著者
杉本 海晴 監物 万里香 金子 佳世 塚本 康子
出版者
新潟医療福祉学会
雑誌
新潟医療福祉学会誌 (ISSN:13468774)
巻号頁・発行日
vol.17, no.2, pp.56-59, 2018-03

本研究は、看護女子大学生4 年生に焦点を当て、1)「子宮頸がん予防ワクチン(HPVワクチン)接種」「子宮頸がん検診受診」の状況を明らかにし、2)「HPVワクチン接種決定者(自分/母親)」「HPVワクチン接種の有無」「子宮頸がん検診受診の有無」で、子宮頸がんに関する基礎知識の平均得点を比較し、検討することを目的とした。71名に質問紙を配布し69名から回答を得た。結果、HPVワクチンの接種率は73.9%、子宮頸がん検診受診率は17.4%であった。HPVワクチン接種年齢は15歳1名(2.0%)、16歳11名(21.6%)、17歳15名(29.4%)、18歳12名(23.5%)、19歳2名(3.9%)、20歳7名(13.7%)、不明3名(5.9%)であり、公的助成の対象でない年齢時や大学に入学してから接種をした学生もいることが明らかとなった。HPVワクチン接種済みの学生51名のうち、ワクチン接種を「母親」が決定した者は27名(52.9%)、「自分」で決定した者は23名(45.1%)、「不明」1名(2.0%)であった。ワクチン接種決定者が「自分」である場合、関連基礎知識の平均得点は3.39点と、「母親」がワクチン接種を決めた場合の平均得点2.48点に比べ、有意に高かった(p<0.05)。「自分」でワクチン接種を決定した場合は、「母親」による決定に比べ、基礎知識の保持状況が良好であったことは、本研究により得られた新たな知見である。子宮頸がんを自らの問題として捉え、必要な知識を所持し、自ら正しい予防行動を取れるよう、青年期からの啓発教育の必要性が確認された。
著者
田中 秀和
出版者
新潟医療福祉学会
雑誌
新潟医療福祉学会誌 (ISSN:13468774)
巻号頁・発行日
vol.17, no.2, pp.13-20, 2018-03

浅賀ふさは、日本における医療ソーシャルワーカーの先駆けとして、今日に至るまで広くその業績が認められ、日本社会福祉史に残る人物のひとりである。本稿では、社会福祉学における人物研究として、浅賀ふさの生涯を紐解くことを第一の目的とした。併せて、浅賀の生き方を研究することにより、それを将来の福祉人材確保の一助とすることを目指した。研究のなかでは、ひとつの材料として、彼女を取り上げたDVD作品である「Women Pioneers-女性先駆者たち7 浅賀ふさと医療社会事業」を用いた。そこでは、これまでの浅賀ふさに関する研究では明らかにされることのなかった、彼女が渡米中に現地の婦人参政権獲得運動とその成果を目の当たりにしたというエピソードや、国際婦人年を受けてわが国の家庭内の子育てにおける男女同権(同位)意識の弱さを問題視する発言等があり、新たな史実が発見された。また、浅賀ふさの生き方は、社会福祉に関心をもつきっかけは一様ではないことを示しており、このような生き方を明らかにすることは、将来の福祉人材確保にも活かせるものであるといえる。
著者
梶原 洋生
出版者
新潟医療福祉学会
雑誌
新潟医療福祉学会誌 (ISSN:13468774)
巻号頁・発行日
vol.18, no.2, pp.44-50, 2019-03

日本では、1946年1月21日に総司令部覚書「日本に於ける公娼制度廃止に関する件」が発せられ、1946年11月26日には、厚生省社会局長通知の「婦人保護要綱」が発出された。しかし、のちに「売春防止法」が成立したのは1956年5 月21日のことだったので、この立法過程は概ね11年間にも及んだことになる。そこで、国政の難航を横目に各自治体は国とは別に対処を講じたものと考え、「売いん」等に係る条例の制定はどのような動向であったかを明らかにする。とりわけ、1946年から1957年までの期間に着目し整理を図ることとした。「売いん」等に係る条例は一定の時期に集中しており、戦後の悲哀を背負った条例制定論争が各地で広がった。女性の救済は社会的課題とされ、国法による生活保障が不可欠となり、その法整備の一環として各地的な条例の制定という議論の機運も全国に生まれた。これらの側面が合わさって、日本の一つの時代が形作られた。
著者
佐藤 博幸
出版者
新潟医療福祉学会
雑誌
新潟医療福祉学会誌 (ISSN:13468774)
巻号頁・発行日
vol.18, no.2, pp.23-35, 2019-03

