著者
三浦 まゆみ
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.71, no.3, pp.113-118, 2021-03-01 (Released:2021-03-01)

資料のユニバーサルカラーデザインというテーマで,わかりやすく読みやすい資料作成の具体的な手法をまとめた。色の見え方は誰もが同じではなく色覚異常や高齢者の加齢による色覚変化などによりさまざまな色覚特性があり,見にくい配色のパターンがあるため,それを踏まえて色を選定することであらゆる人にとって快適なカラーデザインとなる。また,色の三属性,トーン,配色によるイメージ表現,色の機能的効果(誘目性,明視性,可読性,識別性)といった色彩学の基本の解説と共に,対象者や目的別の資料作りを効率よく作成する色使いを5つのポイントとして紹介している。
著者
山本 早里
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.71, no.3, pp.107-112, 2021-03-01 (Released:2021-03-01)

教育施設における色彩計画の2事例を挙げ,コンセプト,内容,効果を詳述した。1件目は筑波大学の築40年,約4000戸の学生宿舎を毎年数棟ずつ改修した事例,および福利厚生施設の改修の事例である。建物の形状を利用してアクセント色を用いたり,隣接する棟に共通するベース色を用いたり工夫をした。2件目は茨城県立土浦第三高等学校で,築40年を経て改築した事例である。外部にはあまり使われない色をアクセント色に使い独自色を高めたり,特別教室の各室のイメージカラーによるアクセント色を内部色彩に用いたりした。これらの色彩計画の結果,学生や生徒によい影響が見られるなどの効果が得られたことに言及した。
著者
海老澤 直美
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.71, no.3, pp.93, 2021-03-01 (Released:2021-03-01)

2021年3月号の特集は「色彩による情報提供」です。数多あふれる情報から欲しい情報を瞬時に得ようとする時,まずは目に入る情報のうち文字ではなく色で判断していることが多いのではないでしょうか。例えば,トイレの入口のマークで男性が青,女性が赤という色がもし逆だとしたら間違える確率は高くなるのではないでしょうか。図書館などの現場においても,利用者に情報を的確にわかりやすく提供するにあたり,案内表示,オンライン蔵書目録のインターフェース,什器類の空間デザインなど,あらゆる所で色彩が関係しています。また,プレゼン資料やデータ分析における可視化など情報を視覚的に分かりやすく伝える手段としても色彩は用いられています。さらに,色覚バリアフリーという言葉があるように,色の識別に困難を持つ人もおり,色使いには配慮が必要です。そこで今回の特集では,情報提供を的確に行うために,色彩がどのように活用できるか,基礎知識や注意点を解説するとともに活用事例を紹介します。まず初めに,篠田博之氏(立命館大学)からは,色とは何か,そのメカニズムなど色彩の基礎知識を解説いただき,さらに応用技術やアイディアを紹介いただきました。続いて,日髙杏子氏(芝浦工業大学)からは,色彩という情報のコミュニケーションを取るために編み出された,色の表現方法のひとつである色彩を体系的にした表色系について解説していただきました。そして,山本早里氏(筑波大学)からは,実際に手掛けられた教育施設の建築物・インテリアの色彩計画の事例を紹介いただき,色彩の持つ効果と重要性を解説いただきました。三浦まゆみ氏(インリビングカラー)からは,資料作成における誰もがわかりやすく見やすいユニバーサルデザインの基本を解説いただき,対象者や目的別の資料作りを効率よく作成する色使いのポイントを具体的に紹介いただきました。最後に,伊賀公一氏(NPO法人カラーユニバーサルデザイン機構)からは,色識別に困難を持つ人は色がどう見えるのか。そして,色で情報を目的どおりに伝えるためにはどのようにすべきかを当事者としての視点からも解説いただきました。本特集が,読者の皆様のお仕事などにおいて,色彩の重要性を把握し,色彩を活用して情報を的確に伝える一助となれば幸いです。(会誌編集担当委員:海老澤直美(主査),南山泰之,南雲修司,長谷川幸代)
著者
矢口 勝彦
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.71, no.1, pp.8-15, 2021

