著者
眞崎 昭彦
出版者
日本テレワーク学会
雑誌
日本テレワーク学会誌 (ISSN:13473115)
巻号頁・発行日
vol.8, no.2, pp.11-16, 2010-10-01 (Released:2018-06-11)

テレワークは新型インフルエンザ対策の柱として期待されている。本稿では、パンデミック時のテレワークを検討するための先行事例として、2003年のSARS(重症急性呼吸器症候群)流行時に事業継続のためテレワークが活用された事例を収集・分析した。その結果、SARS対策として行われたテレワークは、実施の狙い・目的などによりいくつかの類型が存在することや、通常のテレワークとは異なる特徴があることなどがわかった。これらの知見はパンデミック時のテレワークを検討する上で貴重な示唆となると考えられる。
著者
丸谷 浩明
出版者
日本テレワーク学会
雑誌
日本テレワーク学会誌 (ISSN:13473115)
巻号頁・発行日
vol.8, no.2, pp.4-10, 2010-10-01 (Released:2018-06-11)
被引用文献数
1

テレワークは,大規模感染症,地震,風水害等の危機事象の発生時における企業・組織の重要業務の継続を図るために,有効な対策になることが期待されている.ただし,通信回線や電力などのライフライン被害が懸念される災害では,本社拠点と個々のテレワーク拠点との間の通信の確保に十分留意する必要がある.また,危機事象の発生時にテレワークの利用を急拡大するには,設備面,情報セキュリティ面,労働条件面などで,十分な事前準備が不可欠である.このため,訓練の実施により問題点の解消をはかり,また,できるだけ平常時にも活用していくことが望まれるであろう.
著者
柳原 佐智子
出版者
日本テレワーク学会
雑誌
日本テレワーク学会誌 (ISSN:13473115)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.16-24, 2011-04-01 (Released:2018-06-11)
被引用文献数
1

テレワークは様々な就労環境に柔軟に対応出来る可能性を持つ働き方の1つであることは誰もが認めるところである。しかし、未だテレワークへのイメージは「常時テレワーク」「普通に働けない人のための働き方」であり、浸透していない。これは「テレワークに関する教育」が不十分であることに他ならない。以前より筆者はこの「テレワーク教育」を行う機会は大学教育であることを主張しており、テレワークを用いた業務遂行環境を擬似的に体験することで一定の効果があることを指摘している。現在もこのような体験が可能な実習型授業を開講しており、情報システムの開発を数人のプロジェクトで行うことで、部分テレワークを併用した業務環境の疑似体験を行った上で、テレワークへの意識教育となる試みを進めている。そこで本論文では、最近の授業アンケートデータや参与観察を基に、テレワーク教育が学生に対してどのような影響を与えているかを時系列での変化の有無も含めて考察した。あわせて、教育の限界についても言及した。
著者
田澤 由利
出版者
日本テレワーク学会
雑誌
日本テレワーク学会誌 (ISSN:13473115)
巻号頁・発行日
vol.10, no.2, pp.40-45, 2012-10-01

東日本大震災で、テレワークを導入する企業や、在宅での業務を仲介する企業が増えてきた。しかし、在宅勤務制度を導入し、セキュリティ対策をするだけでは、持続的なテレワーク、また、突発時のテレワークに対応することができない。子育て・介護中等の限られた社員が週に1回程度の在宅勤務をするのではなく、突然の災害が発生しても、大半の社員がテレワークで通常の業務を進められる体制が必要になる。データやシステムのグラウト化はもちろん、業務のワークフロー、コミュニケーションの見える化、労働時間管理等、「いつもの仕事」をテレワークで実現するためには、どんなICTツールが必要か、また、そのための運用方法、ルールの徹底等について、実際の事例をもとに紹介する。また、これらのツール運営方法は、「在宅就業・在宅ワーク」を管理・運営する場合においても、「業務の拡大」「品質の向上」に活用することができる。
著者
國井 昭男 沼田 真奈
出版者
日本テレワーク学会
雑誌
日本テレワーク学会誌 (ISSN:13473115)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.47-54, 2015-03-31

近年、普及拡大傾向のテレワークにおいて、在宅勤務のみならず、交通機関・宿泊施設・飲食店などでのモバイルワークやコワーキングスペースで仕事をするスタイルが増えており、無線LANサービス、特に不特定多数の利用者を想定した公衆無線LANサービス(パブリックWi-Fi)が活用されるようになってきた。しかしながら、パブリックWi-Fiには「盗聴」「不正アクセス」「改竄」「なりすまし」「不正利用の踏み台」など、様々な脅威が潜んでおり、テレワーク普及の阻害要因となりかねない。パブリックWi-Fi提供者は、利用者の安全を確保するために無線通信区間の暗号化や端末同士の通信の遮断などといった対策を、更には、提供するWi-Fiの悪用を防ぐためにアクセスログの保管などといった対策を、講じる必要がある。一方、テレワーカーなどのパブリックWi-Fi利用者は、接続先アクセスポイントや暗号化の確認、SSLの利用などといった対策を講じる必要がある。テレワーカーの安全なWi-Fi利用に向けて、テレワーカー自身、あるいは、テレワーク環境を提供する企業・組織として、最低限、理解し、実践することが、テレワークの一層の普及拡大にも資するものと言えよう。
著者
佐藤 百合子
出版者
日本テレワーク学会
雑誌
日本テレワーク学会誌 (ISSN:13473115)
巻号頁・発行日
vol.10, no.2, pp.16-22, 2012

