著者
新山 雅紀
出版者
大阪体育大学
雑誌
大阪体育大学紀要 (ISSN:02891190)
巻号頁・発行日
vol.37, 2006-03

本研究は、中学男子サッカー選手を対象に、一般的な体力と膝関節の等速性筋力を測定し、これらの体力要素を中心として現状を把握し、技術レベル別、ポジション別でどのような特性が見られるか比較・検討を行い、今後のトレーニングの方向性を検討することを目的とした。その結果、次のことが明らかとなった。(1)技術レベル別で比較した場合、技術レベルの高い選手は、形態および筋力、そして等速性の伸展力・屈曲力に優れており、他の群と比較して有意に高い値を示した。しかし、パワー系に関しては、各群間に有意差が認められなかったことから、スピードの要素を考慮した下肢のパワートレーニングの必要性が示唆され、それ以外の選手については、最大筋力およびパワーの向上の必要性が示唆された。(2)ポジション別で比較した等速性筋力に関しては、有意差は認められなかったが、絶対値ではGKが最も高い値を示し、以下FW、DF、MFの順に高い傾向を示した、体重当たりの値で比較をしても各群間に有意差は認められなかった。GKが最も低い値を示し、FWが最も高い値を示した。(3)伸展・屈曲比については、少し低い傾向を示していることより、ハムストリングの強化の必要性が示唆された。また、柔軟性とハムストリングの筋力に有意な相関が認められたことから、柔軟性のトレーニングを十分に行うことの必要性が示唆された。
著者
坂田 好弘
出版者
大阪体育大学
雑誌
大阪体育大学紀要 (ISSN:02891190)
巻号頁・発行日
vol.35, pp.101-116, 2004-03-31

This study is a sabbatical research on the RDO (Rugby Development Office) system in New Zealand. I returned to Christchurch, New Zealand in April and completed my research until September 2003. I was working as a RDO staff coach under the supervision of Mr. Lee Golding at the CRFU (Canterbury Rugby Football Union). The CRFU is one of the most successful rugby organisations in the world at both the professional and amateur level. I wanted to bring fresh ideas to Japanese rugby, whose environment and development systems differ from New Zealand's. The popularity of rugby in Japan is warning a major step towards the new company competition, Top-League, being kicked off in September. I am concerned that Japanese rugby may focus on professional and top level with the needs of junior players, already declining in numbers, being sidelined. The main reason for my visit to New Zealand was so I can assist with the development of junior rugby in Japan, which seems segmented and without major focus. This article examines the RDO system in New Zealand, with particular focus on the CRFU. This study is based on exclusive interviews, observations/participations of rugby seminars, literature reviews and my experience as a RDO staff coach.
著者
松山 祥子
出版者
大阪体育大学
雑誌
大阪体育大学紀要 (ISSN:02891190)
巻号頁・発行日
vol.38, 2007-03

大学硬式野球部の右投げ右打ち選手と右投げ左打ち選手を対象に, 体幹回旋筋力を測定し, 投打方向の違いが体幹回旋筋力に及ぼす影響を検討した.その結果, 体幹右回旋筋力・体幹左回旋筋力・右回旋筋力/左回旋筋力の比率の全てにおいて, 両群間に有意な差は認められなかった.また, 体幹回旋筋力に左右差が生じていなかった.この理由として, 両群ともに体幹筋力の不均衡を予防すると支持されている逆素振りを行っていたことや, 体幹にかかる投球時の回旋ストレスは体幹回旋筋力の均衡を保つ程大きくはないと考えられ, 投打方向が異なる右投げ左打ち選手においても, 逆素振りを行うことで体幹筋力の均衡を保っていたものと考えられた.したがって, 投打方向の違いが体幹回旋筋力に及ぼす影響は少ないと示唆された.さらに, 高校硬式野球部の右投げ右打ち選手と右投げ左打ち選手を対象に, アンケート調査を行った.全ての項目において, 両群で有意な差は認められなかった.また, 投打方向の違いに関わらず, 腰痛を経験している選手ほど素振り回数が有意に多く, さらに逆素振り回数は素振り回数に対する割合の高い選手は有意に腰痛が少なかった.したがって, 腰痛の発症においても投打方向の違いによる影響は少ないことが示唆された.また, 両実験の対象選手の身体測定により右投げ左打ち選手の方が, 右投げ右打ち選手に比べ体格が小さく, 右投げ左打ちに変更する選手の特徴である可能性が示唆された.
著者
長谷川 尋之
出版者
大阪体育大学
雑誌
大阪体育大学紀要 (ISSN:02891190)
巻号頁・発行日
vol.38, 2007-03

