著者
小関 敏彦
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.59, no.3, pp.165-171, 2016-06-01 (Released:2016-06-01)
参考文献数
6
被引用文献数
1

科学技術の進展はしばしば新しい材料の登場や材料の進化によって促されるが,材料の開発には多くの時間と費用が必要である。特に長期の信頼性が要求される構造材料は膨大な時間と費用をかけて開発・実装されてきた。科学技術の進展や産業の競争力強化,安心で安全な社会の実現には新たな材料の開発の効率化が鍵である。その実現に向け,これまで蓄えられてきた多くの材料の知やデータと計算科学を組み合わせて材料の組織や特性,性能を予測する「マテリアルズインテグレーションシステム」の構築を内閣府の「SIPプロジェクト」の中で進めている。この動きはわが国だけでなく米国や欧州でも活発である。本稿では材料の組織や特性,性能を記述するデータについて構造材料を例に概説するとともに,それを活用したマテリアルズインテグレーションシステムの構成,そのためのデータベース構築の課題を述べる。
著者
西田 豊明
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.57, no.8, pp.517-530, 2014-11-01 (Released:2014-11-01)
参考文献数
27
被引用文献数
1 2

情報通信技術のべき乗オーダーの発展によってもたらされるデータ化とサービス複製によって,人間社会はこれまでとは大きく異なるものになろうとしている。基盤からサービスにわたる義務的労働から解放されて人間の自由度が飛躍的に高まる一方で,自分や社会に意義を見いだして活動する源泉となる人間力・社会力を高める新たな方策が必要であると考えられる。まず,このような社会的状況が生まれる背景となった情報通信技術の動向を俯瞰し,それがテクノロジー社会から人工知能(Artificial Intelligence: AI)社会への遷移を引き起こす可能性があることを示す。次に,AI社会への遷移は,人間社会にとって長い間の課題であった,義務的仕事からの解放をもたらす一方で,人間力と社会力が危機にさらされる時代になったことを指摘する。最後に,物語とゲームに注目した人間力と社会力強化のための新たな情報通信技術の方向を探る。
著者
山崎 慎一
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.51, no.3, pp.207-219, 2008 (Released:2008-06-01)
参考文献数
24
被引用文献数
1 1

大学全入時代を迎え,日本の大学は厳しい競争環境の下に置かれている。学生募集は,大学の生き残りに関わる重要な要素になっている。その中で,大学の提供する情報は,大学からの発信と同時に,大学のランキングやガイドブックという形で大学外からも発信され,その需要が飛躍的に高まっている。アメリカでは,10年以上前から,現在の日本のような状況になっている。その時,大学による大学ガイドへの情報提供に多くの不正が生じ,社会問題に発展している。本稿では,この問題を解決したCommon Data Set(CDS)に焦点を当てている。CDSは,主に大学ガイド出版社が,大学情報を収集するために用いる共通化された質問集と定義集である。その開発の背景と開発過程を明らかにし,大学情報の管理と質保証のあり方を述べている。
著者
岸本 泰士郎 リョウ コクケイ 工藤 弘毅 吉村 道孝 田澤 雄基 吉田 和生
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.60, no.8, pp.574-582, 2017-11-01 (Released:2017-11-01)
参考文献数
24

すべての医学領域において,疾患の重症度の評価は重要である。しかし,精神科領域では疾患の重症度を反映するようなバイオマーカーが不足しており,診断,治療,さらに新薬の開発などで問題が生じている。近年,情報通信技術(ICT)の発展が目覚ましく,こういった問題の解決にICTを活用する試みが行われている。その一つにテレビ電話を用いた中央評価があり,評価者によるバイアスを取り除くには有効な手段である。しかし,評価尺度そのものにも妥当性,信頼性などの問題が含まれている。一歩先のアプローチとして,ウエアラブルデバイス等を用いた診断支援技術の開発が複数報告されている。PROMPT(Project for Objective Measures Using Computational Psychiatry Technology)は日本医療研究開発機構(AMED)の委託研究として始まった。慶應義塾大学を中心に7社が参画し,それぞれの会社の技術を持ち寄り,複数のデバイスから得られる情報を基に精神症状を定量することを目指している。また,UNDERPIN(Understanding Psychiatric Illness through Natural Language Processing)では科学技術振興機構(JST)CRESTの援助の下,静岡大学とのコラボレーションによって自然言語処理を利用した言葉(話し言葉や書き言葉)に現れる精神症状の特徴量の抽出を行い,精神疾患の予防・早期介入が可能になるような技術開発を目指している。
著者
森田 歌子 石黒 裕康 千葉 吉一
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.41, no.6, pp.445-459, 1998 (Released:2001-04-01)
参考文献数
7
被引用文献数
4 4