障害者差別解消法施行下における障害者福祉に関する市民意識調査を実施し、障害当事者71人を含む180人から回答を得た(回収率70.59%)。この結果、市民の間で法律や制度に関する理解は一定の理解が進んでいるものの、近所づきあい等地域生活の場面や社会参加の機会に障害に根差した差別を体験したことのある障害当事者が60.56%に及び、障害の種別により被差別体験に差があることが明らかになった。障害当事者の地位向上を図るために、厳しい雇用環境の改善と併せ日常生活における合理的配慮の提供の理念が広がっていくことが望まれた。合理的配慮の提供を感じる人の割合は、直接的なコミュニケーション場面で高く、文書による連絡など間接的なコミュニケーション手段では低い傾向がみられた。一方、ノーマライゼーションが進展していると考える者は全回答者の36.67%にとどまり、法律や制度に対する認知度と障害者福祉の充実度に対するとらえ方に開差がみられた。今、障害者福祉は、障害者差別解消に向けノーマライゼーション理念の浸透を実感できる共生社会の実現に向けた取り組が求められている。障害当事者の活動を制限し、社会への参加を阻んでいる社会的障壁を取り除くことは、障害者福祉の直面してきた大きな課題である。障害の社会モデルを土台にした合理的配慮の提供の広がりは、この課題解決に向けこれからの障害者福祉を進展させていく大きな力になるものと考えられる。
著者
佐藤 博幸
出版者
新潟医療福祉学会
雑誌
新潟医療福祉学会誌 (ISSN:13468774)
巻号頁・発行日
vol.18, no.2, pp.23-35, 2019-03

障害者差別解消法施行下における障害者福祉に関する市民意識調査を実施し、障害当事者71人を含む180人から回答を得た(回収率70.59%)。この結果、市民の間で法律や制度に関する理解は一定の理解が進んでいるものの、近所づきあい等地域生活の場面や社会参加の機会に障害に根差した差別を体験したことのある障害当事者が60.56%に及び、障害の種別により被差別体験に差があることが明らかになった。障害当事者の地位向上を図るために、厳しい雇用環境の改善と併せ日常生活における合理的配慮の提供の理念が広がっていくことが望まれた。合理的配慮の提供を感じる人の割合は、直接的なコミュニケーション場面で高く、文書による連絡など間接的なコミュニケーション手段では低い傾向がみられた。一方、ノーマライゼーションが進展していると考える者は全回答者の36.67%にとどまり、法律や制度に対する認知度と障害者福祉の充実度に対するとらえ方に開差がみられた。今、障害者福祉は、障害者差別解消に向けノーマライゼーション理念の浸透を実感できる共生社会の実現に向けた取り組が求められている。障害当事者の活動を制限し、社会への参加を阻んでいる社会的障壁を取り除くことは、障害者福祉の直面してきた大きな課題である。障害の社会モデルを土台にした合理的配慮の提供の広がりは、この課題解決に向けこれからの障害者福祉を進展させていく大きな力になるものと考えられる。
著者
山口 富一
出版者
新潟医療福祉学会
雑誌
新潟医療福祉学会誌 (ISSN:13468774)
巻号頁・発行日
vol.4, no.2, pp.36-42, 2005-03

言語聴覚士 (ST) の分野である聴覚障害 (児) 者に対することばの指導やコミュニケーション方法獲得に対する取り組みは古くから行われてきている。国内外の取り組みの歴史と専門職としての言語聴覚士誕生の経緯と、日本における言語聴覚士の国家資格制度が遅れたいきさつを年代を追って、関係諸団体の主張と対立・意見調整の過程を振り返る。言語聴覚士の活躍する多様な職場と多様な養成機関の並存という現状を踏まえての養成が必要と考える。
著者
松田 美穂
出版者
新潟医療福祉学会
雑誌
新潟医療福祉学会誌 (ISSN:13468774)
巻号頁・発行日
vol.2, no.1, pp.29-35, 2001-12