本研究では、濃度の異なるショ糖溶液を用いて、運動時の自発的飲用量と生理状態についてラットを用いて検討した。4週齢のSD系雄ラット30匹を用い、溶液に含まれるショ糖濃度の違いによって2%、4%あるいは8%の3群に分けた。運動当日には、全てのラットに走行速度30m/minで30分、4セットのトレッドミル走行をさせ、各セットの運動後10分間に水とそれぞれのショ糖溶液を2瓶選択法で飲用させた。運動前日には安静状態の測定をするために運動当日と同じ時間帯に飲用量の測定を行なった。運動当日のショ糖溶液の飲用量及び総飲用量は、2%群<4%群=8%群であり、運動前日に比べ全ての群で減少した。体重とヘマトクリット値は運動後に全ての群で低下した。血清グルコース濃度は運動後で運動前に比べ、2%群と4%群で有意に低下を示したが8%群では変化しなかった。組織グリコーゲン量はヒラメ筋では8%群で2%群より有意に高値で、肝臓では群間に差はないがショ糖濃度に比例していた。血清ナトリウム濃度、組織重量、組織水分量及び直腸温は群間で差はなかった。以上の結果より、本研究の条件下では十分な水分補給ができていないことが推察され、脱水予防のために運動中から十分な水分補給を促すための方法を検討する必要性が示された。また、糖質補給ではスポーツドリンクを希釈して使用するのは望ましくなく、むしろ高濃度の糖質を含むスポーツドリンクが血糖値の低下を防ぐことに有効であることが示唆された。
著者
藤原 敏行
出版者
大阪体育大学
雑誌
大阪体育大学紀要 (ISSN:02891190)
巻号頁・発行日
vol.37, 2006-03

本研究では、両足旋回の力学的構造を分析し、指導に有益な知見を得ることを目的とした。17名の大学男子体操競技選手に、フォースプレートを用いて作成したあん馬モデル上で両足旋回を行わせ、ポメル反力の分析と3次元動作分析を行った。さらに被験者の中から5名ずつ抽出した熟練群と非熟練群を比較し、以下の知見を得た。(1)鉛直反力は両手支持局面で体重より大きく、片手支持局面で体重より小さくなっており、馬体との衝突を回避する上下動を生み出していると考えられた。(2)水平反力の法線成分は常に回転中心方向へ発揮されており、両手支持局面で大きなピーク値を示した。また、水平反力の接線成分の変化は身体重心の水平速度変化と対応していた。よって、水平反力は回転運動のための求心力と接線加速力を生み出していると考えられた。(3)身体重心の水平速度は両手支持局面で極小値、片手支持局面で極大値を示したのに対して、体幹重心と両足関節中点の水平速度は逆位相の変化を示した。これによって、両手支持局面では身体重心回りの身体の回転、片手支持局面では支持手回りの身体重心の回転が、それぞれ優位に行われていることが示唆された。(4)身体の屈曲角度は熟練群の方が非熟練群よりも小さい傾向にあったが、側屈角度は両群間で差が見られなかった。また、身体の側屈は馬体との衝突を回避し、さらに下肢の水平面回転にも貢献していると考えられた。従って、身体の屈曲は技術欠点として避けながらも、身体の側屈の作用は理解しておく必要があると考えられた。
著者
田原 宏晃
出版者
大阪体育大学
雑誌
大阪体育大学紀要 (ISSN:02891190)
巻号頁・発行日
vol.39, pp.55-70, 2008-03

The first Code of Points in Gymnastics was formulated by International Gymnastics Federation (F.I.G.) in 1949. It is commonly assumed that the 1964 edition of the Code of Points is the basis of present Code of Points. From the 1964 edition to the 2006 edition, the Code of Points has been revised for 10 times, and 11 revised editions have been published since 1964. The purpose of this investigation was to clarify the tendency of how gymnastics skills have been developed by putting all the published skills together, in order to make fundamental materials for future study. This time, the investigation was focused on vaulting skills only. The results in present study were summarized as follows. ・Total 177 vaulting skills have been published since the 1964 edition to 2006 edition. ・In the 1964 edition, only 12 vaulting skills were published. However, within about half century, the number of vaulting skills has increased for 10 times, and 133 vaulting skills were published in the 2006 edition. ・During the period, developments in the first flight phase were mainly made in vaults with 1/4 turn or rounding off after or before jumping off the springboard, respectively. In the second flight phase, the developments were mainly seen in vaults with handspring and Yamashita styles, which were characterized by rotations of the body about lateral and longitudinal axes of the body after pushing off the horse. ・Although the largest number of vaulting skills with highest values was published in the 1989 edition, the number has decreased after the edition, and only one new vaulting skill with highest value was published in the 2006 edition. ・Of all the published vaulting skills, there were 5 vaulting skills that were continuously published from the 1964 edition to the 2006 edition. During this period, there were 27 vaulting skills with only one publication, and two of these 27 vaulting skills were newly published skills in the 2006 edition.
著者
長江 晃生
出版者
大阪体育大学
雑誌
大阪体育大学紀要 (ISSN:02891190)
巻号頁・発行日
vol.38, 2007-03

