著者
松尾 邦枝 太田 順康 千住 真智子
出版者
大阪教育大学
雑誌
大阪教育大学紀要. 第4部門, 教育科学 = Memoirs of Osaka Kyoiku University (ISSN:03893472)
巻号頁・発行日
vol.64, no.1, pp.69-80, 2015-09

本研究では,2014年2月21日~3月13日の日程で,ヘルシンキにおいてフィンランドのスポーツ振興の実態を調査し,福祉先進国と呼ばれているフィンランドの健康の取り組みについて明らかにするとともに,運動しやすい環境の整備状況について調査を行うことで,日本人の運動習慣の向上や健康づくりに関する知見を得ることを目的とした。フィンランドは,定期的にスポーツを実施している者(週1回以上)が国民の91%と世界一の生涯スポーツ先進国である(山口:2007)。フィンランドは,かつて欧米同様に生活習慣病が増大していたが,医療費削減のためにスポーツ促進を掲げた福祉向上政策を行った結果,スポーツ振興や施設の改良や拡大がおこなわれ,自国の歴史の中で培われた気質のあとおしもありスポーツが浸透し,スポーツ実施率は世界一となった。現在,スポーツ実施率が47.5%(2012年度)といわれている日本も今後,利用しやすい総合型地域スポーツクラブの拡大や,ウォーキング等を実施しやすい道路,公園の整備,体育館の利用方法の簡素化等の対策を進めることで運動・スポーツのさらなる促進につながると考えられる。This is a survey on the sports situation in Finland from 21st February to 13th March in 2014. The first purpose of this research is to learn the health policy of Finland, known as a country with one of the most highly advanced welfare systems. The second is to give some implication to the improvement of the exercise habits of the Japanese by learning the maintenance of the Finnish sports environment. Finland is also one of the lifelong sports countries over 90% of the population of which are regularly doing a certain sport, at least once a week (Yamaguchi 2007). In Finland, life-related disease used to be as popular as it is in America, but some welfare improvement implements were put into practice for the purpose of a reduction of its national medical expense. It brought a sport promotion and an expansion and improvement of facilities, backed up mutually by its own historical and cultural background. Thus sports habits spread throughout people and now Finland has the largest number of people doing sports. In Japan the ratio is still estimated to be around 47.5% (in 2012), but in the near future there will be an improvement of exercise and sports situation with more easy-accessible general sport clubs, maintained walking roads and parks, and with more simple procedure to use public facilities.
著者
佐藤 慶明 入口 豊 西島 吉典
出版者
大阪教育大学
雑誌
大阪教育大学紀要. 第4部門, 教育科学 = Memoirs of Osaka Kyoiku University (ISSN:03893472)
巻号頁・発行日
vol.63, no.1, pp.45-54, 2014-09

1993年に10クラブからスタートしたプロサッカー・JリーグもJ1・J2を合わせて40クラブに増加し,現在はJ3リーグ結成が計画されるまでに発展した。Jリーグの誕生が,日本選手のレベルを格段に引き上げ,日本代表チームの4大会連続のワールドカップ出場と世界ランキング上位に躍進させる原動力となったことは疑う余地がない。しかし,順調に発展してきたかに見えるJリーグ・クラブ各チームにおいては,個別には経営上の様々な問題を抱えていることも事実であり,それらの問題の克服なくして今後の大きな飛躍を望むことは困難な情勢にある。本研究は,Jリーグ所属全チームの中でも親会社を持つクラブの順位浮上のためのマネジメント上の問題点を,J1・J2各1チームのクラブ経営のトップであった元社長,GMへのヒアリングを中心に事例的に明らかにすることを目的とする.特に本稿では,JFLからJ2昇格後に3年連続最下位を経験して,2011年にJ1昇格圏内にまで成績を上げるも,四国という地域性とチーム運営面や観客動員数にも課題を残す「徳島ヴォルティス」の事例を中心に取り上げる。The purpose of this study is to make the actual conditions of management of a professional football club in Japan (J-league) clear through having an interview with the general manager of the J1-league and the J2-league clubs. This is the continued study from the previous report with the same title :"A Case Study of Management of a Professional Football Club in Japan(I)-focus on a case of the Urawa Red Diamonds (J1)-"(Memoirs of Osaka Kyoiku University, Ser.IV., Vol.62-2.2014.2., pp.11-22.) Especially, the present study is to examine the actual conditions of management of the "Tokushima Vortis "(J2) through having an interview with the former president of the Tokushima Vortis". The finding and discussions on the following topics are presented in this paper: 1.An outline of the Tokushima Vortis (J2) 2.Contents of an interview with the former president of the Tokushima Vortis (1)about a management of the president (2)the relationship among the front, the staff, and the players (3)the duties of the president (4)the present state and the future of the general manager and the president of the J-league team.
著者
内藤 翔平 入口 豊 井上 功一 中野 尊志 大西 史晃
出版者
大阪教育大学
雑誌
大阪教育大学紀要. 第4部門, 教育科学 = Memoirs of Osaka Kyoiku University (ISSN:03893472)
巻号頁・発行日
vol.62, no.1, pp.31-42, 2013-09

