著者
倉智 博久
出版者
日本産科婦人科学会
雑誌
日本産科婦人科學會雜誌 (ISSN:03009165)
巻号頁・発行日
vol.62, no.4, pp."N-31"-"N-33", 2010-04-01
著者
森川 重敏 石川 順子 釜付 弘志 新里 康尚 渡辺 朝香 石川 洋 千原 啓 永田 哲朗 米谷 国男
出版者
日本産科婦人科学会
雑誌
日本産科婦人科學會雜誌
巻号頁・発行日
vol.42, no.11, pp.1495-1502, 1990

当科で行っている塩酸 Bupivacaine を用いた持続硬膜外麻酔 (以下硬麻) による無痛分娩の安全性の確立を目的として, 硬麻下に生まれた新生児の神経行動および長期予後として, 乳児の精神発達について比較検討した. 合併症のない満期産頭位経腔分娩例中, 無作為に抽出した硬麻群72例 (吸引分娩 (以下VE) 33例, 非吸引分娩 (以下NSD) 39例), 同様に対照群として非硬麻群28例 (VE 13例, NSD 15例) について, 1) 局麻薬 Bupivacaine 濃度と Neurological and Adaptive Capacity Score (NACS) (Amiel-Tison et al.) を用いた新生児の神経行動との相関, 2) 新生児における NACS と総哺乳量および新生児体重減少との関連, 3) 長期予後として, 津守・稲毛による乳幼児精神発達質問紙を用いた乳児の精神発達について比較検討し, 以下の結果を得た. 1) 局麻薬 Bupivacaine の母体静脈血, 臍帯静脈血, 臍帯動脈血中濃度は, すべて Bupivacaine 総投与量と相関していた. そして, 新生児の神経行動 (NACS) は, Bupivacaine 総投与量が多いほど, 不良であることが判明した. 2) 硬麻下に生まれた新生児の1時間以内の NACS は, 分娩様式の別なく不良であり, この抑制傾向は, 生後3日目まで残っていた. 3) Bupivacaine 総投与量と分娩所要時間は相関していた (r=0.85). また, 分娩所要時間が200分以上の群は200分未満の群に比較して, 新生児の1時間以内の NACS は, 硬麻の有無, 分娩様式にかかわらず, 抑制傾向がみられた. 4) 新生児の総哺乳量は, 硬麻群において, 生後2日目まで抑制傾向がみられたが, 生理的体重減少では差はみられなかった. 5) 長期予後としての乳児の精神発達は, 生後11ヵ月, 3ヵ月, 6ヵ月時, 硬麻群, 非硬麻群間に有意差を認めず, 児の精神発達は良好であった. 以上, 硬麻は安全性の高い, ほぼ理想的な無痛分娩法といわれているが, 新生児の神経行動から短期予後について検討すると, まだ改善すべき点があると思われる. しかしながら, 児の長期予後としての精神発達は問題ないと考えられる.
著者
伊熊 健一郎 須野 成夫 長谷川 昭子 香山 浩二 礒島 晋三
出版者
日本産科婦人科学会
雑誌
日本産科婦人科學會雜誌
巻号頁・発行日
vol.41, no.2, pp.167-172, 1989

頚管粘液のヒト精子受精能に及ぼす影響について, 透明帯除去ハムスター卵を用いたin vitro受精系で精子の頚管粘液内通過の意義を検討した。方法は, 精液滴と培養液滴との間に頚管粘液を充填した毛細管を連結し, 移行精子が目的濃度に達すると毛細管をはずし, 培養液滴内に透明帯除去ハムスター卵を加えて培養を行った。対照としては, 培養液で3回洗浄した精子を頚管粘液内通過精子と同濃度に調整して, 同条件下で比較検討をした。1. 頚管粘液内を通過し培養液滴に移行する精子の数は2~3時間でピークに達し, 運動率は100%であった。2. 頚管粘液内通過精子は対照群と同程度の受精率を示し, 精子濃度は対照と同様に0.6×10^6/ml以上必要であった。3. 頚管粘液内通過精子はすでに4~6時間で17~42%の受精率を示したが, 対照では6時間後までは0%で8時間後に受精を開始した。4. 培養液中に精漿成分が加わると受精率は低下した。5. 鶏卵白内通過精子は, 頚管粘液内通過精子とほぼ同率の55%の受精率を示したが, 培養液内通過精子は0%であった。これらの結果より, 精子の頚管粘液内通過の意義としては, 受精能をマスクしている精漿成分から精子を隔離し, 精子の受精能獲得時間を短縮すると共に, 運動精子の選択と精子輸送の調節にも関与しているものと考えられる