著者
藤本 潔
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
地理学評論 Series A (ISSN:18834388)
巻号頁・発行日
vol.82, no.5, pp.465-490, 2009-09-01 (Released:2011-08-25)
参考文献数
88
被引用文献数
1

氷河性アイソスタシーにより沈降傾向にある北海南部大陸沿岸の海面変化研究史をまとめるとともに,地質層序や地形発達との関係も考慮し完新世中期以降の海水準微変動について考察した.オランダ西部から北西ドイツに共通する現象として,5200~4500 cal BPの海面上昇停滞または海面低下と,4500~4100 cal BPの上昇の加速が認められた.また2350~1900 cal BPの塩性湿地の一時的な離水現象から,この間の海面低下とその後の再上昇が推定された.北西ドイツで推定されている3300~2900 cal BPの急激な海面低下はオランダでは認められない.オランダの海面変化曲線は圧密の影響を排除するため,基底泥炭基部から得られた14C年代値に基づく地下水位変動曲線から間接的に推定されたものである.この手法では海面低下の検出は難しく,見かけ上海面上昇速度の低下または停滞と認識される可能性がある.
著者
藤本 潔 酒井 寿夫 森貞 和仁 古澤 仁美 中嶋 敏祐 布施 修 小林 繁男
出版者
森林立地学会
雑誌
森林立地 (ISSN:03888673)
巻号頁・発行日
vol.40, no.2, pp.83-90, 1998-12-25 (Released:2017-04-03)
参考文献数
20

1984年の長野県西部地震に伴い発生した御岳岩屑流は,森林域にも多大な被害をもたらした。この岩屑流発生から10年目の植生発達状況と立地環境との関係を明らかにするため,岩屑流堆積物が薄く堆積する標高約2000mの小三笠山北側の緩傾斜地(田の原)と,厚さ数10mの岩屑流堆積物で埋積された標高約950mの王滝川谷底部(氷ヶ瀬)にトランセクトを設け,地形断面測量,堆積物の粒径分析および植生調査を行った。波長数10〜100m程度,振幅10m程度の波状起伏がみられる田の原では,流水の影響を受けやすい谷部で粒径2mm以下の細土含有率や細土中のシルト・粘土含有率に顕著なばらつきがみられ,細土がほとんど存在しない箇所で出現種数・被度とも低い値を示すものの,細土含有率が5%程度以上ある地点では,微地形条件に関わらず,これらは同様の値を示した。氷ヶ瀬では岩屑流堆積面が現河床を含め3段に段丘化しており,岩屑流堆積後,河川による侵食作用を被ることなく安定した地形環境下にあった上位面が出現種数・樹高・被度のいずれも最も高い値を示した。これらの結果は,流水による侵食プロセスが初期植生発達過程に大きな影響を及ぼしていることを示す。岩屑流発生後,同じ期間を経ていると考えられる田の原と氷ヶ瀬上位面を比較すると,樹高およびそれぞれの種の被度百分率の合計値のいずれも標高の低い氷ヶ瀬上位面の方が高い値を示した。
著者
藤本 潔
出版者
THE TOHOKU GEOGRAPHICAL ASSOCIATION
雑誌
東北地理 (ISSN:03872777)
巻号頁・発行日
vol.40, no.2, pp.139-149, 1988-05-16 (Released:2010-04-30)
参考文献数
10
被引用文献数
2

福島県南東部に位置する夏井川下流沖積平野, 藤原川下流沖積平野, 鮫川下流沖積平野にみられる浜堤列について, 空中写真判読, 現地調査, 1/2,500国土基本図による地形断面図の作成および14C年代測定により, 各平野間での浜堤の対比および形成時期の推定を行った。その結果, 本地域にみられる浜堤列は3列に大別され, それぞれの形成開始時期は, 内陸側のものから順に約4,000年前以前, 約3,000年前, 1,700~1,600年前頃であることが判明した。さらに, 本地域の各平野間でみられる浜堤列の形態上の相違 (浜堤の有無, 浜堤頂部の堤間湿地からの比高, および, 浜堤列間の距離) は, 海岸線の湾口部に対する相対的な位置関係による波の影響の度合や, 堆積の場としての沖積層下の基盤地形の相違に大きく関わっていることが明らかとなった。
著者
藤本 潔 羽佐田 紘大 谷口 真吾 古川 恵太 小野 賢二 渡辺 信
