著者
金平 修祐 北辻
出版者
公益社団法人 農業農村工学会
雑誌
農業農村工学会論文集 (ISSN:18822789)
巻号頁・発行日
vol.89, no.2, pp.I_387-I_396, 2021 (Released:2021-12-04)
参考文献数
13

東北地方の石灰石(以下LS)粗骨材を用いたコンクリート水利施設では,粗骨材が選択的に溶脱し,クレータ状にくぼむ変状が起きている.本研究では,この現象のメカニズム解明のため現地調査,骨材試験および異なる流速環境下に設置したコンクリート供試体による粗骨材溶脱の再現試験を行った.現地調査では,LS粗骨材を用いたプレキャストコンクリート製品水路,現場打ちコンクリート水路およびコンクリートダムの洪水吐でLS粗骨材の溶脱が確認された.骨材試験ではLS粗骨材のすりへり減量値は,JISの規格値内であるが安山岩粗骨材より大きいことが分かった.さらに,溶脱再現試験からLS粗骨材の溶脱深さは,経過日数に伴い直線的に増加し,流速が大きいほど顕著で,また,流速が0.5m/s程度の場合,粗骨材の溶脱深さは0.5mm/yearと予想された.
著者
上野 和広 吉田 美里 石井 将幸
出版者
公益社団法人 農業農村工学会
雑誌
農業農村工学会論文集 (ISSN:18822789)
巻号頁・発行日
vol.91, no.2, pp.I_121-I_128, 2023 (Released:2023-09-05)
参考文献数
26

水セメント比,表面粗さ,養生方法の異なる条件で作製したコンクリートの品質が,無機系補修材料との付着強度へ及ぼす影響について,せん断応力あるいは直応力が作用する条件下で評価を行った.せん断付着強度と単軸引張付着強度は,双方ともコンクリートの強度が高くなるほど高くなる傾向を示した.また,コンクリートの強度が等しい条件では,累積吸水量が大きな緻密でない組織構造であるほど付着強度が高くなった.これは,コンクリート中の空隙に向けてプライマーや無機系補修材料の成分が浸透することで,付着界面の一体性が高まったためと考えられる.表面粗さの影響については,算術平均粗さの上昇に伴ってせん断付着強度は高くなった.一方,単軸引張付着強度と算術平均粗さの間には相関性が確認されなかったことから,表面粗さの影響は作用する応力の方向によって異なることが示された.
著者
武山 絵美 笹山 新生 野中 仁智 九鬼 康彰
出版者
公益社団法人 農業農村工学会
雑誌
農業農村工学会論文集 (ISSN:18822789)
巻号頁・発行日
vol.83, no.2, pp.I_25-I_31, 2015 (Released:2015-04-23)
参考文献数
29
被引用文献数
1

本論では,樹園地を対象に,イノシシの生息地の集塊性と連結性を評価した.その結果,本来の生息地である雑木林パッチn=44に新たな生息地として放棄畑を加えると,雑木林間が放棄畑でつながりパッチ数がn=13と減少し,最大パッチサイズが12.3haから41.0haに拡大するなど,集塊性および連結性が高まることが確認された.これに加え,防護柵のない畑が生息地間のコリドーとして機能すると,生息地の連結性が更に向上し,生息地面積の80%が連結されることも確認された.すなわち,柵の設置には,内部の農地の被害防除だけでなく,生息地間の移動を妨げてイノシシが農地周辺に生息しづらい環境を形成する生息地管理の役割も期待できる.また,グラフ理論を用いた生息地ネットワーク分析により,生息地の連結性維持に重要な役割を果たすパッチやコリドーを抽出することが可能であることも示した.
著者
松島 健一 田中 忠次 毛利 栄征
出版者
公益社団法人 農業農村工学会
雑誌
農業農村工学会論文集 (ISSN:18822789)
巻号頁・発行日
vol.2008, no.254, pp.151-160,a2, 2008-04-25 (Released:2011-08-11)
参考文献数
14

