著者
岡室 美恵子
出版者
千葉経済大学
雑誌
千葉経済論叢 (ISSN:21876320)
巻号頁・発行日
vol.54, pp.35-52, 2016-07-21

原油価格の下落、サウジアラビアとイランの国交断交など中東情勢の緊迫化・混迷化により中東経済の減速が懸念されている。主要産油国ではエネルギー補助金の削減や付加価値税の導入などによる財政改善や構造改革に着手し始めている。そのなかで、ヨルダン・ハシェミット王国(ヨルダン)は、石油や天然ガスなどのエネルギー資源に恵まれず、しかし、産油国経済と密接に関係しつつその経済を発展させてきた。その一方で、地勢的、外交的な重要性を増している。非産油国であるが、中東情勢において重要性を増すヨルダン経済の現状を概観し、今後、その課題と可能性の詳細分析に必要な初期的な分析を行う。
著者
岡室 美恵子
出版者
千葉経済大学
雑誌
千葉経済論叢 (ISSN:21876320)
巻号頁・発行日
vol.53, pp.39-53, 2015-12-17

2012年、中国山東省青島市で日本の介護保険に類似する「長期医療護理保険」の試験的導入が開始された。中国は、2035年に2人の労働者が1人の高齢者を支える「超高齢社会」を迎えると推測されており、「一人っ子政策」の完全撤廃が決定された一方、高齢化に対応する社会保障・福祉制度の整備が急務となっている。本稿は、中国における高齢化対応政策の変遷と介護保険制度の試験導入の過程を概観し、今後、超高齢社会への対応を迫られる中国の社会保障制度の運営と持続可能性、財政的課題、国際比較などの多様な視角から分析を行うための初期的な考察を行うものである。
著者
菅根 幸裕
出版者
千葉経済大学
雑誌
千葉経済論叢 (ISSN:21876320)
巻号頁・発行日
vol.48, pp.七五-一一四, 2013-07-25

近世における様々な俗聖のうち、鉢叩をとりあげ、常陸国新治郡宍倉村(茨城県かすみがうら市)の空也堂に伝わる史料から、その実態を分析する。空也堂の鉢叩は自らの祖を空也とし、空也を醍醐天皇第二皇子とする巻物を携え、ステータスアップを図ったものであると考える。近世、鉢叩・鉢屋・茶筅などの空也聖は西日本に顕在し、東日本ではこの宍倉空也堂の史料が唯一のものである。しかも空也堂には末流が存在し、鉢叩にいわゆる本末関係が結ばれていたことが明らかになった。
著者
粟沢 尚志
出版者
千葉経済大学
雑誌
千葉経済論叢 (ISSN:21876320)
巻号頁・発行日
vol.49, pp.65-78, 2013-12-21

本稿は、商店街に関して筆者が展開した理論的考察を、久繁哲之介氏の著書『商店街再生の罠』で見出された観察や導かれた含意と対応させて、商店街の役割とは、私益よりも公益を重視するような人を中心とした組織的市場ととらえるべきであることを明らかにしている。第1節では、心理会計モデルを用いて、コミュニケーションが顧客の心理的価値を高めるために重要であることを明らかにしている。第2節では、地域コミュニティが持つ価値観が、えてして不統一になりがちな商店街各店へ一貫性をもたらすために重要であることを明らかにする。第3節では、商店街と市民とのゆるやかなつながりが生み出されると、それが買い物の安心感をもたらし、さらに店の経営努力によって商店街の競争優位が高まることを示す。
著者
串山 寿 三浦 洋子
出版者
千葉経済大学
雑誌
千葉経済論叢 = CHIBA KEIZAI RONSO (ISSN:21876320)
巻号頁・発行日
no.66, pp.147-161, 2022-06-30

