著者
安達 一寿 中尾 茂子
出版者
日本教育情報学会
雑誌
教育情報研究 (ISSN:09126732)
巻号頁・発行日
vol.10, no.4, pp.11-20, 1995

一般情報処理教育におけるプログラミング学習での学生のつまずき箇所を,その学習過程から抽象化プロセスと構造化プロセスに大別し,学生のつまずき箇所からグルーピングを行い傾向を分析した.その結果,つまずき箇所が抽象化プロセスにある学生はプログラミング以外の要因による理解不足が見られ,コンピュータ親和度も低い.つまずき箇所が構造化プロセスにある学生は,意味論的知識に関わる部分では問題のモデル化ができ,コンピュータ親和度も高いことが明らかになった.
著者
山本 利一 本郷 健 本村 猛能 永井 克昇
出版者
日本教育情報学会
雑誌
教育情報研究 (ISSN:09126732)
巻号頁・発行日
vol.32, no.2, pp.3-12, 2016 (Released:2017-02-10)
参考文献数
31

本研究は,プログラミング教育に関する教育的意義やその効果を先行研究から整理し,今後それらを推進するための基本的な知見を得ることを目的とする.そのために,初等中等教育におけるプログラミング教育の位置づけを学習指導要領で確認した後,先行研究を整理した.その結果,プログラミング教育の教育的意義や学習効果は,①新たなものを生み出したり,難しいものに挑戦しようとする探究力,②アルゴリズム的思考,論理的思考力,③物事や自己の知識に関する理解力,④自分の考えや感情が発信できる表現力や説得力,⑤知恵を共有したり他者の理解や協力して物事を進めたりする力,⑥プログラミングを通して情報的なものの見方や考え方を身に付けることができる,ことであることが示された.
著者
宮田 仁 大隅 紀和 林 徳治
出版者
日本教育情報学会
雑誌
教育情報研究 (ISSN:09126732)
巻号頁・発行日
vol.12, no.4, pp.3-13, 1997

Logoによるプログラミングの学習で伸長した問題解決能力が, プログラミング以外の他の状況に転移するかという問題を, 指導方法との関係で分析した. その結果, 間題解決のプロセスを重視したアプローチでプログラミングを指導した場合, 間題解決能力の転移が起こりやすいことが「ハノイの塔問題」という解析的課題において実証された. プロセスを重視したアプローチでは, (1)構造化されたワークシート, (2)メタ認知を促進する教育的介入方法, (3)社会的状況場面で学習者がリフレクト(内省)できる学習環境の準備が必要であり, 具体的方法としてメタ認知促進カード(Metacognitive Prompt Card)をペア学習で使用した.
著者
安達 一寿 中尾 茂子
出版者
日本教育情報学会
雑誌
教育情報研究 (ISSN:09126732)
巻号頁・発行日
vol.10, no.4, pp.11-20, 1995-03-30 (Released:2017-06-01)
参考文献数
16
被引用文献数
1

一般情報処理教育におけるプログラミング学習での学生のつまずき箇所を,その学習過程から抽象化プロセスと構造化プロセスに大別し,学生のつまずき箇所からグルーピングを行い傾向を分析した.その結果,つまずき箇所が抽象化プロセスにある学生はプログラミング以外の要因による理解不足が見られ,コンピュータ親和度も低い.つまずき箇所が構造化プロセスにある学生は,意味論的知識に関わる部分では問題のモデル化ができ,コンピュータ親和度も高いことが明らかになった.
著者
林 知己夫
出版者
日本教育情報学会
雑誌
教育情報研究 (ISSN:09126732)
巻号頁・発行日
vol.1, no.2, pp.6-10, 1986-03-31 (Released:2017-06-17)

コンピュータを教育の場に持ちこむ問題を考える場合、二つにことが考えられる。一つは教育に関する情報処理(データベースを含む)のためにコンピュータを活用することであり、もう一つは、初中等教育の段階でコンピュータ教育を実際に行う場合である。前者は当然用いるべきであるが、後者に対しては慎重に考察する必要がある。なぜならば、コンピュータ教育そのものが、望ましい科学的精神の発達に悪影響を与える可能性があるからである。従って、コンピュータ教育のあり方を研究する前に、コンピュータ教育の与える影響の研究が先行すべきで、これを踏まえた上で、コンピュータ教育の諸問題を研究するのが望ましいという主旨が論じられている。
著者
菅井 勝雄
出版者
日本教育情報学会
雑誌
教育情報研究 (ISSN:09126732)
巻号頁・発行日
vol.3, no.1, pp.16-22, 1987-06-30 (Released:2017-06-17)
参考文献数
9

