著者
中尾 康朗 永井 善一
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.56, no.4, pp.155-160, 2006-04-01
被引用文献数
1

現状のシステムライブラリアンの仕事は,広範囲で,明確に定義し難い面がある。まず,筆者のこれまでの経験から,システムライブラリアンに欠かせない基礎的なスキルについて考察する。続いて,サービス中心の展開を見せ始めている図書館の動向をまとめ,これからのシステムライブラリアンに期待される役割と,必要となってくるスキルについて考察する。今後は,標準的なシステムライブラリアンの役割とスキルの確立が必要である。
著者
菊池 誠
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.63, no.11, pp.458-463, 2013-11-01

研究者にとって学術情報流通は研究成果の評価および研究活動の推進という観点から重要な役割を持つ。かつて,我が国の研究者には欧米の中心地から遠く離れて情報から孤立することによって様々な不利益を受けていたが,情報通信技術の発達と国際的な人的交流の活発化は,この学術情報流通の状況と我が国の研究環境を大きく変えている。しかし同時にその変化は学問の過度の均質化や競争,そして専門分野の孤立といった問題を生じさせる危険もある。本稿では数学と哲学における研究者にとっての学術情報流通の現状とその変革の可能性について論じる。
著者
時実 象一
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.60, no.7, pp.289-295, 2010-07-01

CrossRef創立10周年記念のパンフレットを翻訳した。CrossRefの誕生のきっかけになったのは1999年10月のフランクフルト・ブックフェアであった。それに先立って,DOI利用についての検討,「炭素繊維」プロジェクトにおける引用文献リンクの提案などがおこなわれていたが,それらから学んだアカデミック・プレス社のPieter Bolmanとワイリー社のEric Swansonが中心となり,1999年に密かにMonzuプロジェクトを開始,一方米国出版社協会を中心としてDOI-Xプロジェクトが進められた。この2つの流れがブックフェアに合流し,一気に出版社の協同事業としてのCrossRefの創立が実現した。
著者
江原 つむぎ
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.64, no.6, pp.218-222, 2014-06-01

本稿では,米国での図書館情報学大学院留学が帰国後の業務にどのような影響をおよぼしているのか,留学で得られたものとあわせて筆者の経験をもとに述べる。前半は,学位取得までの課題への具体的な取り組み姿勢と図書館員として働く原動力となる意識,また,留学と研修の違いについて述べ,留学によって筆者がどのように成長したかを得た知見と共に記す。後半では,業務全般での英語の使用状況と学習支援業務における提案型の働き方について,筆者の留学経験が業務にどのように活かされているのか,あるいは今後どのように活かす方向性で考えているのか抱負を交えて紹介する。
著者
有川 節夫 渡邊 由紀子
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.64, no.6, pp.200-206, 2014-06-01

科学技術・学術審議会の学術情報基盤作業部会(2010年)及び学術情報委員会(2013年)による「審議のまとめ」をふまえ,主に大学図書館を対象に,図書館員の変わりゆく役割について考察する。現在の日本における大学や大学図書館が置かれている状況を整理したうえで,今後の図書館に起こり得る変革も視野に入れて,大学図書館員に求められる新たな期待と役割について説明する。また,九州大学が2O11年に開設した「教材開発センター」や大学院「ライブラリーサイエンス専攻」等の活動を紹介しながら,図書館員の人材育成・確保のための仕組みを構築する方法について述べ,最後に,図書館員の未来について展望する。
著者
中山 愛理
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.59, no.12, pp.573-578, 2009
参考文献数
37

アメリカの図書館は,どのような法制度に基づき運営されているのか。アメリカの図書館法制度を歴史的に取りあげて紹介する。地方自治体の図書館に関する決議や州による図書館設置認可に関する法律,州が図書館の設置全般を規定した法律,州図書館振興法などを概観する。また,かつて州の専権事項として図書館行政に乗り出すことに連邦政府は消極的であったが,連邦法制定により図書館行政に乗り出した。その連邦政府の図書館に対する補助金交付政策の根拠になった,図書館サービス法,図書館サービス建設法,図書館サービス技術法,博物館・図書館サービス法なども取りあげる。その上で,図書館法に関しての基本的なあり方を論じる。
著者
高久 雅生
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.64, no.2, pp.48-53, 2014-02-01

