著者
林 和弘
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.71, no.12, pp.513, 2021-12-01 (Released:2021-12-01)

INFOPRO2021にご参加,ご登壇いただいた皆様,誠にありがとうございました。また,おつかれさまでした。さらに,ご協力,ご協賛いただいた皆様にも厚く御礼申し上げます。ご存知の通り,COVID-19の影響は昨年のINFOPRO開催に大きな影響を与え,結果として,INFOPRO2020自体は誌上開催としつつ,Plusとして希望者によるオンライン発表の機会を作り,電子ポスターやプロダクトレビューも加えた紙とオンラインのハイブリッド開催となりました。運用においては,zoomを導入し,手探りながらも幸い大きなトラブルもなく開催することができました。さて,今年はどうするか。依然COVID-19の影響が続く中,昨年のオンライン試行を踏まえてどのように拡張するかが課題となりました。今年も様々に検討を重ね,オンライン開催を中心とした上で,いくつかの英断もあり,欧米で実績のある統合バーチャル集会プラットフォームMorressierを積極的に活用することとしました。zoomをあくまでオンライン発表“ツール”として扱うのと,Morressierのような演題登録や資料共有,発表後のコミュニケーション,アーカイブまでを含めた様々なサービスを擁する“バーチャル集会プラットフォーム”を扱うのでは,運用上大きな違いがありました。今年はこの違いをどのように吸収するかを学んだこととなりました。また,運営,登壇,参加それぞれの立場で慣れていただいたことにもなります。この慣れが確実に将来を変えていくと信じております。その他,本年も,より詳しい,開催までの経緯や当日の裏話等については,本号の他の記事をご覧いただきたいと思います。本年も無事に開催できたのは,一重に山﨑会長を筆頭とするINFOSTA三役,理事のご英断をはじめとする,実行委員,そして事務局のみなさまのご尽力とチームワークがあってのものでした。特に今年はプラットフォーム運用に関して増田理事に多大なるご尽力をいただきました。この場を借りて関係の皆様に厚く御礼申し上げます。何事も物事は3度目,3年目,あるいは3作目が大事とも言われます。INFOPRO2022に向けて,過去2回のオンライン開催から,さまざまな課題も浮き彫りになってきました。INFOSTAの今後も含めて,この2回の経験,知見を生かしてINFOPROを改善し,インフォプロのあり方を確実かつ魅力的なものにできるようみなさまのご賛同とご協力を改めてお願いする次第です。COVID-19は学協会の変容をこれからも押し進め,また,依然その変容は緒に就いたばかりともいえます。引き続きどうぞよろしくお願い申し上げます。(INFOPRO2021 実行委員会委員長 林 和弘)INFOPRO2021 実行委員会 委員長:林 和弘(科学技術・学術政策研究所),副委員長:川越康司(ジー・サーチ),委員:矢口 学(科学技術振興機構),長谷川幸代(跡見学園女子大学),小山信弥(関東学院大学),鷹野芳樹(クラリベイト),寺脇一寿(医学中央雑誌),木村光宏(㈱アドスリー),担当理事(正):増田 豊,担当理事(副):棚橋佳子
著者
岡田 英孝
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.56, no.12, pp.589-593, 2006-12-01 (Released:2017-05-19)
参考文献数
16

MEDLINEでは1980年代より訂正記事情報に対する取り組みがされているが,その現状について東京医科大学図書館分館で受け入れた2003年出版の冊子体の訂正記事データを用いて調査した。調査対象は114タイトル901件で,これらのデータとPubMedのデータを比較した。訂正記事の収録率は約80%で,著者名など書誌データに関わる訂正では書誌データ自体訂正されている例も見られた。収録率は過去の研究と比べても上がっており,また訂正記事情報に容易に到達できるように様々な工夫もされているが,未収録の訂正記事の存在や書誌データ自体の表記のゆれといった問題も見られたため,利用の際は注意が必要である。
著者
石倉 亮治
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.42, no.7, pp.642-649, 1992
被引用文献数
1