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2018, 2018

1.はじめに<br><br>マングローブ林は、一般に潮間帯上部という極めて限られた環境下にのみ成立することから、温暖化に伴う海面上昇は、その生態系へ多大な影響を及ぼすであろうことが予想される。西表島に隣接する石垣島の海面水位は、1968年以降、全球平均とほぼ同一の年平均2.3mmの速度で上昇しつつある(沖縄気象台 2018)。すなわち、ここ50年間で11.5cm上昇した計算となる。近年の上昇速度が年10mmを超えるミクロネシア連邦ポンペイ島では、マングローブ泥炭堆積域で、その生産を担うヤエヤマヒルギ属の立木密度が低下した林分では大規模な表層侵食が進行しつつあることが明らかになって来た(藤本ほか 2016)。本発表は、本年2月および8月に西表島のマングローブ林を対象に実施した現地調査で見出された海面上昇の影響と考えられる現象について報告する。<br><br>2.研究方法<br><br>筆者らは、西表島ではこれまで船浦湾のヤエヤマヒルギ林とオヒルギ林に固定プロットを設置し、植生構造と立地環境の観測研究を行ってきた。今回は、由布島対岸に位置するマヤプシキ林に新たに固定プロット(幅5m、奥行70m)を設置し、地盤高測量と毎木調査を行った。プロットは海側林縁部から海岸線とほぼ直行する形で設置した。地盤高測量は水準器付きポケットコンパスを用い、cmオーダーで微地形を表記できるよう多点で測量し、ArcGIS 3D analystを用いて等高線図を作成した。標高は、測量時の海面高度を基準に、石垣港の潮位表を用いて算出した。毎木調査は、胸高(1.3m)以上の全立木に番号を付し、樹種名、位置(XY座標)、直径(ヤエヤマヒルギは最上部の支柱根上30cm、それ以外の樹種は胸高)、樹高を記載した。<br><br>3.結果<br><br> 海側10mはマヤプシキのほぼ純林、10~33mの間はマヤプシキとヤエヤマヒルギの混交林、33~50mの間はヤエヤマヒルギとオヒルギの混交林、50mより内陸側はほぼオヒルギの純林となっていた。70m地点には立ち枯れしたシマシラキが確認された。立ち枯れしたシマシラキは、プロット外にも多数確認された。<br><br> マヤプシキは直径5㎝未満の小径木が46%、5~10cmが37%を占める。20m地点までは直径10cm未満のものがほとんどを占めるが、20~33mの間は直径10cmを超えるものが過半数を占めるようになる。最大直径は23.3cm、最大樹高は5.7mであった。ヤエヤマヒルギはほとんどが直径10cm未満で、直径5cm未満の小径木が74%を占める。最大直径は47m付近の13.8cm、最大樹高は5.7mであった。オヒルギは直径5cm未満の小径木は少なく、50~70mの間では直径10cm以上、樹高6m以上のものがほぼ半数を占める。最大直径は19.9cm、最大樹高は11.1mに達する。<br><br>地盤高は、海側林縁部が標高+28cmで、内陸側に向かい徐々に高くなり、45m付近で+50cm程になる。45mより内陸側にはアナジャコの塚であったと思われる比高10~20cm程の微高地が見られるが、一般的なアナジャコの塚に比べると起伏は小さい。この林の最も内陸側には、起伏の大きな現成のアナジャコの塚が存在し、そこではシマシラキの生木が確認された。立ち枯れしたシマシラキはアナジャコの塚であったと思われる起伏の小さな微高地上に分布していた。<br><br>4.考察<br><br> シマシラキはバックマングローブの一種で、通常はほとんど潮位の届かない地盤高に生育している。立ち枯れしたシマシラキはアナジャコの塚上に生育していたが、近年の海面上昇に伴いアナジャコの塚が侵食され地盤高を減じたため、冠水頻度が増し枯死した可能性がある。船浦湾に面する浜堤の海側前縁部にはヒルギモドキの小群落が見られるが、近年海岸侵食が進み、そのケーブル根が露出していることも確認された。このように、全球平均とほぼ同様な速度で進みつつある海面上昇に対しても、一部の樹種では目に見える形での影響が現れ始めていることが明らかになった。<br><br>参考文献<br>沖縄気象台 2018. 沖縄の気候変動監視レポート2018. 藤本潔 2016. 日本地理学会発表要旨集 90: 101.
