著者
横山 顕 大森 泰
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.110, no.10, pp.1745-1752, 2013 (Released:2013-10-07)
参考文献数
36
被引用文献数
1

飲酒,喫煙,野菜果物不足,やせ,頭頸部癌既往,アルコール脱水素酵素1B(ADH1B)低活性型とアルデヒド脱水素酵素2(ALDH2)ヘテロ欠損型は,食道癌の危険因子である.多発ヨード不染帯,メラノーシス,MCV増大もリスクを高める.ALDH2欠損でアセトアルデヒドが蓄積し,ADH1B低活性でエタノールへ長時間曝露される.両遺伝子型+飲酒+喫煙で357倍のリスクとなる.ビールコップ1杯で赤くなるか,現在と過去の体質をたずねる簡易フラッシング質問紙法は,精度90%でALDH2欠損を判別し,飲酒・喫煙・食習慣と組み合わせた食道癌リスク検診問診票の高スコア群の癌の頻度は高い.予防の新戦略となる遺伝子解析の普及が望まれる.
著者
森 泰三
出版者
地域地理科学会
雑誌
地域地理研究 (ISSN:21878277)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.1-13, 2023 (Released:2023-08-12)
参考文献数
6

高度経済成長期以降に都市周辺部に形成された住宅団地では、その後の急激な人口高齢化に関連する地域コミュニティの低下、空き家・空き地の増大などの課題が指摘されている。本稿では、全国の面積100ha以上の大規模住宅団地のうち1970年代までに入居開始の高経年住宅団地を対象として、年齢別人口構成についてクラスター分析により分類した。その結果、高齢人口が特化していない多様世代型団地を析出することができた。さらに、それぞれの多様世代型団地の開発と入居時期、生活利便性、交通機能などの特徴を考察した結果、開発の遅れなどにより一斉に入居することなく入居時期が分散すること、商業施設などの立地により生活利便性の高い地域で住宅需要が恒常的に高いこと、新たな鉄道の開通や駅の開設など交通インフラの充実により交通利便性の向上が図られていることなどの特徴が見いだされた。
著者
山本 伸一郎 清水 俊一 森 泰生
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.134, no.3, pp.122-126, 2009 (Released:2009-09-14)
参考文献数
15
被引用文献数
2 6

Transient receptor potential channel(TRPチャネル)のmelastatin(M)ファミリーに属するTRPM2はカルシウムイオン(Ca2+)透過性のカチオンチャネルであり,単球/マクロファージや好中球など免疫系細胞において最も豊富に発現が認められている.また,TRPM2は過酸化水素などによる酸化的ストレスによって活性化される特徴を有しているが,詳細な機構には不明な点が多い.筆者らは,当初培養細胞を用いた実験で過酸化水素刺激によるTRPM2を介したCa2+流入が細胞死を引き起こすことを初めて明らかにした.しかし,TRPM2に対する特異的な阻害薬やknock out(KO)マウスがこれまで存在しなかったことから,生体内においてTRPM2がどのような生理的役割を担っているかについては明らかにされていなかった.最近,筆者らは単球/マクロファージにおいて過酸化水素刺激によるケモカイン産生誘導にTRPM2を介したCa2+流入が重要な役割を果たしていることを明らかにした.さらに,in vivoにおけるTRPM2の生理的役割を明らかにするためにTRPM2 KOマウスを作製し,炎症性疾患の発症や進展におけるTRPM2の役割を検証した.その結果,デキストラン硫酸ナトリウムを用いた炎症モデルマウスにおいて,TRPM2依存的な単球/マクロファージからのケモカイン産生が炎症部位への好中球の浸潤を惹起し,炎症の増悪を引き起こしていることを明らかにした.本稿では,我々が明らかにした単球/マクロファージにおけるケモカイン産生誘導および炎症におけるTRPM2の関与の詳細を述べ,炎症性疾患における新規創薬ターゲット分子としての可能性を有するTRPM2の重要性について議論し,筆者らが得ている新しい知見を加えて詳細が不明である酸化的ストレスによるTRPM2の活性化について再考する.
著者
森 泰規
出版者
日本マーケティング学会
雑誌
マーケティングレビュー (ISSN:24350443)
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.11-17, 2023-02-28 (Released:2023-02-28)
参考文献数
6