15年間にわたるオープンソース運動を振り返りながら,図書館サービスとの接点,オープンソースソフトウェアの利用事例を紹介する。図書館サービスにおけるオープンソースソフトウェアの例として,図書館管理システム,機関リポジトリ,次世代OPACといつた分野を取り上げ,国内及び海外の事例を紹介する。近年の図書館サービスの文脈におけるオープンソースソフトウェアの課題として,クラウドコンピューティングの進展やオープンデータ,人材育成などの観点から考察し,今後の課題を述べる。
著者
宮川 良男 本間 通正 狩野 延枝
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.64, no.8, pp.326-331, 2014-08-01

近年Google Scholarの発展は目覚ましく,有料の学術情報検索データベースが有する様々な機能を付加するようになった。和文誌も英文誌も多く所蔵するGoogle Scholarに着目し,その統計情報から日本語出版物のアクセス頻度の高い資料100件を科学研究費の分野に沿って分類し比較を行った。結果は情報・電気電子工学系,環境・自然災害・エネルギー科学系以外は科学研究費の採択件数及び配分額の割合と整合するデータが得られ,無料データベースであるGoogle Scholarの利用統計は,ほぼ社会的動向に沿った結果を表していた。
著者
小林 麻実
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.47, no.5, pp.231-237, 1997-05-01
被引用文献数
2

米ユナイテッド・テクノロジーズ社の図書館・情報サービス機関, アトリスは, これまで独立採算組織として, 世界16万人社員に向け, イントラネット・サービスを含む独自のサービスを開発・提供し続けてきた. 根底にある「社員の生産性向上」という使命を達成するため, 組織の内外からの様々な評価を求めてきた. デジタル革命の進む今日, 図書館機能のアウトソーシングを行なう機関や, 利用者へのアンケート, 他の先進企業図書館との競合の中から, ヴァーチャル・ライブラリーこそが利用者の利益と判断したアトリスは, 全図書館の閉鎖と大幅な組織変更を実施し, UTCインフォメーション・ネットワークへと名称変更した. このように競争の中から自己の役割を新たに創り出していくことが, 企業図書館員に求められている.
著者
坂口 貴弘
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.61, no.1, pp.28-33, 2011
参考文献数
17

実証的な歴史研究等の材料となる文書・記録の信頼性について考察すべく,偽造されたヒトラーの日記,ライブドアの堀江貴文元社長が送ったとされたメール,沖縄返還時の密約文書に関する調査を事例として取り上げる。次に,文書の真偽鑑定から出発した古文書学が分析対象とするポイントとその成立過程を概観する。一方でアーカイブズ学は,同時代の視点と管理者の視点という独自のアプローチから,記録の信頼性という課題に取り組んできた点を指摘する。電子(化)記録の登場を契機にこれらの伝統的手法が再評価されつつあることに言及し,その信頼性確保のための手法として,電子署名,タイプスタンプ,光ディスクの評価,電子化作業の記録を紹介する。
著者
鎌田 篤慎
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.64, no.5, pp.175-180, 2014-05-01

昨今,ビジネスの潮流を作っているWeb APIであるが,その歴史は意外にも古く,もっとも最初に企業が公開し,成功したWeb APIは米国のeBayが2000年に公開したものと言われている。それから十数年,インターネットに接続するデバイスの増加に伴い,これまでにない勢いでWeb APIの公開が進んでいる。また,政府が主導するオープンガバメントの流れを汲んだオープンデータもWeb APIで公開されることが増えてきた。そうした背景とHack For Japanの活動でも政府が公開したWeb APIを使ったHackathonにおける成果,また,より利用されるために提出した提言書などの紹介と共に,そこに存在する課題を説明する。
著者
花田 岳美
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.41, no.12, pp.895-901, 1991
被引用文献数
3 6

