著者
元木 章博
出版者
日本教育情報学会
雑誌
教育情報研究 (ISSN:09126732)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.27-35, 2014

視覚障害者の支援者は,視覚障害者がコミュニケーションをするのと同じように読み点字・書き点字を使う能力を持つべきである.現状での点字表現は2次元に留まっており,その表現方法について,あまり注意が払われていない.従って,点字の3次元表現について議論することは重要である.本論の目的は,3DCGやGIFアニメーションを活用した学習支援システムの開発をすることである.既存の学習支援システムにこの2つの機能を追加する.これにより,学習者一人ひとりが読み点字だけでなく書き点字も含めて3DCGで学ぶことができ,彼らは"鏡像関係"の表現方法としてのGIFアニメーションを見ることが出来る.その結果,(1)点字の表現として3DCGの方が2Dよりも分かりやすいと回答した学習者が,68%であった.そして,(2)3DCGで表現した鏡像関係のGIFアニメを提供することは出来たが,一部学習者において不適切な理解があり,システムや授業内容の改善が望まれる.
著者
山田 政寛 松本 佳穂子 赤堀 侃司
出版者
日本教育情報学会
雑誌
教育情報研究 (ISSN:09126732)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.15-24, 2009
被引用文献数
3

高帯域ネットワークが普及し,テキストチャットなどの同期型CMCツールは日常的なコミュニケーションツールとして利用が増加している.しかし,第二言語コミュニケーション学習の中で実践利用が乏しく,どのように利用するべきか知見が少ない状況にある.本研究では第二言語コミュニケーション教育に特化した同期型CMCを開発し,授業において評価を行った.具体的にはビデオカンファレンスとテキストチャットを使用し,主観的評価として,学習意識,相手への親近感,学習満足度について質問紙で,学習パフォーマンスの点では発言数,定型表現利用数,自分で自分の発言の誤りを修正する自己修正数で実践の事前事後で比較評価を行った.その結果,ビデオカンファレンスは意味伝達を強く意識し,会話の自信がつくなどの情意面に有効であり,また全てのパフォーマンスが向上することが示された.一方,テキストチャットでは文法的な正確性意識を向上させる効果があることが示された.
著者
和田 武 南本 長穂
出版者
日本教育情報学会
雑誌
教育情報研究 (ISSN:09126732)
巻号頁・発行日
vol.17, no.2, pp.43-54, 2001

筆者らはこれまで, 一般情報処理教育を受講する大学新入生に対する意識調査を行なってきた.その結果, 応用ソフト習熟型と, 言語習熟型の2つの型があることが判明し, 数量化理論を用いてこれらの型の存在を検証した.今回, 我々は, 更に授業効果を探るために, 一般情報処理教育を受講した大学3回生に対して追跡調査を実施し, 受講直後と現在の情報活用能力に関する意識面, 事実面の変移について分析した.(1)応用ソフト受講の満足度が受講後の現在も高く, (2)受講時の満足度の高いグループと低いグループ間でその後の応用ソフトやプログラミング言語への取り組み姿勢は, どちらも満足度が高い程, 現在も積極的に取り組んでいる.また, (3)応用ソフトとプログラミング言語の習熟度点数比較では, 受講時の習熟度が高い程, 現在の習熟度が高いことがわかった.
著者
加藤 尚吾 加藤 由樹 小林 まゆ 柳沢 昌義
出版者
日本教育情報学会
雑誌
教育情報研究 (ISSN:09126732)
巻号頁・発行日
vol.22, no.4, pp.31-39, 2006

本研究では,電子メールにおける顔文字の機能である,感情を相手に伝える役割に注目した調査を行った.具体的には,女子大学生24名に,163種類の顔文字を提示して,それぞれの顔文字から解釈される感情を尋ねた.この調査で得られたデータを用いて,それぞれの顔文字から解釈される感情の種類の数をカウントし,感情解釈の種類の多い顔文字と,感情解釈の種類の少ない顔文字の差異について,検討を行った.主な結果として,ポジティブ感情を表す顔文字の方が,ネガティブ感情を表す知見から,ポジティブ感情を表す顔文字の方が,感情的な誤解やすれ違いを生じにくい可能性のあることが示唆された.しかし,書き手の感情状態を表す役割として顔文字を捉えると,顔文字には,感情解釈の幅の広いものと限定的なものがあり,注意を要することも分かった.
著者
加藤 由樹 加藤 尚吾 赤堀 侃司
出版者
日本教育情報学会
雑誌
教育情報研究 (ISSN:09126732)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.35-43, 2006
被引用文献数
2

本論文では,携帯メールにおけるコミュニケーションで喚起する感情の中で,特に「怒り」の感情に注目した.「怒り」の感情は,コミュニケーションで生じる感情的なトラブルに密接に関連する.従って,この感情について分析することで,感情的なトラブルを回避するための示唆を得ることが期待できる.本研究では,三つの調査を行った.調査Iでは,普段の携帯メールの使用における「怒り」の感情に関する経験を調査した.次に,調査IIでは,調査Iで得られた結果から,携帯メールにおける返信時間と「怒り」の感情について調べるために,携帯メールとパソコンによる電子メールとを比較する調査を行った.そして,調査IIIでは,携帯メールにおいて,顔文字の不使用および短いメール文が「怒り」の感情へ及ぼす影響を調べるために,これら二つの要因を操作したメール文を被験者に提示し,生じる感情を調査した.全体的な結果として,顔文字の有無以上に,短文で書かれた携帯メールの場合に,被験者は,「悲しみ」や「怒り」をより感じ,「嬉しさ」をより抑える傾向があり,短文かどうかの要因が,感情により影響を持つことが示唆された.