著者
大久保 等
出版者
八戸学院短期大学
雑誌
八戸学院短期大学研究紀要 (ISSN:21878110)
巻号頁・発行日
vol.42, pp.45-57, 2016-03-31

宮沢賢治の詩の解説や一つの詩の中の部分的解釈は、多数の専門家によって試みられている。しかし、一つの詩の全体を通した現代語解釈は今まで見つけることができなかった。今回、宮沢賢治の詩の代表作の一つ『春と修羅』という詩について、幾つかの解説書を参考にして、また一部に筆者による具体的な説明を付け加えて詩全体の現代語解釈を試みた。 筆者は、宮沢賢治が、仏教の求道者としての生き方を探して苦しみもがいている描写と、まだ浅い春の、明るい日中の景色の描写との対比や、修羅としての賢治の感情が糸杉林の精神と交わり現実の感覚を失っている描写と、嵐がくる前の流れる雲や稲光が発光する描写との対比は、他に類を見ない、臨場感のある優れた映像効果を生み出していると考える。
著者
羽入 雪子
出版者
八戸学院短期大学
雑誌
八戸学院短期大学研究紀要 (ISSN:21878110)
巻号頁・発行日
vol.44, pp.41-53, 2017-03-31

LGBTとは、性指向や性自認に関する性的少数者の総称である。かつて、異性愛者は以外は「病的」と診断され治療を試みられたが、現在では「個性」として認められている。我が国においては、1990年代に「性同一性障害」の概念が導入され、「性同一性障害」への教育的配慮から2015年に「性的マイノリティ」への教育的配慮が指示された。世界に遅れながらも大きな変化の渦中にいる我が国の現状をLGBTの視点から概観した。
著者
杉山 幸子
出版者
八戸学院短期大学
雑誌
八戸学院短期大学研究紀要 (ISSN:21878110)
巻号頁・発行日
vol.42, pp.1-8, 2016-03-31

自閉症スペクトラム者はその障害特性のゆえに、生きていく上でのさまざまな困難を抱えている。そのひとつが「死」の理解と受容である。本研究では、自閉症スペクトラム児・者が死をどのように理解し、受け止めるのかを明らかにしようと試みており、本稿でははその一部として、彼らが身近な人の死に接した際に、それをどのように受け止めるのかにアプローチする。保護者から得たエピソードを分析した結果、幼児の場合、「亡くなっている」ことを理解するのが難しく、青年期になると平静に振る舞えるようになることが示唆された。また、知的障害が無いか軽い人で、児童・青年の年齢になっている場合、死を理解し、悲しむという心情が成長していることが窺われた。
著者
久保 宣子 山野内 靖子 蛭田 由美
出版者
八戸学院短期大学
雑誌
八戸学院短期大学研究紀要 (ISSN:21878110)
巻号頁・発行日
vol.42, pp.69-79, 2016-03-31

本研究の目的は、看護基礎教育において誰を対象にしたどのような研究が行われ、何が明らかにされているかを整理し、今後の看護基礎教育における国際看護学教育の課題を検討することである。20件の研究文献を分類・検討・整理した。海外体験(研修)をもとにした学習や学生の国際看護学に対するイメージや意識に関することが明らかになった。しかし、共通した教育理念や教育目標は見出すことができなかったことから、コンピテンシーモデルの構築および能力開発という点で、いまだ不十分であることが推測される。
著者
加賀谷 紀子
雑誌
八戸学院短期大学研究紀要 (ISSN:21878110)
巻号頁・発行日
vol.42, pp.81-89, 2016-03-31

我が国は世界一の長寿国である。そのことから認知症の増加に伴い認知症予防の研究や治療が試みられている。昨今、入所施設不足が大きな問題として挙げられているが、家族が介護する理由として、①家族が望んで介護する一つの使命感②経済的理由で施設入所ができない③配偶者の親であるため介護を強いられるなど様々でありこれらに共通することは、介護を担う家族の心身の負担である。家族に一方的に押し付けるのでなく家族の心理的変化を受け止め「認知症の人の理解や接し方の指導などの働きかけ、家族の負担軽減のための自治団体の支援、家族が抱えている悩み、問題の察知-集いなどのへの参加」に加え、負担軽減に繋がるために必要な情報の発信を行うなど看護の果たす役割は大きい。
著者
坂本 保子
出版者
八戸学院短期大学
雑誌
八戸学院短期大学研究紀要 (ISSN:21878110)
巻号頁・発行日
vol.38, pp.68-76, 2014-03-31

要約 母乳哺育継続を阻害する要因には、母親自身の心理ストレス反応が関連しているのかどうかを明らかにすることを目的とした。その結果、特性不安が高い得点の母親は、状態不安の得点が高いことがわかった。また母乳不足感と分泌量(rs=-.704,p<0.01)負の相関が認められ、母乳育児ストレス(rs=.646,P<0.01)正の相関が認められた。このことから母乳分泌量に関わらず、母乳不足感が母乳育児そのものにストレスを感じていることが明らかになった。特性不安の高い母親は様々な出来事に対しストレスを感じやすく母乳哺育継続が困難になる可能性があることがわかった。このことにより母乳育児継続へのサポート、精神的サポートが、必要であることが示唆された。
著者
蛭田 由美
出版者
八戸学院短期大学
雑誌
八戸学院短期大学研究紀要 (ISSN:21878110)
巻号頁・発行日
vol.40, pp.1-14, 2015-03-31