地盤内に設置された矢板を引抜く際, 地盤に生じた空隙が応力の再配分を引き起こし, 地中構造物に大きな影響を及ぼす. 本研究では, 矢板引抜きに伴う地盤と地中構造物の相互作用メカニズムを解明するため, 矢板引抜き現象を考慮した数値解析モデルを開発した. 地盤中の応力解放は要素掘削手法を適用し, 空隙両側の不連続な地盤面の接触は, Belytshko et al.(1991) が提案したピンボールアルゴリズムを採用した. 本手法は, パイプラインを対象とした矢板引抜き模型実験における埋設管のたわみや地表面沈下などの挙動を定性的に予測できることが分かった. また, 地盤中のひずみや土圧分布の変化などから埋設管のたわみの発生メカニズムを明らかにすることができた.
著者
横地 穣 関本 幸一 井上 京
出版者
公益社団法人 農業農村工学会
雑誌
農業農村工学会論文集 (ISSN:18822789)
巻号頁・発行日
vol.90, no.1, pp.I_45-I_52, 2022 (Released:2022-02-18)
参考文献数
20

石狩川下流域に位置する篠津泥炭地に敷設された農業用管水路を対象に,縦断的な変状の実態把握と不同沈下の定量的な評価を行った.管水路敷設から調査時までのおよそ20年間における管水路の沈下量は5 ~ 44 cmであった.道路横断部や水管橋接続部など特殊な敷設環境にある区間を除き,沈下は管路全体で一様に生じていた.一方,管体にかかる荷重が増加する道路横断部や,杭基礎によって管体が拘束されている水管橋との接続部分では,管路に大きな不同沈下が生じていた.不同沈下によって生じた管路の変状には設計上の許容量を上回るものもあり,漏水事故等の発生が懸念され,実際にもこれまでに漏水事故の起きた箇所があった.不同沈下の発生が見込まれる箇所では,継続的に管路の状態の監視を行い,漏水等の事故を防ぐ対策を立てる必要がある.
著者
有田 博之 橋本 禅 内川 義行
出版者
公益社団法人 農業農村工学会
雑誌
農業農村工学会論文集 (ISSN:18822789)
巻号頁・発行日
vol.87, no.1, pp.I_45-I_50, 2019

<p>東日本大震災・新潟県中越大震災で講じられた対策の検討を通じて, 災害レベルに応じた計画的な災害復旧対応の必要性について論じ, 計画が具備すべき特性・構成について提案した.農業農村整備分野では災害復旧の計画策定は現在行われないが, 大規模災害では計画策定が復旧の迅速化・効率化および業務負担の軽減に繋がる.災害復旧計画は, ①復旧方針を明確にし, ②発災直後の業務を簡素化し, ③復旧対応の均一性を確保する効果をもつ.被害の形態によって被災地区は, 個別被害ゾーン, 団地的被害ゾーン, 面的被害ゾーンに区分でき, これらの組み合わせによって災害レベルは異なる.本論では, 災害レベルを3種に類型化し, 各レベルに対する計画的な災害復旧方法を示した.</p>
著者
亀山 幸司 岩田 幸良 宮本 輝仁 北川 巌 久保田 幸
出版者
公益社団法人 農業農村工学会
雑誌
農業農村工学会論文集 (ISSN:18822789)
巻号頁・発行日
vol.89, no.1, pp.I_119-I_126, 2021 (Released:2021-04-01)
参考文献数
30

本研究では,有機物が不足する砂質土に対して,国内において入手が容易な木質バイオ炭と牛ふん堆肥の混入が土壌の物理・化学的特性に及ぼす影響について検討した.バイオ炭混入割合の増加により,全炭素,陽イオン交換容量(CEC),pH,易有効水分量,1 mm以上のマクロ団粒の割合が有意に増加した.また,バイオ炭を堆肥と混合施用した場合,全炭素,pH,CEC,1 mm以上のマクロ団粒の割合が有意に増加した.更に,バイオ炭と堆肥の混合施用によりCECが相乗的に増加する可能性が考えられた.ただし,バイオ炭単独の施用では混入割合の増加と共に易有効水分量が増加する効果が見られたが,バイオ炭と堆肥の混合施用の場合は易有効水分量の増加が抑制された.今回の試験結果から,砂質土に対して木質バイオ炭と牛ふん堆肥を混合施用した場合,保肥性の改善やマクロ団粒の増加が期待できる一方,易有効水分量の増加が抑制されることやpHの急激な増加に留意する必要があると考えられた.
著者
松島 健一 田中 忠次 毛利 栄征
出版者
公益社団法人 農業農村工学会
雑誌
農業農村工学会論文集 (ISSN:18822789)
巻号頁・発行日
vol.2008, no.254, pp.151-160,a2, 2008

