著者
塩谷 綱正 神谷 昌男 髙梨 睦 堀池 彰夫 橋本 道枝
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.70, no.12, pp.595-599, 2020-12-01 (Released:2020-12-01)

自治体は,高齢化をはじめとした複雑な社会課題に向き合うことが求められている。従来,社会課題の抽出手法として集団討議やデータ解析等が存在しているが,特定の自治体の社会課題を客観的,かつ,合理性高く成立させた手法はない。そこで本研究では,高齢化を題材に,客観性を保ちながら,その地域における新規な社会課題を抽出する手法を検討した。市議会議事録を情報源として採用し,ベンチマーク都市と調査対象都市の比較を行うという本研究で検討した手法により,各自治体にとって,高齢化に関する新規な社会課題を客観性高く抽出できることがわかった。本研究で検討した手法は,自治体での活用が期待される。
著者
林 和弘
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.70, no.12, pp.567, 2020-12-01 (Released:2020-12-01)

いつもなら“第○回情報プロフェッショナルシンポジウム(INFOPRO)にご参加,ご発表頂いたみなさまありがとうございました。”から始まることが多い実行委員長の振り返り記事は,今年において,特殊にならざるを得ない状況となりました。COVID-19によって,我々は未知のウィルスに対応するという試練を与えられ,INFOPRO運営を直撃しました。学協会におけるもっとも重要な活動の一つに,年次大会を開いて会員が参集し,情報交流を通じて知己を得ることがあり,INFOSTAの看板シンポジウムであるINFOPROがその役割を果たしてきました。その開催が危ぶまれたというのは,学協会の存続にかかわることでもありました。委員長としては,他の学協会大会の様子や判断を観察しながら,委員と共に様々なオプションを検討し,判断材料を整えていきました。個人的な気持ちとしては,1990年代より電子ジャーナル化という,今でいうデジタルトランスフォーメーションの端緒に携わり,現在オープンサイエンスという科学の変容を志向する調査研究と実践に邁進して来ましたので,今回はむしろデジタルトランスフォーメーションの千載一遇のチャンスであり,何も挑戦せずに単に中止や縮小するという選択はあり得ませんでした。その一方で,INFOSTAのリソースは限られており,また,スケジュールの都合もありましたので,理想的あるいは独善的なオンライン開催を行うわけにもいきませんでした。委員長として現実的な落としどころを見つける必要があり,慎重に検討を重ねました。その結果として,INFOPRO2020自体は誌上開催としつつ,Plusとして希望者によるオンライン発表の機会を作り,電子ポスターやプロダクトレビューも加えた紙とオンラインのハイブリッドと開催となりました。運用においても,zoomの導入を中心として手探りながらも段取りつけて当日を迎え,今後のオンライン開催の目途をつけ,また,課題を見つけることができました。この経験と得られた知見はINFOSTAにとって大きな資産となったのではないでしょうか。より詳しい,開催までの経緯や当日の裏話等については,本号の座談会記事をご覧いただきたいと思いますが,何より嬉しかったのは,致命的なトラブルは全くなく,また,他のイベントで多くで経験したような遅延や座長や発表者の戸惑いもほとんどなかったことです。最後の最後に委員長の閉会の挨拶で,マイクトラブルが起きたのはご愛敬ですが,本当に最後に唯一起きたトラブルだった思います。これも一重に山﨑会長を筆頭とするINFOSTA三役,理事のご英断をはじめとする,実行委員,そして事務局のみなさまのご尽力とチームワークがあってのものでした。特に川越副委員長におかれては,特別講演の調整やリハーサルの指揮を含め様々にご尽力いただきました。この場を借りて関係の皆様に厚く御礼申し上げます。今回のこの経験,知見を生かして,来年のINFOPRO2021に向けてインフォプロの新たな出発をより確実かつ魅力的なものにできるよう,みなさまのご賛同とご協力を改めてお願いする次第です。また,今回のINFOPROはINFOSTAの歴史の特異点であり,また大きな転換点となる可能性が非常に高いと思われます。そこで,このインシデントとその対応について様々に記録して後世に残すことが重要と考え,通常の特別講演や一般発表の聴講記事に加えて,電子ポスターや運営の裏側を語る座談会に関するものやアンケート結果など,会誌編集委員会との連携によりさまざまな記事を企画しました。それらの記事も是非ご覧いただき,奇譚のないご意見や今後に向けた示唆を賜ればと思います。COVID-19は学協会の変容を確実に進め,また,その変容はまだ緒に就いたばかりともいえます。引き続きどうぞよろしくお願い申し上げます。(INFOPRO2020 実行委員会委員長 林 和弘)INFOPRO2020 実行委員会 委員長:林 和弘(科学技術・学術政策研究所),副委員長:川越康司(ジー・サーチ),委員:矢口 学(科学技術振興機構),小山信弥(関東学院大学),鷹野芳樹(クラリベイト),廣田拓也(クラリベイトジャパン),山中とも子(㈱ファンケル),担当理事(正):増田 豊,担当理事(副):佐藤京子,棚橋佳子,吉野敬子,谷川 淳
著者
Uyehara Cecil H 藤巻 美恵子 藤本 帝子 三浦 圭子 須永 雅子 山田 理子 山下 智久
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.40, no.2, pp.85-92, 1990-02-01

