著者
真口 宏介 小山内 学 潟沼 朗生 高橋 邦幸
出版者
公益社団法人 日本超音波医学会
雑誌
超音波医学 (ISSN:13461176)
巻号頁・発行日
vol.37, no.4, pp.425-433, 2010 (Released:2010-08-03)
参考文献数
30
被引用文献数
2 1

臨床の場で遭遇する膵腫瘍の診断名の数は限られ,各腫瘍の病理と画像所見の特徴を把握しておくことで鑑別診断の多くが可能となる.膵腫瘍は大きく充実性と嚢胞性に分けられる.充実性には,通常型膵癌,内分泌腫瘍,Solid-pseudopapillary neoplasm(SPN),特殊型膵癌(腺扁平上皮癌,退形成性癌など),腺房細胞癌があり,嚢胞性では,漿液性嚢胞腫瘍(serous cystic neoplasm: SCN),粘液性嚢胞腫瘍(mucinous cystic neoplasm: MCN),膵管内乳頭粘液性腫瘍(intraductal papillary mucinous neoplasm: IPMN)の鑑別を行うことになる.但し,充実性腫瘍の嚢胞化あるいは充実性腫瘍の周囲に貯留嚢胞や仮性嚢胞を形成する場合には充実と嚢胞の混在する病態を呈するため鑑別診断に際し注意する必要がある.充実性腫瘍の鑑別診断で問題となるのは,特殊型膵癌(腺扁平上皮癌,退形成性癌など)と腺房細胞癌,非典型的所見を呈する内分泌腫瘍である.特に,内分泌腫瘍は内部の嚢胞化や主膵管内腫瘍栓など,種々の所見を呈するため注意を要する.嚢胞性腫瘍では,SCNにおいてmicro cystとmacro cystの混在,あるいはmacro cyst主体の例が少なくないことを認識しておく必要がある.MCNとIPMNでは,共通の被膜の有無,嚢胞の構造が内に向かうか外に向かうかが鑑別ポイントとなる.膵腫瘍の鑑別診断において体外式US,EUS,IDUSなど超音波診断の果す役割は大きい.
著者
小川 恭子 竹内 和男 奥田 近夫 田村 哲男 小泉 優子 小山 里香子 今村 綱男 井上 淑子 桑山 美知子 荒瀬 康司
出版者
公益社団法人 日本超音波医学会
雑誌
超音波医学 (ISSN:13461176)
巻号頁・発行日
vol.41, no.5, pp.749-756, 2014 (Released:2014-09-19)
参考文献数
17
被引用文献数
2

目的:肝血管腫は腹部超音波検査で発見される比較的頻度の高い病変である.大部分は無症状で大きさは変化しないと報告されているが,時として増大例や縮小例,巨大例,まれには破裂例を経験する.これまでの肝血管腫の腫瘍径の変化についての報告には,多数例での長期経過観察による検討は少ない.そこで,長期に経過観察されている肝血管腫について,その腫瘍径の変化を検討した.対象と方法:2011年に虎の門病院付属健康管理センターの人間ドックにおいて腹部超音波検査を行った16,244例のうち,肝血管腫またはその疑いと診断された1,600例(9.8%)を後ろ向きに調査し,10年以上の経過観察がある76例,80病変を対象とした.観察期間は120ヵ月から303ヵ月,平均197ヵ月であった.腫瘍径の変化率を(1)著明増大(変化率が≥+50%),(2)軽度増大(変化率が≥+25%より<+50%),(3)不変(変化率が<+25%より≥-25%),(4)縮小(変化率が<-25%),の4群に分類した.結果と考察:全経過での平均変化率は+39.8%(95%CI:+28.5%から+51.1%)で,著明増大は29病変(36.3%),軽度増大が16病変(20.0%),不変が32病変(40.0%),縮小が3病変(3.8%)であった.10年間の変化率に換算すると平均+24.9%(95%CI:+18.1%から+31.7%)で,著明増大は13病変(16.3%),軽度増大は22病変(27.5%),不変は45病変(56.3%),縮小例はなしであった.結論:肝血管腫の10年以上の経過観察で約半数に腫瘍径の増大を認めた.
著者
谷垣 伸治 片山 素子 松島 実穂 橋本 玲子 岩下 光利
出版者
The Japan Society of Ultrasonics in Medicine
雑誌
超音波医学 (ISSN:13461176)
巻号頁・発行日
vol.38, no.4, pp.413-420, 2011

