8 0 0 0 OA 津波と神社

著者
山崎 憲治
出版者
The Association of Japanese Geographers
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
pp.100038, 2013 (Released:2014-03-14)

三陸沿岸部の被災地を廻れば、神社の被災が少ないことに気付く。神社は特別な位置にあったのか?津波防災をあらかじめ意図して、神社の立地を定めていたのか。しかし、三陸のリアス海岸を離れ、仙台平野に入ると神社の被災は少なくない。平野部の農村の神社と漁村の神社の立地の違いはどこにあるのか。そもそも神社と海、あるいは当該地域集落コミュニティと海とのかかわりは、神社を介しその位置に、かかわりの象徴が示されてはいないか考察を進めてみた。沿岸部で集落は津波によって壊滅状態に陥ったが、神社がぽっかりと被災を免れている光景にしばしば目にすることになる。コミュニティと神社の位置を検討してみる。本研究では、沿岸部に立地する神社を、海とコミュニティの関係から8つの類型に分け、それぞれの被災状況を示した。ここから当該地域の海と生活・生産の関わりを示す視点を明らかにしたい。神社が津波避難に対し有効であった事例を示し、避難所として、神社の有効性を検討すると共に、神社を積極的に活かす上での課題を明示したい。
著者
山崎 憲治
出版者
The Association of Japanese Geographers
雑誌
地理学評論 (ISSN:00167444)
巻号頁・発行日
vol.52, no.11, pp.623-634, 1979-11-01 (Released:2008-12-24)
参考文献数
17
被引用文献数
1

With the concentration of population in cities in 1960's, there have been drastic but chaotic conversions of agricultural land to urban uses in the suburban areas. This trend brought about the destruction of traditional functions of paddy fields, upland feuds, and coppices, which prevented the occurrence of floods, and the area has come to suffer from a flood even with a small rain shower.In this paper, the writer studies the class differentiation of farmers in relation to conversion of land and ownership in the Kurome River Basin, Niiza City, Saitama Prefecture. This area is often inundated with water. As a result of my interview investigation of twenty farmers in the district of Horinouchi, where the Kurome River has frequently overflowed, the following tendencies were recognized: 1) The area subject to flood, has extended year by year. But farmhouses did not suffer from a flood because they were on a little higher grounds. 2) The conversion of the land use in this area caused the frequent floods but there seems to be a background that the farmers are less concerned about the water and irrigation canals they have been using, as they tend to specialize in producing only vegetables. 3) The buyers of the farmland are mainly these three: public enterprises, real estate sub-dividers, and individuals. The public works such as municipal roads and Kan-Etsu Expressway construction, and river conservation made the land price high and led to the con-version of farmland. Since 1967, the parcels of paddy fields which they had been frequently flooded, were converted into subdivisions. Since early 1960's individuals who wanted residential lots have bought many but small parcels where open field vegetables such as carrots were cultivated. 4) The farmers that obtained funds from disposing their farmlands and reinvested in agricultural sectors such as carrot production and hog raising made themselves owner farmers. But, the farmers that spent the funds on their living or rental houses construction turned to be part time farmers who cultivate vegetables for their own consumption. In this district where farmers have given up rice production and tend to specializein vegetables like carrots, as the urbanization is sprawling, the class differentiation of farmers is determined by both the type of disposal of farmlands (such as its time, scope, destination, and price) and the number of family members engaging in farming. This class differentiation is transitional and it will be surely intensified by the circumstances that are getting worse for agriculture.
著者
石井 素介 山崎 憲治 生井 貞行 内田 博幸 岡沢 修一
出版者
学術雑誌目次速報データベース由来
雑誌
地理学評論. Ser. A (ISSN:00167444)
巻号頁・発行日
vol.69, no.7, pp.559-578, 1996-07-01
参考文献数
10
被引用文献数
2

この報告は,阪神・淡路大震災の被害の地域構造を,犠牲者多発地区の特性ならびに避難所の実態から探るものである.震災犠牲者は社会的弱者である老人・女性に集中した.激甚な被害は神戸市都心周辺部の老朽密集住宅地・住工混在地域で顕著であった.これは,現代の大都市に内在する構造的弱点と社会的弱者に震災の重圧がかかり,その衝撃を契機としてこれらの矛盾が一挙に露呈されたものとみることができる.<br> 地震の発生に際して,被害の程度を軽減させるうえで地域コミュニティの果たした役割は大きい.初期消火,住民の安否確認,生き埋め者の救出を短時間のうちに行なうには,地域社会がどのように形成・維持・展開されてきたかが大きなかかわりをもつ.とくに都市部では地元の濃密な人間関係の解体が進んでおり,それがインナーシティ問題に直結して被害の拡大に影響している.<br> 地震直後,被災者はまず安全・近接・公共の空間を求あ,大多数が近隣の学校に避難した.元来学校は防災計画上の避難所として指定されていたが,受け入れ態勢は万全ではなかった.しかし多数の被災住民が殺到するなかで,学校は地域社会の中核に位置する公共空問として事実上重大な役割を果たした.学校避難所の運営は被災住民と行政の間に立って多くの困難に直面した.自身被災者でもある教職員が仲介役として多面的な役割を果たした場合も多い.学校避難所の推移には地域の被災程度や自治組織確立度如何によって多様な類型がみられた.しかし,緊急事態への対応として経験した避難者救援活動のなかで生まれてきた教職員・ボランティア・地域住民間の連帯の萌芽は,今後の震災からの復興過程においても,地域コミュニティ再建への道標として,重要な示唆となるであろう.この震災体験は,地域を場として将来の地域の担い手を育てる地理教育にとっても,課題として活かすべき多様な示唆を含むものといえよう.
著者
生井 貞行 原田 敏治 松沢 正 山崎 憲治
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
地理学評論 Ser. A (ISSN:00167444)
巻号頁・発行日
vol.64, no.7, pp.472-492, 1991-07-01 (Released:2008-12-25)
参考文献数
23
被引用文献数
1

大都市周辺の畑作農業地域は,市場への近雛をいかして野菜酸として発展してきた.しかし,近年の都吏化現象の拡大と,遠隔大規模産地による市場支配で,これらの地域の生産力は低下傾向にある. 三浦市は東京大都市圏の一角にあって,第二次世界大戦前から温暖な気候条件をいかして,東京への野菜供給地として発展してきた.とくにダイコンは大正時代に,東京市場における練馬ダイコンとの競合を経て,有力産地の1つとなった. 本研究では,三浦市の露地野菜生産の発展の条件について南下浦地区大乗集落を事例にして考察した.その結果,ダイコンとキャベツの指定産地になり,共販体制が確立し,安定した価格で販売が可能となったこと,近年,おもに夏作で保有労働力や経営面積に見合った作物や販売方法を選択し,経営が改善されつつあることが発展の条件となっていることが明らかとなった.
著者
山崎 友子 HALL James 西館 数芽 山崎 憲治 山崎 憲治
出版者
岩手大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

東日本大震災被災地の調査および中・高・保育園で実践的研究を行った。災害サイクル図を析出し、災害を予報,復旧復興も含めて全体系として把握することが,減災・災害弱者を生まない・災害に強い地域作りでも肝要であることを示した。また、学校が組織的避難に加え、地域の復興を意識した教育活動により、子ども達に復興の担い手としての意識を高めていることをフォーラムで明らかにした。防災教育とは「被災地から学ぶ」ことが示された。