著者
藤居 良夫 渥美 浩和
出版者
公益社団法人 農業農村工学会
雑誌
農業農村工学会論文集 (ISSN:18822789)
巻号頁・発行日
vol.76, no.1, pp.61-70, 2008-02-25
参考文献数
7
被引用文献数
2

冬季五輪開催都市である長野市を対象にして, 市街化区域外である都市縁辺部において農振除外, 農地転用, 開発許可の動向を調べ, 開発許可と関係性のある要因の抽出と開発許可の空間的特性を把握し, 土地利用の規制における問題点と課題を検討した. その結果, 土地利用の変化は, 冬季五輪の開催に伴う施設の建設や交通網整備の影響を強く受けており, とくに行政主体で行われた農振除外と公的転用が長野市におけるスプロール化を促進させたこと, 農振除外や農地転用は地域全体の土地利用の計画性を考慮することなく行われ, その後の土地利用の規制に対しても不備であること, したがって, 市域全体にわたる包括的な土地利用制度が必要であることなどがわかった.
著者
佐々木 薫 秦 二朗 諸泉 利嗣
出版者
公益社団法人 農業農村工学会
雑誌
農業農村工学会論文集 (ISSN:18822789)
巻号頁・発行日
vol.85, no.1, pp.II_45-II_52, 2017 (Released:2017-06-28)
参考文献数
18

高速道路では, 冬期に路面の凍結を防止するために塩化ナトリウムを主成分とする凍結防止剤が散布されている.凍結防止剤は, 車両等によって道路沿線に飛散し, その濃度に応じて植物への生育阻害をもたらす恐れがある.本研究では, この塩化ナトリウムが農作物や農地土壌及び農業用水へ影響を与える閾値を整理し, そして, 高速道路沿線の農地土壌への塩化ナトリウムの飛散浸透量や農業用水への流入量を調査し, 農地土壌や農業用水に与える影響を評価した.その結果, 道路端1.5m畦部において塩素濃度が90mg·kg-1と閾値400mg·kg-1の23%, 交換性ナトリウム飽和度が16.3%と閾値20%の81.5%であった.また, 農業用水は, 農繁期で電気伝導度が0.15dS·m-1と閾値0.3dS·m-1の50%であった.何れも, 閾値以下であり, 農地土壌や農業用水への影響は極めて少ないことが明らかになった.
著者
長谷川 雄基 小嶋 啓太 佐藤 周之 長束 勇
出版者
公益社団法人 農業農村工学会
雑誌
農業農村工学会論文集 (ISSN:18822789)
巻号頁・発行日
vol.85, no.2, pp.I_215-I_220, 2017 (Released:2017-11-08)
参考文献数
10

本研究では, 無機系材料の耐摩耗性の評価におけるサンドブラスト法の適用性を検討した.サンドブラストの基本的性能の評価として, 研磨材の粒径の差異が試験結果に及ぼす影響と試験時間の経過に伴う研磨能力の低下の有無を検証した.加えて, サンドブラスト法におけるモルタル供試体の表面形状, 質量減少量, 摩耗深さの経時変化を評価した.結果として, 材質が同じ研磨材を使用した場合, 研磨材の粒径の増大に伴い供試体の質量減少量は増加することが確認できた.一方, 本実験条件では, 試験時間840sまでは研磨能力は確実に低下しなかった.サンドブラスト法では, 試験時間の延伸に伴い結果のばらつきが拡大することが確認され, 試験時間10sと30sではばらつきの少ない結果が得られることが明らかとなった.サンドブラスト法の試験時間30sで得られる平均摩耗深さは, 水砂噴流摩耗試験の試験時間10hで得られる数値に相当することが確認された.
著者
中野 拓治 治多 伸介 山岡 賢
出版者
公益社団法人 農業農村工学会
雑誌
農業農村工学会論文集 (ISSN:18822789)
巻号頁・発行日
vol.88, no.2, pp.I_203-I_212, 2020

