- 著者
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李 真
仲野 隆士
金子 守男
守能 信次
江橋 慎四郎
- 出版者
- 中京大学
- 雑誌
- 中京大学体育学論叢 (ISSN:02887339)
- 巻号頁・発行日
- vol.30, no.2, pp.1-10, 1989-03-15
本研究では, 20歳代の人は地域スポーツクラブへの加入率が低く, 参加頻度も低い, ということが明らかにされた。次にこうした傾向をもたらす原因を, 調査結果に基づき考察を進めた。以下に示す3つが, その考察の結果である。1. 年齢が低ければ低いほど, 地域に対する共通の愛着感, 統一感, 永住意識などといった帰属意識が低くなる。2. さらに, 年齢が低ければ低いほど, チームへの帰属意識も低くなる。3. ほかの角度からみると, ニュースポーツ, あるいは流行のスポーツや趣味・娯楽といった余暇活動を行う人は中高年の人よりも20代の人が多い。このことから, 20代の人は活動範囲が広く, 特定の地域スポーツクラブの以外の余暇空間を占めているのではないかと考えられる (図2参照)。また, T市では, 若い人は技術・勝利志向のほうが強いこと, そして技術・勝利志向の人は参加頻度が高いということは, 「若い年齢層」(A) と「技術・勝利志向」(B) と「参加頻度」(C) の積事象, すなわち, A∩B∩Cの式で表すことができる。そして, 若い人は地域スポーツへの参加頻度が低いということは, (A∪B∪C)-(A∩B∩C) の式で示され, しかも, そのうちの一部分であると考えられる (図3)。T市の地域スポーツ活動の現状は, 若い人たちは中高年の人々より, よくスポーツ活動を行うが, 地域スポーツクラブに加入する人が少なく, チームのスポーツ活動への参加頻度が低くなっているという傾向にあるのではなかろうか。そして, T市の地域スポーツクラブの個々のチームは年齢構成の点から次にのべるように, 大きく二つに分かれている。一つは, 若い層のチームで, 技術・勝利志向が強いというチームであり, もう一つは, 中高年層のチームで, ゲームを楽しむ, あるいは健康のためにスポーツをするといった志向のチームの二つである。このことは, 参加者間の親睦や交流を図ることにチーム活動の目的を置くと, 地域スポーツ活動への若者の参加が減り, 反対に競技パフォーマンス・レベルの向上にチーム活動の目的を置くと, 中高年者の参加が減っていくという傾向を示唆している。自由回答 (資料a〜d) は, こうした傾向を述べた典型例であるが, 特に, T市ではチーム構成員が中・高年齢層に傾斜しつつあることを反映している。こうしたことから, より多くの若者を地域スポーツ活動へ参与させていくため, そして地域スポーツ活動に参加する人々の活動欲求を充足させていくために, クラブの組織構成や運営方法, あるいは施設管理にまで至るソフト・ハード面をいかして充実させ, 発揮させていくか, ということが今後の地域スポーツに課せられた主要な課題であると考えられる。