少部数で配布先が限定されていたりして所在確認と入手の困難な灰色文献には重要な資料も多く,新日米科学技術協力協定中に見られるように国外からの要望も大きい。日本国内で生産され,灰色文献と見なすことのできる文献の種類を概観し,灰色文献を扱っている情報サービスの動きを述べ,灰色性を薄める方策を論じた。
著者
野末 俊比古
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.64, no.1, pp.2-7, 2014-01-01

情報リテラシー教育の「これまで」の動向と「これから」の方向性について,"情報リテラシー(教育)観"を軸としながら整理.検討した。次のような"大きな流れ"としてまとめた。「マルチメディアの視点からからトランスメディアの視点へ」「情報源の評価から情報の評価へ」「理念としての情報リテラシー(教育)から戦略としての情報リテラシー(教育)へ」「目的・目標としての情報リテラシー(教育)から手段・方法としての情報リテラシー(教育)へ」「『ツールを(で)教える』から『プロセスを(で)教える』」へ」「"教える"情報リテラシー教育から"教えない"情報リテラシー教育へ」
著者
矢田 俊文
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.64, no.1, pp.29-36, 2014-01-01

Google世代もしくはGoogle時代のインフォプロがおちいり易い「情報リテラシー」の盲点に留意し,調査研究を行う人材を育成するためには,どのような教育を設計し,どう実行するべきか。データベース会社のノウハウを通して,利用者教育のデザインと具体的手法について論じる。急増するエンドユーザに必要な「情報リテラシー」を伝え,利用者対応で疲弊しない,サステイナブルな知識と人材育成の方法を議論する。
著者
岩井 雅史 後閑 壮登
出版者
情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.59, no.1, pp.18-22, 2009
参考文献数
18
被引用文献数
2

信州大学では,機関リポジトリを大学・研究者の視認性向上の手段としてより効果的・戦略的に活用するため,機関リポジトリと研究者総覧とを連携させたシステム「SOAR」を開発して運用を行ってきた。同システムはシステム同士をリンクでつなぎ,閲覧者が多くの情報を簡単に入手できるような設計とすることで,その第一の目標である研究者の視認性向上の実現を狙っている。またデータの一元管理を可能とすることで,研究に付随するデータ管理の負担軽減も目指している。本稿では信州大学のこれまでの取り組みと今後の戦略および発展の方向性について述べる。
著者
薬師院 はるみ
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.57, no.9, pp.434-440, 2007-09-01

電子化の進行は,図書館長のあり方を変えることになるのだろうか。事によると,司書は不要になるのだろうか。この種の議論は,図書館界で,これまでにも何度か提出されてきた。本稿は,この現象自体に注目するものである。議論が反復された背景には,不安の存在を指摘することができるだろう。新しい情報技術が,従来のあり方や既存の価値観を覆そうとすることへの不安である。ただし,未だに司書職制度が確立しているとはいい難い状況下,司書の新たな役割だけを追求しようとすることは,往々にして司書不要論に結びつく。そこで,本稿では,変化が激しい今日こそ,司書固有の存在意義という視点から情報化という事態を考え直すことを提案する。
著者
志賀 典之
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.64, no.2, pp.60-65, 2014-02-01

オープンソース・ソフトウェアの核心要素であるソースコードの公開,自由な複製・改良・頒布を可能ならしめるのが,ソース・コードの公開をソフトウエアの配布等の条件とするライセンス(著作物利用許諾)である。本稿では,OSSの概念形成の沿革を概観し,排他的独占権である著作権を用いて逆説的にソフトウェアの非排他性の保証を実現しようとしたフリー・ソフトウェア運動及びコピーレフトの概念を概説したのち,OSSライセンスの法的性質,コピーレフトの強度に応じたOSSライセンスの各類型について述べ,近時指摘される実務上の留意点につき示唆を試みる。