著者
小倉 有子 庄林 愛 Ogura Yuko Shobayashi Megumi
出版者
安田女子大学
雑誌
安田女子大学紀要 = Journal of Yasuda Women's University (ISSN:02896494)
巻号頁・発行日
no.49, pp.297-304, 2021-02-28

グルテンは、小麦などの麦類に含まれる蛋白質の一種であり、米国ではグルテンを含まない食品を「グルテンフリー(以下、GF)」と表示している。GFと表示された食品(以下、GF食品)を用いた食生活は(以下GF食)、セリアック病などの治療に用いられている。近年、欧米においてGF食は健康に有用である、さらには痩身にも有用であるとの情報が拡散し、グルテンを避ける必要がない者がGF食を取り入れる傾向がある。これをうけて日本でも同様の情報が拡散しGF食品が増加してきた。本研究では、グルテンを避ける必要がない者がGFを選択した場合、非GFと比較して、摂取する栄養量にどのような差異が生じるかを明らかにすることを目的とした。本研究では、GF食/非GF食として最もポピュラーだと思われるパンを試料とした。 結果、グルテンを避ける必要がない者がGFパンを長期的かつ日常的に選択した場合、非GFパンを選択した場合と比較して、食物繊維や鉄の不足および脂質の過剰といった悪影響が出る可能性があることがわかった。
著者
山田 修三 Shuzo Yamada
出版者
安田女子大学
雑誌
安田女子大学紀要 = Journal of Yasuda Women's University (ISSN:02896494)
巻号頁・発行日
no.47, pp.49-58, 2019-02-28

思春期の少女と母親の対立関係を解消するため、コーピング・クエスチョン等の解決志向アプローチ及び循環的質問法による支援をおこない、サブシステムである親子関係を相称的対立からメタ補足性に変容させて親子関係の改善を図った。そこで、解決志向的アプローチ及び循環的質問法が、本事例においてクライアントである家族とソーシャルワーカーとの面接に及ぼした効果について考察したものである。
著者
山田 修三 Shuzo Yamada
出版者
安田女子大学
雑誌
安田女子大学紀要 = Journal of Yasuda Women's University (ISSN:02896494)
巻号頁・発行日
no.48, pp.117-124, 2020-02-28

保育所保育指針は、平成29年の告示で3度目の改訂が行われ、これまでの「保護者支援」が「子育て支援」という名称に変更された。そこで、保育者は子育て支援において、どのような理論に基づき、子どもとその保護者に関わればよいのか、支援のあり方について検討した。 保育者による子育て支援のあり方を検討するにあたり、保育所保育指針第4章「子育て支援」の内容、及び現代の子どもと保護者を取り巻く養育環境を社会的背景から考察した。 もって、「子育て支援」におけるソーシャルワークによる支援が有効であると考え、保育者がソーシャルワークを活用する上での留意することを福祉心理学的な視座から論考した。
著者
林 真二 Shinji Hayashi
出版者
安田女子大学
雑誌
安田女子大学紀要 = Journal of Yasuda Women's University (ISSN:02896494)
巻号頁・発行日
no.48, pp.391-404, 2020-02-28

To classify trends in research on support provided by healthcare, medical, and welfare institutions addressing elder abuse at home in Japan, we examined 105 relevant papers published within the period between 2006 and 2018. There were 4 types of related institutions: medical institutions, administrative bodies in charge of healthcare/welfare services, community-based comprehensive support centers, and care service offices. Medical institutions tended to detect signs of abuse through their emergency outpatient services, and provide medical support for the elderly with dementia and mental disorders. Administrative bodies in charge of healthcare/welfare services coordinated related institutions and created networks for service use, but their initial response systems to appropriately manage abuse on identifying it had yet to be established. Professionals of community-based comprehensive support centers provided support for residents with self-neglect or refusal of intervention in many cases, and had a sense of difficulty in managing these cases. Employees of care service offices frequently detected signs of abuse, but they found it difficult to judge whether these signs indicate abuse, and accurately recognizing the necessity of consulting/ reporting was their challenge. In order to identify abuse early and appropriately manage it, it would be important for administrative bodies in charge of healthcare/welfare services and community-based comprehensive support centers to start close collaboration with other related institutions whenever detecting signs of abuse.
著者
青木 順子 Junko Aoki
出版者
安田女子大学
雑誌
安田女子大学紀要 = Journal of Yasuda Women's University (ISSN:02896494)
巻号頁・発行日
no.46, pp.31-50, 2018-02-20

