著者
和栗 隆史
出版者
文化経済学会〈日本〉
雑誌
文化経済学 (ISSN:13441442)
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, pp.33-41, 2023-03-31 (Released:2023-03-31)
参考文献数
15

歴史的に寺院は、建築・美術・工芸ほか幅広いジャンルにおいて文化創造の場として、また地域社会のハブとして機能してきた。本稿は、そうした寺院の宿坊をレジデンスとするアーティスト・イン・レジデンス(Artist-in-Residence、以下AIR)の先駆的な事例について調査分析する。レジデンスの“場”のダイナミクスや地域社会で果たす役割と影響の解明など、AIRに関する学術的・実践的発展に寄与すべく速報するものである。
著者
後藤 和子
出版者
文化経済学会〈日本〉
雑誌
文化経済学 (ISSN:13441442)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.84-93, 2022-03-31 (Released:2022-04-19)
参考文献数
24

伝統工芸は、有形無形の文化遺産でありクリエイティブ産業でもある。日本では、伝統工芸の振興は、文化庁の無形文化遺産の保護と経済産業省の伝統的工芸品の振興の両面で行われてきた。本稿では、伝統工芸が内包する技や文化的コンテンツに着目し、その振興策の1つである知的財産権の適用について検討する。 文化経済学では、著作権の経済分析は行われてきたが、著作権以外の知的財産権やその適用に関する研究はほとんど行われてこなかった。そのため、本稿では、まず、知的財産権の経済学的根拠を、「法と経済学」の先行研究から明らかにする。そして、知的財産権がどのように伝統的工芸品に適用されているのか確認するために、実際の裁判事例を検討する。更に、知的財産権の中でも伝統工芸に適用される頻度の高い商標や地域団体商標に的を絞り、工芸産業への知的財産権の適用が工芸産業の振興にとって有効かどうか検討する。
著者
秋葉 美知子
出版者
Japan Association for Cultural Economics
雑誌
文化経済学 (ISSN:13441442)
巻号頁・発行日
vol.3, no.2, pp.49-61, 2002-09-30 (Released:2009-12-08)
参考文献数
46

今日的意味でのパブリック・アート概念の成立は、1967年にNEA (全米芸術基金) が「アート・イン・パブリック・プレイス」プログラムを創設したことに起源をもつ。本稿は、このプログラムによる第一号作品として1969年にグランドラピッズ市に設置されたアレクサンダー・カルダーの彫刻「ラ・グランド・ヴィテス」をパブリック・アートの嚆矢と位置づけ、その設置に至る経緯を考察することにより、米国におけるパブリック・アートのオリジナル概念を論じる。
著者
作間 逸雄
出版者
文化経済学会〈日本〉
雑誌
文化経済学 (ISSN:13441442)
巻号頁・発行日
vol.19, no.2, pp.8-10, 2022-09-30 (Released:2022-09-30)
参考文献数
18
著者
砂田 和道
出版者
Japan Association for Cultural Economics
雑誌
文化経済学 (ISSN:13441442)
巻号頁・発行日
vol.5, no.3, pp.87-99, 2007-03-31 (Released:2009-12-08)
参考文献数
55

音楽アウトリーチ活動の有効性は実施する音楽家の手法、資質に依存される。クラシック音楽家の養成過程を検証することで、社会情勢の変化に即した音楽家養成と、地域文化振興に有意義な音楽家の必要性が明らかになる。またアウトリーチ活動を媒体とし大学と地域の連携は音楽家、大学、地域の再生に繋がり、地域文化振興に有益である。
著者
伊藤 裕夫
出版者
Japan Association for Cultural Economics
雑誌
文化経済学 (ISSN:13441442)
巻号頁・発行日
vol.1, no.4, pp.19-26, 1999-09-30 (Released:2009-12-08)
参考文献数
12
被引用文献数
1
著者
高木 俊行 守屋 秀夫 清水 裕之 小野田 泰明
出版者
Japan Association for Cultural Economics
雑誌
文化経済学 (ISSN:13441442)
巻号頁・発行日
vol.2, no.1, pp.37-45, 2000

本研究は、有価証券報告書を活用して民間の劇場の経営実態を明らかにすることを主な目的とする。損益計算書の営業損益の部に着目し、歌舞伎座、コマ・スタジアム、松竹、新橋演舞場、東宝、御園座、明治座の7社に関する売上高と経費の内訳を分析した。新橋演舞場と明治座を除く5社については、開銀企業財務データバンクを使用して売上高と経費の時系列変化を検証した。分析の結果、わが国の商業劇場の経営実態を大まかに把握することができた。
著者
古賀 弥生
出版者
Japan Association for Cultural Economics
雑誌
文化経済学 (ISSN:13441442)
巻号頁・発行日
vol.4, no.3, pp.57-64, 2005-03-31 (Released:2009-12-08)
参考文献数
21