<p>本研究は,生物膜法の農業集落排水処理水について,供用施設(22施設)のデータに基づき,灌漑利用の観点からみたISOガイドラインの水質基準の達成状況を調査し,望ましい運転管理を考察した.処理水のBODとSSの濃度には,接触ばっ気槽の流入水濃度,水量負荷,及び,ばっ気強度が関与し,処理水のBODは通常の運転管理でカテゴリーCをほぼ満足している.ばっ気強度を3m<sup>3</sup>∙m<sup>‐3</sup>∙h<sup>‐1</sup>程度とし,接触ばっ気槽流入水のBOD濃度を30mg∙L<sup>-1</sup>程度に管理すれば,処理水質はカテゴリーBを確保できる可能性が高いものの,カテゴリーAにするためには,より高いばっ気強度での運転や清掃・堆積汚泥引抜き頻度の増加が必要である.大腸菌群数は,処理水中に残留塩素濃度が0.1mg∙L<sup>-1</sup>検出されればカテゴリーBを達成できる可能性が高く,灌漑利用には残留塩素濃度への注意が重要である.</p>
著者
泉 完 清水 秀成 東 信行 丸居 篤 矢田谷 健一
出版者
公益社団法人 農業農村工学会
雑誌
農業農村工学会論文集 (ISSN:18822789)
巻号頁・発行日
vol.86, no.1, pp.II_1-II_7, 2018 (Released:2018-01-12)
参考文献数
31

水田魚道を含む生態系に配慮した水路の設計に資するメダカの遊泳能力を明らかにすることを目的として,ミナミメダカの突進速度に関する実験を屋外で実施した.その結果,体長2cm台のメダカについて,1)突進遊泳速度は33cm・s-1(管内代表流速17cm・s-1)~58cm・s-1(管内代表流速32cm・s-1)で,平均体長の14~24倍・s-1に相当した.2)メダカは突進遊泳を繰り返して前進し,突進遊泳区間の瞬間遊泳速度の平均値は,突進遊泳速度の1.03倍でほぼ同じであることがわかった.また,瞬間遊泳速度で約5cmずつ前進することがわかった.3)管内代表流速が20~30cm・s-1台の流速条件では,65%以上の個体が30cmまでの距離を遊泳することがわかった.
著者
藤田 紀之 東 淳樹 服部 俊宏
出版者
公益社団法人 農業農村工学会
雑誌
農業農村工学会論文集 (ISSN:18822789)
巻号頁・発行日
vol.81, no.5, pp.403-410, 2013-10-25 (Released:2014-10-25)
参考文献数
20

岩手県盛岡市において,ハシブトガラス(Corvus macrorhynchos)およびハシボソガラス(C. corone)の生息分布と土地利用に対する選好性を明らかにするために生息確認地点を記録し,生息分布図の作成および生息確認地点と土地利用との関係を解析した.繁殖期,非繁殖期においてハシブトガラスは市街地や緑の多い住宅地を採食・休息環境として選好していたこと,ハシボソガラスは,水田を採食環境,市街地や緑の多い住宅地を休息環境として選好していたことを定量的に明らかにした.また,両種の生ゴミに対する依存度の違いが採食環境の違いに現れていることを考察した.市街地や農耕地の混在した地域では,両種の選好する採食環境が混在するため,両種が同所的に生息できるのではないかと考えられる.
著者
石神 暁郎 佐藤 智 中村 和正
出版者
公益社団法人 農業農村工学会
雑誌
農業農村工学会論文集 (ISSN:18822789)
巻号頁・発行日
vol.83, no.3, pp.I_49-I_61, 2015 (Released:2015-06-05)
参考文献数
25

積雪寒冷地におけるコンクリート開水路では, 近年, 凍害劣化により低下した性能の回復・向上を目的とした種々の表面保護工法の開発・適用が進められている.凍害劣化を対象とした表面保護工法は, その優れた遮水性により新たな水分の侵入を抑止・抑制し, コンクリートにおける凍結融解の作用を抑制しようとするものであるが, その性能を持続的に発揮させるためには, コンクリートに対して十分な付着性を有していることが求められる.本研究では, 新たに提案した表面保護工法の付着耐久性を評価する凍結融解試験方法を用いて, コンクリート開水路に適用されている各種表面保護工法の評価を行った.その結果, 有機系および無機系の表面被覆工法において凍結融解の作用に起因する付着性の低下が確認されること, また, 保護材料の特性の違いによりその低下の程度が異なることが分かった.
著者
長谷川 雄基 杉山 基美 佐藤 周之 野中 資博
出版者
公益社団法人 農業農村工学会
雑誌
農業農村工学会論文集 (ISSN:18822789)
巻号頁・発行日
vol.80, no.4, pp.333-340, 2012-08-25 (Released:2013-08-25)
参考文献数
7