著者
藤本 潔
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2009, pp.110, 2009

<B>はじめに</B> 海水準変動は海岸地域の地形形成や環境変化に多大な影響を及ぼす重要な因子のひとつである.1970年代以降、テクトニックには安定地域と考えられる地域間での最高海水準の時期や高度の相違は,アイソスタシー理論である程度説明できることが明らかになる。しかし,微変動に関しては,アイソスタシーによる沈降域では顕著な現象として見出されていないことから,未だに統一された見解が得られていないのが現状である.本発表では,氷河性アイソスタシーの影響で沈降傾向にあり,現在を最高海水準とする平滑曲線が描かれてきた典型地域のひとつとして知られる北海南部大陸沿岸域において, <SUP>14</SUP>C年代測定法導入以降の完新世海水準変動研究史,および海面変化に関わる沿岸低地の地形地質を紹介すると共に,それらデータの信頼性を評価することで,特に完新世中期以降の海水準微変動について考察することを目的とする.<BR><B>微変動の可能性</B> 本地域で海水準微変動の検出を目的とした研究は,オランダ西部のVan de Plassche(1982),北西ドイツのBehre(2003)のみである.Van de Plassche(1982)は,基底泥炭基部から得られたデータから7000~2800 cal BPの間に数回の地下水位上昇速度の変化を見出し,海水準変動との関係について考察した.Behre(2003)は数回の海面低下を伴う9700 cal BP以降の海水準変動曲線を描いた.しかし,使用されたデータには圧密の影響を伴うもの、泥炭層や文化層形成期から間接的に推定されたものを含むため,変動のタイミングは議論し得るものの,振幅や高度の信頼性は必ずしも高くない.両者を比較すると,5200~4500 cal BPに海面上昇の停滞もしくは海面低下が起こった可能性が高い.4500~4100 cal BPの上昇速度の加速にも同時性が認められる.3900~3400 cal BPの間には北西ドイツでややタイミングが遅れるものの,両地域で上昇速度の加速が見られる.一方、3300~2900 cal BPの間に北西ドイツでは急激な海面低下が推定されているのに対し,オランダ西部ではほぼ停滞している.この間オランダでは塩性湿地の淡水化や泥炭地の海側への拡大は見られないことから,急激な海面低下は圧密に伴う見かけの現象である可能性が高い.2350~1900 cal BPの間にはオランダ全域の塩生湿地で一時的な離水現象が起こったことから,この間の海面低下とその後の再上昇の可能性が指摘される.これらの変動傾向は,5200 cal BPの上昇速度の減速に先立つ相対的な急上昇を除き,アジア・太平洋地域の変動とタイミングがほぼ一致する.<BR><B>手法的問題と今後の課題</B> オランダで復元された海水準変動曲線のほとんどは,泥炭層や粘土層の圧密沈下の影響を排除するため更新世堆積物や砂丘堆積物を覆う基底泥炭基部から得られた<SUP>14</SUP>C年代値に基づく地下水位変動曲線から間接的に推定されたものである.この手法で海水準微変動を検出するためには,河川勾配効果,氾濫原効果,海岸砂丘による開閉の影響,基盤斜面の微地形の影響を考慮しつつ,地下水位との関係が明確な泥炭試料を一連の斜面上から高密度に採取することが求められる.しかし,たとえこれらの条件が克服できたとしても,一時的な海面低下の証拠を見出すことは難しい.なぜなら,海面低下は表層泥炭の分解を引き起こし,その後の海面上昇に伴いその上に新たな泥炭層が重なって形成される.その結果,見かけ上,海面上昇速度の低下もしくは停滞現象として見出される. オランダではこれまで一方的な海面上昇を示す平滑曲線が受け入れられてきた.その主要な根拠は"カレー・ダンケルク堆積物"と呼ばれてきた海進堆積物には広域的同時性が認められないという認識にある.しかし,オランダ西部と北部ではかなりの部分で同時性が認められる上,北西ドイツにおける海面変化傾向はオランダ北部の海進海退時期とタイミングがよく一致する.これまで一般に受け入れられてきた平滑曲線は,上記の手法的問題を含む概略的な傾向曲線に過ぎない.今後は海岸砂丘による開閉の影響を受けていないオランダ北部地域で,圧密沈下の影響を評価した上で,海進海退堆積物の形成時期と高度を示すより精度の高いデータの蓄積が求められる.
