著者
野澤 瑞佳 代田 丈志
出版者
社団法人 日本蚕糸学会
雑誌
蚕糸・昆虫バイオテック (ISSN:18810551)
巻号頁・発行日
vol.81, no.3, pp.3_213-3_220, 2012 (Released:2013-05-29)
参考文献数
18

食品添加物に認定されている薬剤から養蚕用の除菌洗浄剤を開発した。この除菌洗浄剤は,次亜塩素酸ナトリウム(NaClO),炭酸ナトリウム(Na2CO3)およびテトラポリリン酸ナトリウム(Na6P4O13)から構成されるpH11のアルカリ性水溶液である。本研究では,この養蚕除菌洗浄剤を用いて,鉄に対する防錆効果とカイコに感染する各種病原体への除菌効果を検証した。試験の結果,養蚕用除菌洗浄剤は,遊離塩素(254~286ppm)を含有するにも関わらず,その水溶液中において鉄の腐食を抑制した。また,カイコに感染する各種病原体(核多角体病ウイルスNPV,細胞質多角体病ウイルスCPV,コウジカビA. flavus S-85,白きょう病菌B. bassiana,緑きょう病菌N. rileyi,黒きょう病菌M. anisopliae,セラチア菌S. marcescensおよび微粒子病原虫N. bombycis)に対しても優れた除菌効果を示し,これら病原体を5~15分の浸漬処理で完全に除菌した。
著者
神村 学
出版者
日本蚕糸学会
巻号頁・発行日
vol.84, no.2, pp.127-133, 2015 (Released:2016-04-13)
著者
加藤 輝 林 茂生
出版者
日本蚕糸学会
巻号頁・発行日
vol.89, no.1, pp.7-13, 2020 (Released:2020-12-22)
著者
福冨 雄一 越川 滋行
出版者
日本蚕糸学会
雑誌
蚕糸・昆虫バイオテック (ISSN:18810551)
巻号頁・発行日
vol.87, no.2, pp.95-102, 2018-08

昆虫の体表の模様には様々なパターンが存在している。それらのパターンには警告色や擬態,天敵に対する威嚇といった重要な機能を持つものがある。例えば,ハチの黄色と黒色の縞模様やナナホシテントウの翅の模様は,捕食者に対して危険である,または有毒であることを示して捕食を避ける警告色としての機能があると考えられている。また,スズメバチやアシナガバチで模様が似たパターンになっていたり,南米のドクチョウ属(Heliconius属)では毒のあるチョウ同士の翅の模様が類似したりしており,これらはミュラー型擬態としての機能があると考えられている。さらに,毒を持っていないトラカミキリがスズメバチに似た体表の模様を持っていたり,毒のないシロオビアゲハのある型では毒のあるベニモンアゲハと同じ翅の模様を持っていたりしており,これらはベイツ型擬態としての機能を持つと考えられている。チョウやカマキリをはじめ,様々な分類群の昆虫に見られる翅の眠状紋は,天敵を威嚇する機能があるという説もある。これらの多様なパターンはどのように進化してきたのだろうか。これまでに様々な昆虫を用いて模様形成メカニズムの研究がなされてきた。その背景には,模様という形質が平面上に展開されていて表現型の解析がしやすいという利点がある。そのため,昆虫の模様は形態進化の至近要因を研究する上で中心的な題材のひとつとなった。ショウジョウバエの腹部と翅の模様や,チョウの翅の模様などをはじめとして,様々な材料を用いた研究が行われてきた。その結果,模様形成をコントロールする遺伝子として,転写因子やシグナルリガンド(分泌因子)をコードする遺伝子が同定されてきた。また,それらの遺伝子のcis制御領域の解析が進められ,その領域における変異が模様の多様性を生み出すのではないかと考えられた。現在,模様が形成される場所や範囲,領域がどのように決定されるかについてのモデルが複数提唱されている。今後は模様が形成される場所や範囲,領域が決定される分子メカニズムを実験的に明らかにするべきであろう。本稿では,模様形成研究の現在までとこれからについて述べていきたい。昆虫の模様形成の仕組みを大きく二つのステップ,すなわち制御関係の上流にあたるパターン形成と,下流にあたる着色の形成に分けて考えるとすると,本稿では主に上流にあたるパターン形成に重点を置くことになる。
著者
伴野 豊
出版者
日本蚕糸学会
雑誌
蚕糸・昆虫バイオテック = Sanshi-konchu biotec (ISSN:18810551)
巻号頁・発行日
vol.79, no.2, pp.87-95, 2010-08-01
参考文献数
74