オンデマンド授業は、教員は授業の資料をアップロードし、学生は受講したい時に好きな時間に受講ができるメリットがある一方、学生の自主性に任せることによる授業の理解度のバラツキが考えられる。新型コロナウイルス拡大の影響で、オンライン授業やオンデマンド授業は当たり前になってきている中、教員は試行錯誤しながら授業を運営している。その授業の中で、履修生と教員とのあいだで直接意志の疎通のツールとなるのはチャットであるが、そこで交わされる質疑応答では、質問の内容以前に、情報関連の用語等に関して、教員としては当然わかっているだろうと思われることを学生は知らず、双方のちぐはぐさが目立ち、往々にして一方通行にもなりうる事態が生じている。主な原因は履修生の情報関連の知識不足であり、教員側は授業の他にそれらの補充もしなければならない、ということになる。そこで本稿では、オンライン授業やオンデマンド授業のイントロダクションとして、情報関係の基礎知識を教えることを念頭に、教育内容を考えてみた。
著者
串山 寿 三浦 洋子
出版者
千葉経済大学
雑誌
千葉経済論叢 = CHIBA KEIZAI RONSO (ISSN:21876320)
巻号頁・発行日
no.65, pp.95-112, 2021-12-01

新型コロナウイルス拡大の影響で、本学では一定数以上の受講者がいる授業については、オンデマンド授業を実施せざるをえなくなり、さらに今後こうした授業形態は長期間継続していくと予想される。もちろん教育分野に情報化が浸透していることは数年前から顕著であったが、本学は旧態然とした授業形態を採用していて、その波に乗り切れていなかった。しかし、絶好の機会が、新型コロナウイルス拡大とともに到来した。ここで大学のオンデマンド授業をどのように展開していくべきか、教員と学生との間での様々なやりとりを通して試行錯誤を繰り返すことにより、将来、情報化を土台にした大学教育をどのように実施すればよいか、そうした課題に一つの答えを導くことができるだろう。すなわち、本稿は、大学教育の将来を見据えながら、オンデマンド授業の実施方法を、暗中模索の中で、著者らが具体的に行った記録である。 本稿では、本学学生のオンデマンド授業を開講するうえで、学生の利用環境を調査するとともに、本学学生を対象にMicrosoft Forms(以下、Forms)を利用した出席管理についてその方法を提示し、学生のアンケートデータも加味して、その有用性や課題を分析した。 さらに、Microsoft Teams(以下、Teams)を利用したオンデマンド授業を行う上で、授業資料の掲載方法について提案した。ここでは、オンデマンド授業の資料提示について、Power Automateⅲを利用して指定した時間に自動的に掲載する方法を提案する。 また、テスト方法については、Formsを利用して行うことにしたが、以前から行っていた選択式に加え、計算した値を答えさせる作問方法を紹介する。
著者
岡室 美恵子 染矢 将和
出版者
千葉経済大学
雑誌
千葉経済論叢 = CHIBA KEIZAI RONSO (ISSN:21876320)
巻号頁・発行日
no.60, pp.91-110, 2019-06-28

The demonstration against the government which started in Tunisia, 2010 was quickly spread over the middle Eastern countries. Egypt was no exception. The President, Mubarak resigned in 2011. The government’s malfunction in the aftermath of the revolution, the emergence of the Islamic State, or IS in the region and the airplane crush put the Egyptian economy into deep troubles. The tourist revenue fell sharply and foreign direct investment flew out, which resulted in a shortage of international reserves. As a consequence, the Egyptian government asked IMF for rescue. One of the requirements for the Extended Fund Facility, the rescue package, was shifting to floating exchange rate regime. Egypt introduced floating exchange rate system in November 2016. This paper will investigate the impact of floating exchange rate regime on the Egyptian economy. The first paper analyzes the impact on trade. It is found the trade, both imports and exports, expanded soon after introducing floating exchange rate regime. Then, the paper runs the vector autoregressive model to analyze the impact of floating exchange rate regime on the monetary transmission channels. Four monetary transmission channels were identified to be working in floating exchange rate system. The study found that the exchange rate channel of discount rate and the bank lending channel of the reserve money were newly created after introducing floating exchange rate regium. The study also found that while discount rates were not statistically significant to explain exchange rates, bank lending yield of T-bill and asset prices, reserve money was significant.
著者
河原 礼修
出版者
千葉経済大学
雑誌
千葉経済論叢 The proceedings of Chiba Keizai University (ISSN:21876320)
巻号頁・発行日
no.61, pp.79-109, 2019-12