2017年1月トランプ政権誕生後、「代替的事実」や「偽ニュース」の言葉で、政権側から公然と事実と異なることが事実として提示される、または、都合の悪い事実は信用ならないものとして貶められる、という驚愕するような言動が民主国家の代表とされてきた米国の政権でも通用することを世界は見せつけられることになる。多種多様なメディアの出現によって、虚構世界と現実世界の物語の境界が曖昧になっている今、他者のメディア表象に拘ることへの尊重が一層必要とされている。社会で優位にあるグループであれば「気にかけない」として済ませられるかもしれない出来事について、一つひとつに「拘る」ことで権利を主張する必要がある少数派が社会には存在する。「我が国・自国への愛国心」、「我々・自国中心」、「テロリストの彼ら」、「犯罪者の彼ら」と、「我々だけ」を尊重し、他者「彼ら」への敵対心や恐怖のみを煽り立てる乱暴なレトリックが民主国家の政治の権力側から公然と示され得る時、社会で少数派の拘りの行為が抑圧される可能性は高くなっているのである。ポピュラーカルチャーに見える「ホワイトウォッシュ」から大国の政権による「壁を作る」政策まで、全て関係し合い、相互に影響しないではいられないグローバル化した世界を私達は生きている。ジジェクの言う「人間の顔をもったグローバル資本主義」の実現のために、一人ひとりが拘り、今自分に出来ることを丁寧に問い、真摯な他者とのコミュニケーションを通して実現しようとする、そうした人々を育てることが異文化教育には要求されているのである。
著者
青木 克仁 Katsuhito Aoki
出版者
安田女子大学
雑誌
安田女子大学紀要 = Journal of Yasuda Women's University (ISSN:02896494)
巻号頁・発行日
no.48, pp.33-42, 2020-02-28

竹島問題を機に、日韓両国間の摩擦が激しくなっている中、東京の新大久保で、「韓国」を排斥する排外主義的デモが展開されるなど、特定民族や人種を排撃する、所謂「ヘイト・スピーチ」の問題は放置しておけない状況にある。ヘイト・スピーチを規制しようとすると、その発信者は「言論の自由」を盾とすることだろう。規制の楔を打っても、それが「滑り易い坂道」議論によって、解釈の恣意性を招き、「言論の自由」そのものをも脅かす可能性がある、といった議論がなされる。本論文では「言論の自由」という価値観の重要性にもかかわらず、それでも「ヘイト・スピーチ」を規制し得る可能性を探る。
著者
宮原 裕 Hiroshi Miyahara
出版者
安田女子大学
雑誌
安田女子大学紀要 = Journal of Yasuda Women's University (ISSN:02896494)
巻号頁・発行日
no.47, pp.289-300, 2019-02-28

がん治療における薬物療法では従来の殺細胞性の抗がん剤には限界があり、分子標的治療薬が登場した。近年、免疫チェックポイント阻害薬が悪性黒色腫をはじめとして多くのがん腫で再発、進行がんを対象に第Ⅲ相試験が行われ一定の効果が得られることから免疫療法として使用されるようになった。しかし、従来の抗がん剤ではみられなかった内分泌障害や消化管障害などの免疫関連有害事象が起こることが明らかとなった。それらに対しては、発症に早期に気づき対処することが求められる。悪性黒色腫に対しニボルマブやイピリムマブを投与し有害事象を来した自験例を示し考察を加えた。起こりうる免疫関連有害事象は多くの臓器に多岐にわたるので、治療科の医師のみでなく、腫瘍内科医、内分泌・代謝内科、消化器内科等の医師および、施設内の看護師、薬剤師を含めた診療連携体制が極めて重要であることを強調した。
著者
山田 貴子 Takako Yamada
出版者
安田女子大学
雑誌
安田女子大学紀要 = Journal of Yasuda Women's University (ISSN:02896494)
巻号頁・発行日
no.47, pp.129-142, 2019-02-28