公立文化施設については、近年その運営を民間セクターに委ねる事例が各地で見られるようになりつつある。公立文化施設の運営には地域との関係性の視点が不可欠であるが、実際には地域との関わりが薄いことが九州地区での調査から明らかになった。公立文化施設の運営主体の選択にあたっては、地域に関わる人材・機関のネットワークで市民、NPO、企業、自治体等が持ちうるメリットを出し合える関係づくりが急務である。
著者
渡部 薫
出版者
Japan Association for Cultural Economics
雑誌
文化経済学 (ISSN:13441442)
巻号頁・発行日
vol.4, no.2, pp.49-59, 2004-09-30 (Released:2009-12-08)
参考文献数
47

本稿は、経済の文化化の意味するところを経済活動における手段的価値と内在的価値の対立関係の中に見出し、経済活動における創造性の価値が増大している一方で管理化が進行しているという現在の状況を2つの価値の関係においてどう解釈するかという問題を設定し、その解釈を試みた。その結果、創造的活動は管理的要請に従属させられるのではなく、基本的に内在的価値に基づいていること、他方で、手段的合理性の追求はもっぱら手段的活動において強く作用しており、創造的活動による価値の創造は手段的活動によって支えられている、すなわち、手段的価値が内在的価値を支えているという関係に基づいていることが示された。
著者
溝上 智恵子
出版者
Japan Association for Cultural Economics
雑誌
文化経済学 (ISSN:13441442)
巻号頁・発行日
vol.1, no.2, pp.75-79, 1998-10-31 (Released:2009-12-08)
参考文献数
20

東西冷戦終結後、民族紛争が多発した。こうした現状を踏まえ、近年、アイデンティティや民族意識、エスニシティに関する議論が盛んである。本稿では、自己や他者のイメージ形成という視点から文化ナショナリズムを考え、それと文化施設との関連性について問題提起を行ったものである。ナショナリズムの形成に文化施設、なかでも博物館・美術館の果たしてきた役割を中心に検討し、最後にナショナリズムそのものの変容が指摘される現在、これからの博物館・美術館が果たす役割にも考察した。
著者
青野 智子
出版者
文化経済学会〈日本〉
雑誌
文化経済学 (ISSN:13441442)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, pp.17-35, 2021-03-31 (Released:2021-03-31)
参考文献数
92

本稿ではアメリカ連邦政府の文化振興機関である全米芸術基金(NEA)の助成プログラムの歴史的変遷を分析し、特に、新しい文化の創造の奨励・促進が公的助成によって実現するという展望が1990年代前半に断たれていった過程を明らかにする。NEAの挫折は、芸術の権威の衰退現象と関連しており、新しい創造を奨励・促進する文化政策を公共政策として今後拡充してゆくためには、芸術的権威に依存しない形で達成する途を模索する必要がある。
著者
後藤 和子
出版者
Japan Association for Cultural Economics
雑誌
文化経済学 (ISSN:13441442)
巻号頁・発行日
vol.3, no.4, pp.1-17, 2003-09-30 (Released:2009-12-08)
参考文献数
42

The purpose of this paper is to make the theoretical framework of Creative City, from the point of view of cultural policy, cultural economics and economic geography, looking at the concepts of ‘creative milieu’ and ‘social interaction’ and solidarity. At first, I analyze when and how cultural policy made their connection to creative city idea and what was the main issue in these process. Secondly, circulation of cultural activities (production-consumption-evaluation-stock-learning-production) in cultural economics will be examined and the concept of ‘creative milieu’ and ‘social interaction’ in economic geography theory are looking into. Thirdly, I am suggesting the theoretical framework by situating the circulation of cultural activities in the context of place. Several cultural clusters will be provided as a sample of these framework.
著者
宮崎 刀史紀
出版者
Japan Association for Cultural Economics
雑誌
文化経済学 (ISSN:13441442)
巻号頁・発行日
vol.3, no.3, pp.89-97, 2003-03-31 (Released:2009-12-08)
参考文献数
46
被引用文献数
1

文化政策への人々の関心は様々である。また、その関わり方も多様である。本稿では、入場税撤廃運動をとりあげ、どのような主体が何故いかに入場税という「文化政策」に関心をもち行動したかについて考察する。この運動では、価値論的問題へ主たる運動原理が変化したことで、運動への支持が拡大し、運動の関心も文化政策一般へと広がった。要求や提言を政策化し実現しようとする市民の運動として、この運動は重要な意義をもつ。