著者
藤本 潔 小野 賢二 渡辺 信 谷口 真吾 リーパイ サイモン
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2017, 2017

1.はじめに<br><br> マングローブ林は、地球上の全森林面積の1%にも満たないが、潮間帯という特殊環境下に成立するため、他の森林生態系に比べ、地下部に大量の有機物を蓄積している。しかし、その主要な供給源である根の生産・分解プロセスは不明のままであった。そこで本研究では、主として細根の蓄積・分解速度を、樹種別、立地環境別に明らかにすることを目的とする。対象地域は、熱帯湿潤環境下のミクロネシア連邦ポンペイ島とマングローブ分布の北限に近い亜熱帯環境下の西表島とする。対象樹種は、アジア太平洋地域における主要樹種で、ポンペイ島はフタバナヒルギ(<i>Rhizophora<br>apiculata</i>)、ヤエヤマヒルギ(<i>Rhizophora stylosa</i>)、オヒルギ(<i>Bruguiera<br>gymnorrhiza</i>)、マヤプシキ(<i>Sonneratia alba</i>)、ホウガンヒルギ(<i>Xylocarpus<br>granatum</i>)、西表島はヤエヤマヒルギ、オヒルギとする。<br><br>2.研究方法<br><br> 各樹種に対し、地盤高(冠水頻度)の異なる海側と陸側の2地点に試験地を設置し、細根蓄積速度はイングロースコア法、分解速度はリターバッグ法で検討した。イングロースコアは径3cmのプラスティック製で、約2mmのメッシュ構造となっている。コアは各プロットに10本埋設し、1年目と2年目にそれぞれ5本ずつ回収した。コア内に蓄積された根は生根と死根に分け、それぞれ乾燥重量を定量した。コア長は基盤深度に制約され20~70cmと異なるが、ここでは深度50cmまで(50cm未満のコアは得られた深度まで)の値で議論する。リターバッグにはナイロン製の布を用い、径2㎜未満の対象樹種の生根を封入し、各プロットの10cm深と30cm深に、それぞれ3個以上埋設した。<br><br>3.結果 <br><br> 1) 細根蓄積速度<br><br> ポンペイ島では、現時点でフタバナヒルギとヤエヤマヒルギ陸側の2年目のデータが得られていないため、ここでは1年目のデータを用いて検討する。細根蓄積量(生根死根合計)は、海側ではいずれの樹種も40~50 t/ha程度であったが、陸側では、ヤエヤマヒルギ、マヤプシキ、およびオヒルギが25 t/ha前後と相対的に少なかった。樹種毎に海側と陸側で比較したところ、フタバナヒルギの死根と生根死根合計、マヤプシキの生根と生根死根合計、オヒルギの生根死根合計で海側の方が陸側より有意に多かった。樹種間で比較すると、海側の生根はマヤプシキが有意に多かった。陸側の死根は、ヤエヤマヒルギがオヒルギ、マヤプシキ、フタバナヒルギより多い傾向にあり、陸側の生根死根合計は、ヤエヤマヒルギとホウガンヒルギがオヒルギ、マヤプシキ、フタバナヒルギより多い傾向にあった。海側の死根は、マヤプシキがヤエヤマヒルギ、オヒルギ、ホウガンヒルギより有意に少なかった。<br><br> 西表島の1年目の細根蓄積量は、ヤエヤマヒルギが海側で6 t/ha、陸側で9 t/ha、オヒルギが海側で4 t/ha、陸側で6 t/haであった。