千葉県では,平成4年度から8ヵ所の博物館相当施設(美術館を含む)をISDN回線で接続したコンピュータシステムの運用を開始する。名称は「千葉県立博物館情報システム」である。単独の施設ではこれまでにも全国各地の美術館や博物館においてコンピュータが導入されさまざまな機会にそれらのシステムの概要が報じられている。遠隔地にある他の施設とネットワークを組み,その運用についても博物館自身が直接携わるシステムとしては全国的にも初めての試みとなる。運用後しばらくの期間を経なければ,システムそのものの評価はむずかしいが,博物館の学芸職員が初期の段階からプロジェクトの中心となったということではきわめて希な開発例でもあり,この機会をおかりして今回のシステム構築の過程について紹介しておきたい。今回の情報システムは,「千葉県立博物館情報システム」の第1期システムとして位置づけられている。昭和63年度の基本計画,平成元年度の基本設計,2年度の詳細設計,3年度プログラム設計・製造の各工程を経て,本稿執筆の時点では4年度の運用開始に向けシステムの最終調整の段階にある。次章では,これらの各段階ごとに開発の内容と問題点の整理を行い,3章ではこうした各段階において博物館側で行ったシステム化のための準備作業についてふれ,4章では博物館における情報システムの一実践例として今回のシステムの概略を紹介したい。
著者
笹沼 崇
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.54, no.1, pp.50-55, 2004

公共図書館は,蔵書を中心とした情報提供を行うことにとどまらず,様々な情報発信拠点としても施設を活用することにより,市民の情報活動を活性化させ,それを市の活性化にも繋げることができる。こうした考えに基づいた,茨城県結城市の図書館情報サービス計画と,図書館システムの概要を紹介する。
著者
増田 幸子
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.48, no.7, pp.396-401, 1998-07-01 (Released:2017-05-25)
参考文献数
4

カナダにおいてメディア・リテラシーが学校教育にどのように導入・展開され, 実践されているのかを, オンタリオ州の例を中心に紹介する。始めに, 市民組織によるメディア・リテラシーの取り組みと公教育への働きかけを歴史的に概観し, 次に, オンタリオ州の小学・中学校のカリキュラムの例や, 教師用指導書・教科書の中の学習活動例に触れ, その実践について述べる。
著者
玉田 和恵
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.71, no.11, pp.496-501, 2021-11-01 (Released:2021-11-01)

Society5.0の実現に向け,自分が問題に直面した際に,高度情報技術を活用して目的や解決策を適切に発想し,情報モラルを活用して問題解決できる人材の育成が求められている。本特集でテーマとなっている「インターネット上に発信された情報を消すことが困難である」という課題は,情報モラルの重要な課題である。本稿では,情報モラル問題解決力を育成するための「3種の知識による情報モラル指導法」を解説し,消えない問題をどう自分事として考えさせるかという工夫について述べる。
著者
湯淺 墾道
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.71, no.11, pp.491-495, 2021-11-01 (Released:2021-11-01)

SNSのユーザーの増加,個人が利用するインターネットサービスの増加と多様化,クラウドサービスの普及などによって,最近,故人のデジタルデータの扱いが注目されるようになった。故人のデジタルデータに関しては,日本では統一した法制度は存在しない。またEUのGDPRや日本の個人情報保護法は,保護の対象を原則として生存者に限定している。これに対してアメリカでは,多くの州が死者のパブリシティの権利を認めている。本稿では,故人のデジタルデータに関する取り扱いについての各国の法制度を比較し,ユーザーがどのように対処すべきかを検討する。
著者
石原 友信 吉武 希
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.71, no.11, pp.478-483, 2021-11-01 (Released:2021-11-01)

