著者
若山 育郎 形井 秀一 山口 智 篠原 昭二 山下 仁 小松 秀人
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.65, no.4, pp.321-333, 2014 (Released:2015-03-30)
参考文献数
26
被引用文献数
5 4

鍼灸は我が国の医療のなかで有効に活用されていない。鍼灸を本当の意味で国民のための医療とするにはどうすれば良いかについては,いくつか選択肢はあると思われるが,最も重要なのは現在の医療制度の中に鍼灸を取り入れ,鍼灸師が病院で活躍できる制度にすることである。病院で鍼灸を取り入れることにより,西洋医学が不得意としている疾患・症状に対して患者に対応することができる。また,医師との共同研究も可能となる。しかし,そのためには鍼灸師教育の質の向上が必須である。病院における鍼灸導入のメリットもきちんとデータで示していかねばならない。1981年,Acupuncture and Moxibution Therapist 制度(AMT 制度)という病院内で鍼灸師が活躍できる制度が提言されたことがあった。現在の我が国で,そのような制度を整備することはかなり困難と思われるが,国民の健康維持の方法の一つとして鍼灸を取り戻し,日本の医療をさらに発展させるには必要な制度であると考えている。
著者
形井 秀一 篠原 昭二 坂口 俊二 浦山 久嗣 河原 保裕 香取 俊光 小林 健二
出版者
社団法人 全日本鍼灸学会
雑誌
全日本鍼灸学会雑誌 (ISSN:02859955)
巻号頁・発行日
vol.57, no.5, pp.576-586, 2007-11-01 (Released:2008-05-23)
参考文献数
21

1. はじめに2006年10月31日~11月2日の3日間、9カ国2組織が参加してWHO/WPRO (西太平洋地域事務局) 主催による経穴部位国際標準化公式会議がつくば市の国際会議場で開催された。会議のアドバイザー (発言権のある参加者) は、9カ国 (日本、中国、韓国、モンゴル、シンガポール、ベトナム、オーストラリア、アメリカ合衆国、英国) と2組織 (WFAS=World Federation of Acupuncture Societies, AAOM=American Association of Oriental Medicine) から計20名であった。この会議で、過去3年間日中韓で検討してきた経穴部位案が正式に決定された。2. 経穴部位の合意本会議で決定された経穴部位は361穴であり、これまで日本で教育されてきた354穴より7穴多い。これまでの教科書と変更になるのは、 (1) 奇穴から正穴となったもの (2) 前腕長などの骨度の分寸の変更によるもの (3) 個別の理由で変更になったもの、などであった。また、最後まで一部位に決定出来ずに2部位併記経穴が6穴 (迎香、禾〓、水溝、中衝、労宮、環跳) あった。3. 今後の動きつくば会議で最終的な経穴部位標準化が達成されたが、WPROは、経穴部位のみでなく、 (1) 東洋医学用語の標準化、 (2) 東洋医学の医療情報の標準化、 (3) 鍼灸研究法のガイドライン作りなど、多岐にわたる標準化を進め、東洋医学全体の用語や考え方、枠組みの標準化を行い、それらを東洋医学の世界的な研究、臨床へ活用しようとしている。4. 経穴部位決定後の課題今後の課題としては、 (1) 経穴部位のより厳密な再検討。 (2) 標準化部位の国内普及。 (3) 「日本鍼灸」の明確化と世界への普及。などが上げられる。
著者
形井 秀一 篠原 昭二 坂口 俊二 浦山 久嗣 河原 保裕 香取 俊光 小林 健二
出版者
社団法人 全日本鍼灸学会
雑誌
全日本鍼灸学会雑誌 (ISSN:02859955)
巻号頁・発行日
vol.56, no.5, pp.755-766, 2006-11-01 (Released:2011-03-18)
参考文献数
4