本研究は,サッカー発祥の地であり,世界最高峰のプレミアリーグを有するイングランドの地域サッカークラブにおけるユース育成の実情を検証するため,筆者(内藤)自身がスタッフとして所属したセミプロリーグレベルのクラブ(5部リーグ)「AFCウィンブルドン」に焦点を当て,そのクラブがどのように誕生し,地域に根付いてきたのか,また実際の運営はどのように行われているのかを明らかにし,特にそのユースチームの指導体制や運営実態を筆者(内藤)自身の体験を交えながら明らかにすることによって,イングランドのサッカークラブにおけるユース育成の内情を実証的に検証することを目的とする研究の第II報である。特に,本稿ではイングランド・セミプロリーグレベルのクラブ(5部リーグ)「AFCウィンブルドン」に焦点を当て,そのクラブがどのように誕生し,地域に根付いてきたのか,また実際の運営はどのように行われているのかを明らかにする。The purpose of this study is to make the actual conditions of the Youth Training System of Football Club in England clear through the experience of the AFC Wimbledon in Wimbledon, England. This is the continued study from the previous reports with the same title "A Case Study of the Youth Training System of Football Club in England (I)- An Outline of the Youth Training System in England -" (Memoirs of Osaka Kyoiku University, Ser IV. Vol.61-2., 2013.2., pp.11-24.). Especially, the purpose of the present study is to examine the following topics about the "AFC Wimbledon Football Club". The finding and discussions on the following topics are presented in this paper: 1.The Wimbledon FC (1)History of the Wimbledon FC(2)wining of the championship of FA Cup 2.Two Wimbledon FC "MK Dons" and "AFC Wimbledon" 3.About the first team of AFC Wimbledon
著者
飯島 敏文
出版者
大阪教育大学
雑誌
大阪教育大学紀要. 第4部門, 教育科学 = Memoirs of Osaka Kyoiku University (ISSN:03893472)
巻号頁・発行日
vol.63, no.1, pp.1-10, 2014-09