<p>TRC(図書館流通センター)の電子図書館サービスは,2011年1月に1号館として堺市立図書館(大阪府)に導入して以降,公共図書館において昨年度までで75自治体,年間平均8~9自治体のペースで採用されてきた。ところが,今年度になってコロナ禍における緊急事態宣言下の臨時休校,臨時休館時の読書,学習支援ツールとして注目され,2波,3波に備えるべく急激に採用が増えており今年度1年間の採用数が,昨年度までの導入数とほぼ同程度になることが予想されている。本稿では,TRCの電子図書館サービスを例にとり,電子図書館の概要,特長,導入メリット,課題,電子図書館を取り巻く環境,学校連携,教育現場での電子図書館の活用事例を紹介する。</p>
著者
植松 貞夫
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.70, no.2, pp.52-57, 2020

<p>単なる建築空間を図書館として性格付ける要素であることから,図書館家具は図書館建築の主役の一つである。書架や閲覧机等の形状とその配置は利用者と職員の使いやすさ,働きやすさを左右する。本論では,図書館職員に家具についての理解が深まることを目的に,はじめににおいて,家具について分類や備えるべき性能等の基本的な事項をまとめるとともに,本体工事と家具工事の違い等について概説した。続いて,主要な家具である書架と閲覧用の机と椅子,カウンターについて,寸法や素材等,既製品から選択する際や特別設計の注文に際して注意すべき点を整理した。</p>
著者
林 和弘
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.70, no.12, pp.567, 2020

<p>いつもなら"第○回情報プロフェッショナルシンポジウム(INFOPRO)にご参加,ご発表頂いたみなさまありがとうございました。"から始まることが多い実行委員長の振り返り記事は,今年において,特殊にならざるを得ない状況となりました。</p><p>COVID-19によって,我々は未知のウィルスに対応するという試練を与えられ,INFOPRO運営を直撃しました。学協会におけるもっとも重要な活動の一つに,年次大会を開いて会員が参集し,情報交流を通じて知己を得ることがあり,INFOSTAの看板シンポジウムであるINFOPROがその役割を果たしてきました。その開催が危ぶまれたというのは,学協会の存続にかかわることでもありました。委員長としては,他の学協会大会の様子や判断を観察しながら,委員と共に様々なオプションを検討し,判断材料を整えていきました。個人的な気持ちとしては,1990年代より電子ジャーナル化という,今でいうデジタルトランスフォーメーションの端緒に携わり,現在オープンサイエンスという科学の変容を志向する調査研究と実践に邁進して来ましたので,今回はむしろデジタルトランスフォーメーションの千載一遇のチャンスであり,何も挑戦せずに単に中止や縮小するという選択はあり得ませんでした。その一方で,INFOSTAのリソースは限られており,また,スケジュールの都合もありましたので,理想的あるいは独善的なオンライン開催を行うわけにもいきませんでした。委員長として現実的な落としどころを見つける必要があり,慎重に検討を重ねました。その結果として,INFOPRO2020自体は誌上開催としつつ,Plusとして希望者によるオンライン発表の機会を作り,電子ポスターやプロダクトレビューも加えた紙とオンラインのハイブリッドと開催となりました。運用においても,zoomの導入を中心として手探りながらも段取りつけて当日を迎え,今後のオンライン開催の目途をつけ,また,課題を見つけることができました。この経験と得られた知見はINFOSTAにとって大きな資産となったのではないでしょうか。</p><p>より詳しい,開催までの経緯や当日の裏話等については,本号の座談会記事をご覧いただきたいと思いますが,何より嬉しかったのは,致命的なトラブルは全くなく,また,他のイベントで多くで経験したような遅延や座長や発表者の戸惑いもほとんどなかったことです。最後の最後に委員長の閉会の挨拶で,マイクトラブルが起きたのはご愛敬ですが,本当に最後に唯一起きたトラブルだった思います。これも一重に山﨑会長を筆頭とするINFOSTA三役,理事のご英断をはじめとする,実行委員,そして事務局のみなさまのご尽力とチームワークがあってのものでした。特に川越副委員長におかれては,特別講演の調整やリハーサルの指揮を含め様々にご尽力いただきました。この場を借りて関係の皆様に厚く御礼申し上げます。</p><p>今回のこの経験,知見を生かして,来年のINFOPRO2021に向けてインフォプロの新たな出発をより確実かつ魅力的なものにできるよう,みなさまのご賛同とご協力を改めてお願いする次第です。また,今回のINFOPROはINFOSTAの歴史の特異点であり,また大きな転換点となる可能性が非常に高いと思われます。そこで,このインシデントとその対応について様々に記録して後世に残すことが重要と考え,通常の特別講演や一般発表の聴講記事に加えて,電子ポスターや運営の裏側を語る座談会に関するものやアンケート結果など,会誌編集委員会との連携によりさまざまな記事を企画しました。それらの記事も是非ご覧いただき,奇譚のないご意見や今後に向けた示唆を賜ればと思います。COVID-19は学協会の変容を確実に進め,また,その変容はまだ緒に就いたばかりともいえます。引き続きどうぞよろしくお願い申し上げます。</p><p>(INFOPRO2020 実行委員会委員長 林 和弘)</p><p>INFOPRO2020 実行委員会 委員長:林 和弘(科学技術・学術政策研究所),副委員長:川越康司(ジー・サーチ),委員:矢口 学(科学技術振興機構),小山信弥(関東学院大学),鷹野芳樹(クラリベイト),廣田拓也(クラリベイトジャパン),山中とも子(㈱ファンケル),担当理事(正):増田 豊,担当理事(副):佐藤京子,棚橋佳子,吉野敬子,谷川 淳</p>
著者
河井 紘輔
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.71, no.2, pp.60-64, 2021-02-01 (Released:2021-02-01)