高等教育のアウトカム重視傾向の高まりから、汎用的能力獲得における正課外の学習活動が果たす役割に注目が集まっている。そこで本研究では、ラーニングコモンズの活動に焦点をあて、学生スタッフの社会人基礎力1)への影響を検討することを目的とした。研究1では、学生スタッフの社会人基礎力に与える影響のうち、課外活動経験に注目し、学生スタッフ46名の社会人基礎力得点と、①アルバイト、②サークル活動(部活動を含む)、③教職課程履修、④SA経験、⑤一人暮らし経験の5つの課外活動経験の有無との関連を検討した結果、すべての項目に関して有意差は認められなかった。研究2では、学生スタッフ44名を対象にラーニングコモンズでの活動に関するアンケート調査を事前・事後の2回に分けて実施した。その結果、向上させたい力として【発信力】【働きかけ力】【主体性】を重要視する学生が多く、対人関係における社会的成長および人格的成長への志向性が確認できた。以上のことから、ラーニングコモンズにおける正課外活動実践は、社会人基礎力の発揮・向上の場となり得ることが示唆された。
著者
青木 順子 Junko Aoki
出版者
安田女子大学
雑誌
安田女子大学紀要 = Journal of Yasuda Women's University (ISSN:02896494)
巻号頁・発行日
no.46, pp.31-50, 2018-02-20

2017年1月トランプ政権誕生後、「代替的事実」や「偽ニュース」の言葉で、政権側から公然と事実と異なることが事実として提示される、または、都合の悪い事実は信用ならないものとして貶められる、という驚愕するような言動が民主国家の代表とされてきた米国の政権でも通用することを世界は見せつけられることになる。多種多様なメディアの出現によって、虚構世界と現実世界の物語の境界が曖昧になっている今、他者のメディア表象に拘ることへの尊重が一層必要とされている。社会で優位にあるグループであれば「気にかけない」として済ませられるかもしれない出来事について、一つひとつに「拘る」ことで権利を主張する必要がある少数派が社会には存在する。「我が国・自国への愛国心」、「我々・自国中心」、「テロリストの彼ら」、「犯罪者の彼ら」と、「我々だけ」を尊重し、他者「彼ら」への敵対心や恐怖のみを煽り立てる乱暴なレトリックが民主国家の政治の権力側から公然と示され得る時、社会で少数派の拘りの行為が抑圧される可能性は高くなっているのである。ポピュラーカルチャーに見える「ホワイトウォッシュ」から大国の政権による「壁を作る」政策まで、全て関係し合い、相互に影響しないではいられないグローバル化した世界を私達は生きている。ジジェクの言う「人間の顔をもったグローバル資本主義」の実現のために、一人ひとりが拘り、今自分に出来ることを丁寧に問い、真摯な他者とのコミュニケーションを通して実現しようとする、そうした人々を育てることが異文化教育には要求されているのである。
著者
西原 明史 Akifumi Nishihara
出版者
安田女子大学
雑誌
安田女子大学紀要 = Journal of Yasuda Women's University (ISSN:02896494)
巻号頁・発行日
no.50, pp.65-74, 2022-02-28

本研究は観光のもう一つの形を模索する試みである。その原点とも言える聖地巡礼や教養旅行に始まり、近代イギリスで誕生した団体ツアーから現代の様々なツーリズムに至るまで、観光は常に成長や再生を求めて行われてきた。一方、試練を経て成長するという通過儀礼の図式に沿って進むあらゆるジャンルの物語もまた、成長を疑似体験するために読まれている。つまり両者とも成長がよきものであるというイデオロギーを強固にすることに寄与しているのである。しかし過剰な経済成長は地球規模で環境破壊や格差の拡大をもたらしており、成長至上主義からの脱却を求める声はますます高まっている。そこで本稿では、例外的に脱成長の物語を生み出してきた三人の作家の成長観をその作品から読み取り、それを反映させた「脱成長」型の観光スタイルを提案した。
著者
星田 剛 Takeshi Hoshida
出版者
安田女子大学
雑誌
安田女子大学紀要 = Journal of Yasuda Women's University (ISSN:02896494)
巻号頁・発行日
no.49, pp.227-236, 2021-02-28

