著者
加納 信吾
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.71, no.6, pp.263-268, 2021-06-01 (Released:2021-06-01)

グラントメトリクスは,論文によるビブリオメトリクスや特許によるパテントメトリクスに対し,助成金プロジェクトを分析単位とするメトリクスの総称である。近年,国内の主な助成金提供機関の助成金データベースが整備され,網羅的な助成金検索が可能となったことから,グラント情報を利用した,先端医療分野における新規製品の実用化レベルの時系列なトレンドの変化を分析するアプローチを紹介する。また,トレンド変化と製品の薬事審査ガイドラインの整備のタイミングとの関係についても分析し,Regulatory Horizon Scanningにおける定量的なアプローチとしてのグラントメトリクスの利用可能性についても検討する。
著者
入江 満
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.71, no.6, pp.258-262, 2021-06-01 (Released:2021-06-01)

バイオインフォマティクスやマテリアルズインフォマティクスといった「X-インフォマティクス」分野および計算化学や計算物理学といった「計算-X」分野が,人工知能(AI)技術の応用により発展してきた。また,AI技術の普及により,インフォマティクスにおける計算科学や,計算科学におけるインフォマティクスというように,分野の垣根を超えた取組みが増えてきた。本稿では,ともに「自然科学×情報科学」の枠組みの中にあるこれらの分野について概念を記述すると共に,関係性を整理する。また,それぞれの分野においてAI技術がどのように応用され,発展しているのか,従来の統計手法との比較も交えて議論する。
著者
阿久津 達也
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.71, no.6, pp.247-251, 2021-06-01 (Released:2021-06-01)

バイオインフォマティクスは生物学と情報学の学際領域であり,1990年代から2000年代前半にかけて実施されたヒトゲノム計画や,他のゲノム計画の進展に伴い大きく発展した。本稿ではバイオインフォマティクスにおける代表的な研究課題を紹介する。具体的には,配列アラインメント,配列検索,遺伝子発見,進化系統樹推定,ゲノムワイド関連解析,タンパク質立体構造予測,遺伝子発現データ解析,生体ネットワーク解析などについて簡潔に説明する。日本におけるバイオインフォマティクス研究の歴史や発展についても紹介するとともに,近年における新たな展開や今後の展望について議論する。
著者
北本 朝展
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.71, no.6, pp.240-246, 2021-06-01 (Released:2021-06-01)

第四パラダイムとは,実験・観測科学,理論科学,計算科学に続く第四の科学研究の枠組みであるデータ中心科学を指す言葉である。大規模データを集約したデータベースの構築から始まり,データ駆動型分析を通して新しい知見を得るという科学研究の方法論が様々な分野に浸透し,X-インフォマティクスと呼ばれる新しい分野群を形成しつつある。本論文はX-インフォマティクスの特徴を概観するとともに,いくつかの分野における事例をもとに,その強みと弱みをまとめる。さらにX-インフォマティクスが引き起こす研究方法の変化についても,測定者と解析者の分離と信頼などの点から論じる。
著者
炭山 宜也
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.71, no.6, pp.239, 2021-06-01 (Released:2021-06-01)

2021年6月号の特集は「X-インフォマティクス」です。情報科学と生物科学を融合した情報生物科学がバイオインフォマティクスという言葉で広く知られるようになってきましたが,「バイオ」以外の「X-インフォマティクス」という言葉もよく耳にするようになってきました。蓄積された膨大なデータに情報学的アプローチを適用することで新しい発見を狙うX-インフォマティクスは,自然科学分野を中心に広がりを見せています。本特集では,X-インフォマティクスの特徴や事例について5人の方々から解説をいただきました総論では国立情報学研究所の北本朝展氏に,科学研究のパラダイムシフトにおいて第四パラダイムという概念から,X-インフォマティクスについて,自然科学,人文学,社会科学等の各分野の状況と今後の進展について解説していただきました。京都大学の阿久津達也氏には,1990年に始まったヒトゲノム計画をきっかけにX-インフォマティクスの中で先行してきたバイオインフォマティクスについて,代表的な研究課題を紹介していただくとともに,国内における研究の歴史や発展について解説していただきました。物質・材料研究機構(NIMS)の出村雅彦氏には,データ駆動型の材料開発手法として最近注目されているマテリアルズ・インフォマティクスについて,NIMSで行っているデータ駆動研究とこれを支えるデータインフラについて解説していただきました。MI-6株式会社の入江満氏には,自然科学分野の代表的なX-インフォマティクスの比較及びX-インフォマティクスと計算科学や人工知能との関りについて解説していただきました。東京大学の加納信吾氏には,医療分野におけるテキスト情報によるデータを活用した分析事例として,助成金データベースを利用した先端医療技術のトレンド分析について解説していただきました。近年の第三次AIブームも相まって自然科学分野でのデータ駆動型研究が活発化しています。人文学や社会科学の分野ではデジタル-Xやコンピュテーショナル-Xとも呼ばれ,今後データを活用した研究の発展が期待されています。本特集が情報やデータを扱うインフォプロの業務の参考になれば幸いです。(会誌編集担当委員:炭山宜也(主査),野村紀匡,水野澄子,南山泰之)
著者
福嶋 聖淳
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.70, no.1, pp.17-22, 2020