農業用コンクリート開水路の一般的な補修工法として,表面被覆工法がある.本研究では,コンクリート水路におけるひび割れ幅の変動量を調査するとともに,耐アルカリガラス繊維ネットを用いた表面被覆工法のひび割れ拘束効果を検証した.調査の結果,同規模のコンクリート水路のひび割れ幅の変動特性は,無筋構造とRC構造で大きく異なることを確認した.とくに,無筋水路におけるひび割れ幅の季別の日変動量は,RC水路における季別の日変動量よりもはるかに大きくなった.両側面に背面土が存在しない小規模水路においては,東西方向に延びる水路であっても,水路の南面と北面のひび割れ幅の変動量は同程度であった.耐アルカリガラス繊維ネットを使用することで,表面被覆材にひび割れの変動を拘束する効果を付与することができ,表面被覆材の表面に発生するひび割れを抑制できることがわかった.
著者
中野 拓治 中村 真也 松村 綾子 高畑 陽 崎濱 秀明 大城 秀樹 幸地 優作 平田 英次
出版者
公益社団法人 農業農村工学会
雑誌
農業農村工学会論文集 (ISSN:18822789)
巻号頁・発行日
vol.88, no.1, pp.I_11-I_20, 2020

<p>沖縄本島北部に分布する国頭マージ土壌を用いて油汚染土壌のバイオレメディエーションによる屋外実証試験を実施した.油汚染土壌に琉球石灰岩砕や栄養塩を加えることで, いずれも浄化促進効果が認められた.琉球石灰岩砕添加により油分(Total Petroleum Hydrocarbons(TPH))の浄化開始から分解活性が高まるまでの期間が短縮され, 強制通気が不要なランドファーミング工法により油汚染土壌の浄化を図れる可能性が示された.含水比低下やpH値の中性化により石油分解菌の浄化活性が高まったものと考えられる.実規模レベルでのパイロットスケール試験により, 油臭とTPH 濃度の関係を把握し, 浄化に必要な期間を評価するためのTPH除去速度係数が得られることが確認された.屋外実証試験結果は, 栄養塩添加や異なる浄化促進手法について, 実務に即した検討に有益な情報を与えるものと考えられる.</p>
著者
吉川 夏樹 長尾 直樹 三沢 眞一
出版者
公益社団法人 農業農村工学会
雑誌
農業農村工学会論文集 (ISSN:18822789)
巻号頁・発行日
vol.77, no.3, pp.273-280, 2009-06-25 (Released:2010-11-19)
参考文献数
14
被引用文献数
2

新潟県村上市神林地区では,洪水常襲地区の上流域に広がる水田に「落水量調整板」を設置し,大雨時に水田に意図的に雨水を貯留することで,洪水の緩和を図るという「田んぼダム」の取り組みが行われている.本研究では,この「田んぼダム」の洪水緩和機能を流域スケールで検証した.流出解析を行うにあたり,河川·排水路,山地・集落(市街地),水田の3つのモジュール(構成要素)で流域をモデル化した.山地・集落(市街地)モジュールは,Kinematic Waveモデル,水田は水田水収支シミュレーションにより流出量を経時的に計算し,これらを河川・排水路モジュールに横流入量として入力し,不定流解析によって計算を行った.対象とした降雨イベント(日降水量101.8mm,最大時間降水量20.8mm)の場合,調整板を全水田に設置することにより,排水河川である笛吹川および幹線排水路のピーク時流量が25%~29%減少し,0.17~0.23mの水位低下をもたらすという結果を得た.また,通常,同程度の日降水量では一部の市街地排水路に溢水が見られるのに対し,計算結果どおりに,実際に現況の調整板設置率(80%)でも溢水は確認されなかった.これらのことから,「田んぼダム」の取り組みは,対象地域の洪水緩和に有効であるということが明らかになった.
著者
藤居 良夫 竹田 智晴
出版者
公益社団法人 農業農村工学会
雑誌
農業農村工学会論文集 (ISSN:18822789)
巻号頁・発行日
vol.77, no.1, pp.79-86, 2009-02-25
参考文献数
13