本研究の最終目的は「『郷土教育の現代化』をめざした郷土教育モデルの構築」であり,郷土教育モデルの構築にとって必要な諸ファクターを見いだし,研究テーマをそれらファクターによって焦点化して記述し,それらファクターがいかに機能するかを解明することは研究の一段階である。これまでは主として学校教育における「授業」のレベルで郷土教育を考察してきたが,それ以前の子どもの人間形成空間として「自己」や「家庭」の考察を省くことはできない。本稿においては「家庭」が郷土教育にとってどのような意義を持つのか,また家庭教育が果たす役割は何かを明らかにすることとする。筆者は身近な地域に存在しあるいは生起するあらゆる事物や事象が学習材となり得るという仮説を持っており,さらに日常生活におけるあらゆる経験が教育的意義を持つと考えている。成長期の子どもにとって学習と無縁の経験はないのである。この経験の特定の側面を評価し,サポートするタイミングを見計らうことは家庭や学校における指導者の役割である。本稿では日常生活における2つの局面において,経験の教育的意義を考察した。一つは奈良市界隈の寺社への子どもの興味関心から生じた寺巡りが表現を伴った活動として認知された事例である。この対象は奈良市近郊の児童にとっては地域学習に位置づけられるものであり,小学校中学年の地域史の学習に位置づけられ,小学校高学年以上の子どもたちにとっては日本史学習あるいは日本古代史もしくは考古学の対象となり得るものだからである。学習者の発達段階に応じて必要な相貌を見せてくれる学習材というものは実に貴重である。その対象を学ぶ児童の活動や表現物を分析することによって,身近な地域の歴史を学ぶ際に獲得可能な諸知識と諸能力,諸態度を明らかにすることとしたい。二つ目は子どもが日常生活の中で直面した切実な問題に対応すべく調べ,考え,考察する事例である。教科学習ではなかなか機会を得にくい「いのち」に関わる経験を取り上げた。筆者が研究仮説として考えていることは,学習主体にとって身近な地域から学習材を見いだし身近な地域で学習活動を実現することが,個性的な学びを保証するのみでなく地域的な特殊の学習が個別具体の学習にとどまらず諸領域の学習において普遍的な有効性をもつものであるという見解である。身近な地域にある事象や事物を対象とした学習は直接的かつ具体的であり,現代の子どもが日常的に得ている間接的な経験とは質が異なると筆者は考える。ペーパー上に記述可能な「知識」なるものは間接的な経験のみによって獲得されうるものであろう。その中には多数の事項のみではなく広く知られているような「定型的な論理」すら含まれる。記憶の対象として「論理」が意識されるようになると学習主体にとって価値ある学びは実現されなくなる。社会的な通説を反復記述するだけの人材を育てるだけでは教育の社会的意義も希薄にならざるを得ないであろう。本来は,学習者にとって身近な空間における活動が深化してのち,空間的・時間的に拡大され,対象を観察しあるいは対象を考察し,さらには観察内容・考察内容を言語表現する活動のプロセスの中に多様な教育的契機が存在していると考えている。一般的・普遍的な内容の学習はその発展の過程において実現するものであろう。本稿では,特殊の事例に関わる学習活動において見いだされた教育的諸契機が,より普遍的な教育モデルとして提案可能かどうかを提案するための検証評価をおこなっている。A construction by using only a ruler without scale and a compass is very interesting. There have been a lot of construction problems from ancient Greece era. In 1796, C. F. Gauss discovered how to construct a regular heptadecagon. His idea had joined to the Galois theory. Now, almost books introduce the construction of a regular heptadecagon by using the Galois theory. In this paper, we study how to construct a regular heptadecagon without using the word "Galois theory".
著者
佐々木 靖
出版者
大阪教育大学
雑誌
大阪教育大学紀要. 第4部門, 教育科学 = Memoirs of Osaka Kyoiku University (ISSN:03893472)
巻号頁・発行日
vol.64, no.1, pp.137-145, 2015-09

小学校での1学期の始業式における児童の関心事は,「だれが担任になるのか」「だれと同じ学級になるのか」である。「どの学級も均等」となるように教師集団がいかに知恵をしぼろうとも,少しずつ学級の雰囲気が「均等」ではなくなり,いろいろな特徴が見えてくる。だからこそ,「だれが担任になるのか」「だれと同じクラスになるのか」に関心が集まるのである。このような特徴は,一般的に「クラスカラー」と呼ばれるが,良い意味で使われるとは限らない。本研究は,「ことわざの好み」という一点にしぼって,教師の教育観と子供の価値観,そしてその関係がもたらす学級の雰囲気および教師と子供の相性といった漠然としたものを数値化して考察を加えようとするものである。At the beginning of each new academic year, students are concerned with who will be their homeroom teachers and also who will be their classmates. Teachers make every effort to minimise the discrepancy between classes. Despite this, students are gradually influenced by their homeroom teacher's characteristics. And it is seen how homeroom teachers unintentionally make distinctions between other classes. For this reason, students can't help being concerned about who will be their home room teachers and also who will be their classmates. This characteristic of classes is called "class colour". However it is not only limited to positive aspects. This study quantifies the relationship between teachers' educational outlook and students' sense of value by comparing students' and teachers' preference of proverbs. In addition, the study aims to find out how the relationship affects class atmosphere and chemistry between students and their homeroom teachers and discuss it.
著者
吉村 元貴 石川 聡子
出版者
大阪教育大学
雑誌
大阪教育大学紀要. 第4部門, 教育科学 = Memoirs of Osaka Kyoiku University (ISSN:03893472)
巻号頁・発行日
vol.62, no.1, pp.19-29, 2013-09