<p>インターネット上の情報は今日の社会において欠かすことのできないものとなっており,2020年に開催される東京オリンピック・パラリンピック競技大会(東京2020大会)を後世に伝えていくためにも,それらの保存が課題の一つである。国立国会図書館はインターネット資料収集保存事業(WARP)により,東京2020大会に関連する様々なウェブサイトの保存に努めている。ウェブアーカイブに関する国際協力組織であるIIPCにおいても同様に,オリンピック・パラリンピックに関するウェブサイトの保存が図られている。近年は,ウェブアーカイブの研究利用も進められており,オリンピックやスポーツ関連のウェブアーカイブを利用した試みもなされている。</p>
著者
村田 龍太郎 海老澤 直美
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.71, no.5, pp.226-231, 2021-05-01 (Released:2021-05-01)

日本原子力研究開発機構(JAEA)では,JAEAの研究者が成果発表や特許申請の決裁手続きを電子的に行う際に入力した情報をベースとして,研究開発成果情報を管理し,機関リポジトリを通じて発信を行っている。このうち,掲載資料や発表会議,研究者といった情報は名寄せし,典拠コントロールを行うことで,効率的かつ効果的な研究開発成果情報の管理・発信を実現している。本稿では,このうち研究者に関する情報にスポットを当て,その典拠コントロールを中心に紹介する。さらに,researchmapを通じた研究者情報の発信や,今後の課題と展望について述べる。
著者
田辺 浩介 谷藤 幹子
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.71, no.5, pp.200-205, 2021-05-01 (Released:2021-05-01)

研究機関によって運営される研究者プロフィールサービスは,オープンサイエンスの進展に代表される研究活動の多様化や,Institutional Researchの取り組みによって,その目的が研究成果の公開から研究活動の分析のための情報基盤へと広がってきている。本稿では,今後の研究者プロフィールサービスの方向性や,その構築・運用に求められる研究機関の取り組みについて論じる。
著者
野村 紀匡
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.71, no.5, pp.199, 2021-05-01 (Released:2021-05-01)

2021年5月号は「研究者情報基盤とその利活用」と題してお届けします。研究者情報基盤の重要な要素として研究者識別子があります。2009年3月にサイエンス誌は“Are You Ready to Become a Number?”という記事を公開しました1)。ここでいう“a Number”は各研究者に付与される識別子のことを指します。同記事は,全研究者が識別子を持てば文献データベースにおける著者名名寄せの手間が大幅に削減される等,様々なメリットがあると述べました。一方で同記事は,「Thomson Reuters社(現Clarivate社)が提供するResearcherIDをはじめ,研究者識別子に関するイニシアチブが複数存在するが,これらを統一すべきか,するとしたら誰がすべきか」という課題があることも指摘しました。2010年,この課題を解決する中立的なサービスの提供を目指して,ORCID, Inc.が発足しました。それから10年が経った2021年,研究者がORCIDで識別子(ORCID iD)を取得し,論文投稿時にORCID iDを入力することは当たり前のこととなりました。ORCIDは職歴や研究業績を登録・公開するサービスを提供すると同時に研究者情報基盤として,researchmap等の研究者総覧データベースや,各研究機関の学術情報システムと連携しています。各研究機関の学術情報システムは研究者の氏名等の基本情報や職歴,研究業績はもとより,産業財産権や競争的資金獲得実績等,様々な情報を必要とします。蓄積する情報の一部は,各機関の研究者総覧として公開され,外部から研究者を探す際に使用されます。また研究者情報は部局別業績分析等の内部分析や,外部向け報告書作成の際にも参照されます。さて,各研究者は各サービスや所属機関システム上の職歴や研究業績情報を最新の状態に保つ必要があります。ORCIDやresearchmapに入力する項目と所属機関システムに入力する項目は,重複するものも多くあります。研究者の研究時間割合が年々減少傾向にあることが報告される昨今2),所属機関としては研究者から重複登録の労力を省くためにも,研究者情報基盤と自機関システムとの連携は欠かせません。本特集では,この研究者情報基盤とその利活用について,様々な立場からご執筆頂きました。田辺浩介氏,谷藤幹子氏には,物質・材料研究機構のSAMURAIの事例をもとに,研究者プロフィールサービスの方向性やその構築・運用に求められる研究機関の取り組みについてご解説頂きました。さらに研究活動を可視化するためにどのような制度・システム設計をすべきかについてご提言頂きました。宮入暢子氏,森雅生氏には研究者情報基盤としてのORCIDの特徴とその提供サービスについて,利用者側である機関メンバーや各国コンソーシアムが運営に積極的に関与する実践コミュニティとしての取り組みを,各国事例も含めてご紹介頂きました。粕谷直氏には日本の研究者総覧データベースかつ研究業績管理サービスとして10年以上運用されているresearchmapについて,その概要と沿革,さらには今後の展望についてご詳説頂きました。古村隆明氏,渥美紀寿氏には京都大学におけるresearchmapとORCID及び学内情報システムとの連携事例についてご解説頂きました。各システムを連携し,研究者の入力負担軽減に最大限配慮されていることがよく分かります。村田龍太郎氏,海老澤直美氏には,日本原子力研究開発機構の研究開発成果・閲覧システムJOPSSにおける情報管理・発信について,周辺システムとの連携事例のご紹介に加え,典拠コントロールのワークフローについてもご説明頂きました。国,研究機関,機関内部局の各レベルでの業績管理・分析,研究内容発信に加えて,研究者レベルでの研究活動把握の重要性は今後ますます高まることが予想されます。一方で研究活動の種類も,原著論文や書籍,学会発表に加えて,プレプリントや研究データ公開等へ広がりを見せています。多様な研究活動内容を効率よく把握するためにも,研究者情報基盤のより一層の利活用が求められています。本特集が,研究者情報基盤と周辺サービス及びシステムについての理解を深め,今後の更なる利活用検討の際の参考となれば幸いです。(会誌編集担当委員:野村紀匡(主査),池田貴義,今満亨崇,炭山宜也,南雲修司,水野澄子)1) Enserink, M. Are You Ready to Become a Number?. Science. 2009, vol.323, no.5922, p.1662-1664. https://doi.org/10.1126/science.323.5922.1662, (accessed 2021-04-10)2) 文部科学省.概要「大学等におけるフルタイム換算データに関する調査」について.2019.https://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/31/06/__icsFiles/afieldfile/2019/06/26/1418365_01_3_1.pdf, (参照2021-04-10)
著者
林 賢紀
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.58, no.5, pp.242-247, 2008-05-01 (Released:2017-04-28)
参考文献数
5
被引用文献数
1