地方都市においても,生物多様性の保全や自然との共生が求められている.本研究は,冬季五輪が開催された長野市を対象に,五輪開催前後である1985年と1999年の2時期のLandsat TMデータを利用して,土地被覆変化を調べ,景観指標を用いて景観構造の変化を定量的に把握した.その結果,長野市の都市計画区域では,五輪開催前後において,人工物の土地被覆は約57%増加し,一方で,畑地は約45%,水田は約50%減少して,農用地から市街地への変化が大きいことがわかった.とくに,水田と畑地においては,各パッチが小さくなることで,パッチ面積の不均等が縮小したと考えられる.また,水田,畑地,果樹園などの農用地で分断化が起きていることが明らかになった.
著者
李 雨桐 中野 拓治 中村 真也 山岡 賢 阿部 真己
出版者
公益社団法人 農業農村工学会
雑誌
農業農村工学会論文集 (ISSN:18822789)
巻号頁・発行日
vol.87, no.1, pp.I_61-I_71, 2019

<p>連続流入間欠ばっ気活性汚泥方式の農業集落排水施設のBOD除去性能確保に関して, ばっ気槽1室のばっ気終了時のORP管理範囲100~125mVを明らかにするとともに, ばっ気装置散気方式, ばっ気強度, ばっ気時間等によるDO挙動特性とBOD除去性能確保に必要なばっ気終了時のDO濃度を把握した.総括酸素移動容量係数(<i>K<sub>L</sub>a</i>)にはばっ気槽の活性汚泥粘度が関与しており, ばっ気強度, 水温, MLSSを説明変数とする重回帰式から推定できることが確認された.BOD除去速度恒数はばっ気強度, ばっ気時間, 及び槽内水温を説明変数とする重回帰式から推定できることが示唆された.ばっ気強度(0.03 m<sup>3</sup>∙m<sup>-3</sup>∙mim<sup>-1</sup>)とばっ気時間(30min)を組合わせたばっ気槽の運転操作を通じて, 少ないばっ気空気量で高いBOD除去性能を得るなど農業集落排水施設の運転管理効率化が図られることが示された.</p>
著者
中野 拓治 中村 真也 松村 綾子 高畑 陽 崎濱 秀明 大城 秀樹 幸地 優作 平田 英次
出版者
公益社団法人 農業農村工学会
雑誌
農業農村工学会論文集 (ISSN:18822789)
巻号頁・発行日
vol.87, no.1, pp.I_9-I_15, 2019

<p>沖縄本島北部に分布する国頭マージ土壌を用いて油汚染土壌の室内浄化試験を実施し, 島内で産出される琉球石灰岩砕・粒子を含めた浄化促進材の添加を通じて, バイオレメディエーションによる油分浄化特性と影響要因について考察した.軽油模擬汚染土壌に琉球石灰岩を5%以上添加することにより, 土壌含水比が5~20%の範囲で油分の浄化速度(Total Petroleum Hydrocarbons(TPH)浄化速度)を向上させるとともに, 貝殻片や花崗岩砕等を用いた浄化促進材との比較検証の結果, 琉球石灰岩砕が最もTPH浄化速度を高めることを明らかにした.琉球石灰岩砕・粒子は, 油分分解菌の代謝活動に必要となる通気性とその棲息域を確保する細孔を多く有しており, 国頭マージ土壌のpHを酸性域から中性域に中和する効果もあることから, 土壌中の油分分解菌の活性化によりTPH浄化速度が向上したものと推察される.</p>
著者
齋藤 未歩 後藤 章 水谷 正一 Khem Sothea
出版者
公益社団法人 農業農村工学会
雑誌
農業農村工学会論文集 (ISSN:18822789)
巻号頁・発行日
vol.78, no.2, pp.65-73, 2010

本研究ではカンボジアメコンデルタを対象にタムノップ(<i>Tum Nub</i>)と呼ばれる土堤の活用による米二期作地拡大の可能性について検討を行った.洪水氾濫原の二期作においては,非冠水期間内の作期の確保と灌漑水源の確保がポイントとなり,この両面でタムノップの活用が有効であると考えられる。現地調査の結果,少数ではあるが早期雨季稲作を導入することで二期作を実現している農村があることがわかった.聞き取り調査を実施した農村から対象地区を選定し,早期雨季稲作を実現するためのタムノップの効果を推定した結果,洪水をせき止めて貯水池を創出し,貯水した水を消費したあとに貯水池内部での一作を可能とするタムノップと洪水氾濫の開始を遅延する機能を持つタムノップを組み合わせることで,対象地区では現状より24~30%の米の増産が見込めることがわかった.
著者
李 雨桐 山岡 賢 阿部 真己 畑 恭子 中野 拓治
出版者
公益社団法人 農業農村工学会
雑誌
農業農村工学会論文集 (ISSN:18822789)
巻号頁・発行日
vol.86, no.2, pp.I_243-I_253, 2018