今日、情報化社会の進も中で、コンピュータが学校教育に入り、それとともに授業が変ろうとしている。そこで、本稿では、心理学における「行動的モデル」から「認知的モデル」への科学のパラダイム変換によって、これまでの伝統的な「教師→学習者伝達モデル」から、新たな「学習環境モデル」への授業モデルの移行が、理論的な観点から検討される。あわせて、情報技術と理論モデルとの密接な関係が示される。
著者
山本 利一 大関 拓也 五百井 俊宏
出版者
日本教育情報学会
雑誌
教育情報研究 (ISSN:09126732)
巻号頁・発行日
vol.24, no.3, pp.23-29, 2008
被引用文献数
2

rights: 日本教育情報学会rights: 本文データは学協会の許諾に基づきCiNiiから複製したものであるrelation: IsVersionOf: http://ci.nii.ac.jp/naid/110007123453/本研究は,学習内容や学習の進め方をコンピュータを活用して整理し,生徒自身が見通しを持った学習計画を立案する授業実践報告である.「ロボット製作」を題材として,学習すべき項目の検討,作業計画など,コンピュータを活用してマインドマップを作成・修正する授業展開である.実験授業の結果,計画設計能力,思考整理能力の向上が見られた.また,生徒は,マインドマップやそれらを描くソフトウェアに対して興味・関心が高く,他の分野への転移の可能性があることも確認できた.
著者
谷口 知司 三宅 茜巳 興戸 律子 有薗 格
出版者
日本教育情報学会
雑誌
教育情報研究 (ISSN:09126732)
巻号頁・発行日
vol.21, no.4, pp.17-24, 2006-06-01 (Released:2017-05-19)

終戦直後文部省は,占領軍総司令部のもとで戦時下教育の一掃に力を注いでいた.占領軍総司令部は,アメリカの教育専門家をスタッフとしてその目的のために民間情報教育局(The Civil Information and Education Section:略称CIE)を置いた.木田先生は,昭和21年に文部省に入省された.この時期に若手文部官僚として教科書局調査課に在籍し,CIEスタッフとともに社会科特別教科書『民主主義(上)(下)』の編集に係わった.この教科書は昭和23年から24年にかけて発行され,昭和28年頃まで使われ,戦後の民主主義教育に大きな役割を果たした.本稿では,木田宏先生の二編のオーラルヒストリーをもとに,木田先生と教科書「民主主義(上)(下)」との係わりについて,執筆の経緯,教科書に漫画を掲載したこと,執筆者について,大江健三郎のこと,共産主義の取り扱いの各項目で考察した.
著者
山本 利一 山内 悠
出版者
日本教育情報学会
雑誌
教育情報研究 (ISSN:09126732)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.17-26, 2018 (Released:2018-09-30)
参考文献数
10

2020年全面実施の小学校学習指導要領では,初等教育においてプログラミング学習が必修化される.プログラミング学習は,各教科の目的を達成する手段として効果的に活用される必要があり,それらの事例の蓄積が求められている.そこで本研究は,小学校第1学年の特別な教科「道徳」において,プログラミング学習の順次処理と「順番の大切さ」を組み合わせた指導過程を提案し,実践を通してその効果を検証することである.実践の結果,児童は,PETSを活用することでプログラミング(順次処理の学習)に積極的な取り組みを見せると共に,順番の大切さを学びとっていた.しかし,グループ活動は,グループにより活動の質が異なるため,教員の声かけや支援が大切であることも確認された.
著者
掘野 緑 市川 伸一 奈須 正裕
出版者
日本教育情報学会
雑誌
教育情報研究 (ISSN:09126732)
巻号頁・発行日
vol.6, no.2, pp.3-7, 1990-09-10 (Released:2017-06-15)
参考文献数
11
被引用文献数
10

自己学習力が強調される今日の教育において, 学習者自身のもつ「学習観」は極めて重要である. 現在の学校教育で形成されがちな学習観として, 失敗は悪いことであり, 正答さえ良ければ良いといった「結果主義」があげられよう. 本研究では, 「失敗に対する柔軟的態度」, 「思考過程の重視」という2つの側面に着目し, 基本的な学習観の尺度を作成した. さらに, 学業成績との関連について検討した結果を報告する.
著者
日高 義浩
出版者
日本教育情報学会
雑誌
教育情報研究 (ISSN:09126732)
巻号頁・発行日
vol.32, no.3, pp.31-40, 2016 (Released:2017-05-01)
参考文献数
10

