著者
山口 美佐子
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.66, no.8, pp.406-411, 2016-08-01 (Released:2016-08-01)

コレクション対象である印刷物並びに関連資料は時代的には幅広いが,印刷・発行年代が明らかな資料の大半を占めるのが,近現代の資料である。すなわち,大量印刷時代の印刷物であり,消耗品的色合いが濃い。これまで,博物館や美術館とは縁遠かった近現代の資料も,時を経て,当時の社会を知る上で重要な資料という認識が広まり,その価値も見直されてきている。しかし,こうした印刷物には,長期保存に適さない素材が用いられていることが多い。また,資料から得られる情報が乏しいこともある。こうした資料を取り扱う,印刷博物館の取り組みついてまとめる。
著者
大石 和江
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.66, no.8, pp.412-415, 2016-08-01 (Released:2016-08-01)

大学博物館はその大学の特色や方針が垣間見られ,一般市民への広報部門として注目されてきている。現在,東京理科大学の神楽坂キャンパスに位置する東京理科大学近代科学資料館は大学が遺し収集してきた科学技術遺産を基に「計算機の歴史」を中心とした展示と,毎年その時々のトピックスを中心に企画展示を行ってきた。科学技術をわかりやすく解説する科学コミュニケーターとして様々なイベントを企画してきた経験の基づき,大学の持つ所蔵資料を調査・保存する学芸員として行っているとりくみについて実例と考察を述べる。
著者
野秋 誠治
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.66, no.8, pp.416-421, 2016-08-01 (Released:2016-08-01)

お菓子の「おまけ」は,子どもの楽しみを倍増させるだけではなく,文化資源として時代を映す鏡でもある。本稿では,まず景表法に触れ,景品としての「おまけ」について説明する。その上で,「おまけ」そのものについての理解を深めるために,森永製菓の保有する様々な「おまけ」について取り上げる。森永製菓の史料室には1915年の「地理絵合わせ」カードに始まり,シール,小さなおもちゃ,商品パッケージと一体化した「おまけ」など,様々な「おまけ」が保存されている。最後に,「おまけ」の保存から活用までを,森永製菓の実例を紹介し,史資料としての「おまけ」の課題も指摘する。活用では,著作権法にも触れている。
著者
長岡 慎介
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.66, no.1, pp.26-31, 2016-01-01 (Released:2016-04-01)

中東アラブ世界は,イスラーム文明がもたらした「読み(誦み)」「書く」伝統が連綿と受け継がれてきた地域である。その伝統は,21世紀でも依然として健在である。他方,ヨーロッパ近代が生みだしたテクノロジーによって,その伝統が新しいメディアによって再構築され,以前には考えられなかった形で伝播していく動きも見られ始めている。本稿は,そのような新旧の伝統と革新が複雑に入り交じる現代中東アラブ世界の「読み(誦み)」「書く」伝統を支える知的インフラである出版メディア(書籍,インターネット)の一側面を描写する。
著者
酒井 美里
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.66, no.7, pp.325-330, 2016-07-01 (Released:2016-07-01)

スマートフォン知財訴訟や体重計の意匠,腕時計の商標など,身近な製品に関する知財訴訟を目にする機会が多くなっている。また,平成27年より特許異議申立制度の運用が開始されるなど,審判制度にも新たな動きが発生している。しかし日本だけを例にとってみても,審判や訴訟に関する情報としての審決公報や審判記録情報,判決文などは,その管轄が特許庁審判部,知財高裁,高等裁判所と多岐にわたり「ここさえ見ればすべての情報を簡単に入手可能」とはいかないのが現状である。したがって一般の特許情報利用者には,その入手や利用方法の把握が難しく,ましてや審判や訴訟の情報整理など,より敷居が高く感じられる,といった状況にもある。本稿では日本及び米国を中心に,知財審判・訴訟に関する情報の種類ならびに情報入手方法を概説する。
著者
木本 裕司 佐々木 良一
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.62, no.8, pp.329-335, 2012-08-01

内閣官房情報セキュリティセンターは,わが国の情報セキュリティ政策の中核機関である。その役割は,基本戦略の策定,政府機関や重要インフラ分野の対策,国民への普及啓発,国際連携など多岐に及ぶ。政府機関の対策の中から,統一基準群の策定,情報セキュリティ報告書の策定,SBD,送信ドメイン認証,不審メール対処訓練,ペネトレーションテスト,組織内CSIRTの整備等を紹介し,今後政府機関のセキュリティ対策の方向性を展望する。
著者
角田 朗
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.66, no.6, pp.266-271, 2016-06-01 (Released:2016-06-01)

初めて特許業務に関わる方や,これから本格的に特許調査に取り組む方に向け,特許分類とはどのようなものか平易に解説した。特許分類をイメージしやすくするため,特許分類を生物学の分類と比較した。次に,国際特許分類についてその概要を説明した。我が国独自の特許分類であるFI,ファセット分類記号,Fタームについても,国際特許分類と比較しながら,その概要を解説した。分類付与の実際についても説明した。加えて,外国の特許分類であるCPCとUSクラスについても簡単に紹介した。最後に,特許分類の調べ方と分類を使って検索する際に,知っておくべき注意点を解説した。
著者
岩橋 正樹
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.66, no.6, pp.260-265, 2016-06-01 (Released:2016-06-01)

個人も企業も政府も,直接的あるいは間接的に社会全体とかかわりを持ち,日々,意思決定を行っている。適切な意思決定には,正確な情報に基づく状況判断が欠かせない。政府は,国民にとって合理的な意思決定を行うための重要な情報である公的統計を作成し提供している。日本標準産業分類などの標準統計分類は,各種公的統計相互の比較可能性を高め,統計の利用向上を図ることを目的に定められた統計分類である。
著者
高木 元 タカギ ゲン TAKAGI Gen
出版者
情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.55, no.10, 2005-10-01

人文科学系基礎学の研究業績は、多くの場合経済的な見返りが期待できない。のみならず、短期間に個人で完璧な成果を挙げることの困難な課題が多い。したがって活字媒体での公表のみならず、インターネット上に webサイトを確保して、そこにアーカイブし公開することの意義は大変に大きい。著者自らが日々新たな知見や情報によって自らの記述の更新が可能だからである。しかし、一般に個人サイトの維持は有限である。千葉大学で始まった学術成果リボジトリは、書誌情報を添加して固定的なurlで持続的に保存されるという点で劃期的であるが、機械可読テキストの最大の長所である適時の更新、ないしは更新履歴の保存に対応していない点などの課題も残している。In most cases, scholarly work in the humanities does not result in economic compensation. Furthermore, there are many subjects for which it is difficult to produce thorough results. There is thus a great significance and potential in making public the results of one's work not only through the medium of print but also by means of maintaining a website and creating a public archive on the internet. This allows the author him or herself to modify and update even on a daily basis their work by adding new information. There are, however, normally limits to maintaining a personal website. The institutional repository begun at Chiba University is in many ways truly revolutionary in that it allows for a continuous preservations of fixed URLs to which have been added bibliographic data. Two important problems, however, remain: the ability to cope in a timely manner with revisions and updates - which, after all, is the great advantage of electronic text - and the preservation of a history of updates.