著者
兵頭 正浩 石井 将幸 緒方 英彦 岸本 圭司 畑中 哲夫 奥田 忠弘
出版者
公益社団法人 農業農村工学会
雑誌
農業農村工学会論文集 (ISSN:18822789)
巻号頁・発行日
vol.85, no.2, pp.I_185-I_190, 2017 (Released:2017-09-05)
参考文献数
7

著者らは,埋設管の新たな耐力評価手法として内面載荷法を提案している.これまでの研究では,不とう性管であるRC管に内面載荷法を適用し,その有効性を確認してきた.しかし,その有効性はグラインダーによって溝を付与した供試管に対してであり,実際の荷重によるひび割れとは異なる.そこで本研究では,外圧試験機によって所定の荷重を与えた管に対して評価を実施した.また,製造業者の異なるRC管が採取データに与える影響についても併せて検討した.その結果,内面載荷法は,荷重-変形量の傾きでひび割れを検知でき,その断面内剛性は軸方向で異なることがわかった.一方,RC管は接合された状態で埋設されているが,接合による管口の拘束は,採取データへ影響しないことがわかった.最後に,RC管の製造業者によって,荷重-変形量の傾きは異なることを確認した.
著者
鬼丸 竜治
出版者
公益社団法人 農業農村工学会
雑誌
農業農村工学会論文集 (ISSN:18822789)
巻号頁・発行日
vol.84, no.3, pp.II_77-II_85, 2016 (Released:2016-12-17)
参考文献数
23

水路の維持管理へ非農家住民に参加して貰うためには,彼らの参加を促す適切な要因に働きかけることが重要である.この観点から,複数の先行研究において,参加に対する影響要因が分析されている.しかし,同じ要因が,影響要因とされる研究と,されない研究があるため,先行研究の知見を基に他の地区で影響要因を検討することが難しいという問題がある.そこで,本報では,質問紙調査データを統計分析した先行研究7件・10ケースに着目し,影響要因分析の現状を分析した.その結果,統計的有意性を基に影響要因を選択した8ケースでは,①対象要因ごとに平均すると64%のケースで影響を与える理由が示されていない,②そのため,影響要因と被影響要因との関係に理論的な整合性がない場合と影響が小さい場合を区別できない,③したがって,影響を与える理由を示すことが課題であることを示した.
著者
森 晃 水谷 正一 後藤 章
出版者
公益社団法人 農業農村工学会
雑誌
農業農村工学会論文集 (ISSN:18822789)
巻号頁・発行日
vol.82, no.2, pp.121-130, 2014-04-25 (Released:2015-04-25)
参考文献数
41

近年,ナマズは一時的水域における産卵場所の減少と産卵場所への移動阻害により生息数は減少している.本研究では,栃木県宇都宮市における圃場整備後の小排水路を対象に,ナマズの産卵から稚魚までの成育過程を調査し,繁殖および成育場所として成立する要因を考察した.小排水路はコンクリートフリューム構造で,水路内には複数の落差工が存在する.しかし,水路底には泥が堆積し,水位差は降雨によって一時的に解消することから,水路はナマズの繁殖場所として機能していたことを確認した.幼魚は1ヶ月間で全長は約2.6倍となり,その後接続河川へ降下した.水路は成育場としても機能し,このことは幼魚の餌生物が豊富であることや泥底が存在に関連するものと考えられた.
著者
神宮字 寛 上田 哲行 五箇 公一 日鷹 一雅 松良 俊明
出版者
公益社団法人 農業農村工学会
雑誌
農業農村工学会論文集 (ISSN:18822789)
巻号頁・発行日
vol.77, no.1, pp.35-41, 2009 (Released:2010-10-15)
参考文献数
20

フィプロニルやイミダクロプリドを成分とする育苗箱施用殺虫剤は,稲の吸汁性害虫を対象とした殺虫剤であり,育苗箱に用いる.本研究では,本薬剤がアキアカネ幼虫の死亡率,羽化数,羽化行動に及ぼす影響を小型ライシメータにより検証した.各ライシメータは,フィプロニル区,イミダクロプリド区および無処理区とし,それぞれ3反復で実験を行った.アキアカネ卵は,それぞれのライシメータに300卵散布した.そして,各ライシメータ中のアキアカネ幼虫の死亡率,羽化数を求めた.アキアカネ幼虫の死亡率が最も大きい値を示したのはフィプロニル区となり,羽化個体が観察されなかった.イミダクロプリド区では,フィプロニル区に比べて死亡率は低い値を示したが,幼虫の平均成長率および成虫の後翅長が無処理区よりも低下した.また,羽化異常を示す個体が無処理区に比べて高い割合で発現した.フィプロニルやイミダクロプリドを成分とする育苗箱施用殺虫剤の使用は,アキアカネ幼虫の大きな減少を招くことが示唆された.
著者
橋本 禅 有田 博之 保高 徹生 岩崎 有美
出版者
公益社団法人 農業農村工学会
雑誌
農業農村工学会論文集 (ISSN:18822789)
巻号頁・発行日
vol.81, no.2, pp.153-162, 2013-04-25 (Released:2014-04-25)
参考文献数
28

本稿では,(1)除染における地域指定や優先順位の方針の整理を通じて,(2)除染において農村地域がどのように序列化されるかを明らかにすると共に,(3)農村地域の除染と生活再建においてどのような影響が想定されるか,また(4)それら影響に対する対応策の提案を行なった.国が示す除染の優先順位付けの方針は,結果的に農村地域の除染対応の遅れを引き起こす可能性が高い.仮置き場の確保や同意取得の難航は本状況を更に深刻なものとすると懸念される.また,除染の効果にも限界があり,空間線量の高い地域では除染の遅延と相まって住民の避難生活の長期化が予測される.自治体の住民意向調査からは,避難が長期化した場合,帰還率のさらなる低下が見込まれることが示唆されており,除染や復興への戦略的対応が求められる.本稿ではこれに対応する方策として,急激な人口の流出を前提としつつも除染対応を地域再編の契機として捉えた,地区レベルでの復興構想の策定を提案した.
著者
川本 治 宮崎 毅 中野 政詩
出版者
The Japanese Society of Irrigation, Drainage and Rural Engineering
雑誌
農業農村工学会論文集 (ISSN:18822789)
巻号頁・発行日
vol.77, no.4, pp.385-393, 2009-08-25

粘性土から成る農地斜面の長期安定問題における初生破壊解析を念頭に置いて,地すべり崩土の力学特性と変形の局所化に関する実測値を示した.不攪乱試料の圧密・排水三軸試験結果における中位のひずみ(軸ひずみ15%程度)では,せん断帯幅は微小亀裂に囲まれた粘土土塊の変形集中領域の幅として評価するのが適切であり,粒子径が重要な役割を果たす粒状体材料の場合とは異なる機構によってせん断帯が形成されると考えられた.この結果に基づいて田中による弾塑性有限要素モデルのパラメータ決定と三軸圧縮試験の有限要素解析を行った.浅層すべりの斜面中央部付近で採取された複数の試料の応力-ひずみ曲線は,過去の地すべり履歴を反映すると考えられる多様なパターンを示しており,有限要素解はこれらの供試体における平均的挙動を表現すると考えられた.