介護老人保健施設において開設より5年に亘り音楽療法を実践した。施設の入所定員は100名,通所リハビリテーション定員は25名で,平均年齢は83.6歳,現在の平均要介護度は入所2.9,通所2.0である。初年度の音楽療法実施回数及び述べ参加人数,平均参加率は106回,3571名,79.4%で,4年目は128回,7055名,86.1%であった。他のリハビリテーションやレクリエーションに比べ音楽療法は参加率は非常に高かった。音楽療法を通して痴呆の問題行動の軽減や日本の伝統文化との融合にも取り組んできた。その一例として入浴拒否者に対し「風呂嫌いの歌」を創り,共に合歌することによって入浴拒否の軽減をみた。更に音楽療法を句会の参加と投句の動機付けに用い,参加者の維持,継続と投句の増加,質の向上を得た。また継続して投句されている方では,一般の方,痴呆の方を問わず長谷川式簡易知能評価スケールでの低下が認められない方が多かった。以上のことより音楽療法の有用性,癒しの効果を体験し,その可能性を確信するに至った。しかし入所者の聴力結果の結果からは,調査を行った46名中16名に両耳に中度(聴力レベル50&acd;70dB)以上の難聴が認められた。聴力に障害のある人が多いことを考慮すると,補聴器の使用やプログラムの内容について更なる検討が必要となろう。
著者
濱野 強 藤澤 由和
出版者
新潟医療福祉大学
雑誌
新潟医療福祉学会誌 (ISSN:13468774)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.33-37, 2007

健康分野の研究を概観した場合には,従来,着目されてきた個人レベルの特性に加えて,近年,地域レベルの社会的要因がわれわれの健康に及ぼす影響に対してその認識,再認識がなされつつある。そうしたなかで,地域レベルの社会的要因の一つとしてSocial Capital (ソーシャル・キャピタル)に対してその関心が高まっており,地域レベルと個人レベルの要因を加味した分析手法の必要性が指摘されてきた。そこで,本研究においては,主として教育学,人口統計学,社会学などの分野において検討がなされてきた統計手法であるマルチレベル分析に関して,ソーシャル・キャピタル研究における意義とその適用に関して明らかにした。
著者
田島 崇博 牧田 光代
出版者
新潟医療福祉大学
雑誌
新潟医療福祉学会誌 (ISSN:13468774)
巻号頁・発行日
vol.6, no.1, pp.92-95, 2006-12-30

急速な高齢化が進む我が国では,社会保障制度の見直しにより,高齢者ケアの重点は施設中心から在宅へと移行してきている。施設と在宅の中間的施設である介護老人保健施設(以下,老健施設)は急激な増加を続け,理学療法士(Physical Therapist : 以下,PT)が活躍する場の一つとして注目される。そこで,総合ゼミへの参加を通して老健施設におけるPTの役割を調べた。その結果,(1)身体機能の把握(2)家屋状況の適応(3)他職種との連携(4)チームでの統一した目標設定とアプローチ(5)社会資源の活用の5項目が挙げられた。複合的なニーズをもつ対象者に対し,PTも幅広いアプローチが必要である。
著者
小藪 明生 濱野 強 藤澤 由和
出版者
新潟医療福祉大学
雑誌
新潟医療福祉学会誌 (ISSN:13468774)
巻号頁・発行日
vol.6, no.1, pp.48-55, 2006-12-30
被引用文献数
1

近年、コミュニティの再生やさまざまな社会問題克服のため、社会に対する市民的・積極的関与者を育成することが大きな目標とされ、その基盤としてソーシャル・キャピタルという概念が注目を集めている。本論においてはソーシャル・キャピタルの構成要素である一般的信頼に焦点をあて、二次データを用いて一般的信頼への規定要因の検討をおこなった。結果として高信頼者の特徴として(1)収入・学歴が高いこと(2)読書冊数が多く、テレビ視聴時間が短いこと(3)友人関係に満足していること(4)異質な他者に対して寛容であること(5)生活を支える組織に対して信頼を持っていることという五つの特徴が見出された。
著者
南 銀祐 金 恵敬
出版者
新潟医療福祉大学
雑誌
新潟医療福祉学会誌 (ISSN:13468774)
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.1-10, 2005-12-22

先進諸国においては、音楽治療活動が集中力や記憶力などにとどまらず、自尊心や責任感の向上及び情緒育成に有効であることが明らかにされつつある。しかしながら、その実証的研究は非常に限られており、それゆえ音楽治療の普及が妨げられている現状にある。そこで、本研究においては、男子中学生及び保護者を対象として、音楽治療活動に関する認識、すなわち音楽治療活動に関する理解度や効果への期待、生徒の情緒不安要因への責任及び解決方法に関して調査を行ったので報告する。
著者
田中 秀和 Tanaka Hidekazu
出版者
新潟医療福祉学会
雑誌
新潟医療福祉学会誌 (ISSN:13468774)
巻号頁・発行日
vol.10, no.2, pp.54-58, 2011-03