本論は自己評価点検の一つとして千葉経済大学で実施された学生の授業評価アンケートについて、学生満足度を向上させるためにどのような方法をとることが望まれるかを学生視点から検討し、学生満足度を向上させる要因について定量的な分析を行うことを目的としている。分析の結果、授業に対する学生満足度に授業内容への興味や関心、教員の授業に対する態度、および授業の難易度などが統計的に有意に影響していることが確認された。
著者
増田 公一
出版者
千葉経済大学
雑誌
千葉経済論叢 The proceedings of Chiba Keizai University (ISSN:21876320)
巻号頁・発行日
no.63, pp.69-79, 2020-12

近年,日本企業の内部留保の積み増しが積極的に行われている.直近の財務省の法人企業統計によれば,金融業・保険業を除く全産業において,その額はおよそ463兆円にものぼる.一方,企業の現預金は約223兆円となっており,その金額は1998年から著しく増加傾向にある.2018年時点の日本の名目GDPが約548兆円であることを踏まえると,国内企業の内部留保や現預金の額がいかに莫大なものであるかが分かる. このように近年の日本企業の特徴の一つである現預金の保有行動の決定要因を明らかにしようと,国内外の研究者たちによって多くの実証研究がなされてきた.本稿では,それらの実証研究をサーベイして包括的に整理するとともに,今後の課題について言及する.
著者
黒羽 雅子
出版者
千葉経済大学
雑誌
千葉経済論叢 = CHIBA KEIZAI RONSO (ISSN:21876320)
巻号頁・発行日
no.64, pp.99-118, 2021-06-01

本稿は「Federal Reserve Committee on Branch, Group and Chain Banking」が作成を指示した「Bank Suspensions since January 1, 1921」という調査のネブラスカ州法銀行を対象とした部分の原資料を読み解く試みである。ネブラスカ州では1911年に預金者保証制度が開始され1930年まで続いた。本調査は、同州の預金保証制度下で営業停止(または支払い停止、suspended)となった州法銀行332行を対象にしたもので、営業停止時および整理の経過などが個別の銀行ごとに記録されている。本稿では、この資料の内容について、解説と若干の分析を加えた。
著者
菅根 幸裕 菅谷 祐輔
出版者
千葉経済大学
雑誌
千葉経済論叢 The proceedings of Chiba Keizai University (ISSN:21876320)
巻号頁・発行日
no.56, pp.1-28, 2017-07

近世における六十六部廻国聖に着目し、宝暦年間全国を行脚した安房国長狭郡平塚村(千葉県鴨川市)の高梨吉左衛門の日記から、巡拝の実態を探ろうというものである。この聖は、全国をおよそ三年間かけて廻ったが、日記には具体的な泊所・報謝の様子がわかり貴重である。今回は紙数の関係から原文の紹介に留まるが、詳細な分析については稿を改めて行いたいと考えている。
著者
串山 寿 三浦 洋子
出版者
千葉経済大学
雑誌
千葉経済論叢 = CHIBA KEIZAI RONSO (ISSN:21876320)
巻号頁・発行日
no.64, pp.33-45, 2021-06-01

