著者
〓 徳泉 増田 拓朗 守屋 均
出版者
日本緑化工学会
雑誌
日本緑化工学会誌 (ISSN:09167439)
巻号頁・発行日
vol.26, no.4, pp.300-308, 2001-05-31
被引用文献数
2 2

西南日本において緑化樹としてよく用いられている常緑広葉樹3種(クスノキ, マテバシイ, アラカシ)の2年生ポット苗を用いて, 1996年の夏季と秋季に灌水停止実験を行い, 水ストレスが各樹種の光合成および蒸散活動に及ぼす影響を調べた。いずれの場合にも, 土壌乾燥に伴って葉内水分張力が低下したが, その低下の程度は樹種および季節によって異なった。実験に用いた3樹種の中では, マテバシイの葉内水分張力の低下が著しく, アラカシの葉内水分張力の低下が最も緩やかであった。マテバシイが土壌乾燥に対する抵抗が弱く, アラカシが強いという結果は, 既往の研究結果や筆者らの実際の緑地における経験と一致する。葉内水分張力と日光合成量, 葉内水分張力と日蒸散量の間にはともに密接な関係が認められ, 水利用効率は樹種, 季節に関わらず葉内水分張力-0.6〜-1.0MPa(pF3.8〜4.0に相当)付近で0になった。すなわち, 今回実験に用いた3樹種の水ストレスに対する耐性の違いは, 葉自体の水分生理的な能力の違いというよりも, 根の水分吸収能力および樹体の水分保持能力の違いによるところが大きいと考えられる。
著者
阿部 信之 橋本 良二
出版者
日本緑化工学会
雑誌
日本緑化工学会誌 (ISSN:09167439)
巻号頁・発行日
vol.30, no.4, pp.632-638, 2005-05-31
被引用文献数
2 3

上層木を強くすかした林地にコナラ果実を播き付け, 落葉被覆が実生の発生と成長に及ぼす影響を調べた。また, 圃場で, 落葉被覆が地表下3cmの土壌の温度とpF値に及ぼす影響を調べた。落葉被覆の影響は, 土壌のpF値に対して顕著であった。被覆量200gm^<-2>以下では土壌乾燥は急速に進んだ。一方, 400gm^<-2>以上では土壌乾燥は大きく抑制された。実生の発生率は, 被覆量90gm^<-2>では5%であったが, 被覆量180gm^<-2>および360gm^<-2>ではともに40%を示した。1成長期を経た実生重は, 被覆量によって異なり, 360gm^<-2>では180gm^<-2>に比べ20%近く大きかった。実生重については, 果実重や実生発生時期のほかに, シュート伸長様式が関与しており, 落葉被覆は実生発生時期と二次伸長の促進にかかわっていた。厚い落葉被覆は, 実生発生時期を遅らせるが, 二次伸長を促進した。厚い落葉被覆がもたらす土壌の湿潤性が, 二次伸長の促進を通して, 実生の成長量を増加させると考えた。
著者
阿部 信之 橋本 良二
出版者
日本緑化工学会
雑誌
日本緑化工学会誌 (ISSN:09167439)
巻号頁・発行日
vol.33, no.3, pp.484-491, 2008-02-29

播種時におけるコナラ種子の乾燥が,芽生えの発達経過や成長量にどのように影響するかを調べた。播種から出芽までの期間は,無乾燥に比べ弱度の乾燥でむしろ短くなり,さらに乾燥日数が増すと長くなった。播種から出芽までの期間の長い芽生えでは上胚軸伸長期間や展葉期間は短くなった。しかし,播種から展葉終了までの全期間は,播種から出芽までの期間に依存していた。種子乾燥にともなう播種から出芽までの期間の増大は,種子の脱水率の増大で説明されなかった。種子乾燥がもたらす芽生えの成長量の低下については,播種から出芽までの期間の長期化と脱水率の増大がそれぞれ関係していた。乾燥にともなう不出芽種子の出現状況を考えあわせ,播種に際しては,乾燥日数で5日間,脱水率では10%に至らない取り扱いが,一応の目安になると判断した。
著者
角田 真一 佐藤 裕隆 加藤 和生 野中 晃 大平 政喜 笹本 和好 上田 純郎
出版者
日本緑化工学会
雑誌
日本緑化工学会誌 (ISSN:09167439)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.168-171, 2001-08
被引用文献数
3 1

浄水ケーキを主な原料とした土壌改良資材を作成し, 砂質土壌の物理・化学性, および緑化用植物の生育に及ぼす影響について調査した。浄水ケーキを主原料とした改良資材の砂質土壌に対する施用は, 従来より改良材として使用されている赤土+バーク堆肥と比べ, 難効性有効水分量, 液相率を高める傾向があり, また, 化学性に対しては肥料添加により無機成分含有量および, 肥料の保持機能を高める効果が認められた。茨城県波崎町の砂質土壌地帯において, 数種類の緑化用植物を植栽し, 試作した改良資材の施用効果について調査した。その結果, 試作した改良資材の施用は, 従来の改良材に比べ供試したほとんどの植物種の生育を高めた。また, 処理から約2年経過後, 従来の改良材に比べ肥料が充分に保持されていることから, 生育増進の主な原因が土壌の化学性の改善によるものと考察した。
著者
鈴木 弘孝 小島 隆矢 嶋田 俊平 野島 義照 田代 順孝
出版者
日本緑化工学会
雑誌
日本緑化工学会誌 (ISSN:09167439)
巻号頁・発行日
vol.31, no.2, pp.247-259, 2005-11-30
被引用文献数
7 9

本研究は, 近年ヒートアイランド対策や地球温暖化防止対策への対応等環境負荷の少ない都市環境を形成していくための有力な手法として着目されている壁面緑化について, 現在屋上の緑化や開発利用に取り組んでいる企業とその技術担当者へのアンケート調査結果に基づき, 壁面緑化の市場性, 普及の可能性等について民間企業と技術担当者の意識を把握し, 技術的課題への認識を整理することにより, 今後都市部において壁面緑化を推進していく上での技術開発の方向, 研究開発分野において重点的に取り組むべき対象と範囲を検討するための基礎的資料を得ることを目的としている。調査の結果, 民間企業等の意識として壁面緑化の今後の市場性拡大への期待が高いこと, 技術担当者の意識として壁面緑化に関する技術開発を推進していく上で, 緑化による温熱環境改善効果の定量化, 建設コストの縮減, 維持管理の簡素・効率化等を課題と認識していること, また壁面緑化の6種類のタイプについて対応分析を行った結果, 適用場所や普及可能性に認識の差異のあることが明らかとなった。