今回本稿では,職員(組織成員)のクリエイティブな活動が,組織の成果にもたらす効果をブルデューの理論概念を援用して検討する。すなわち,個々人の特定の趣向や行動様式(=ハビトゥス)は個々人でなく集団として共有され,その方向性を示すこと(Bourdieu, 1980/1988)また,どのような趣味をもつかによって,人はみな自分自身の「界」をつくり差異化を果たそうとする(Bourdieu, 1979a/1990; Crossley, 2001/2012; Kataoka, 2019)ことである(ハビトゥス概念・界概念)。生活者3,000名を対象とした調査(2021年6月)で回帰モデルを用いた分析の結果,正解率は64.9%を示し,かつ「趣味の楽器演奏」の経験があると,業務上の達成実感は2.3倍(最低でも1.6倍,最大の場合3.3倍)であることがわかった。世帯年収や15歳時の出身家庭における蔵書数も説明力を持っていたが趣味よりは影響が小さく,年齢はさほど説明力をもたなかった。これらにより経済資本や出身階層の文化資本よりも,後から身につけた趣味が相対的に強い影響を及ぼすことを示した。
著者
森 泰博
出版者
関西学院大学
雑誌
商学論究 (ISSN:02872552)
巻号頁・発行日
vol.46, no.3, pp.135-146, 1999-03
被引用文献数
1
著者
中森 泰三 齋藤 星耕
出版者
日本動物分類学会
雑誌
タクサ:日本動物分類学会誌 (ISSN:13422367)
巻号頁・発行日
vol.44, pp.23-31, 2018-02-28 (Released:2018-03-20)
参考文献数
52

Collembola, also called springtails, are wingless microarthropods that are widespread in terrestrial habitats and mainly inhabit soil. Applications of collembolan DNA barcoding are expected in taxonomy, ecology, and environmental sciences to unveil cryptic diversity, to provide a rapid and easy method for community measurements, and to provide an accurate identification method for ecotoxicological test species for non-taxonomists. Collembolan DNA barcoding was initiated in 2004 with Canadian specimens and is now ongoing in several countries. A rapid method for non-destructive DNA extraction from individual specimens has been developed to preserve voucher specimens. A quantitative protocol for Collembola DNA metabarcoding has also been developed. Collembolan DNA barcode data are gradually accumulating, although data on type specimens and topotypes are still scarce. Because several cryptic lineages have been found through DNA barcoding, taxonomists who can classify cryptic lineages and describe cryptic species are needed.
著者
福森 泰雄 田中 成憲 杉本 昭子 大軒 子郎 山口 英夫
出版者
一般社団法人 日本輸血・細胞治療学会
雑誌
日本輸血学会雑誌 (ISSN:05461448)
巻号頁・発行日
vol.36, no.5, pp.580-586, 1990-10-30 (Released:2010-03-12)
参考文献数
13

Irradiation with X-ray to blood products is a standard practice recommended for prevention of post-transfusion graft versus host disease in patients. In order to seek the optimal condition of irradiation to minimize the lesion of red blood cell (RBC) with complete inactivation of lymphocytes, we studied the effects of irradiation with X-ray on the quality of RBC in whole blood (WB) and concentrated red blood cells (CRC) in the range of 5 to 50 Gy.X-ray irradiation did not alter ATP and 2, 3-DPG content, hemolysis ending point and morphology of RBC, while it caused a slight increase of osmotic pressure at hemolysis starting point of RBC and potassium concentration in plasma. Considerable increase of hemolysis was observed with higher dose of irradiation in both WB and CRC. However, it was so small as below 2-3×10-2 percent that is acceptable level in blood products.Therefore, we concluded that the X-ray irradiation of WB and CRC with up to 50 Gy has no significant effects on in vitro characteristics of RBC.
著者
桑木 共之 高橋 重成 森 泰生 大塚 曜一郎 柏谷 英樹 戌亥 啓一 陳 昌平 黒木 千晴 米満 亨 上村 裕一
出版者
鹿児島大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2013-04-01

Transient Receptor Potential (TRP)イオンチャネルの1つであるTRPA1チャネルが環境ガス中に含まれる低酸素および有害物質のセンサーとして働き、これらを体内に取り込んでしまう前に忌避行動、覚醒や呼吸変化を引き起こす早期警告系として役立っているのではないかという仮説を検証した。仮説は実証され、しかも鼻腔内の三叉神経に存在するTRPA1が重要であることが明らかになった。
著者
荒木 修 藤森 泰宏 小南 八崇仁 碇 公明
出版者
日本衛生動物学会
雑誌
日本衛生動物学会全国大会要旨抄録集 第58回日本衛生動物学会大会
巻号頁・発行日
pp.2, 2006 (Released:2006-06-07)