ワークに対する個人・社会・経営の各方面からの期待が高まっているが、テレワーク要請の本質や、ICTツールによるその要請に応える方法が、必ずしも十分に理解されているとは言えない。テレワークは確かに、女性に対しては大いに役立ってきたが、男性に対しては、一部を除いて未だ普及してはいない。それは、キャリア・ロスなどの問題が挙げられるが、さらに踏み込んでみると、そこにはコミュニケーションの問題があることがわかる。テレワークを取り入れていない企業でも、コミュニケーションの問題は起きており、解決策やコミュニケーションを基礎にした研修などが見られる。ましてや、自分の目の前から人がいなくなり、在宅で、あるいはサテライトオフィスで勤務しているとなると、大きな会議などは出てきてもらっても、それ以外のことはどのように対処すればよいか、わからない場合が多い。本稿では、この上司や同僚との間のコミュニケーションの問題に関したアンケート調査を基に、TCTツールの利用についてその利点を述べている。
著者
田澤 由利
出版者
日本テレワーク学会
雑誌
日本テレワーク学会誌 (ISSN:13473115)
巻号頁・発行日
vol.13, no.2, pp.22-24, 2015-10-01 (Released:2018-06-11)
被引用文献数
1

少子化による労働力不足が現実的になり、働いている人が子育てや介護を担う時代に、ひとりでも多くの人が働くことができ、また個々の状況に応じて働き続けるために、テレワークの必要性がさらに高まっている。そのテレワークをより広げるためには、企業に対し、テレワークが「福利厚生」「人材確保」だけでなく、「生産性の向上」のメリットを明確に打ち出すことに他ならない。そこで本稿では、テレワークを推し進めることが企業の「時間あたりの生産性」向上につながることと、それを実現するための「賃金システム」について解説する。
著者
小森谷 久美
出版者
日本テレワーク学会
雑誌
日本テレワーク学会誌 (ISSN:13473115)
巻号頁・発行日
vol.2, no.1, pp.45-63, 2003

SOHO (Small Office Home office) becomes a hot topic in the mass media etc. and the number of SOHO workers goes on increasing steadily for several years. SOHO workers can do the work at home or wherever, along with the development of improved information technology and the diffusion of network. It is the first step to create an environment to realize the needs of SOHO worker's. But SOHO workers are facing to some problems after they become sole proprietors, such as the problem of raising funds, the heavy tax system, the development of business partners, and the lower social cognition of SOHO workers. In order to solve these problems, several supporting organizations are formed, such as public agencies, private enterprises, non-profit organizations (NPO), SOHO workers network etc. Each sector attempts to support the development of SOHO, which provide hardware and software including office, training programs, and so on. This thesis presents a case study of MITAKA city in Tokyo, which makes local authorities as a policy to support the development of urban industry. This thesis is organized as follows. In chapter 1, the background of building SOHO CITY in MITAKA and the features of supporting system are described. And I take up the survey results that are evaluated by SOHO workers. In chapter 2, the features of the SOHO workers in MITAKA and the problems of SOHO are illustrated. In chapter 3, the actual situation of SOHO workers is expressed by using transaction cost approach. Now, the costs of information searching can be reduced due to the development of information technology. On the other hand, the credit costs are increasing. In order to decrease the credit costs. I insist on making a community. Community builds a future-oriented relationship between person and person. It is possible to solve the problem by making a community. The successful community cases of "RAKUTEN-ICHIBA" and "WASEDA Shopping Association" are also introduced in this section. Finally, chapter 4 concludes the thesis. I compare successful community with SOHO support plan of MITAKA. I make it appear that MITAKA has to establish community next phase, and propose a SOHO community model to support the development of MITAKA.
著者
宮崎 泰夫
出版者
日本テレワーク学会
雑誌
日本テレワーク学会誌 (ISSN:13473115)
巻号頁・発行日
vol.14, no.1, pp.14-17, 2016

2008年5月、リゾートオフィス研究部会が訪問した和歌山県白浜町について、再訪の機会を得た。ほぼ8年後となる2016年1月25日、訪問先は白浜町役場、町営施設である白浜町ITビジネスオフィスに入居するセールスフォースドットコム社、企業保養所を活用し地元でのシステム開発を進めるエスアールアイ社の3ヵ所であり、8年前と同じ場所の訪問となった。この間に、変化したものとそうでないものがあり、二法人は企業としてのIターンとUターンを象徴している。
著者
野口 邦夫
出版者
日本テレワーク学会
雑誌
日本テレワーク学会誌 (ISSN:13473115)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.51-55, 2013