インターネット利用の増加とともに,名誉毀損や,プライバシー侵害,誹謗中傷などに関する違法・有害情報相談センターへの相談件数は年々増加している。当センターはSNS等でこれらの被害を受けたとする相談者に対し,削除依頼などをアドバイスしている。これらは「被害者救済」と発信者の「表現の自由」のバランスに配慮した関連法令やガイドライン沿った対応となる。権利侵害の申立者が,SNS等の削除要件を理解することが難しい事等,複雑化する環境において,日々利用者をサポートする当センターに求められる役割はますます重要性を増している。
著者
石井 夏生利
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.71, no.11, pp.472-477, 2021-11-01 (Released:2021-11-01)

本稿は,インターネット上の個人情報,プライバシー侵害情報等の削除に関する国内外の議論動向を概観し,今後の検討課題を示すことを目的とする。個人の権利利益を侵害する情報を削除するための法的手段について,国内外の動向を整理した上で,「忘れられる権利」を巡るEU(European Union)の議論動向として,欧州司法裁判所(Court of Justice of the European Union)の諸判決及び一般データ保護規則(General Data Protection Regulation)の規定を取り上げ,「忘れられる権利」を巡る国内の議論動向として,検索結果削除に関する裁判例及び個人情報の保護に関する法律の改正に触れた上で,解釈上及び制度上の課題を述べる。
著者
池田 貴儀
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.71, no.11, pp.471, 2021-11-01 (Released:2021-11-01)

今日,私たちの生活や仕事などのあらゆる場面においてインターネットは必要不可欠な存在となっています。インターネットは匿名性の高さが特徴の一つですが,コンテンツやサービスの利用時には氏名,住所,メールアドレスなどの個人情報が求められ,他方で通信履歴,行動履歴,位置情報なども事業者に取得・蓄積されており,これらの情報が何らかの理由で紐付づいてしまうと容易に個人が特定される恐れがあります。個人情報に関する問題として,企業や組織による情報漏洩事件が大きく話題になりますが,私たちの身近でも起こりうる可能性があります。例えばブログやSNSへの何気ない投稿から個人が特定され,誹謗中傷やプライバシー侵害につながる事例も増えつつあり,近年は社会問題となっています。一度公開された情報は複製が容易なことから急速に拡散し,そして半永久的に残り続けるため後から消すことが極めて困難です。そこで本特集では,インターネット上に不本意な形で個人情報が公開されている場合,その情報は消すことができるのかという切り口から,個人情報について考えてみたいと思います。まず,石井夏生利氏(中央大学)には,検索結果の削除を巡る諸問題について,国内外の「忘れられる権利」の動向を踏まえながら概説いただきました。次に,石原友信氏(違法・有害情報相談センター)と吉武希氏(株式会社メディア開発綜研)には,総務省支援事業である違法・有害情報相談センターの相談事例から,削除依頼を自ら行う必要のある相談者への支援体制,削除依頼先ごとの特徴や問合せ方法を紹介いただきました。続いて,数藤雅彦氏(五常総合法律事務所)には,インターネット上の肖像権侵害という観点からプロバイダに裁判手続を通じて行う発信者情報開示請求事件について分析を行い,裁判所の判断傾向を解説いただきました。次に少し視点を変えて,湯淺墾道氏(明治大学)には,個人情報保護法の保護対象から外れる故人のデジタルデータについて,様々な捉え方をしている海外の法制度を概観のうえ,日本の現状を分析し,今後の法整備で必要となる要点を整理していただきました。最後に,玉田和恵氏(江戸川大学)には,生徒や学生への情報モラル問題解決力の育成という教育的側面から,あらゆる世代にも通じる知識や考え方について解説いただきました。情報通信技術の急速な発達とその普及で様々な利便性が向上し,誰もが容易に情報を発信できる時代にあるなか,本特集が,より身近な問題として個人情報を考えるための契機となれば幸いです。(会誌編集担当委員:池田貴儀(主査),青野正太,中川紗央里,野村紀匡)