<p>本研究は, 農業集落排水施設から得られた実測データに基づき, 農業集落排水施設の流入汚水量の実態把握と変動要因の検討を通じて, 設計諸元の定量化と設定について考察した.日流入汚水量には, 土地利用・立地条件が関与しており, 処理区の土地利用・立地条件を水道水量と降水量に加味することで, これらを説明変数とする重回帰推定式から日流入汚水量を精度よく推定できることを明らかにできた.時間流入汚水量の日間変動には, 管路延長, 供用率, 流入人口率が関与しており, 時間水量日変動幅とピーク係数はこれらを説明変数とする重回帰推定式から設計基準値を設定できることが示唆された.</p>
著者
川邉 翔平 浅野 勇 森 充広 川上 昭彦
出版者
公益社団法人 農業農村工学会
雑誌
農業農村工学会論文集 (ISSN:18822789)
巻号頁・発行日
vol.85, no.1, pp.II_17-II_23, 2017 (Released:2017-04-05)
参考文献数
9

農業用コンクリート開水路の補修工法として,無機系表面被覆工が多く施工されている.しかし,無機系表面被覆工の中性化深さの供用環境による差や空間的なばらつきについては明らかにされていない.これらに関する知見は,今後の中性化深さのモニタリングに際する調査位置や調査点数を決定するための重要な基礎データとなる.本研究では,施工後約3年経過した実水路の無機系表面被覆工を対象に,中性化深さの多点調査を行った.その結果,中性化深さは正規分布を仮定でき,その変動係数は20-40%であること,水路側壁の気中部と水中部では,気中部の中性化深さが大きいこと,などが示された.また,本調査結果に基づくと,中性化深さを信頼度95%,誤差20%で得る場合には,サンプル数を9以上とする必要があると推定された.
著者
齋藤 朱未 服部 俊宏 藤崎 浩幸 広田 純一
出版者
公益社団法人 農業農村工学会
雑誌
農業農村工学会論文集 (ISSN:18822789)
巻号頁・発行日
vol.84, no.2, pp.II_31-II_36, 2016

本研究の目的は, 農家の起業活動の一環として注目されている農家レストランについて, 農家レストランの存在が地域住民の意識の変化にどのような影響を与えているのかを明らかにすることにある.そのために, まず立地条件の異なる2つの農家レストランを選定した.1つは農村集落型であり, もう1つは住宅地型である.これら2つの農家レストランを対象に, 地域住民がどの程度農家レストランの存在を認識し, 実際に利用しているのか, さらに地域住民の意識変化についてアンケート調査で把握した.その結果, 農村集落型の農家レストランでは地域住民の認知度, 利用は高く, 安全安心な生産物や食の提供に対して意識変化がみられた.住宅地型の農家レストランでは, 地域内からの利用は多いが, 認知度は2極化しており, 安全安心, 地域住民同士の交流といった項目に意識変化がみられた.
著者
山下 良平 中嶋 晋作
出版者
公益社団法人 農業農村工学会
雑誌
農業農村工学会論文集 (ISSN:18822789)
巻号頁・発行日
vol.85, no.2, pp.I_245-I_251, 2017 (Released:2017-12-06)
参考文献数
5

本研究では, 米生産の管理作業に付随する日常的な圃場巡回時間に関するシミュレーションを行う.今後も農地貸借による集積が進むと考えられる場合, 圃場の場所によっては圃場間移動時間による作業ロスが増す可能性があり, 経営計画を策定するうえで十分検討する必要がある.そこで, 担い手として農地集積の期待がかかる経営体を事例として, 段階的な経営拡大シナリオの下で, 最適な圃場巡回を行った場合の総移動距離と総移動時間の増加傾向を読み解く.シミュレーションの結果, ランダムに農地集積した場合には, 新規借入農地数に連動して増加する総移動距離の増加傾向は逓減する一方, 本シミュレーションの条件下では総移動時間は異なった増加パターンを示すことが明らかとなった.基礎的な分析であるが, 将来的な農地集積が進展した際に予想される状況に関する有用な知見が得られた.