新型コロナウイルスの影響で、大学によっては未だにオンライン授業やオンデマンド授業が中心に行われている。授業はオンラインやオンデマンドで行えたとしても、オンラインテストはどのように実施すればよいのかという課題がある。オンラインテストの場合、カンニングの防止方法や、テスト環境(途中で通信が途切れた場合等)の問題をどのように解決するのかという問題がある。 本稿では、本学学生を対象にMicrosoft Forms(以下、Forms)とMicrosoft Teamsⅱ( 以下、Teams)を利用したオンラインテストの実施方法とその結果を提示し、学生のアンケートデータも加味して、その有用性や課題を分析した。 分析の結果、ユーザー側の学生の意見としては、オンラインテストの方がペーパーテストと比べてやりやすいと回答した学生が多かったので、有用性は認められるが、やりづらいという回答も約3割あり、改善すべき点があることが分かった。出題者側の課題としては、テストを受ける学生の環境を事前に把握し、テスト問題の表示方法を工夫する必要があることが分かった。また、操作性について、スクロールをなるべくしないような設定をする必要があることが分かった。
著者
粟沢 尚志 Takashi Awasawa
出版者
千葉経済大学
雑誌
千葉経済論叢 The proceedings of Chiba Keizai University (ISSN:21876320)
巻号頁・発行日
no.57, pp.75-86, 2017-12

本稿の目的は、西千葉における地域通貨「ピーナッツ」に始まるまちづくり活動の意義を、渋沢栄一翁による道徳経済合一説から考察することである。第1節では、地域通貨「ピーナッツ」が単なる消費刺激的機能をもつ地域通貨ではなく、市民が有する人的資源を地域の場で発揮し、その発揮をとおして地域が活性化されるというシステムであることをみる。第2節では、コミュニティ論と日本型経営論(特に人本主義的経営)から地域通貨「ピーナッツ」が生み出した西千葉における人的ネットワークの特徴と意義を理解する。第3節では、渋沢翁の「論語と算盤」の考え方を使いながら、西千葉「ゆりの木商店街」における地元事業者による経営革新の動きをみる。第4節では、西千葉におけるまちづくりの代表例である「ようこそ西千葉へ」の意義を考え、さらにそれに続く最新のまちづくり戦略を紹介する。
著者
粟沢 尚志 Takashi Awasawa 千葉経済大学 CHIBA KEIZAI UNIVERSITY
出版者
千葉経済大学
雑誌
千葉経済論叢 = Chiba keizai ronso (ISSN:21876320)
巻号頁・発行日
no.50, pp.67-76,

本稿の目的は、西千葉における地域通貨「ピーナッツ」に始まるまちづくりの意義を、ポジショニング理論とコーペティション理論から考察することである。第1節では、地域通貨を牽引してきた経営者たち(ピーナッツクラブ西千葉)が渋沢栄一の唱えた論語と算盤の経営倫理観と整合的な考え方から行動してきたことをみる。第2節では、地域通貨の意義を経営学的にみると、コーペティション経営の協調(つまり市場拡大)にあたることをみる。第3節では、経営革新のために立ち上げられた異業種経営研究会の意義をポジショニング理論から考える。第4節では、2014年に始まった「ようこそ西千葉へ」プロジェクトの概要を紹介する。そこには、地元事業者の経営革新と地元事業者と学生との協働が両輪で進められるという新しいまちづくりのモデルがみられる。
著者
菅根 幸裕
出版者
千葉経済大学
雑誌
千葉経済論叢 = CHIBA KEIZAI RONSO (ISSN:21876320)
巻号頁・発行日
no.58, pp.139-161, 2018-06-30

平成30年3月、文部科学大臣は、中央教育審議会に公民館・図書館・博物館の所轄を教育委員会から首長部局への移転の可能性について諮問した。中央教育審議会は同年7月9日、特例としてこれを認めるとする答申を行った。一方、平成30年4月21日、政府の未来投資会議構造改革徹底推進会合「地域経済・インフラ」第4回会合で、文化庁は「アート市場活性化に向けて」という発表を行い、この中でリーディング・ミューゼアムの検討を明らかにした。これはアート市場活性化の役割を美術館や博物館にも担ってもらうというもので、このリーディング・ミューゼアムに指定された美術館や博物館には国から補助金が交付され、学芸員を増やすという優遇措置がされるという内容である。聞こえは良いが、実際にはミューゼアムが資料をオークションに売却する構造が示され、その売却のために展覧会などの活動が使われるというものである。結果として学芸員が美術市場に関与する必要が生じ、そのために学芸員は「残すべきもの」を見極める能力が必要ということになる。博物館の観光利用による地域活性化が提唱されて以来、様々な変動が起きている。前述の博物館の管轄が首長部局移転すれば、博物館は観光施設として営利活動を行うことを余儀なくされるであろう。一方、リーディング・ミューゼアムは、美術館・博物館の自活促する有効な手段であると解釈することができる。よって、博物館の生き残りのためには、生涯学習施設・教育的配慮などは等閑にならざるを得ないという結論になる。簡単に言えば、これからの博物館活動の基準は「資金稼ぎ」なってしまうのである
著者
中嶌 剛 Tsuyoshi Nakashima 千葉経済大学 CHIBA KEIZAI UNIVERSITY
雑誌
千葉経済論叢 = Chiba keizai ronso (ISSN:21876320)
巻号頁・発行日
no.48, pp.23-39,