地盤内に設置された矢板を引抜く際, 地盤に生じた空隙が応力の再配分を引き起こし, 地中構造物に大きな影響を及ぼす. 本研究では, 矢板引抜きに伴う地盤と地中構造物の相互作用メカニズムを解明するため, 矢板引抜き現象を考慮した数値解析モデルを開発した. 地盤中の応力解放は要素掘削手法を適用し, 空隙両側の不連続な地盤面の接触は, Belytshko et al.(1991) が提案したピンボールアルゴリズムを採用した. 本手法は, パイプラインを対象とした矢板引抜き模型実験における埋設管のたわみや地表面沈下などの挙動を定性的に予測できることが分かった. また, 地盤中のひずみや土圧分布の変化などから埋設管のたわみの発生メカニズムを明らかにすることができた.
著者
上野 和広 森山 翼 森 充広 川邉 翔平 石井 将幸
出版者
公益社団法人 農業農村工学会
雑誌
農業農村工学会論文集 (ISSN:18822789)
巻号頁・発行日
vol.89, no.2, pp.I_333-I_341, 2021 (Released:2021-11-09)
参考文献数
25

コンクリート水利構造物で生じるカルシウム(Ca)溶脱と,コンクリート中のモルタル部分が先行的に摩耗され,粗骨材が露出する選択的摩耗が,無機系補修材料とのせん断付着強度へ及ぼす影響を評価した.その結果,コンクリート表面の算術平均粗さが大きいほどせん断付着強度が高くなること,コンクリートからのCa溶脱によってせん断付着強度が低下すること,が明らかとなった.このせん断付着強度の低下は,コンクリートの表面が平滑な状態でCa溶脱した時に顕著であり,極端に低いせん断付着強度が得られた.ただし,Ca溶脱が進行するにもかかわらず,摩耗がほとんど進行しないこのような条件は,実際の構造物では生じにくいと考えられる.一方,骨材が露出する条件では,Ca溶脱の影響によってせん断付着強度が低下したとしても,比較的高いせん断付着強度を有することが明らかとなった.
著者
桒原 良樹 中島 正裕
出版者
公益社団法人 農業農村工学会
雑誌
農業農村工学会論文集 (ISSN:18822789)
巻号頁・発行日
vol.82, no.1, pp.37-46, 2014

本研究では,八郎潟干拓地(秋田県大潟村)において農家・非農家を対象に,居住経緯の解明,交友関係形成の機会の解明,パーソナル・ネットワークの分析による交友関係の構造の解明,今後のコミュニティの形成に向けた課題の析出,を行い,以下の結果を得た.1)交友関係形成の機会は「仕事」「子供」「テーマ型組織」「地縁型組織」「同級」に分類した.2)農家を中心としたコミュニティは維持されている一方で,農家・非農家間の交友関係は十分に形成されていない.3)"時間面の壁"(ライフスタイルが異なる)および"空間面の壁"(住区が異なる)が農家・非農家間の交友関係形成を阻害している.4)子供またはテーマ型組織を介した交友関係の形成が農家・非農家間の親和性向上に影響を与えていると考えられる.
著者
浅野 勇 石神 暁郎 森 充広 川上 昭彦 川邉 翔平
出版者
公益社団法人 農業農村工学会
雑誌
農業農村工学会論文集 (ISSN:18822789)
巻号頁・発行日
vol.88, no.2, pp.II_35-II_47, 2020 (Released:2020-07-14)
参考文献数
27

凍結融解試験後のモルタル供試体の水流摩耗試験を行い,凍結融解作用がモルタルの耐摩耗性に与える影響を調べた.AE剤を添加した供試体の水中凍結融解試験後の相対動弾性係数は90%以上を保持しており凍結融解による劣化の程度は小さい.一方,AE剤を添加しない供試体の水中凍結融解試験後の相対動弾性係数は打設面で40%未満,底面では70~80%,中心部では80~90%となり,打設面の相対動弾性係数が最小となった.このように部位により大きな差が生じた.AE剤の添加によりモルタル供試体の耐凍害性は著しく向上した.凍結融解試験前の供試体の平均摩耗深さは,水セメント比が小さく表層品質が緻密であるものほど小さい.凍結融解試験後の供試体の平均摩耗深さは,凍結融解作用により供試体表層の相対動弾性係数が低下し組織の脆弱化が大きなものほど大きい.
著者
久田 重太 千家 正照 伊藤 健吾 丸山 利輔
出版者
公益社団法人 農業農村工学会
雑誌
農業農村工学会論文集 (ISSN:18822789)
巻号頁・発行日
vol.79, no.1, pp.1-7, 2011-02-25 (Released:2012-02-25)
参考文献数
10