ある一連の行動の方向や不活性を変えたり,行動の意識やその行動を強調しようとする意識を変えるには,大変な努力を要することはいうまでもないことである。過去10年間さまざまなやり方で日本の科学技術の脅威を十分に意識し,警戒する動きがアメリカ国内で勢いを得てきた。これらの活動のいくつかはおそらくアメリカの国外でよく知られているであろう。このペーパーは,この脅威に対する対応としてアメリカ国内で起こった活動を広範囲に記述し,評価するものである。これらの活動については以下の項目を立てて論じる:意識喚起活動,連邦政府の立法活動と国際協定,教育活動,日本の科学技術情報の流通,組織化,ライブラリーコレクション,日本の科学技術の評価,技術開発,日本の科学技術情報の利用調査,おわりに-
著者
中崎 隆
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.70, no.11, pp.552-558, 2020-11-01 (Released:2020-11-01)

従来,日本においてデータ戦略が語られる中で,法務の重要性に焦点があてられることは少なかった。しかし,データ戦略の基礎である顧客・取引関係者との信頼関係を構築するためには,法令等遵守が必要であり,法務的観点が重要となる。組織的目標を達成するためにデータを有効・適切に活用するためにも,法制度の調査・対応が不可欠である。また,データ戦略策定の前提としてデータを適切に管理するために,企業グループ単位で事後検証のための内部統制システムを構築する必要がある。データプロ業務等に従事する方々にとっても,データ戦略構築において法務部門との連携を強化するために,法務的観点に関する土地勘を持つことをお勧めする。
著者
市毛 由美子 濱中 利奈
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.70, no.11, pp.540-545, 2020-11-01 (Released:2020-11-01)

本稿は,従来のウォーターフォール型ソフトウェア開発における契約の在り方と,これに対する平成29年改正後の民法(一部の規定を除き本年4月1日から施行)の影響,そしてそれを踏まえて,昨今注目されている非ウォーターフォール型の典型であるアジャイル型ソフトウェア開発における契約の在り方について報告するものである。2020年は,新型コロナ禍で変容する社会,その中で企業が持続的に存在価値を実現するためには,環境変化に強いこと,すなわち環境に応じて「変革し続ける」ことが求められ,DX(デジタルトランスフォーメーション)が競争力の源泉たる経営課題として求められている。そこでは,ソフトウェア開発手法のみならず,その契約のあり方も変革が求められている。
著者
岩隈 道洋
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.70, no.11, pp.534-539, 2020-11-01 (Released:2020-11-01)

法情報を的確に検索,収集するには,法制度の体系の概略と,法源(法学一次資料)という分野特有の情報源について知っておかないと,問題解決の方向性や根拠を見失ってしまう場合がある。しかし,法学を体系的に学習する機会がないとなかなかこの法体系や法源の仕組みを学ぶ機会というものは少ない。本項では,法学に親しんでいないが,法情報に触れることもあるインフォプロに向け,法体系と法情報の関係を掴むことができるような順序での導入解説と,アプローチしやすい法情報リソースの紹介に努めた。
著者
南山 泰之
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.70, no.11, pp.533, 2020-11-01 (Released:2020-11-01)

2020年11月号の特集は「DX時代の情報管理と法情報リテラシー」です。近年,データの持つ価値が資産として強く認識されるにつれ,情報管理に関わる法制度の整備も急速に進みつつあります。それに伴い,情報管理業務もこれまで以上に複雑化しており,従来までの知的財産の保護という観点のみならず,データを積極的に利活用する視点が強調されるようになってきました。しかしながら,従来インフォプロの業務とされてきた情報検索,情報管理業務を,どのように発展させていけばよいのか,どのような取り組みが求められるのか,については試行錯誤が繰り返されている段階と言えそうです。そこで,本特集では6名の専門家へご執筆をお願いし,具体例から関連する法制度を概観することで,今後のインフォプロ業務の方向性を考えるアプローチを企図しています。まず初めに,インフォプロが法情報を調べ,読み解くために必要な知識と手法を振り返る観点から,岩隈道洋氏(中央大学国際情報学部)に法情報リテラシーに関する詳細なご解説をいただきました。続いて,市毛由美子氏,濱中利奈氏(のぞみ総合法律事務所)からは,令和2年4月より本格的に施行された民法改正の影響を踏まえ,アジャイル型ソフトウェア開発における契約の在り方について詳細な解説と実践事例をご紹介いただきました。佐藤有紀氏(創・佐藤法律事務所 丸の内オフィス),砂田有史氏(創・佐藤法律事務所)からは,昨今注目を集めている情報銀行の概要,及び導入に当たり事業者視点での注意点を詳細にまとめていただきました。中崎隆氏(中崎・佐藤法律事務所)からは,企業におけるデータ戦略の構築の重要性と,法務的観点から見た留意点や具体的事例をご紹介いただきました。本特集が,情報管理における昨今の動向を把握し,今後インフォプロがどのように向き合っていくべきかを議論するための一助となることを期待します。(会誌編集担当委員:南山泰之(主査),海老澤直美,今満亨崇,野村紀匡,水野澄子,中川紗央里)