チェーンストア型サービス業では、従来価値共創の実現が難しいと位置づけられてきた。しかしこの領域においても価値共創が実現し、かつ価値共創によりチェーンストア型サービス業の構造的な課題であるコモディティ化と従業員の疲弊や離職の増加を解決できる可能性があることを、QBハウスの事例研究を通して論じた。
著者
廿日出 里美 Satomi Hatsukade
出版者
安田女子大学
雑誌
安田女子大学紀要 = Journal of Yasuda Women's University (ISSN:02896494)
巻号頁・発行日
no.50, pp.141-148, 2022-02-28

本研究の目的は、来るべきAI時代に備えてAIとは異なる生身の人間の「感覚力」に着目し、人とかかわる職に就く人々に向けた研修プログラムを開発することにある。これまでの研究においては、人称の身体感覚を手がかりに、パフォーミング・アーツのワークショップにおける長期的フィールドワークを通して、対人関係専門職に就く人々を想定した感覚力の拡張を目指すプログラムの開発及び検討を行った。本論では、人称の身体感覚を拡張するワークのなかでも、①自己の境界と溶解の身体感覚、②認識主体と認識対象との一体化、③自己や周囲との対話的なやりとりに着目し、対人援助職の専門家の養成や研修で重視すべき身体感覚について、関連する研究の動向や過去に行った実践的な取り組みに照らし、考察する。
著者
小倉 有子 庄林 愛 Ogura Yuko Shobayashi Megumi
出版者
安田女子大学
雑誌
安田女子大学紀要 = Journal of Yasuda Women's University (ISSN:02896494)
巻号頁・発行日
no.49, pp.297-304, 2021-02-28

グルテンは、小麦などの麦類に含まれる蛋白質の一種であり、米国ではグルテンを含まない食品を「グルテンフリー(以下、GF)」と表示している。GFと表示された食品(以下、GF食品)を用いた食生活は(以下GF食)、セリアック病などの治療に用いられている。近年、欧米においてGF食は健康に有用である、さらには痩身にも有用であるとの情報が拡散し、グルテンを避ける必要がない者がGF食を取り入れる傾向がある。これをうけて日本でも同様の情報が拡散しGF食品が増加してきた。本研究では、グルテンを避ける必要がない者がGFを選択した場合、非GFと比較して、摂取する栄養量にどのような差異が生じるかを明らかにすることを目的とした。本研究では、GF食/非GF食として最もポピュラーだと思われるパンを試料とした。 結果、グルテンを避ける必要がない者がGFパンを長期的かつ日常的に選択した場合、非GFパンを選択した場合と比較して、食物繊維や鉄の不足および脂質の過剰といった悪影響が出る可能性があることがわかった。
著者
山下 明博 Akihiro Yamashita
出版者
安田女子大学
雑誌
安田女子大学紀要 = Journal of Yasuda Women's University (ISSN:02896494)
巻号頁・発行日
no.49, pp.199-208, 2021-02-28

全日本空手道連盟四大流派の一つである和道流空手において、大塚博紀氏の著書である「空手術之研究」は極めて重要な文献である。 筆者は、和道流空手の修行時に留意すべき点を考察し、「和やかな気持ち」、「脱力による、タメのない敏捷性」、「身体の中心の感覚」の3つの極意を明らかにした「『空手術之研究』から読み解く和道流空手3つの極意」を2010年に執筆した。本稿は、それに続き、空手の形の一つである「ナイハンチ」に関し、新たな気付きを3つの極意に沿って考察し、大塚氏が本部朝基氏のナイハンチに創意を加えた点を明らかにすることで、難解とされる和道流空手の疑問点を解消し、和道流空手技術の継承と発展に寄与することを目的とするものである。