著者
蔦 大輔
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.70, no.5, pp.238-243, 2020-05-01 (Released:2020-05-01)

サイバーセキュリティの確保は,本来,各々の組織において自主的に取り組むべきものであるが,近年のサイバー攻撃の巧妙化・複雑化により,自組織だけでの対策には限界があるということから,サイバーセキュリティに関する情報共有体制の活動が一層活発化している。本稿では,現在活動を行っている主なサイバーセキュリティに関する情報共有体制を紹介しつつ,平成31年にサイバーセキュリティ基本法の改正により組織されたサイバーセキュリティ協議会について,関係する条項を簡単に解説のうえ,情報共有を促進するための協議会の特徴や,立ち上げ以来の協議会の活動について紹介する。
著者
新保 史生
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.70, no.5, pp.224-230, 2020-05-01 (Released:2020-05-01)

個人情報保護をめぐる問題は,個人情報の取扱状況について,(1)コンピュータ処理の進展,(2)インターネットの発展,(3)SNSやスマートフォンの普及,(4)AIの進化,(5)IoTや5Gの普及の各段階に応じて大きく変容を遂げている。本稿では,このような個人情報の取扱い状況の変容を踏まえて,個人情報保護をめぐる環境変化と法制度,個人情報保護法の概要,個人情報の定義,個人情報保護とプライバシーの権利保障の違い,個人情報保護制度の過去及び今後の見直しの状況,日本とEUとの間の新たなデータ保護の枠組みについて紹介し,それに伴い法制度が変遷を遂げてきた経緯を概観する。
著者
當舍 夕希子
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.70, no.5, pp.223, 2020-05-01 (Released:2020-05-01)

2020年5月号の特集は「個人情報とサイバーセキュリティ」です。我々がこの社会で活動するうえで,インターネット上に存在する情報は切っても切れない存在です。そして,その情報には様々な形で個人に関する情報が含まれています。我々はインフォプロとしての職務でも,プライベートで利用するSNS等のウェブサービスでも自他を問わず個人に関する情報に接し,日常会話においても「個人情報」という言葉を何気なく用いている場面には,それなりの頻度で出会うように思います。しかしながら実際のところ「個人情報」とは何なのでしょうか。漠然とした認識と不安を抱きながら,「個人情報」を語っていることが多いように感じます。本号では,個人情報とサイバーセキュリティをテーマに特集をお届けいたします。インターネット上の情報を扱ううえで問題となりうる個人情報とは何か,そしてその情報をどのように守っていけばよいのか,本特集を通じてご紹介できればと考えております。まず,慶應義塾大学の新保史生氏より,個人情報に関する法制度の変遷を概説いただきました。国内の今に至る法制度の整備の変遷に加えて,2018年にEU加盟国への適用が開始されたGDPR(一般データ保護規則)の内容や意義についても概説いただいております。次に,弁護士の数藤雅彦氏から,インターネット上の個人情報に係るトピックとして「肖像権」についてご執筆いただきました。気軽にインターネットに画像をアップロードできる現在,「肖像権」は誰にとっても身近なものとなっています。本特集では「肖像権」を考えるうえでの判断ポイント等について判例をもとに説明いただきました。続いて,内閣官房内閣サイバーセキュリティセンター(所属は2020年3月時点)の蔦大輔氏からは,サイバーセキュリティの分野における情報共有の体制について,サイバーセキュリティ協議会及びその他の組織の活動をもとにご説明いただきました。情報通信研究機構サイバーセキュリティ研究室の井上大介氏からは,サイバー攻撃の動向として,近年のセキュリティ事案並びに,ダークネットの観測を行うNICTER及び,国内のIoT機器の調査と利用者への注意喚起を行うNOTICEについてご紹介いただきました。奈良先端科学技術大学院大学の油谷曉氏からは,大学という一つの組織におけるセキュリティの確保について具体的にご紹介頂きました。多岐にわたる本分野のうち取り上げられたトピックは少しではありますが,いずれも社会で活動するうえで多かれ少なかれ関わりのある,興味深い内容となっております。また,期せずしてでありますが現在国内外を騒がせている新型ウイルスを受けたインターネット利用の変化とも関連する特集となりました。本特集が皆さまにとって,より安心できる,自由なインターネットを使った活躍への一助となることを祈ります。(会誌編集担当委員:當舍夕希子(主査),大橋拓真,寺島久美子,久松薫子)
著者
久永 茂人 高久 真一
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.64, no.4, pp.140-145, 2014-04-01 (Released:2017-04-13)