ヒノキを中心とした常緑針葉樹林流域とミズナラなどの落葉広葉樹林流域において水文観測を行い,林相の違いが水収支特性に及ぼす影響を検討した.短期水収支法を1時間単位の流量データに適用した結果,広葉樹林流域に比べて針葉樹林流域の蒸発散量が大きいことが明らかになった.また,蒸散量をPriestley-Taylor式により推定することで, 蒸発散量から遮断蒸発量を分離したところ,落葉広葉樹流域に比べて針葉樹流域の遮断蒸発量が大きいことが示唆される結果となった.さらに,総流出量を直接流出量および基底流出量に分離することで,両流域の流出特性を検討したところ,2流域間に直接流出率に差がみられず,総流出量の差を生じさせているのは基底流出量の違いであった.これら水収支の各成分の検討から,林相の違いが遮断蒸発量と基底流出量に大きく影響していることを明らかにした.
著者
古郡 憲洋 岸本 圭子 本間 航介
出版者
公益社団法人 農業農村工学会
雑誌
農業農村工学会論文集 (ISSN:18822789)
巻号頁・発行日
vol.88, no.1, pp.I_165-I_177, 2020 (Released:2020-06-12)
参考文献数
43

里山の景観構成要素の接合部では, 生物の移動等を介して双方の景観要素が持つ物質循環機能が維持されてきたとされる.本研究では, 里山の森林と水田畦畔の接続性に着目し, これが生物群集や物質循環機能に与える影響を評価した.調査は, 新潟県佐渡市の伝統的な畦畔管理がなされた地域と基盤整備が施された圃場で現代的な畦畔管理がなされた地域で行い, 森林と水田畦畔の接続性が異なる環境間で微少環境要因, 土壌動物群集, 有機物分解率を比較した.その結果, 林縁構造が存在する接合部ではリター量が増加し, 林縁付近の有機物分解率が増大した.また, 林縁部が分断された畦畔では, 捕食者の個体数密度の低下, デコンポーザーとシュレッダーの個体数密度の増加, 有機物分解率の増大がみられた.森林と農地が隣接する場合でも, その接続性の違いにより林縁部の物質循環機能が異なることが示唆された.
著者
中嶋 佳貴 沖 陽子 足立 忠司 永井 明博 近森 秀高
出版者
公益社団法人 農業農村工学会
雑誌
農業農村工学会論文集 (ISSN:18822789)
巻号頁・発行日
vol.88, no.1, pp.I_29-I_37, 2020 (Released:2020-01-30)
参考文献数
29

河川生態系における沈水雑草群落の発生動態を把握するために, 岡山県南部の二級河川の前川において, 2004年から沈水雑草群落の分布を11年間調査し, 自然攪乱に伴う環境要因の変動と沈水雑草群落の分布との関係について検討した.2004年はセキショウモ及びササバモが優占し, ナガエミクリも帯状に群落を形成していた.その後, セキショウモ群落は2006年には全域に拡大し, 底質の粒径組成が細粒化すると共に全体の種組成は単純化した.ナガエミクリ群落はセキショウモ群落との競合により2007年に消失した.ササバモ群落もセキショウモ群落との競合により2008年から徐々に衰退したが, 2011年及び2013年の100mm以上の一雨降雨による自然攪乱によってセキショウモ群落が流出し, 再びササバモの分布が促されて種組成が多様化した.
著者
石神 暁郎 西田 真弓 浅野 勇 川上 昭彦 川邉 翔平 森 充広
出版者
公益社団法人 農業農村工学会
雑誌
農業農村工学会論文集 (ISSN:18822789)
巻号頁・発行日
vol.89, no.1, pp.I_37-I_51, 2021 (Released:2021-02-20)
参考文献数
38

