著者
阿部 康久 金 紅梅
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
地理学評論 Series A (ISSN:18834388)
巻号頁・発行日
vol.87, no.3, pp.248-266, 2014-05-01 (Released:2019-10-05)
参考文献数
43
被引用文献数
1

本稿では日系電機・電子部品メーカーA社の中間材を扱う上海における三つの販売部門を取り上げ,製品特性の違いにより取引先企業の本社所在地別構成や人材現地化の程度にどのような差異があるのかを検討した.結論として三つの総括部のうち,中国企業向けの販売比率が最も高い第1総括部では,管理職などへの中国人人材の登用が進んでおり,現地法人からの提案を受けるかたちで中国市場の需要に合わせた製品の開発・販売も行われていたが,それが低い第2総括部と第3総括部ではこのような傾向はみられなかった.特に第3総括部では,垂直統合型の製品を販売しているため,グループ企業などの日系企業への販売が多く,中国人人材の管理職への登用はあまり進んでいなかった.同社では今後一層人材の現地化を進めていく必要性が認識されていた.その一方で同社は,日本本社が取引に関する決定権を持ち続けながら,本社の現地法人への支援機能を強化する方針も採っていた.
著者
石﨑 研二
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
地理学評論 Series A (ISSN:18834388)
巻号頁・発行日
vol.87, no.2, pp.87-107, 2014-03-01 (Released:2019-07-12)
参考文献数
55
被引用文献数
1

本稿の目的は,数理計画法による中心地理論のモデル化の過程を通して,クリスターラーとレッシュの理論を再解釈することである.まず,レッシュの市場地域論を総需要最大化問題として定式化し,仮想地域においてモデルを適用した.その結果,成立閾の値に応じて市場地域の大きさが異なる理論的な中心地システムを導出できた.次に,対極的な目的である総利潤最大化問題を定式化し,二つの目的を統合する一般化モデルを提示した.多目的計画法を用いた一般化モデルは,①財の供給条件,②需要の距離弾力性,③重み付けの条件によって目的関数の構成が変わる.一般化モデルの配置原理から解釈すると,単一財の立地におけるレッシュとクリスターラーの理論は,前者が需要の最大カバーと総移動距離最小化を融合した総需要最大化問題,後者が総移動距離最小化と立地数最小化を多目的計画法で定式化した一般化メディアン問題として位置づけることができる.