本研究は、近い将来、就職活動を控える学生の心理状態に注目し、キャリア教育(キャリア形成支援)を通じて顕在化する潜在意識が、彼らのキャリア形成にとってどのような役割を果たし得るのかを、複数大学(4年制大学、女子大学)の学生の自由記述回答データを用いたテキストマイニング手法により探ったものである。厳しい新卒採用状況下、先行き不透明かつ不安感に満ちた学生心理に立脚した計量テキスト分析により、教育現場おいて、いかなる潜在意識への働きかけが学生の主体的行動にとって重要となるかを明らかにした。こうした結果は、「行動してからようやく物事を理解する」という体験学習が人生を切り拓くヒントになり得ると同時に、潜在意識の有効活用が自己のキャリア形成に寄与することを論じたものである。
著者
小野 正芳 Masayoshi Ono 千葉経済大学 CHIBA KEIZAI UNIVERSITY
出版者
千葉経済大学
雑誌
千葉経済論叢 = Chiba keizai ronso (ISSN:21876320)
巻号頁・発行日
no.50, pp.27-48,

2000年以降、社会保険・税ともにその負担は増してきた。社会保険料は年々増加し、減税措置はなくなり、所得控除も縮小されている。したがって、絶対額としての各個人の負担は高まっている。その一方で、その負担は高所得者に多く課されており、標準世帯全体としては、格差がより小さい状態へと向かっているといえる。どの世帯においても負担が増えながらも格差が小さくなっているということは、高所得者にかなりの負担がかかっているということでもある。
著者
小野 正芳
出版者
千葉経済大学
雑誌
千葉経済論叢 (ISSN:21876320)
巻号頁・発行日
vol.49, pp.1-17, 2013-12-21

日本の財政再建に向けた第一歩として2014年4月から消費税が8%に、2015年10月から10%になることが決定している。しかし、GDPの2倍近くに迫る政府債務、GDPの8%に迫る毎年の財政赤字、国際的にかなり低い国民負担率といった点を考えると消費税の増税だけでは不十分である。そこでは国際的にみてもかなり低い水準にとどまっている所得税が増税の候補となりうる。一方で、所得税は景気に大きく影響される不安定な財源であるとの指摘がある。しかしながら、所得税の源泉となる給与収入と景気の関係はそれほど大きくなく、所得税収を不安定にしているのは主に所得控除項目である。特に、給与収入が高いほど配偶者控除や配偶者特別控除の適用割合が高くなっており、給与収入が高い者の納税額を減少させる要因になっている。また、社会保険料の負担増加も所得税を減少させる大きな要因になっている。現在の社会保障を維持するのであれば、社会保険料と所得税が相関をもたないように制度を設計すべきであろう。さらに、住宅借入金等特別控除も所得税を大きく減少させる要因になっている。住宅借入金等特別控除は、景気刺激を目的とした政策である。本来国庫に入るべき財が、住宅という個人の財の蓄積に回されているのであり、財政再建を考える場合には、その政策効果が十分に得られているのかを慎重に検討する必要がある。このように所得税を安定かつ大きな財源にするために、所得控除項目の見直しが急務である。