科学技術振興事業団では1996年3月にJICST―DTDおよびSGML文書作成プロトタイプシステムを開発した。また,『情報管理』誌では編集・印刷における作業量の軽減,期間短縮,経費節減と同時に,データの一元的利用,電子ジャーナル・全文DBの同時進行を目的として,『情報管理』誌SGML編集システムを開発した。本稿では,SGML文書処理システムの概要を紹介し,『情報管理』誌SGML編集システム開発のポイント,システムの機能,編集作業の流れ,編集・印刷工程の変化について述べる。
著者
栗田 茂明
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.59, no.6, pp.366-376, 2016-09-01 (Released:2016-09-01)
参考文献数
19

講演会などで,講師の話が文字になって同時通訳のようにスクリーンに投影される「リアルタイム字幕」は,手話と同じように聴覚障害者のための情報保障で「パソコン要約筆記」と呼ばれている。IPtalkは,1999年から改良を続け,無料で配布しているパソコン要約筆記専用ソフトで,現在ではデファクトスタンダードソフトとして全国で使われている。IPtalkがどのような機能をもち,IPtalkをどのように使ってパソコン要約筆記を行うのか,IPtalkの開発の経緯や今後の課題などについて述べる。
著者
寺田 真敏
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.59, no.2, pp.96-104, 2016-05-01 (Released:2016-05-01)
参考文献数
5

Webページ改ざん,DoS攻撃,標的型攻撃,日々新しいサイバーセキュリティーの専門用語が生み出されている。本稿では,CSIRT(シーサート)という専門用語を読み解いていきたい。CSIRTは,Computer Security Incident Response Teamの略である。また,シーサートは,コンピューターセキュリティーインシデント対応能力を組織化することであり,シーサート活動には,組織のセキュリティー文化が反映されている。この専門用語の中には,インシデント,インシデント対応,コンピューターセキュリティーインシデントレスポンスチームというキーワードが隠れている。
著者
村上 圭子
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.59, no.11, pp.721-731, 2017-02-01 (Released:2017-02-01)
参考文献数
5

地上波放送の完全デジタル化が終了して5年を超え,テレビ,放送を取り巻く環境は様変わりした。端末のマルチデバイス化,伝送路のブロードバンド化,サービスのプラットフォーム化が進み,インターネット上には放送事業者以外による多種多様な動画配信サービスが乱立してきた。視聴者のテレビ離れの傾向はもはや若者だけのものではなくなっている。総務省では2015年11月に「放送を巡る諸課題に関する検討会」を設け,2016年9月から個々のテーマ別に議論が開始された。本稿ではまず,テレビを取り巻く昨今の変化と放送政策との関係について確認したうえで,4K・8K放送と動画配信(特に同時配信)の2点に絞って課題を論じたい。
著者
増田 悦夫
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.60, no.11, pp.788-797, 2018-02-01 (Released:2018-02-01)
参考文献数
23

第4次産業革命を推進する取り組みが進む中,ロジスティクス分野においても変革に向けた取り組みが積極的に進められている。人手不足や非効率な業務に悩まされているロジスティクス業界にとって,IoTやAI,ロボットなどの技術を取り入れたスマート・デジタルロジスティクスに対する期待は大きい。輸送や物流拠点における省力・省人化やサプライチェーンの最適化のための施策やそれを実現するためのロードマップが策定されるとともに,それに沿った取り組みが始まりつつある。民間企業においても,物流拠点における搬送やピッキングを行うロボットの導入,ラストマイルにおけるドローン配送の実験,サプライチェーンを最適化するためのソリューションの提供などが活発に行われている。人手不足,特にトラックドライバーの不足は深刻であり,隊列走行や自動運転の実用化に向けた取り組みが急ピッチで進められている。
著者
原田 隆史
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.54, no.11, pp.725-737, 2012
被引用文献数
1

Project Next-Lは,次世代の図書館システム開発の主導権を図書館関係者自身の手に取り戻し,オープンソースによる図書館システムの仕様を図書館員が共同で作成することを目指すプロジェクトである。Project Next-Lの仕様をもとに開発された統合図書館管理システムNext-L Enjuは,一般的な図書館システムの機能を備えるほか,Web2.0に対応した各種の新機能,図書と電子ジャーナルなどの電子的情報資源を一元的に管理する機能,FRBRに対応した書誌レコードを管理する機能など,数多くの新しいサービスに対応する仕組みを備えている。また,Next-L Enjuはオープンソース・ソフトウェアとして公開されており,自由に利用することができるという点も大きな特徴である。Next-L Enjuは2012年1月から正式公開された国立国会図書館(NDL)サーチのベースとして採用されているほか,物質・材料研究機構の図書館や南三陸町図書館で実際に稼働しはじめるなど利用が広がりつつある。