積雪寒冷地におけるコンクリート施設では,近年,凍害や摩耗を対象とした調査・診断および補修・補強が行われている.従来の更新だけではなく,補修・補強を前提とした凍害や摩耗の調査・診断では,施設を構成するコンクリートの表面近傍における劣化状態の把握が重要となる.本研究では,北海道内に位置する複数の開水路および頭首工を構成するコンクリートにおいて,主に水に曝される部位を対象としたコア試験体の採取を行い,劣化状態の詳細調査を行った.その結果,積雪寒冷地において長期間供用されたコンクリート施設では,圧縮強度や相対動弾性係数などの力学的特性の低下を伴う著しい劣化を生じる場合があること,表面近傍における凍害とカルシウム成分の溶脱を伴う摩耗とが複合的に発生する可能性があることが明らかとなった.
著者
森 充広 森 丈久 渡嘉敷 勝 中矢 哲郎 藤原 鉄朗 齋藤 豊
出版者
公益社団法人 農業農村工学会
雑誌
農業農村工学会論文集 (ISSN:18822789)
巻号頁・発行日
vol.80, no.2, pp.87-95, 2012

上水道,工業用水などと共用されている農業用水路トンネルは,ライフラインとしての社会的重要度も高く,優先的に機能診断を行うべき施設であるにもかかわらず,断水が困難であり,機能診断に苦慮している.そこで,通水状態での農業用水路トンネルの機能診断を簡易的に実施することを目的として,流水中に高感度CCDカメラを搭載した装置を放流し,覆工に発生しているひび割れ等の変状を記録する一次診断が可能な調査システムを開発した.本システムの特徴は,高感度CCDカメラが常にトンネルの壁面に正対しつづける壁面自動追尾機能を導入したことである.実証試験によって本システムの性能を確認した結果,幅1.5mm以上のひび割れ,遊離石灰,漏水状況などを検出することができ,通水状態での一次診断として有効であることを確認した.
著者
近藤 美麻 伊藤 健吾 千家 正照
出版者
公益社団法人 農業農村工学会
雑誌
農業農村工学会論文集 (ISSN:18822789)
巻号頁・発行日
vol.81, no.5, pp.395-402, 2013-10-25 (Released:2014-10-25)
参考文献数
27

新規に造成されたビオトープ池への魚類の移動に伴うイシガイの定着と再生産に着目し,それに寄与した宿主魚種を検討した.イシガイの宿主として適性をもつ魚種を明らかにするために行なった寄生実験では,対象とした12魚種のうち6魚種から稚貝が得られた.そのうち寄生幼生の稚貝への変態率はオイカワおよびヨシノボリ類で高く,それぞれ95.3%と88.1%であり,他の魚種では5%に満たなかった.また,過去に行なわれたビオトープ池におけるイシガイ幼生の寄生状況およびイシガイと魚類の生息状況の調査結果より,オイカワは現地における幼生の平均寄生数と寄生率も高く,生息数も多い魚種であったことから,ビオトープ池においてはオイカワが主な宿主としてイシガイの定着と再生産に寄与したと考えた.
著者
近藤 美麻 伊藤 健吾 千家 正照
出版者
公益社団法人 農業農村工学会
雑誌
農業農村工学会論文集 (ISSN:18822789)
巻号頁・発行日
vol.79, no.2, pp.117-123, 2011-04-25 (Released:2012-04-25)
参考文献数
9

2008年5月から10月にかけて岐阜県に位置するビオトープ池と隣接排水路,その間に設置された魚道において魚類を採捕し,イシガイ類幼生の寄生状況を調査した.その結果,イシガイ類幼生の主な寄生主は,イシガイおよびトンガリササノハガイではオイカワ,ドブガイおよびマツカサガイではヌマムツであった.また,魚道において採捕した魚類のうち,ビオトープ池から排水路への降下魚と排水路からビオトープ池への遡上魚におけるイシガイ類幼生の寄生状況を比較した結果,遡上魚よりも降下魚において平均寄生数が大きく,かつ,寄生幼生の総数も多い結果となり,ビオトープ池がイシガイ類の繁殖場所としての機能を持ち,周辺水域への分布域の拡大や個体数維持に貢献していることが示唆された.