著者
河西 瑛里子
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 日本文化人類学会第43回研究大会 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
pp.128, 2009 (Released:2009-05-28)

英国南西部のグラストンベリーという町は現在、ニューエイジの聖地として、主に欧米諸国の白人の間で知られている。当地では、様々な宗教的実践がみられるが、ヨーロッパ人が主な信者であるスーフィズムのナクシャバンディ教団の活動もその一つである。本発表では、グラストンベリーにおける具体的な活動の実態をフィールドワークに基づいて報告し、この町におけるスーフィズムの位置づけを示す。
著者
熊田 陽子
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 日本文化人類学会第43回研究大会 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
pp.193, 2009 (Released:2009-05-28)

人間は、ある目的を達成するためだけに生きているのではなく、その過程や行為を楽しむ(「遊ぶ」)ものであると考えたホイジンガは、人間を「ホモ・ルーデンス(遊ぶ人)」と呼んだ。様々な性行為も、生殖という目的だけで行われるわけではなく、それ自体の面白さを楽しむ「遊び」である。本発表では、あるSMクラブを事例に、そこで働く女性たちがSMプレイをどのように認識しているのかついて、「遊び」を手がかりに検討する。
著者
ア ラタ
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 日本文化人類学会第43回研究大会 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
pp.97, 2009 (Released:2009-05-28)

本報告では、民族言語を教授言語とし、共通言語の漢語を教科として学習するタイプを選択している内モンゴル自治区におけるバイリンガル教育を切口として、中国内モンゴル自治区の事例を内モンゴル自治区のモンゴル族の視点から、モンゴル族の民族らしさをどう維持してきたかについて考察を加えることを目的とする。それによって、中国の少数民族地域における民族教育のあり方の一端を提示することを試みる。
著者
桑原 牧子
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 日本文化人類学会第43回研究大会 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
pp.82, 2009 (Released:2009-05-28)

タヒチ社会では西欧人接触以前から現在に至るまで、生物学的には男性として生まれたが、家事や子育てなど、女性としての役割を担うマフ(mahu)と呼ばれる性を生きる人々がいる。近年になり、このマフに加えて、女装や化粧をする人々に対してラエラエ(raerae)という呼び名も使われるようになった。本発表では、そのようなマフとラエラエの名称の呼び名の使われ方をタヒチ島とボラボラ島の事例を比較して分析する。
著者
岩谷 彩子
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 日本文化人類学会第43回研究大会 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
pp.46, 2009 (Released:2009-05-28)

占いは、予測不能な人間の生の謎に対して、日常的な秩序を越えた「他なるもの」を設定し、それまで生に与えられていた意味をいったん宙吊りにさせて新たに語りなおす技芸である。そこでは相談者の人生の別の意味が、物品と語りを用いて編みなおされていく。本報告では、インドの占い師と相談者との具体的な交渉の場を事例とし、生の謎解きとしての側面が合理的、あるいは倫理的な次元を超越する点について考察する。
著者
片岡 樹
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 日本文化人類学会第43回研究大会 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
pp.45, 2009 (Released:2009-05-28)

本報告は、フィールドの人々を「合理的精神の持ち主」あるいは「したたかな抵抗者」と祭り上げることからこぼれてくるフィールドのリアリティーをいかにしてすくいあげるかについて、タイ山地民ラフの事例から考察する。そこでは、人間の弱さそのものをいかに主題化しうるかを考察の軸に据える。ここで考えたいのは、非英雄的といってよい人々の行動原則や、「未知なもの」可能性を留保しようとする人々の宗教的・呪術的観念である。
著者
窪田 幸子
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 日本文化人類学会第43回研究大会 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
pp.228, 2009 (Released:2009-05-28)

我々が調査する地域では、多様な工芸/芸術活動が行なわれている。それらがグローバルな動きと連動して変化している場面には多くの研究者が立ち会ってきた。このような動きに注目することは、物質文化の現代的な研究として有用である。この分科会では、多様な地域の調査を背景とする議論を通じ、長くその調査対象としてきた物質文化を、工芸/芸術の視点から、人類学として議論する研究の視座の意味と有用性を検討する。
著者
黒崎 岳大
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 日本文化人類学会第43回研究大会 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
pp.213, 2009 (Released:2009-05-28)

米国信託統治領下のマーシャル諸島では、各地の離島で日本の青年団をモデルとした「クミ」と呼ばれる協働組織が形成された。同組織は、70年代には政治等の分野において強い影響力を見せたものの、90年代以降は急激に消滅していった。本発表では「クミ」という組織を巡る歴史的変遷を通じて、マーシャル人にとっての日本統治時代に対する過度に理想化された憧憬と急激に進む米国化に対する抵抗の関係について検討していく。
著者
飯高 伸五
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 日本文化人類学会第43回研究大会 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
pp.211, 2009 (Released:2009-05-28)

日本統治下南洋群島の「島民」は帝国臣民とは明確に異なる存在と規定され、日本国籍を付与されなかった一方で、公学校における日本語や修身の授業、青年団の組織化などを通じて文化的同化の対象とされた。本分科会では日本統治下で「島民」が文化的同化をいかに受容したのか、戦後のアメリカ統治期から国家形成期にかけて日本統治経験をいかに解釈、再解釈していったのかを検討する。
著者
飯高 伸五
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 日本文化人類学会第43回研究大会 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
pp.214, 2009 (Released:2009-05-28)

日本統治下のパラオでは既存の年齢集団を包摂しつつ、青年団が組織された。男子の青年団は、道路建設をはじめとする勤労奉仕、体育デーなどの文化イベントへの参加を求められた。当時の勤労奉仕や体育デーを歌った歌からは、パラオの人々が、統治政策の一環として組織された青年団の活動を、植民地統治以前に行われていた村落間の交流活動など、年齢集団の活動と連続するものとして解釈したことが読み取れる。
著者
東 賢太朗
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 日本文化人類学会第43回研究大会 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
pp.43, 2009 (Released:2009-05-28)

本分科会では、人類学(者)がフィールドで出会う謎と秘密、不思議と驚き、すなわち「ミステリー」の魅力と可能性について議論を展開する。具体的には、人類学とフィクション(ミステリー、ファンタジー、SF)との関係、フィールドワークのプロセスにおけるフィクションとリアリティ、そして調査対象自体に内在するミステリーといった問題系に着目する。
著者
東 賢太朗
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 日本文化人類学会第43回研究大会 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
pp.44, 2009 (Released:2009-05-28)

人類学のフィールドにおいて、「わかる」ための努力がなされる一方で、「わからない」ことが必ず残されていく。そのような解き明かされない「謎」の持つリアリティについて、本発表では考察する。フィクションの諸ジャンルでは、非現実や非日常の要素がリアリティの表現として効果的に用いられるのに対し、人類学には民族誌のもつ虚構性に対する批判が向けられる。両ジャンルの並置と比較から議論を展開したい。
著者
出口 雅敏
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 日本文化人類学会第43回研究大会 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
pp.159, 2009 (Released:2009-05-28)

サウンドデモは政治的表現を祝祭的次元において発信することで、一定の成功を収めてきた。だが近年は、警察や機動隊の過剰警備に包囲されがちである。こうした状況において、直接行動の現場を支配する「戦闘機約」に働きかけ、それを覆すような祝祭的戦術の駆使もみとめられ始めた。本発表では、サウンドデモの祝祭的次元についての検討を通じて、現代社会における示威行動の文化とその表現型式の特質について考察する。