一般廃棄物のリサイクル率は2007年度以降停滞し,環境省が設定した目標を達成できていない。全国の市区町村及び一部事務組合を対象に毎年実施されている一般廃棄物処理実態調査について解説した後に,日本では中間処理後リサイクル量,EUでは中間処理仕向量がリサイクル量と定義されていることを述べた。日本がEU加盟国に比べてリサイクル率が低く,焼却処理の割合が高いことがリサイクル率の増加を妨げていること,日本とEUにおけるリサイクル量の定義は一長一短があり,それぞれの長所短所を理解した上で,リサイクル活動を適切に評価すべきことを主張した。
著者
細矢 剛
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.71, no.2, pp.54-59, 2021-02-01 (Released:2021-02-01)

どのような生物が,いつ,どこに存在したかを記述したオカレンスデータは,生物多様性情報の基盤である。オカレンスデータは,集積し,時間軸や空間軸に沿って解析されることによって大きな意味をもつ。オカレンスデータは,ダーウィンコアによって標準化されている。GBIF(地球規模生物多様性情報機構)は,世界スケールで標準化された生物多様性情報を集積・提供しており,その活動には日本も大きく貢献している。集積されたデータによって,気候変動,健康や経済に関する予想,保全生態学的知見などが得られる。データの追跡はDOIの利用によって可能となり,DOIは種概念の整理にも役立っている。
著者
真砂 佳史 服部 拓也
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.71, no.2, pp.48-53, 2021-02-01 (Released:2021-02-01)

近年気候変動による影響が顕在化しており,その影響を低減あるいは活用する気候変動適応が求められている。日本では2018年に気候変動適応法が施行され,国,地方公共団体,事業者,国民等の適応主体の役割が明確化された。国立環境研究所は気候変動適応に関する情報提供や技術的支援が求められており,同年策定された国の気候変動適応計画をもとに情報基盤として気候変動適応情報プラットフォーム(A-PLAT)を運営している。本稿では,気候変動適応に関する国内の動向について解説し,国立環境研究所がA-PLAT等を通じどのように適応主体に対する情報提供や技術的支援を行っているかを紹介する。
著者
光森 奈美子
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.71, no.2, pp.47, 2021-02-01 (Released:2021-02-01)