中年期の家族には、身体的、心理的、社会的に複雑な問題が生じやすい。本稿は、中年期の家族の健康問題と保健行動の方略を明らかにすることを目的に、中年期家族の心身の健康の維持と改善の方策を探ることを目的とした。これまで殆ど焦点が当てられることのなかった男性の更年期障害とその克服について、男性更年期の定義や臨床診断の最近の動向を紹介し、自殺の動向から男性更年期のリスクについて述べた。また女性の更年期の健康状態には出産体験が影響を及ぼしていることと、女性のライフスタイルと健康との関連について検討した。
著者
杉山 幸子
出版者
八戸学院短期大学
雑誌
八戸学院短期大学研究紀要 (ISSN:21878110)
巻号頁・発行日
vol.44, pp.1-12, 2017-03-31

本論では自閉症スペクトラム児・者が死に関心を示したエピソードを分析し、定型発達の幼児に認められたような死への気づきが確認できるかどうか、また、彼らに独自のパターンが見いだせるかどうかを検討した。その結果、自閉症スペクトラムの子どもと青年には、幼児において認められたのと共通の「未来の死」への気づきが一部ではあるがうかがわれる一方で、自閉症の特性に由来すると思われる「死」「天国」「地獄」等の観念へのこだわりも認められた。また、母親への愛着と喪失への恐れは比較的広く認められた。さらに、そうした死への気づきを育む土壌となる家庭での「いのちの学び」についても検討したところ、特に知的な障害が軽い場合は、「死」について言葉で積極的に子どもに伝えようとする傾向が見られた。生き物の飼育と葬儀への参列は、特に中度以上の知的障害を有する場合に重要だと認識され、取り入れられていた。
著者
大久保 等
出版者
八戸学院大学短期大学部
雑誌
八戸学院大学短期大学部研究紀要 (ISSN:21878110)
巻号頁・発行日
no.45, pp.16-29, 2017-12-22

宮沢賢治の詩『序』について、大乗仏教の求道者としての生き方を重視した、現代語解釈を試みた。『序』を要約すると、宮沢賢治は「生きている私という生命現象は、大きな生命の流れが輪廻を繰り返すこの世界の法則として、過去から仮定されていた現象である。その現世に、私は『心象スケッチ』という手法で書き記した詩を残して行く。その私が書き残したものは、厳密には、私が主張したい通りの正しい内容で他の人に伝わることはない。私と他の人には、『共通認識しか共有できない』という問題が存在する。いつかこの『共通認識しか共有できない』という問題は四次元研究の中で解明されるだろう。(その解明が成って、私の主張したい事が、初めて正しく他の人々に伝わるだろう)」、と云っている。
著者
馬場 祥次
出版者
八戸学院短期大学
雑誌
八戸学院短期大学研究紀要 (ISSN:21878110)
巻号頁・発行日
vol.42, pp.35-43, 2016-03-31

全国的に一部の都市圏を除き、自治体や地方などではまちおこしが盛んに行われている。八戸市では、市民団体である「八戸せんべい汁研究所」が青森県南地方の郷土料理「せんべい汁」をツールとして、八戸市を全国にアピールし大きな経済効果をもたらしている。本稿では、八戸学院短期大学学生が、八戸せんべい汁研究所の活動に学生サポーターとして参加している、その経緯と意義、課題について述べる。
著者
藤邉 祐子 坂本 保子 羽入 雪子
出版者
八戸学院大学短期大学部
雑誌
八戸学院大学短期大学部研究紀要 (ISSN:21878110)
巻号頁・発行日
vol.46, pp.31-40, 2018-03-30

本研究は母性看護実習終了後に学生が「命の尊厳」をどのようにとらえたかを分析し、実習指導の示唆を得る目的で行った。対象者は看護系短期大学生84名で、自由記述されたデータを内容分析した結果、4つのカテゴリーが見出された。学生は、実習を通して「命」の重みを学び、褥婦と新生児の看護を体験していく中で「自分も周囲の支えがあって成長してきた」と気づきを得られていた。また、医療における「看護師の役割」を再認識し、命の尊厳について問われることで、命に対する価値観を表現できていた。母性看護実習で学ぶことのできる生命の誕生、新しい命を育むという場面から、「命の尊厳」について考え学ぶことのできる教育や実習指導が重要であることが示唆された。
著者
田中 敬一
出版者
八戸学院短期大学
雑誌
八戸学院短期大学研究紀要 (ISSN:21878110)
巻号頁・発行日
vol.44, pp.13-20, 2017-03-31

近年東京圏を始めとする都市部の待機児童問題が社会問題となり、政府は子ども子育て支援制度を施策として掲げ、企業立の保育業界への参入を促進やこども園への移行推進等を実施してきた。その結果、地方から都市部への学生の流出が加速し、地方での保育士不足が深刻化している。保育士養成校である本学においても、地元に十分に保育者を供給できない状況が恒常化し始めている。今年度12月現在で、都市部の事業所から内定を得た学生の率は過去最高に迫っている。しかしその副産物として保育士の雇用条件、賃金、正規雇用率などは、緩やかではあるが改善しつつあり、内定の早期化も急激に進んでいる。