現在およびこれからの日本の雇用型テレワークの労働契約のあり方・考え方を雇用契約の起源の史的考察をもとに考える。グローバリゼーションの進展のなか、日本的雇用慣行は国内外とも通用しなくなる。雇用による仕事の仕方は、日本国内にとどまらず世界規模で考えないといけない。日本の労働法の労働契約は、形式的にはジョブをもとにした契約である。しかし実際の運用は、属する組織とのメンバーシップ契約(身分契約)的となっている。メンバーは長期雇用慣行、年功賃金制度待遇であることから、簡単には解雇されない(解雇権濫用の法理などの判例法理)。ただし、これは正社員のみであり、非正規社員ではジョブ契約の色彩をおびる。日本では非正規雇用の形態で働く人が3割を超えており、従来の正社員基準のメンバーシップ型雇用契約では対応できない。一方日本において、テレワークが普及しない理由としては、労務管理ができないといわれることが多い。これは日本の労働契約はメンバーシップ(その組織に属するメンバーである人事)の管理であり、仕事そのもののジョブの管理ではないからである。以上から、グローバル時代における日本の雇用型テレワークの労働契約は、メンバーシップ型雇用契約からジョブ型雇用契約にワークシフトすべきと提言する。
著者
金丸 利文 齋藤 敦子
出版者
日本テレワーク学会
雑誌
日本テレワーク学会誌 (ISSN:13473115)
巻号頁・発行日
vol.13, no.2, pp.17-21, 2015-10-01 (Released:2018-06-11)

働き方の多様化とフレキシブルワークやテレワークが進む中で、コワーキングスペースやビジネスラウンジ等の新しいワークスペースが台頭しはじめている。2012年渋谷ヒカリエにオープンしたクリエイティブ・ラウンジ・モヴ(MOV)は、個をべースとしたコミュニティ型のワークラウンジであるが、その背景や実態を紹介しながら、共創をベースとした次世代の働き方と場、そしてテレワークとの関わりを考察する。
著者
吉見 憲二
出版者
日本テレワーク学会
雑誌
日本テレワーク学会誌 (ISSN:13473115)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.39-46, 2015-03-31

震災や伝染病の流行の際には、事業継続の手段としてテレワークが注目される。一方で、一旦状況が落ち着いてしまうと、報道は一斉に沈静化し、興味・関心自体が失われてしまう傾向がある。このような一時的な対応が恒常化することは、災害に備えるという観点からは望ましいものではない。そのため、マスメディアを通じたテレワークの社会的関心の維持が必要とされている。本研究では、東日本大震災後の報道についてテキストマイニングを用いて分析し、報道量とその論調の変化について含意を得ることを目的とする。
著者
吉澤 康代
出版者
日本テレワーク学会
雑誌
日本テレワーク学会誌 (ISSN:13473115)
巻号頁・発行日
vol.8, no.2, pp.17-23, 2010-10-01
被引用文献数
1

本稿では、テレワークをBCPとして位置づけている企業として日本ユニシス、日本オラクルに注目し、昨年の新型インフルエンザ対策においてテレワークがどのように活用されたのか、文献調査とヒアリング調査からその実態を明らかにし、今後の課題を整理した。両社とも「同居家族が罹患した場合の対応」「幼児・学童の保育園や学校が休校、閉鎖した場合の対応」としてテレワークを活用していた。これらの事例から、BCPとしてのテレワークには(1)新型インフルエンザなどの感染防止効果、(2)非常時における業務継続の効果、(3)社員、家族、職場、顧客先への安心感、信頼関係などの心理的効果が期待できるといえる。
著者
赤間 健一
出版者
日本テレワーク学会
雑誌
日本テレワーク学会誌 (ISSN:13473115)
巻号頁・発行日
vol.9, no.2, pp.14-17, 2011-10-01

東北沿岸地域に壊滅的な被害を及ぼした東日本大震災は、地震、津波による直接的なものだけでなく、放射能漏えいによる農畜産業への影響、原子力発電所停止による電力供給不足からの全国規模の節電要請、急速な円高による輸出業への経営圧迫、さらには製造拠点の海外移転と、日本国民、日本経済への影響は計り知れないものとなった。ここ十数年で度重なる震災により事業継続計画(BCP:Business Continuity Plan)が着目されており、BCP観点からのテレワーク制度の導入が注視されている。震災発生直後、東日本では電力供給不足による輪番停電が実施され、公共交通機関が混乱し、放射能漏えいによる社会の混乱が発生し、影響は多岐に及んだ。企業は従業員の安全確保、通勤困難者への対応として、自宅待機やテレワークによる在宅での業務従事を余儀なくされた。本震災によりテレワークがワーク・ライフ・バランス、BCPの観点からだけでなく、節電対策としても注目されており、本稿では筆者の震災体験・被災地訪問を通して、テレワークが震災直後にどのように機能したか、また、テレワークへの今後の期待について考えてみたい。