本研究は、第12回・リーグ男子大会予選ラウンド(8チームでの総当たり戦を4ラウンド実施)の内、堺BZチームを中心とした28試合107セット(延べ214セット)を対象にゲーム中のブロックとDigパフォーマンスを調査して、堺BZチームと各対戦チームを比較検討した。本研究の結果を以下のようにまとめた。1.堺BZのブロック参加率については、対戦チームのコンビ攻撃の特徴により変動し、対戦チーム毎に違ったブロック参加状況を示した。その理由としては、堺BZの守備戦術のシステムを対戦チームのコンビ攻撃の特徴に応じて変更して対応していることが考えられる。もうひとつは、外的要因としての対戦相手のコンビ攻撃使用頻度の違いが関係しているものと推察される。2.堺BZは、1位のSUNに比べブロック・Digパフォーマンスにおいて、やや下回っている傾向を示した。しかし、ブロックパフォーマンスにおいては下位チームのTYOとASAに比べて明らかに上回り、B-Dig成功率においても、下位のTOR、TYO、ASAを上回っていることが明らかとなった。その理由としては、堺BZがSUNの攻撃に対して多くのブロックで対応していたが、SUNのアタッカーの能力、打球スピードがVリーグの中でも優れていることから、ブロック・Digパフォーマンスにおいては良い結果に繋がらなかったと考えられる。下位チームとの対戦においては、ブロック参加率ではやや下回っていたが、プロッカーの高さや「読み」が優れ、1人のブロックの質が関係しているものと推察できる。3.B-Dig成功率はNB-Dig成功率よりも高い成功率を示し、その変動範囲がNB-Dig成功率より小さい傾向を示した。また、ブロック参加人数とブロックパフォーマンスの関係は、ブロック参加人数が多くなると、B返球率やB-接触率は漸増傾向を示す結果となった。このことから、Dig成功率を高め、安定させるためには、ブロックでワンタッチを取得することが必要である。すなわち、ブロックとDigの関係性を検証した結果を得た。
著者
平野 亮策 松田 基子 神崎 浩
出版者
大阪体育大学
雑誌
大阪体育大学紀要 (ISSN:02891190)
巻号頁・発行日
vol.33, pp.19-27, 2002-07-01

The international spread of judo has passed the time more than a century yet. It can also be regarded as a process of growing a competitive game. The game rules of IJF that was enacted in 1974 has not been corrected greatly even today. In such a situation, the increase of the ratio of the Ippon - Gachi is astonishing. This study explores the background of the phenomenon and is going to clarify the meaning of the phenomenon of the recur- rence toward the Ippon-Gachi and a prospective view. As a conclusion, the internationalization process of judo can be regarded as the flow from the Kano-judo to clothes wrestling (JUDO) and to the international judo which is grounded on a game culture. However, we have to think that the judo seen today is not the phenomenon of the recurrence toward the Ippon-Gachi. An important future subject is how to face the inconsistency of the game rules which has formed the point system iudo.
著者
愈 勤楠
出版者
大阪体育大学
雑誌
大阪体育大学紀要 (ISSN:02891190)
巻号頁・発行日
vol.37, 2006-03

ショート・トラック・スピード・スケート(以下ショート・トラック)は,氷上スケート競技の一つで、滑走タイムを問わず、順位を争う競技である。これまでのスケート研究はスピードスケートに関するものが多く、ショート・トラックの研究は少ない。本研究では、ショート・トラックにおける動作と筋活動の特徴を明らかにし、体力的なトレーニングに役立つ知見を提供しようとした。日本の著名なショート・トラック女子選手3名を対象に、スタート時の三次元動作分析と筋活動の測定を実施した。動作分析用のためにデジタルビデオカメラ2台を使用し、毎秒60コマで撮影した。その映像を基に、DLT法を用いて膝関節、足関節、股関節の屈曲・伸展角度と股関節の内転・外転・内旋・外旋角度について分析した。筋電図(EMG)は、右下肢8ヵ所の筋(中殿筋、大殿筋、大内転筋、外側広筋、大腿二頭筋長頭、前脛骨筋、腓腹筋内側頭)について表面電極による双曲誘導法により導出した。足が着氷しているキック期と足が離氷しているスイング期に分けて積分し、平均振幅を算出し、最大筋力発揮時の相対値(%aEMG)を求めた。分析結果から以下のことが明らかになった。股関節は、常に外転位にあり、身体全体を内側に傾けてキック力を発揮していた。この際、中殿筋の働きが確認できたことから、ショートトラックに特徴的な筋活動であり、積極的にトレーニングすべき対象の筋であると考えられた。膝関節は伸展しながらキック動作をしていた。膝関節伸筋群のトレーニングは大腿直筋の働きを抑制しながら股関節を伸展する状況で実施する必要があると考えられた。足関節は屈曲して、身体を前傾位に保ちながらキックしており、そのため前脛骨筋が積極的に活動していたことが分かった。これはショートトラック独特の動作であり、前脛骨筋はトレーニングにおいて重視しなければならない筋であると考えられる。