国立国会図書館では多数のマンガ単行本(コミックス)やマンガ雑誌を所蔵している。マンガ雑誌を中心とした所蔵および利用状況について踏まえたうえで,マンガの破損の実例とその補修方法について事例報告する。当館で所蔵しているマンガ雑誌は約1200誌である。利用冊数が多い雑誌の上位15誌に,マンガ雑誌は6誌が入っている。マンガ単行本は,分類による抽出が十分にできないためリスト化が困難である。作りが簡易であること,材料の質がよくないこと,利用が多いことから当館ではマンガの破損が問題となっている。破損したマンガ単行本は,主に無線綴じの綴じ直しの手法で補修している。破損したマンガ雑誌は,再製本したり破れたページを和紙で補修している。
著者
佐治 重豊
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.51, no.12, pp.614-618, 2001-12-01 (Released:2017-05-25)

科学情報倫理の中で医学雑誌に関連する問題として, 医学と言う特定分野での基本倫理を紹介した上で, 編集・査読者と執筆者からの倫理問題を概説する.基本倫理では医学雑誌は医療関係者を対象に執筆・出版されるため, 特定の購読者に対する相互理解と啓蒙が主目的である.しかし, 出版後は医療行政面や医療行為の適切性の評価にも用いられ, インターネットを通じて患者や患者の家族も情報入手が可能となり, 新たな倫理が生じている.編集・査読者としては審査機構の質が問題となるが, 採用・不採用の判定段階で「不良論文を見逃すエラー」と「新しいアイデアと独創性に満ちた論文を不採用にする危険」, 査読上のsingle blindとdouble blind制の是非などがある.著者の倫理として基礎・臨床研究段階での倫理, 高度先進医療や臨床研究での学内倫理委員会, 医薬品臨床試験でのIRBとGCPの遵守, 投稿段階での二重投稿の禁止などである.さらに, 標準的な邦文誌として著者の属する日本消化器外科学会雑誌での現状を紹介する.
著者
三橋 敬憲 高梨 睦 奥井 隆雄 青木 文男
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.70, no.4, pp.211-216, 2020-04-01 (Released:2020-04-01)

特許出願を戦略的に行っていると考えられる中小企業を対象に当該企業により形成された特許出願網が同業他社にどのような影響を与えているかを検討した。具体的には介護入浴装置業界のマーケットリーダーであるO社を分析対象とした。O社を含む主要3社は介護入浴装置市場において市場シェアを伸ばし,現在では寡占市場を形成している。このような状況を形成する上でO社の特許出願網が市場シェアの獲得に寄与していると仮定し,O社の出願戦略を出願件数,推移,出願時期,内容等から推定すると共に,競合する他2社の出願の権利化阻止に寄与しているか等を確認した。その上で,O社の出願の特徴及び知財戦略の関係について考察した。
著者
安藤 俊幸
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.70, no.4, pp.203-207, 2020-04-01 (Released:2020-04-01)

特許等の調査業務にプログラミングを活用することで調査効率(精度)や網羅性(再現率)の向上が期待できる。本報ではDoc2Vecを用いて調査対象の特許文書集合を学習し,文書・単語ベクトルを求め,指定文書・単語に対し類似度の高い文書・単語を表示する手順を紹介する。文書ベクトルを次元圧縮して2次元表示して特許群の俯瞰可視化によるパテントマップ化も可能である。最近では有用なプログラミングライブラリがフリーで公開されていることも多くこれらのライブラリを使うと意外に簡単に各種調査業務の効率化が可能となる。プログラミングは参考になるサンプルプログラムを探してそれを改良するのが早道である。自分でできる特許調査のための一連のプログラムを説明する。
著者
兼宗 進
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.70, no.4, pp.176-180, 2020-04-01 (Released:2020-04-01)