本報は,アクティブ・ラーニングの手法の1つである協調学習「知識構成型ジグソー法」を用いた授業の実践事例である.知識構成型ジグソー法を取り入れた授業は,教科「工業」の科目「電子情報技術」において実施した.知識構成型ジグソー法を取り入れた授業終了後,生徒に質問紙調査を行い,その結果について分析を行った.その結果から,知識構成型ジグソー法を用いた授業の有用性ならびにその授業における課題について追究した.その結果,①エキスパート活動,ジグソー活動等を通じて生徒同士が教えあうことで責任感が身に付くと感じていること,②生徒同士で学びあうことが多くなるため,一緒に学習する生徒によって学習内容が変わってくると感じている生徒もいること,などを明確にした.
著者
芦葉 浪久
出版者
日本教育情報学会
雑誌
教育情報研究 (ISSN:09126732)
巻号頁・発行日
vol.4, no.4, pp.3-27, 1989-01-30 (Released:2017-06-16)
参考文献数
11

科学概念形成のための学習方法を確立するため、概念形成が困難な基本用語20を選定し、各用語ごとに15〜20の概念記述文を作成して、用語と概念の結びつきを、中・高生に質問紙法で調査し、概念の理解度と概念構造を分析した。概念理解度を示す相対選択率の学年による変化の違いによって、概念用語は3つに類型化できた。これまで各概念ごとに概念形成学習法を考えていたが、類型ごとに共通する方法をとることができることがわかった。次に、各用語ごとに概念記述文間の類似性の距離を測度としてφ係数を用いてクラスター分析をし、概念の樹形図を作って比較した結果、科学概念と日常概念が別のクラスターを形成するか否かで、概念形成学習の成果を比較できることがわかった。
著者
服部 晃
出版者
日本教育情報学会
雑誌
教育情報研究 (ISSN:09126732)
巻号頁・発行日
vol.25, no.3, pp.3-14, 2009-12-18 (Released:2017-03-31)
参考文献数
8
被引用文献数
3

教員の資質能力の形成過程における養成段階と現職研修段階の接点として位置づく「法定研修」としての初任者研修は,教員の資質能力に関する様々な論議の歴史的な経緯の中で,その節目とも言える時期の1988(昭和63)年に制度化され,ちょうど20年が経過した.この間に,児童生徒及び学校を取り巻く教育環境は大きく変動し,とりわけ児童生徒の教育に直接携わる教員に対する議論は国民的な広がりとなった.1998(平成10)年頃から社会問題となったいわゆる「指導力不足教員」に端を発し,教員の現職教育(研修)の改善・強化の必然性が叫ばれて,2003(平成15)年には教職10年経験者研修が「法定研修」となり,さらに,2007(平成19)年には教育職員免許法及び教育公務員特例法が一部改正されて教員免許更新制が制定され,「指導が不適切な教員」に対する指導改善研修が「法定研修」となった.本論文は,教員の現職教育(研修)の原点ともいえる初任者研修について,(1)「法定研修」としての初任者研修の創設,(2)初任者研修の実施形態,(3)初任者研修の現状,(4)初任者研修の課題について論述し,さらに,(5)現職教育の在り方について追究するものである.
著者
高田 英一 大石 哲也 森 雅生 関 隆宏 小柏 香穂理 劉 沙紀
出版者
日本教育情報学会
雑誌
教育情報研究 (ISSN:09126732)
巻号頁・発行日
vol.36, no.2, pp.87-93, 2020 (Released:2021-01-31)
参考文献数
7

大学が近年の厳しい経営環境に対応するためには,ステークホルダーの支持を得る必要があり,そのためには,ステークホルダーによる認知の集積である「レピュテーション」を高め管理する取組である「レピュテーション・マネジメント」(reputation management)の取組を進める必要がある.また,その際には,大学のデータマネジメントを担当するIRの活用の取組が有効と考えられるが,いずれの取組の状況も明らかでない.このため,国立大学に対してこれらの取組の現状に関するアンケート調査を実施した.調査の結果から,レピュテーション・マネジメントの重要性が多くの大学で認識されるとともに,レピュテーション・マネジメントに関する取組が実施されていること,また,レピュテーション・マネジメントへのIRの活用の必要性が認識されている状況が明らかとなった.
著者
堀田 龍也
出版者
日本教育情報学会
雑誌
教育情報研究 (ISSN:09126732)
巻号頁・発行日
vol.35, no.3, pp.3-14, 2020 (Released:2020-05-31)
参考文献数
26

我が国の政府は,Society5.0(超スマート社会の実現)を目指し,少子高齢化を始めとする諸課題の解決にIoTやAIなどのテクノロジーの積極的な活用を位置づけている.このような社会に対応できる人材の育成が初等中等教育に期待され,学習指導要領においても情報活用能力の重点化を始めとする改善が進んでいる.しかしながらこれまでは,学校現場では情報化そのものが十分に進んでおらず,学習におけるICTの活用において国際的な遅れが指摘されている.本稿では,学校のICT環境整備の2020年前半現在の動向として,①GIGAスクール構想の推進,②PISA2018に見る読解力の低下,③小学校プログラミング教育の全面実施を取り上げ,学校現場における課題を共有し,実践的な解決に向かうための教育情報研究について本学会への期待を含めて議論する.
著者
荒木 貴之 江藤 由布 齋藤 玲 堀田 龍也
出版者
日本教育情報学会
雑誌
教育情報研究 (ISSN:09126732)
巻号頁・発行日
vol.34, no.2, pp.13-24, 2018 (Released:2019-01-08)
参考文献数
20