経穴部位の標準化は、1989年にジュネーブ会議で経絡経穴名 (奇穴八脈、奇穴も含む) が国際標準化されて以来、永年の懸案であり困難な課題とされてきた。それ以来、14年の時を経て2003年、WHO西太平洋地域事務局 (WPRO) 主導の下、日本、中国、韓国による経穴部位の国際標準化に関する非公式諮問会議が始まった。この会議は特別会議を含めると3年で9回を数え、標準化達成に向けて大きく前進した。そしてその目標は、2006年秋、日本 (つくば市) で開催される経穴部位標準化公式会議で結実する。これまでの経緯と今後の課題をまとめたので報告する。
著者
篠原 昭二 原口 勝 福田 文彦 岩崎 瑞枝
出版者
The Japan Society of Acupuncture and Moxibustion
雑誌
全日本鍼灸学会雑誌 (ISSN:02859955)
巻号頁・発行日
vol.64, no.1, pp.2-17, 2014

世界的な長寿を誇る我が国において、 死因の第 1 位を占めるのががんであるが、 時に耐えがたい苦痛を伴う場合がある。 そういった苦痛を緩和するための専門的な施設として緩和ケア病棟や拠点病院における緩和ケアチームの設置などが積極的に行われている。 一方、 疼痛緩和の手段として WHO 方式による麻薬を使った方法も確立されているが、 それでもターミナルの中期から後期にかけての患者さんでは十分なペインコントロールが出来ていないケースが少なくない。 そんな愁訴に対して、 徐々に鍼灸治療やハウトケア始め、 種々の代替療法が行われているが、 その実態や効果等、 不明な点が多い。 そこで今回、 緩和ケアの実態を理解するとともに、 鍼灸治療のエビデンスや疼痛緩和手段の一つとしてのハウトケアを取り上げ、 討論することとした。
著者
斉藤 宗則 和辻 直 篠原 昭二
出版者
社団法人 全日本鍼灸学会
雑誌
全日本鍼灸学会雑誌 (ISSN:02859955)
巻号頁・発行日
vol.57, no.1, pp.31-46, 2007-02-01 (Released:2008-05-23)
参考文献数
6

【目的】五更泄は寅卯時 (朝3~7時) にのみ出現する慢性の泄瀉であるが、その時間的概念や病機については諸説があり、その定義や概念は統一されていない。そこでこれらを明確にするため文献調査を行った。【方法】『中華医典』を用いて「五更泄」「五更瀉」「腎泄」「腎瀉」をキーワードとして検索し、書籍でその記述内容を確認したものを時代ごとに並べた。次に、五更や時辰という時間の概念、五更泄の病機と証候、五更泄の発症時間と病機、五更泄の名称、五更泄と痢疾、五更泄と現代医学といった視点から考察を行った。【結果】その結果、「五更泄」は31冊37件、「五更瀉」は12冊14件、「腎泄」は91冊216件、「腎瀉」は38冊74件であった。五更泄は12世紀中頃に腎の病とされた「腎泄」を源とし、その後病機が漸増し、「腎泄」の時間が子時 (23時~) まで拡大された。病機には腎陽虚、酒積、寒積、食積、肝乗脾土、少陽気虚、?血などがあった。【考察】五更泄と腎泄は共通する部分が多いが、その主たる病機の違いを述べると、五更泄は五更に肝・少陽の旺盛や火が生じることによって生じ、腎泄は子時に腎水が旺盛になることで子時から卯時に泄瀉が起きると考えられる。これらの症状の発現と時間帯との関連には疑問が残った。一方、名称については16世紀後半には五更という時間帯が強調されているが、腎泄の発症時間が亥子まで含まれたため、五更泄という名称が主とならなかった可能性がある。
著者
岡 希太郎 池 祥雅 木下 仁 原 昭二
出版者
天然有機化合物討論会
雑誌
天然有機化合物討論会講演要旨集
巻号頁・発行日
no.15, pp.169-176, 1971-10-01