クワコに関する研究は多数に上るが,昆虫学者を中心に行われた分類学的研究と養蚕学や遺伝学に関わる研究者を中心に行われたカイコを比較対象とした生物学的研究とに大きく分けることが出来る.前者に関しては上田(1998)による詳しい記述がある.ここではクワコの生物学的特性についてカイコの特性と比較しつつ行われた研究を中心に述べる.クワコはご存知のようにカイコの祖先昆虫として考えられている.従って,多くの研究でカイコの起源や分化についても論じられている.両種が近縁な関係にあることが認識された研究を先ず取り上げ,その後分野別に紹介する.
著者
清水 智恵 山中 沙織 西田 雄太 田中 淳 普後 一 島田 順
出版者
日本蚕糸学会
巻号頁・発行日
vol.83, no.1, pp.33-37, 2014 (Released:2014-09-03)

シロヘリクチブトカメムシを室内で省力的に増殖することを目的に,人工飼料による飼育方法の開発を試みた。クチブトカメムシの一種であるP. maculivientrisおよびP. sagitta用に開発された飼料(De Clercq and Degheele,1992)にカイコガ蛹乾燥粉末を加え,パラフィルムで密封処理した飼料片を作製した。冷凍保存したこの飼料片を用い,高い生存率でシロヘリクチブトカメムシを飼育することができた。また,16L8Dを長日,8L16Dを短日として若虫期,成虫期を飼育したところ,雌成虫に産卵を誘導するためには,成虫期の長日のみならず若虫期にも長日が必要であることが明らかとなった。1齢若虫期のみの長日条件でも成虫期が長日であれば産卵個体を得ることができるが,若虫期の長日期間が長いほど産卵個体が多くなることが示唆された。25℃飼育下における本種の生殖休眠は,成虫期の短日条件,あるいは全若虫期を通した短日条件で誘導されることが判明した。
著者
持田 裕司 竹村 洋子 松本 正江 金勝 廉介 木口 憲爾
出版者
社団法人 日本蚕糸学会
雑誌
蚕糸・昆虫バイオテック (ISSN:18810551)
巻号頁・発行日
vol.75, no.1, pp.37-43, 2006 (Released:2007-07-03)
参考文献数
7
被引用文献数
3

実用蚕品種受精卵の2年間保存条件を検討した。清水ら(1994)の2年間保存法における6回の15℃1日間中間手入れのうち,最終の1回を10℃10日間に改めた「改良2年間保存法」を試案した。この方法で2年間保存をした交雑種は実用ふ化歩合65%程度で,飼育成績は対照としての1年間保存卵からふ化した個体と同等であった。原種の場合,改良2年間保存後のふ化率は対照区と比較して著しく低く,ふ化幼虫の雌雄比にも偏りが生じた。しかし,次代卵を再び2年間保存することを繰り返す継代は可能であり,多くの品種において継代のたびにふ化率は向上した。2年間保存により幼虫の飼育成績は低下するが,継代した卵を通常の1年間保存後にふ化させることで飼育成績を回復することが確かめられた。産卵台紙の間にスペーサーを挿入することで積極的に空気の流通空間を確保することは,ふ化率の改善に有効であった。