著者
藤永 太一郎
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学教育 (ISSN:24326542)
巻号頁・発行日
vol.33, no.5, pp.400-403, 1985-10-20 (Released:2017-09-15)

環境化学は, 人間活動の効果を考慮に入れた自然科学と技術の一分野である。したがって総合科学の代表的なものの一つであるが, 学術としての基礎が確立していないために公害対策技術と誤まって考える向きが多い。本稿では健全な環境の基本条件を化学の立場から考え, また将来の環境工学のあり方について述べる。環境化学の学問としての基礎は, Empedoklesが提唱したとされる4元説にあると考え, 気圏, 水圏, 岩石圏の化学反応と平衡を考察する。このため本稿の内容は主として化学であるが, 物理学, 生物学, 地学はもとより, 一部は社会人文科学の領域にも係っている。
著者
植木 昭和
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学教育 (ISSN:24326542)
巻号頁・発行日
vol.31, no.2, pp.112-116, 1983-04-20 (Released:2017-09-15)

精神機能が脳の働きであることを疑う人は今日ではほとんどいないであろう。しかし精神活動が化学物質によって著明に変化することが信じられ, 本格的な科学研究の対象になってきたのは1950年代以降のことである。それは精神機能に特異的な作用を及ぼす薬物の発見が契機となった。100億以上の脳細胞の緊密な情報連絡によって営まれる脳の働きには数多くの機能があるが, 他の機能にはほとんど影響なしに, 知, 情, 意というような精神活動だけを選択的に変化させる薬物, それを向精神薬という。ここでは向精神薬の発見から主要な精神疾患の治療薬の進歩まで眺めることによって, 薬の意義や精神活動の脳機構解明の発展などを考えてみたい。