本稿では,Web上の検索エンジンについて標準的な検索手法になりつつあるOpenSearchについて概説するほか,1)OPACを題材として,図書館システムに標準で用意された検索ページを解析し,タイトル検索のみ可能なシンプルな検索ページへ再構成を図ることで検索に必要な最小限の要素の把握,2)OpenSearch Descriptionファイルを作成し,Firefox上から直接OPACを検索するプラグインの作成,3)作成した検索プラグインの設置とインストール方法について解説する。
著者
海老澤 直美
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.71, no.3, pp.93, 2021

<p>2021年3月号の特集は「色彩による情報提供」です。</p><p>数多あふれる情報から欲しい情報を瞬時に得ようとする時,まずは目に入る情報のうち文字ではなく色で判断していることが多いのではないでしょうか。例えば,トイレの入口のマークで男性が青,女性が赤という色がもし逆だとしたら間違える確率は高くなるのではないでしょうか。図書館などの現場においても,利用者に情報を的確にわかりやすく提供するにあたり,案内表示,オンライン蔵書目録のインターフェース,什器類の空間デザインなど,あらゆる所で色彩が関係しています。</p><p>また,プレゼン資料やデータ分析における可視化など情報を視覚的に分かりやすく伝える手段としても色彩は用いられています。さらに,色覚バリアフリーという言葉があるように,色の識別に困難を持つ人もおり,色使いには配慮が必要です。</p><p>そこで今回の特集では,情報提供を的確に行うために,色彩がどのように活用できるか,基礎知識や注意点を解説するとともに活用事例を紹介します。</p><p>まず初めに,篠田博之氏(立命館大学)からは,色とは何か,そのメカニズムなど色彩の基礎知識を解説いただき,さらに応用技術やアイディアを紹介いただきました。続いて,日髙杏子氏(芝浦工業大学)からは,色彩という情報のコミュニケーションを取るために編み出された,色の表現方法のひとつである色彩を体系的にした表色系について解説していただきました。</p><p>そして,山本早里氏(筑波大学)からは,実際に手掛けられた教育施設の建築物・インテリアの色彩計画の事例を紹介いただき,色彩の持つ効果と重要性を解説いただきました。三浦まゆみ氏(インリビングカラー)からは,資料作成における誰もがわかりやすく見やすいユニバーサルデザインの基本を解説いただき,対象者や目的別の資料作りを効率よく作成する色使いのポイントを具体的に紹介いただきました。最後に,伊賀公一氏(NPO法人カラーユニバーサルデザイン機構)からは,色識別に困難を持つ人は色がどう見えるのか。そして,色で情報を目的どおりに伝えるためにはどのようにすべきかを当事者としての視点からも解説いただきました。</p><p>本特集が,読者の皆様のお仕事などにおいて,色彩の重要性を把握し,色彩を活用して情報を的確に伝える一助となれば幸いです。</p><p>(会誌編集担当委員:海老澤直美(主査),南山泰之,南雲修司,長谷川幸代)</p>