The results of the synthetic studies on several steroidal alkaloids of salamander and frog venoms were presented. (1) Cycloneosamandione (VIII) and Cycloneosamandaridine (IX) Recently, the early proposed structure of cycloneosamandione (VI), which had been determined by G. Habermehl with the X-ray diffraction method, has been revised to be VIII on the basis of his own synthetic work. In order to reconfirm this structure, the compound VIII was synthesized by the sequre synthetic sequence. As a result, the physical data of the synthetic specimen were consistent with those of the natural product. Cycloneosamandaridine has been known as one of the minor constituents of the salamander alkaloids. Since this alkaloid has been recognized to have the identical skeleton with cycloneosamandione, the structure, we suppose, should be also revised to be IX from VII. Consequently, we have synthesized the compound IX via the same intermediate 16 as the synthesis of cycloneosamandione (VIII). The identification of our synthetic product with the natural one is now in progress. (2) Batrachotoxin (XI) The synthesis of batrachotoxin has been attempted. The treatment of the hemiacetal 27 with aminoethanol followed by reduction afforded a mixture of 18-hydroxyethylamino steroids (28a and 28b). Then the mixture was converted into the enone 36, which might serve as an useful intermediate for our purpose.
著者
渡邉 勝之 篠原 昭二
出版者
公益社団法人 全日本鍼灸学会
雑誌
全日本鍼灸学会雑誌 (ISSN:02859955)
巻号頁・発行日
vol.58, no.4, pp.654-664, 2008 (Released:2008-11-21)
参考文献数
20
被引用文献数
2 3

【緒言】鍼刺激では動的経穴にイオン化傾向の異なる銅鍼と亜鉛鍼を刺鍼した時のみ、 表皮表面局所における酸化還元電位 (ORP:Oxidation-Reduction Potential) が有意に低下することを明らかにしてきた。 本実験では、 直接灸および灸頭鍼刺激前後におけるORPおよび水素イオン濃度 (pH) に及ぼす影響について検討した。 【方法】ボランティアの非経穴および独歩可能な患者の動的経穴に直接灸・灸頭鍼 (輻射熱遮断あり・なし) および燔鍼を行い、 刺激前後の測定を行った。 【結果】ORPは非経穴への全ての灸刺激で変化を示さなかったが、 動的経穴では有意(p<0.01)に低下を示した。 一方、 pHでは非経穴または動的経穴に関係なく、 直接灸では有意(p<0.01)に低下し、 灸頭鍼輻射熱遮断では逆に有意(p<0.01)に上昇する変化が認められた。 【結論】鍼灸臨床において、 我々は動的経穴の灸点[+点]には直接灸、 禁灸点[-点]には灸頭鍼を使い分けているが、 本実験により、 直接灸と灸頭鍼刺激では生体に及ぼす作用が逆であることが明らかとなった。
著者
清野 昌一 石田 元男 石川 淑郎 塚原 昭二
出版者
一般社団法人 国立医療学会
雑誌
医療 (ISSN:00211699)
巻号頁・発行日
vol.14, no.4, pp.335-338, 1960 (Released:2011-10-19)
参考文献数
5

Seventy five mg of DMAE (2-dimethylaminoethanol) was daily administered per os for two months in succession to 7 chronic and deteriorated schizophrenics who had been treated with specific psychiatric therapies and at present so-called schizophrenic dementia. Disturbance of volition shuch as apathy, mutism and motionlessness in bed was remarkably improved. Among 7 cases, 3 were apparently found to be effective, 2 were fairly and 2 were not so effective. Severe insomnia and neurological side-effects were not observed.DMAE (2-dimethylaminoethanol) can be applied to withdraw schizophrenic patients according to motivate the volition for play or work-therapy and to mitigate cares on nursing and ward-management.
著者
橋本 洋一郎 鳥海 春樹 菊池 友和 篠原 昭二 粕谷 大智
出版者
公益社団法人 全日本鍼灸学会
雑誌
全日本鍼灸学会雑誌 (ISSN:02859955)
巻号頁・発行日
vol.64, no.1, pp.18-36, 2014 (Released:2014-04-23)
参考文献数
54