プログラミングの基礎的な考え方を解説する。言語はPythonを使用し,Google Colaboratoryによるブラウザでの実習を紹介した。制御構造の説明にはフローチャートを使用し,プログラムの例を示しながら意味を説明した。プログラミングの学習過程で初心者がつまずきやすい制御構造の入れ子構造,配列やリスト,関数の定義についても例を示しながら解説を行った。
著者
前田 朗
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.70, no.4, pp.170-175, 2020-04-01 (Released:2020-04-01)

本稿では筆者の経験を事例として示しつつ,インフォプロを対象に仕事でのプログラミングへの向き合いかたを提示する。プログラミングができることで,仕事における課題をコンピュータにより解決すべく取り組んでいける。副次的に身につくプログラミング的思考は,自らが情報システムのありかたを考えるにあたり助けになる。プログラミングは必ずしも難しくなく,簡単なプログラミングであっても,仕事の課題を解決していけることも多い。プログラミング自体に楽しみを見出すことも,周囲やベンダーとのコミュニケーションに役立てることもできる。
著者
今満 亨崇
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.70, no.4, pp.169, 2020-04-01 (Released:2020-04-01)

パソコンは業務遂行のための道具としてすっかり定着しました。書類の作成,コミュニケーション,業務管理,データ分析など,何をするにも欠かせないツールです。しかし当たり前の話ですが,パソコンを用いた業務は使用するソフトウェアに依存してしまいます。一般的な業務であれば,それを支援する機能がソフトウェアに組み込まれています。そのため,これまでは既存のソフトウェアを十分に活用して業務を遂行する能力が重宝されました。しかし業務量が増加し,多様な成果も求められる現代において,既存の機能を活用するだけでは不十分です。また,機能拡張するにも金銭的コストが必要となります。ではどうすればよいのでしょうか。自分でプログラムを書いて,ツールを作ってしまえばよいのです。幸いにして現在は,理解しやすいプログラミング言語が増え,開発に必要な情報は書籍やインターネット上にあふれるほど公開されており,誰かが作成したプログラムを参考にできる環境が整っています。プログラミングの技術は,情報を扱うインフォプロの業務を効率化・高度化する上で極めて役立ちます。高度なデータ処理を行い個々の情報要求に合うサービスを提供したり,大量の単純作業を短時間でヒューマンエラー無く処理したりすることができます。また,検索サービスを含む様々なシステムの特性を理解したり,発注するシステムの仕様を検討する際にも有用です。しかしながらプログラミングは一般的に行われておりません。そこで本号は,皆様のプログラミングに対するハードルを下げ,実際にプログラムを書くきっかけとなる特集を目指しました。具体的には,インフォプロが実際に作成したプログラムの事例とその解説を中心に構成しております。まずはプログラミングのススメとして,前田朗氏(東京大学)にご自身の経験を踏まえてプログラミングのメリットをご紹介頂きました。次に,兼宗進氏(大阪電気通信大学)にプログラム一般に共通する基礎的な概念を,Tokyo.R運営チームの方々にテキスト分析の入門的な方法をご解説頂きました。その後,新出氏(富谷市図書館)および高久雅生氏(筑波大学)には図書館業務を対象に,西尾啓氏(株式会社エンライトオン)および安藤俊幸氏(アジア特許情報研究会)には特許調査関連業務を対象に,ご自身が作成したプログラムとその解説を中心に,それぞれ記事を執筆して頂きました。実際に手を動かすことを考慮して頂いたり,業務におけるプログラミングの考え方をご紹介頂いたり等,自身で作成したプログラムを業務で活用してきた皆様の知見を盛り込んだ,充実した内容となっております。本特集が,皆様がプログラミングに着手するきっかけとなれば幸いです。折しも2020年度から小学校でプログラミング教育が必修となります。このタイミングに我々もプログラミングを始めてみませんか。(会誌編集担当委員:今満亨崇(主査),炭山宜也,南山泰之,野村紀匡)