本研究は地域環境保全活動を通して市民は自己の成長をどのように認識しているのかの把握を目的としておこなった。NPOの運営を担う人々を中心にヒアリング調査をおこない,ヒアリング内容をKJ法によって分類した。今回事例として取りあげた大阪府南河内地域でのカワバタモロコの保護活動では,市民が活動に参加するきっかけとして,自然が好き,環境保全の使命感を持っている,人や社会とのつながりを求めていることがわかった。そして,自身の成長の認識は上記のきっかけとの関連性がみられ,それぞれ,自然認識の視野の拡大,環境保全に関する知識や興味関心の高まり,人とのつながりに幸福感を感じていることが確認された。
著者
志智 莉永 井坂 行男
出版者
大阪教育大学
雑誌
大阪教育大学紀要. 第4部門, 教育科学 = Memoirs of Osaka Kyoiku University (ISSN:03893472)
巻号頁・発行日
vol.65, no.2, pp.19-26, 2017-02

本研究では,聴覚障害児に対する音楽科指導の現状や今後の在り方を検討するために,聴覚特別支援学校小学部の音楽科指導に関する質問紙調査を実施した。第一次調査の結果,音楽科の4つの活動のうち音楽づくりの活動の実施率の低さ,指導の際の音の聴取における困難及び指導方法等での困難が多く挙げられた。また,活動毎の内容に関連する効果が児童に認められること等も明らかになった。第二次調査の結果,拡大楽譜や映像といった視覚的な教材の使用が,児童の理解や関心を促せること,理解度や授業に取り組む態度を重視する個人評価が実施されていることが分かった。聴覚障害児に対する音楽科指導の一層の充実には(1)ICT機器の充実度の違い,(2)教員間での情報交流の場の設定,(3)4つの活動毎の実施率のばらつき,という3点が課題と考えられた。
著者
小林 佐知子 小島 律子
出版者
大阪教育大学
雑誌
大阪教育大学紀要. 第4部門, 教育科学 = Memoirs of Osaka Kyoiku University (ISSN:03893472)
巻号頁・発行日
vol.65, no.2, pp.113-124, 2017-02

研究目的は,事例研究を通して,わらべうた遊びを基盤とする幼児の表現活動においてどのように共同体形成が起こるかを明らかにすることである。事例とした保育実践は,わらべうた遊びからその替え歌づくりの表現活動へと展開する5歳児クラスの実践である。わらべうた遊びに内在するノリは,表現活動では身体・言語コミュニケーションを促進した。身体・言語コミュニケーションが共通の目的,共同行為,意味共有を可能にし,教室に共同体形成をもたらした。The purpose of this paper is to reveal the characteristic appearance of community formation in young children's expressive activity based on warabeuta play through case study. The case is an early childhood education practice to create a new version of warabeuta play "Hayashi no naka kara". Nori in warabeuta play worked to facilitate body/verbal communication in the expressive activity. Body/verbal communication made it possible to share an end, actions and meanings of expressive activity, and then formed community in the class.
著者
吉村 元貴 石川 聡子
出版者
大阪教育大学
雑誌
大阪教育大学紀要. 第4部門, 教育科学 = Memoirs of Osaka Kyoiku University (ISSN:03893472)
巻号頁・発行日
vol.64, no.1, pp.33-43, 2015-09

本研究の目的は市民環境保全団体の活動に新たにPDCAサイクルを導入することが,その主体の環境保全活動と組織の成長にどのように影響するのかを分析することである。研究対象の市民団体に2012年6月~翌年4月に参与観察をおこない,各団体の会議や総会の議事録,資料等を分析するとともに,この期間中に振り返りの場を会議等で設けることによる成長を検討した。そして,振り返りが主体組織の成長へ影響を及ぼすことが推察されたので,KH Coderを用いた計量テキスト分析をおこなった。その結果,振り返りによって抽出された課題の改善策について議論や決定がおこなわれており,振り返りの導入が一部の課題に対してP→D→C→Aによる解決を可能にしていた。The objective of this study was to assess the effects of newly introducing the plan-do-check-act (PDCA) cycle for activities led by citizens' environmental conservation groups on core environmental conservation activities and the growth of the organizations. The study focused on citizens' groups, with participant observation of the groups conducted from June 2012 until April 2013. In addition to analyzing the meetings, minutes of general meetings, and materials etc. of each organization, we examined the growth of the organizations throughout this period, as a result of creating an opportunity to reflect on past activities through meetings etc. Moreover, it was surmised that reflection would affect the growth of the main organizations and therefore, quantitative content analysis was performed utilizing KH Coder. The results indicated that discussion and decision-making were occurring regarding reform measures for issues that had been identified through the reflection process. Introducing an opportunity to reflect on past activities facilitated the solution of some issues with the P→D→C→A cycle.