Since the beginning of this century the expansion of differences in the Japanese society has been clearly visible. The so called gap-widening society has been spreading rapidly. This paper, is about differences in the level of poverty among Japanese people and it suggests some ways to solve them.日本社会においては、21世紀に突入した頃から格差の拡大がより多くの人々に認識されるようになり、「格差社会」に関する議論が盛んに行われてきた。その後、「格差社会」に関するそれは、「貧困」に対する関心を増大させ今日においては、格差よりも貧困に議論の中心は移行してきている。本稿では、これまでの日本社会における格差・貧困に関する議論の動向を整理し、より一層の議論の発展と問題解決に寄与することを目指すものである。また、本稿においては、貧困問題を解決していく方法として、社会福祉士等のソーシャルワーカーや研究者が、個人と社会(環境)両者への働きかけをより強化することを掲げた。
著者
相場 恵美子
出版者
新潟医療福祉大学
雑誌
新潟医療福祉学会誌 (ISSN:13468774)
巻号頁・発行日
vol.2, no.1, pp.111-118, 2002-12

脳損傷により,失読失書,純粋失読,純粋失書といった読み書きの障害が生ずることが知られている。これらの障害に関するこれまでの神経心理学的知見を概観し,読字と書字のそれぞれにおける特徴を述べた。漢字と仮名という2種類の文字体系を持つ日本語においては,脳損傷による読み書き障害に欧米語圏とは異なる特徴が見られる。これらを解釈する上で有用と思われる,漢字と仮名の処理様式の解離を示唆する知見を提示した。漢字の処理に関しては左右半球および左半球内での二重処理が示唆されている。また,近年提唱されている読みに関する認知心理学的モデル(二重処理モデル,トライアングルモデル)を紹介し,表層性失読/深層性失読といった神経心理学的知見との整合性について述べた。さらに,書字に関するモデルを紹介し,書字遂行時の心的過程について,文字形態表象の関与を中心に述べた。最後に,書字過程の研究における今後の課題を述べた。
著者
田中 秀和
出版者
新潟医療福祉大学
雑誌
新潟医療福祉学会誌 (ISSN:13468774)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.38-42, 2007

今日の日本では,若年労働は不安定化し,格差の拡大が叫ばれている^<註1)>。また,格差社会の不利益を被っているフリーター・ニートについては,その実像がはっきりしない形で世間に伝わっているのが現状である。その原因はフリーター・ニートの問題は本人の自己責任で済まされる問題ではなく,公共政策が不可欠であるのにも関わらず,そのような取組みは不十分であることに起因している。本稿では,フリーター・ニートが個人の自己貴任のみに属する問題ではないことを述べ,社会福祉士が今日の格差社会の中でどのような役割を果たしていくべきであるのかについて検討した。検討の結果,若者再チャレンジ金の創設の必要性と,社会福祉士が企業を訪問し,企業が若年者の雇用問題についてより詳しく認識できるように若年者の声を代弁すべきであるという2つの提案を行った。
著者
伊藤 直子 山崎 貴子 岩森 大 本間 沙織 川上 未央 堀田 康雄 村山 篤子
出版者
新潟医療福祉大学
雑誌
新潟医療福祉学会誌 (ISSN:13468774)
巻号頁・発行日
vol.6, no.1, pp.32-35, 2006-12-30

牧草(2品種)、枝豆(3品種)、人参(1品種)を1/20希釈海洋深層水、1mM水溶液、脱塩海洋深層水を与えて、プランター又は野外で栽培して、牧草については葉、枝豆については種子、人参については根の亜鉛含量を測定した。対照は、水道水で栽培したものである。総ての実験区で対照区より乾燥重量あたりの亜鉛含量が増加し、外見・味や食感に変化は無しに、食品の栄養価を高めた。佐渡海洋深層水の農業への利用の可能性を示し、亜鉛含量が低い我国土壌の改良とそこから生産される作物が健康に貢献する可能性を示した。
著者
佐藤 央庸 濱野 強 片見 眞由美 高野 千代 大川 優子 藤澤 由和
出版者
新潟医療福祉大学
雑誌
新潟医療福祉学会誌 (ISSN:13468774)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.51-56, 2007
被引用文献数
1

茨城県大洋村(現,茨城県鉾田市)では,精神障害者(以下,当事者)のエンパワーメントの向上を目的として,当事者と住民の参画による普及啓発イベントの開催を試みた。 13名の当事者が実行委員となり,普及啓発イベントの企画とその運営の中心を担い,3ケ月間の準備を経て開催された。そこで,本研究においてはこうした一連の活動が当事者のエンパワーメントに及ぼす影響に関して検討を行なった。その結果,参画後は参画前に比べて「自尊/自己効力感」,「楽天/将来へのコントロール」の2項目について,スコアの改善が示された。以上の結果から,今回の試みが当事者のエンパワーメント向上に有益な影響を及ぼしたことが推察され,その要因として当事者への適切な役割分担と主体性の尊重,当事者に対する周囲の一貫した支持と肯定的態度などが考えられた。