蚊の誘引捕獲機の開発に当たり誘引剤などの検討を行ったので,それについて報告する。誘引物として,炭酸ガス,熱,匂い,光などを検討した。この検討のための試験は屋内外で行った。さらに,赤外線カメラを用いて蚊の飛翔行動を観察した。 現在,蚊の捕獲機として入手できるのは,わが国ではCDCトラップさらにはアメリカンバイオフィジックス社が出すモスキートマグネット(MM)である。米国においてはMMに類似した商品が数多くが販売されており,それらはyahoo.comやamazon.comなどインターネット販売でも取扱われており,その入手は容易である。 これら捕獲機の主なる蚊の誘引源は炭酸ガスで,CDCトラップではドライアイスを昇華し,その他のトラップのほとんどはプロパンガスを燃焼させている。さらなる誘引源としてオクテノールや熱を併用するもの,音を利用するものもある。我々は使用の安全性を考慮し,炭酸ガスをその液体をボンベから気化させ放出することで蚊を誘引し,微小な光を用いて誘引された蚊を吸引方向へ誘導する方法を採用した。 誘引手段を検討するために室内において,我々は長さ5m,内径10cmの直管を使い,その中央から蚊を放ち,管の両端に設置した誘引物のどちらを蚊が選択するのかを調べた。これには発生飼育させた羽化後7日のメス蚊のヒトスジシマカ,アカイエカ,コガタアカイエカ,チカイエカをそれぞれ用いた。誘引物は紫外線源としてブラックライト,紫外線LEDを,熱源に表面温度41℃の携帯カイロを,匂い物質にオクテノール,L-乳酸を用いた。 その結果,誘引物が無い側よりも有る方へ蚊は移動した。4ヶの紫外線LEDは6Wブラックライトと同等の誘引を示した。オクテノールとL-乳酸の効果にはあまり差が無かった。当機は,フロリダ農工大学が行う捕獲機試験で,MMリバティの4倍の蚊を捕獲した。
著者
森 泰博 Yasuhiro Mori
雑誌
商学論究 (ISSN:02872552)
巻号頁・発行日
vol.46, no.3, pp.135-146, 1999-03-10
著者
中森 泰三 藤原 直哉 松本 直幸 岡田 浩明
出版者
日本土壌動物学会
雑誌
Edaphologia (ISSN:03891445)
巻号頁・発行日
no.84, pp.5-9, 2009-03-31

持続可能な農業に向けて農業生態系の生物多様性に関心が高まっている.日本では農業生態系におけるトビムシの多様性に関する知見は限られている.そこで,我々は慣行および保全型畑地に加えて森林土壌およびリター堆肥におけるトビムシの種組成を明らかにした.総個体数および種数ともに慣行畑地より保全型畑地において多かった.また,畑地土壌からMesaphorura silvicola(Folsom)が日本から初めて得られたので合わせて報告する.
著者
森 泰規
出版者
日本庭園学会
雑誌
日本庭園学会誌 (ISSN:09194592)
巻号頁・発行日
vol.2014, no.28, pp.28_23-28_28, 2014 (Released:2018-10-08)

『作庭記』は、以下のように書く。「石をたてんにハ、まづおも石のかどあるをひとつ立おおせて、次々のいしをバ、その石のこはんにしたがひて立べき也。」しかし、石はものを言わない。ものをいうはずのない石の求めに従え、とは、読者に何を伝えようとしているのか。そこで、たんに新解釈を提示するのではなく<経営課題に置き換えて理解したら別の意味で参考になるのではないか>という考えに基づき、結果として<まったく別のものに置き換えて考えることで、かえって新しい光を当てる>ことをめざした。本稿は、新解釈の提案ではなく、あくまで「石のこはん」という記述を経営戦略の課題と重ねて、考察を提示するものである。
著者
三好 潤 大森 泰 高木 英恵 玉井 博修 川久保 博文
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会 関東支部
雑誌
Progress of Digestive Endoscopy (ISSN:13489844)
巻号頁・発行日
vol.73, no.2, pp.126-127, 2008-12-10 (Released:2013-07-31)
参考文献数
2

症例は71歳,女性。ANCA関連血管炎に対するステロイド療法に伴うビスホスフォネート製剤の内服開始後47日目に心窩部痛が出現した。上部消化管内視鏡検査にて胸部中部下部食道に全周性の易出血性びらん・潰瘍が多発し,切歯列33cmに穿孔を疑う深い潰瘍を認めたが,胸部CTでは縦隔気腫・膿瘍形成を認めず保存的加療にて軽快した。本例は同剤の稀ながらも重篤な副作用である食道潰瘍が不適切な服薬状況により生じたと考えられる教訓的な症例である。
著者
等々力 奈都 前野 なつ美 杉野 信太郎 國島 茉由 安田 優子 前田 里沙 佐名 龍太 森 泰斗 常岡 充子 小川 時洋
出版者
日本法科学技術学会
雑誌
日本法科学技術学会誌 (ISSN:18801323)
巻号頁・発行日
vol.27, no.2, pp.161-176, 2022 (Released:2022-07-31)
参考文献数
37
被引用文献数
2

