化に留まらず、文学からマンガ・アニメといつた大衆文化にまで拡大の一途をたどっている。
著者
池上 惇
出版者
Japan Association for Cultural Economics
雑誌
文化経済学 (ISSN:13441442)
巻号頁・発行日
vol.2, no.4, pp.1-14, 2001-09-30 (Released:2009-12-08)
参考文献数
125
著者
佐々木 亨
出版者
Japan Association for Cultural Economics
雑誌
文化経済学 (ISSN:13441442)
巻号頁・発行日
vol.1, no.2, pp.81-86, 1998-10-31 (Released:2009-12-08)
参考文献数
13

国の行財政改革の動きに伴って、1980年代後半から「公設民営博物館」(自治体が博物館を建設し、その管理運営を自治体が設立した財団法人に委託されている博物館) が増加している。本稿では公設民営博物館の増加の実態、その管理運営モデル、公設民営が導入された背景と当初考えられていたメリット、さらに現状への批判を整理する。最後に具体的な運営事例を紹介し、今後の公設民営博物館運営に向けての提言を行う。
著者
角山 紘一
出版者
Japan Association for Cultural Economics
雑誌
文化経済学 (ISSN:13441442)
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.71-73, 2004-03-31 (Released:2009-12-08)
参考文献数
3
著者
河島 伸子
出版者
文化経済学会 (日本)
雑誌
文化経済学 (ISSN:13441442)
巻号頁・発行日
vol.14, no.2, pp.1-19, 2017-09
著者
渡部 薫
出版者
文化経済学会〈日本〉
雑誌
文化経済学 (ISSN:13441442)
巻号頁・発行日
vol.4, no.4, pp.31-41, 2005

本稿は、都市の創造性の議論に対して、消費的視点の重要性を主張し、消費者の文化創造能力を切り口に文化消費と創造的環境の関係について考察を行った。消費者の文化創造能力は都市の文化空間において表現活動を中心にして発揮されるが、この能力が都市の創造的環境の形成に貢献するためには、文化空間において消費者の活動を創造的なものに方向付ける創造的な文化資本が備わっていることが一つの条件になる一方で、消費者の文化創造能力が生産する意味はこのような創造的な文化資本の維持・更新に寄与していることが示された。
著者
玉利 智子
出版者
Japan Association for Cultural Economics
雑誌
文化経済学 (ISSN:13441442)
巻号頁・発行日
vol.2, no.2, pp.71-84, 2000-09-30 (Released:2009-12-08)
参考文献数
51

この論文は, 1900年代初期に成立した消費社会に誕生する百貨店と「職業婦人」の社会的関係を政治的, 経済的かつまた都市文化論的視点から考察する。「職業婦人」のなかでも, 百貨店につとめる「女性店員」に焦点を当て, 彼女たちが何を目的にどのように教育されてきたか, また, その結果どのようなジェンダー・イデオロギーが形成されてきたかについて論じ, また近代化の進行する中, 百貨店がいかに都市空間を変容させ, 新しい都市的文化を形成していったかを「ショップ・ガール」(北澤秀一, 1925) の出現を通して考察し, そこにみられる百貨店の社会文化的機能について論じる。