2021年2月号は「環境問題と情報」と題してお届けします。「環境問題」という言葉には,地球環境の汚染や悪化にまつわる様々な問題が含まれています。おそらく読者の皆様も,それぞれに思い起こすものが異なるのではないでしょうか。大気汚染,オゾン層の破壊,地球温暖化はずいぶん前から問題視されてきました。近年はプラスチックごみの問題,とりわけ海洋プラスチックに対する関心が高まり,多数の図書が発行されています。こうした環境問題への対応は,国や地方自治体,企業といった組織体だけでなく,私たち一人一人にも行動が求められます。地球環境を保全し,持続可能な社会を構築していくためには,過去や現在の状況を知り,未来のリスクを予想し,何よりも行動することが必要です。そのために活用できる情報・データは,国内外の様々な組織において,収集や作成,公開されています。今回の特集では,特定の問題にはフォーカスせず,「環境問題」と呼ばれる問題を幅広く取り上げました。各種の問題に関してどのような情報やデータがあるのか,そうした情報やデータはどのように作られており,どのような課題を抱えているのかを知ることで,公開されている様々な情報・データの利活用が広がるものと考えます。毎年のように起こる極端な気象現象を目の当たりにして,多くの方が気候変動について関心をお持ちだと思います。国立環境研究所 真砂佳史氏,服部拓也氏に,気候変動適応を進めるための情報基盤である「気候変動適応情報プラットフォーム(A-PLAT)」をご紹介いただきました。生物多様性は環境の変化を受けると同時に,環境の変化を知る手がかりとなります。こうした生物多様性に関する情報として,国立科学博物館 細矢剛氏に「地球規模生物多様性情報機構(GBIF)」をご紹介いただきました。ごみのリサイクルは私たちの日常生活の中にあり,身近な問題の一つです。ごみのリサイクル率の把握方法と今後の課題・展望に関して,国立環境研究所 河井紘輔氏にご執筆いただきました。持続可能な社会を構築していくため,環境保全に関する技術開発も進んでいます。九州大学 藤井秀道氏には,特許情報を活用した環境保全技術の評価についてご執筆いただきました。遠いように感じる問題も,すべて私たちの生活に繋がっています。様々な「環境問題」に対して情報の視点から構成したこの特集が,読者の皆様の環境問題に対する理解を深め,より主体的に関わっていく契機となることを期待しています。(会誌編集担当委員:光森奈美子(主査),大橋拓真,池田貴儀,中川紗央里)
著者
小林 哲雄
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.61, no.7, pp.276-281, 2011
参考文献数
2
被引用文献数
1

特許サーチャーと研究者・開発者の間の意思の疎通がうまくいかない場合の原因は何であろうか?知的財産部門において調査が重要な役割を果す業務である,(1)無効化文献調査,(2)特許クリアランス調査,(3)発明発掘を支える特許調査,(4)萌芽期の研究支援活動を支える特許調査,を題材にして問題の所在を検討する。そして本稿では,同じ知的財産部門に属する権利化担当と特許サーチャー(調査担当)がより効率的に協業作業を行うための方法として,権利化担当が調査業務のスキルをある程度まで習得し,研究者・開発者と特許サーチャーとの『通訳』としての役割を果すことを提案する。
著者
棚橋 佳子
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.68, no.1, pp.25-29, 2018

<p>本稿ではユージーン・ガーフィールド博士の追悼行事の一環として昨年9月15日-16日2日間にわたり米国フィラデルフィアにて行われたシンポジウム "Commemoration and Celebration of the life of Eugene Garfield 1925-2017"について報告する。シンポジウムで登壇者のスピーチに共通していたのは,ガーフィールド博士の創造力,チャレンジ精神,そしてアイデアに対して決して諦めない心が彼の成功を導いたと強調されていたことである。加えてガーフィールド博士が来日した1970年代80年代の旧本誌での引用分析に関する論文を紹介し,ガーフィールド博士と日本の接点を概観する。</p>