海側と陸側で比較すると、1年目、2年目共、いずれの樹種も有意差はみられなかったが、樹種間では2年目の陸側生根でヤエヤマヒルギがオヒルギより有意に多かった。標高がほぼ等しいヤエヤマヒルギの陸側とオヒルギの海側では有意差はみられなかったが、ヤエヤマヒルギの海側とオヒルギの陸側では前者が有意に多かった。<br><br> ポンペイ島と西表島で比較すると、ポンペイ島の方がヤエヤマヒルギで約7倍、オヒルギで4~7倍多かった。ただし、地上部バイオマスは、西表島のヤエヤマヒルギ林が80 t/ha、オヒルギ林の海側が54 t/ha、陸側が34 t/haであるのに対し、ポンペイ島のヤエヤマヒルギ林は216 t/ha、オヒルギプロットの林分は499 t/haであった。すなわち、地上部バイオマスはポンペイ島の方がヤエヤマヒルギ林で約2.7倍、オヒルギ林で9.2~14.6倍多く、ヤエヤマヒルギは地上部の相違以上に地下部の相違が大きいのに対し、オヒルギは地上部の相違ほど地下部の相違は大きくなかった。<br><br>2)分解速度<br><br> ポンペイ島におけるリターバッグ設置1年後の残存率は、ヤエヤマヒルギの海側10cm深で7.7%と極端に低く、フタバナヒルギの陸側30cm深とオヒルギは60~85%と相対的に高かった。他の樹種はおおよそ40~50%程度であった。西表島はいずれも50~60%で有意差はみられなかった。
著者
田淵 隆一 藤本 潔 持田 幸良 平出 政和 小野 賢二 平田 泰雅 菊池 多賀夫 倉本 恵生
出版者
独立行政法人森林総合研究所
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2002

ポンペイ島マングローブ林はI.Rhizophora stylosa群落、II.sonneratia alba群落、III.rhizophora apiculata・Bruguiera gymnorrhiza群落の3タイプに大別され、I、II群落は高密度の支柱根や呼吸根で特徴づけられる。泥炭層厚と^<14>C年代値とから主要群落の泥炭層厚と形成に要する期間を推定した。海側前縁部に成立するI、II型群落が深さ0〜0.5mで400年以内、最も分布面積が広いIII型では1〜2mで850〜1700年、ほとんどで1700年前後の時間が経過している。地上部現存量は、サンゴ礁原上の成熟林は2004年時点で566ton/ha、エスチュアリ域の発達した林で2005年に704ton/haと推定されなお旺盛に成長中であり、成熟林での炭素蓄積はポンペイ島で160〜300ton/ha程度、炭素蓄積速度は年当りおよそ0〜3ton/ha/yr程度と非常に高い。炭素貯留はほとんど泥炭によるものであり、年間15ton/ha程度供給される小型リターの貢献度は低い。また年平均で3〜4ton/ha程度の大型リターが枯死個体として供給される。泥炭としての炭素量は高く、2000ton/ha程度にも達する林がある。森林の更新は成熟林分下では大型ギャップができない限り暗く困難である。材分解特性を明らかにし、分離された木材腐朽担子菌Fomitopsisi pinicolaからいくつかの機能性遺伝子を単離し、厳しい環境条件を許容する能力をみとめた。高分解能衛星データを同島におけるマングローブ林域を抽出、種組成によるゾーニングと個体サイズからの林分タイプのマッピングを行ない炭素蓄積量の面的評価を行なった。