救急外来では,全ての疾患を確定診断する必要はない.緊急を要する患者のみを抽出し,時期を逸せず専門医に委ねればよい.産婦人科救急外来に来院する患者の主訴の3分の2は,下腹部痛と性器出血であり,この二つへの対応をおさえておくことが肝要である.産婦人科領域において緊急を要する疾患は限定されている.当院において,救急外来での診察直後に緊急手術を要した疾患は,異所性(子宮外)妊娠,卵巣出血,卵巣腫瘍破裂・茎捻転,PID(pelvic inflammatory disease)のみであった.診断の第一歩は,妊娠反応である.妊娠の有無により,疾患を患者数から見て約半数否定することが出来る.ついで超音波断層法を行う.緊急を要する疾患の鑑別の為には,子宮内に妊娠しているか否か,卵巣腫瘍の有無,腹腔内出血の有無の確認のみで十分である.心配な症例は,時間をおいて繰返し検査する.超音波断層法は,他の検査に比し簡便かつ非侵襲であり,産婦人科救急において最も有用かつ必須な検査である.
著者
小野田 教高
出版者
公益社団法人 日本超音波医学会
雑誌
超音波医学 (ISSN:13461176)
巻号頁・発行日
vol.36, no.4, pp.469-476, 2009 (Released:2009-07-28)
参考文献数
22

数多くある甲状腺,副甲状腺の画像診断の中で,超音波検査は最も感度がよく侵襲も無いことから,ファーストチョイスの検査と位置付けられている.甲状腺の場合,Bモードによる質的な診断のみならず,カラードプラ法による血流情報を加味することで,機能的な評価も可能となっている.現時点で,超音波検査を駆使しても鑑別に苦慮する疾患として,濾胞癌と濾胞腺腫,軽症のバセドウ病と無痛性甲状腺炎がある.一方,副甲状腺は,超音波検査で観察された場合は,病的な腫大と判断出来るが,発生学的に位置異常が多く,広範囲の観察が必要である.各種疾患に対して,PEIT(経皮的エタノール注入療法)が適応されており,侵襲の少ないことから注目されている.甲状腺,副甲状腺超音波検査は,今後多くの臨床家によって普及されることが望まれる.
著者
古川 政樹 古川 まどか
出版者
The Japan Society of Ultrasonics in Medicine
雑誌
Japanese journal of medical ultrasonics = 超音波医学 (ISSN:13461176)
巻号頁・発行日
vol.33, no.3, pp.315-322, 2006-05-15
参考文献数
6
被引用文献数
1 1

頭頸部領域超音波検査の基本について述べる. 甲状腺や耳下腺など限定された一部の臓器だけでなく, 頸部全体が検査の対象範囲で, さらにこれら領域の疾病は密接に関連していることが少なからずあるため, 頭頸部の検査を行う時は, 解剖ならびに病態に関する十分な理解が求められると同時に, 疾患の全体像を見落としなく把握するよう努める姿勢が要求される. 以下, 検査時の基本, 解剖学的特徴, 正常所見, 対象疾患と検査・診断の具体的な進め方などについて概説し, 頭頸部領域において超音波検査の果たす役割の重要性について述べる.
著者
川田 慎一 米満 幸一郎 盛本 真司 小村 寛 白石 真紀 立山 由香理 上國料 章展 有村 麻衣子 内園 均
出版者
公益社団法人 日本超音波医学会
雑誌
超音波医学 (ISSN:13461176)
巻号頁・発行日
vol.33, no.3, pp.351-358, 2006 (Released:2007-07-27)
参考文献数
15

目的 : 我々は, 当院の1994年4月から2004年3月まで10年間の人間ドック腹部超音波検査 (US) において腎精密検査統計をもとに, 超音波検診の現状と有効性について検討を行った. 対象と方法 : 腎のUS有所見実人数4,339人の中で, 当院CTでの精密検査を施行した129人を対象とし, US所見とCT診断結果について比較検討した. 結果と考察 : 対象の129人中, USで腎腫瘍を疑った73人のCT診断結果は, 正常45人 (61.6%), 単純性腎嚢胞13人 (17.8%), 複雑性腎嚢胞5人 (6.8%), 悪性腫瘍疑い5人 (6.8%), 腎血管筋脂肪腫2人 (2.7%), 腎盂拡張1人 (1.4%), 肉芽腫1人 (1.4%), 奇形腫1人 (1.4%) であった. 悪性腫瘍疑いのうち4例はMRIを施行し, 腎癌が疑われ手術を施行した. その結果, 病理組織学的に腎癌と確定診断のついた症例は2例で, 当院人間ドックUSにおける腎癌検出率は0.046%であった. 腎癌2例のうち, 1例はUSで腎嚢胞と嚢胞性腎癌の鑑別ができず手術に至るまで3年間精査されなかった. 結論 : 単純性腎嚢胞と確定できない場合は, US再検や精密検査を積極的に施行することが必要と考えられた. またUS施行技師の技術と判読医のレベルの向上を図るために, 精密検査の情報を関係者にフィードバックするシステム構築の必要性があると思われた.