頭痛に対する鍼灸の効果と現状を総合テーマとして、 当該領域のレビューを行った。 はじめに、 西洋医学的な立場から一次性頭痛や二次性頭痛の鑑別や治療効果を中心に紹介した。 次に、 鍼灸治療の治効機序に関して、 基礎研究の成果を文献に基づき紹介した。 最後に、 頭痛に対する鍼灸治療の臨床効果を文献に基づき解説し、 緊張型頭痛や片頭痛に効果が示されていることを紹介した。 以上の結果から、 鍼灸治療は一次性頭痛に対して臨床効果が報告されており特に、 episodic な頭痛に対して有効である可能性が示唆された。
著者
岡 希太郎 原 昭二
出版者
The Society of Synthetic Organic Chemistry, Japan
雑誌
有機合成化学協会誌 (ISSN:00379980)
巻号頁・発行日
vol.37, no.1, pp.25-39, 1979-01-01 (Released:2010-01-22)
参考文献数
105
被引用文献数
1

This review involves the synthetic studies on the salamander alkaloids isolated from an animal venom in the skin gland of Salamandra maculosa Laurenti. Syntheses of three groups of the alkaloids, one with a bicyclo-oxazolidine system, one with a carbinolamine system, and another with a pure 3-aza-A-homo steroid system, are discussed separately. It will be emphasized that the synthetic works described herein made a considerable contribution to the structure analyses of this field of alkaloids and earlier proposed structures based on X-ray and spectroscopic analyses have been changed step by step. Regio and stereospecific syntheses of the alkaloids are mainly discussed in connection with the construction of the bicyclo-oxazolidine system of the major alkaloids and with Beckmann rearrangement of steroid 3-ketoximes for the syntheses of the other alkaloids.
著者
安達 直義 萩原 昭二
出版者
The Society of Synthetic Organic Chemistry, Japan
雑誌
有機合成化学協会誌 (ISSN:00379980)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.2-28, 1953

色彩を科学的に数値を以つて表示することは比較的近年の発達であり照明, 天然色寫眞並に印刷を始め染料, 顔料, 染色加工品, その他色を取り扱う分野に極めて重要な役割を占めるに至つた. 既にアメリカその他の国ではこの表示法は実用化された今日海外貿易の立場からも極めて大切であり我国においても日本工業規格の「色の表示方法」が昭和27年制定された。本綜説は色彩表示に関し大体1941年頃から最近に至る発展を成るべく李易に解説したものであり, 下記の図書の内容程度については既に充分の理解を有していることを前提として書いた. 色彩に関係する人々に寄与し且つ前記工業規格の具体的応用の進展に段立ち得れば幸である.<BR>1. Arthur O. Hardy; <I>Handbook of Colorimetry</I> (1936) 邦訳吉城肇蔚訳測色学 (昭和19年)<BR>本書は1935年頃迄の測色学の発展程度である. 乳財団法人日本色彩研究所著色の標準 (昭和26年) 本書中の色の標準解説は1943年頃迄の発展程度である.
著者
和辻 直 篠原 昭二 斉藤 宗則
出版者
明治国際医療大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-04-01

鍼灸師教育のコア・カリキュラムを作成する事前資料として、伝統医学における鍼灸教育の必要項目を整理し、教育項目における学修目標の度合いを検討した。対象は鍼灸師養成施設の教員と伝統鍼灸を実践する鍼灸師とした。東洋医学概論の科目に対して教育項目の重要度を調査した。この結果を参考に東洋医学概論の教育項目82項目を必須知識、上位知識、選択知識に区分した。その区分を対象に評価してもらった。その結果、必須知識の項目の約9割が賛同となり、度合いの設定が妥当と考えた。また上位知識や選択知識の一部では評価が分かれており、調整が必要であることが判った。以上より、結果はコア・カリキュラムの事前資料となることが判った。