The concealed information test (CIT) is an information detection technique measuring differential responses of the autonomic nervous system caused by the knowledge of crime-related information. The purpose of this study is to compare physiological responses caused by crime-related knowledge with those caused by a questioning voice with a deviant pitch in the CIT and to research whether there is any difference between these responses. Participants were assigned to one of three groups: a “knowledgeable” group, an “unknowledgeable” group, and a “deviant-sound” group in which the unknowledgeable participants received a deviant-sound question of a crime relevant item. Each participant chose one of the two envelopes that manipulate to assign the participant to the predetermined group. The envelopes for the knowledgeable group contained instructions with the role of the thief and the item related to the theft, and the envelopes for the unknowledgeable group and a deviant-sound group contained instructions with the role of the innocent. Participants are asked to hide their roles and undergo the CIT. The knowledgeable group and deviant-sound group showed increased electrodermal activity, low heart rate (HR) and low normalized pulse volume (NPV) for relevant items. In the deviant-sound group, there was no suppression of respiration, and low HR appeared earlier compared to the knowledgeable group. The differential responses on thoracic respiratory speed and HR were consistently observed across question repetitions in the knowledgeable group, while the differential responses on skin conductance response, HR and NPV decreased along with question repetitions in the deviant-sound group. The different patterns of differential physiological responses found in the knowledgeable group and the deviant sound group suggested the possibility of distinguishing these two groups. In particular, the suppression of respiration caused by the crime-relevant item may be characteristic of knowledgeable persons. The practical implications are discussed.
著者
金子 信博 中森 泰三 田中 陽一郎 黄 垚 大久保 達弘 飯塚 和也 逢沢 峰昭 齋藤 雅典 石井 秀樹 大手 信人 小林 大輔 金指 努 竹中 千里 恩田 裕一 野中 昌法
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会大会発表データベース 第124回日本森林学会大会
巻号頁・発行日
pp.394, 2013 (Released:2013-08-20)

福島原発事故により汚染した森林の除染には、伐採や落葉除去だけでは十分でなく、処理した木材と落葉の処分も問題である。森林土壌から、安全に放射セシウムを除去する方法を提案する。落葉分解試験を、二本松市のコナラ林で2011年12月から2012年12月まで行った。6月には、落葉の放射性セシウム濃度は土壌の2倍から3倍となり、土壌の約12-18%が上方向に落葉へと移動した。この移動は、糸状菌が有機物上で生育する際に土壌からセシウムを取り込むためと考えた。落葉の代わりに伐採した樹木をウッドチップ化し、土壌のセシウムを糸状菌によってチップに集める方法を考案した。汚染地域の木材中の放射性セシウム濃度はまだ高くないので、森林を伐採し、現地で幹材をウッドチップ化しメッシュバッグに入れ、隙間なく置いて半年後に回収することで、低コストで安全に除染が可能である。半年程度経過したウッドチップはまだ分解が進んでいないので、安全な施設で燃焼し、灰を最終処分する。単に伐採して放置するのでなく、この方法で森林施業を積極的に継続しつつ、汚染木材をバイオ燃料として活用し、復興に活用することが可能である。
著者
森 泰智 川上 聡 橋田 洋二
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌(化学と工業化学) (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1990, no.4, pp.396-400, 1990-04-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
22
被引用文献数
4

非プロトン性極性溶媒中,2,4-位に置換基を持つ6-クロロ-1,3,5-トリアジン〔1〕とシアン化銅(I)あるいはシアン化カリウムとの反応から,いくつかの標題の化合物〔2〕が得られた。しかし,2,4-位にアルコキシル基を持つ場合・同様な反応からイソシアヌでレ酸トリアルキル〔3〕およびヒドロキシ置換体〔4〕が得られ,これらは最初生成したシアノトリアジンが分解しシアン酸アルキルを与え,これを経て生成したものと推察された。また,シアノトリアジンとアミン,アルコール,およびアジ化物イオンなどとの反応から,それぞれ対応するアミジン,イミダート,およびテトラゾール誘導体などが得られ,シアノトリアジンは求電子性に富むことがわかった。