1人1台タブレット型PCの学習環境を有する高等学校において,学習用SNSを通年利用した.本稿では,この通年利用による高校生の学習態度の変化を調べた.このとき,生徒全員に協調的課題遂行にあたっての他の生徒の貢献度を評価させることで,彼らを貢献群と一般群に分けたうえで,学習態度の変化を分析した.その結果,貢献群においては,教師との交流による自己効力感やライティング方略に特徴が見られるとともに,ネットワーク上の交流を楽しむことに,経年で変化が生じていることが示された.一方,学級の担任教師へのインタビュー調査から,彼女は批判的思考が発揮できるようなグラウンド・ルールを設けていることが確認された.これらの結果から,学習用SNSの通年利用による生徒の学習態度の変化の特徴,および生徒が学習用SNS上で学習を進めていく際の教師による生徒支援の工夫についての示唆を得た.
著者
高山 草二
出版者
日本教育情報学会
雑誌
教育情報研究 (ISSN:09126732)
巻号頁・発行日
vol.15, no.4, pp.11-19, 2000-03-31 (Released:2017-05-27)
参考文献数
15

ビデオゲームの面白さとその個人差を実証的に検討するため, ゲームで遊ぶ動機とメディア嗜好性を小学生について調べた.因子分析の結果, 道具的な動機である「暇つぶし」「逃避」の他に, 「挑戦」「コントロール」「空想」「好奇心」など, 内発的動機づけ理論において提案されてきたすべての側面がみられた.これらの動機が重なることで面白さが増していた.個人差の分析の結果, 内発的動機または道具的動機が中心の類型, どの動機も低い否定的な類型など, 多様な類型がみられた.一対比較法によるメディアとの嗜好の比較から, ビデオゲームは双方向性をもったテレビとしてとらえられており, 特に, ビデオゲーム特有の面白さとして「コントロール」と「空想」がメディアの双方向性から生ずることが示唆された.ゲーム様式のCAIに関して, これら結果の意義を検討した.
著者
渋井 二三男 高橋 三雄 柿岡 明 石井 宏
出版者
日本教育情報学会
雑誌
教育情報研究 (ISSN:09126732)
巻号頁・発行日
vol.11, no.2, pp.49-56, 1995-07-31 (Released:2017-05-31)
参考文献数
5

企業における情報処理教育(本調査では,「OA・情報関連教育」の語を使用)の現状を把握し,企業における情報処理教育の在り方を調査研究することにより,今後の施策形成の一助とすることを目的に実施した.分析の結果,(1)OA・情報関連教育は,73.4%の企業で実施されているが,その目的・内容は,伝統的な「OA教育」の範疇に従うものであり,情報の高度利用を念頭に置いたものとはいえない.(2)取締役・部長クラスに対する教育を実施している企業は少数であるが,今後は,かなりの企業が重視する意向を示している.(3)OA・情報関連教育を実施中の企業では,教育の効果に疑問を呈する意見が強く,非実施企業では実施すべき教育内容が不明確であることを問題視する意見が強い.(4)14項目の知識・能力分野によって(注)「情報リテラシー教育」観を質問した結果,(I)理系-文系軸(II)SE-プログラマー軸,(III)実務家-理論家軸の3つの因子で58.8%まで説明できることが分かった.
著者
益本 仁雄 宇都宮 由佳 滝山 桂子
出版者
日本教育情報学会
雑誌
教育情報研究 (ISSN:09126732)
巻号頁・発行日
vol.23, no.2, pp.3-12, 2007

2006年度に,日本とタイで中学2年生の情報収集および情報活用能力に関する質問紙調査ならびに当該中学において情報教育の現状に関して聞き取り調査を実施し,比較検討をおこなった.その結果,発展途上国のタイでも情報教育に力を入れており,生徒のコンピュータリテラシーもかなり高いことがあきらかになった.また,日本に比べタイでは,職業に密接に関連するスキルを磨く教育を志向していた.日・タイの情報教育の今後について,次のように指摘した.日本では,批判的な目で情報メディアに接し,複数の情報メディアを比較して,必要かつ正しい情報を見つけ出す力を養成することを情報教育で徹底すべきであろう.また,タイにおいては,インターネットが犯罪に使われるケースは多くはないものの,今後,急速に増加していくと予想されることから,インターネット社会におけるセキュリティ教育によって,犯罪や事故に対して防衛力をつけるように教育することが重要である.