著者
阿部 和時 黒川 潮 浅野 志穂 岡本 隆 松山 康治 落合 博貴 寺嶋 智巳 島田 和則 野口 宏典 大丸 裕武 宮縁 育夫 小川 泰浩
出版者
日本緑化工学会
雑誌
日本緑化工学会誌 (ISSN:09167439)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.91-96, 2002-08-31
被引用文献数
6 4

2000年6月から始まった三宅島の火山活動による多量の降灰で雄山山腹の植生は壊滅的被害を受けた。この影響で泥流災害が島全域で発生し,現在も危険性は非常に高い状態にあると考えられる。本研究では,このような火山降灰地帯が形成された直後の激しい土壌侵食の実態を実証的に明らかにすることを目的とした土壌侵食の発生状況は降灰による森林被害の程度と相関性があると推察されるので,空中写真による森林被害区分を行い,それぞれの区分において現地水路侵食実験で侵食特性を検討した。その結果,降灰が堆積し形成された地表面は流速が20〜35cm/secと早く,浸透性が低いこと,しかし流出土砂量は降灰層中に枝葉が混入した地区よりも少ないこと等が示された。このデータをもとに汎用土壌侵食式(USLE)によって相対的な面状侵食の危険度を,火口を中心とした14.5km^2の範囲について示した。
著者
後藤 浩一 工藤 勝弘 奥村 誠崇
出版者
日本緑化工学会
雑誌
日本緑化工学会誌 (ISSN:09167439)
巻号頁・発行日
vol.28, no.2, pp.358-362, 2002-11-30
被引用文献数
1 1

自然の復元を目指した緑化対策の現状を把握するために,近年竣工した3箇所のダム原石山跡地で植生調査等を実施した。その結果,厚層基材吹付工を実施した箇所では実施しなかった箇所より在来種の進入種数が少なかった。また,厚層基材吹付工に在来木本種子を混ぜて播種した箇所で播種した在来木本の植被率は,草本種子量を減じた箇所の方が高かった。小段部の植裁工については,成長した植栽木からの種子の散布による周辺のり面への定着を図ることを主眼として,厳しい立地環境である原石山跡地においても定着が可能なアカマツなどの先駆性の木本を中心に樹種を選定することが望ましいと考えられた。
著者
大貫 真樹子 谷口 伸二 小畑 秀弘
出版者
日本緑化工学会
雑誌
日本緑化工学会誌 (ISSN:09167439)
巻号頁・発行日
vol.30, no.3, pp.586-588, 2005-02-28
被引用文献数
8 9

景勝天橋立近くの森林内で採取した表土シードバンクを植生基材の中に体積比10%混入して吹付けた切土のり面の施工後2年3カ月には, ヌルデ, カラスザンショウを主とする多様な種による低木類が成立した。その林床にはアカマツ, ウリカエデ, リョウブなど風散布型の木本種と鳥散布によって侵入したと思われるヒサカキ, ソヨゴが生育していることが確認された。これらの種類は, のり面上部の森林の植生相を形成する種の一部であり, こののり面は早期に周囲と近似した植生へ遷移することが示唆された。
著者
高木 康平 日置 佳之
出版者
日本緑化工学会
雑誌
日本緑化工学会誌 (ISSN:09167439)
巻号頁・発行日
vol.33, no.4, pp.571-579, 2007 (Released:2008-12-05)
参考文献数
22
被引用文献数
3 3

侵略的外来種は生物多様性の保全にとって最大の脅威の一つとされている。その影響を軽減することを目指して,2005 年に外来生物法が施行された。イタチハギ (Amorpha fruticosa L.) は法面緑化に使用される北米原産の木本植物である。しかし,イタチハギは本来の分布域ではないアメリカ西部などにおいて在来植物への被害が報告されているにもかかわらず,法面緑化樹として有用なため,同法による特定外来生物の指定を受けていない。そこで本研究ではイタチハギの侵略性を評価するために,鳥取県旧八頭郡において法面とその周辺での生育状況及び八東川河川敷での逸出状況の調査を行い,2 つの外来種評価モデルを用いて侵略性の評価を行った。その結果,1) イタチハギは法面で25 年以上生存し続けること,2) 法面周辺に逸出していること,3) 河川敷で定着しており河川内で二次散布している可能性が高いこと,が明らかになった。また,2 つの外来種評価モデルをイタチハギに適用したところ,侵略性が高いことが示唆された。
著者
木下 尚子 嶋 一徹 廣野 正樹
出版者
日本緑化工学会
雑誌
日本緑化工学会誌 (ISSN:09167439)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.336-339, 2004 (Released:2005-11-22)
参考文献数
6
被引用文献数
2 1

瀬戸内沿岸の山火事跡地斜面に分布する先駆木本類6樹種について埋土深と土壌加熱が種子発芽に及ぼす影響を調査した。その結果,山火事により土壌表層では短時間高温に晒されるが,深さ4 cm程度の土壌では50 ℃以下の温度が長時間継続することが判明し,この深さに埋土されたアカメガシワ,クサギは加熱で発芽促進が認められた。これに対してアカマツは埋土すると発芽できず,耐熱性が低いため火事後の種子供給が必須なことが明らかになった。
著者
吉永 知恵美 亀山 章
出版者
日本緑化工学会
雑誌
日本緑化工学会誌 (ISSN:09167439)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.44-49, 2001-08
被引用文献数
11 10

近年, 都市において分布拡大しているトウネズミモチ(Ligustrum lucidum)について, 東京都内を中心に分布の実態調査を行い, 分布拡大の要因になると考えられる種の生活史の調査を行った。分布の実態調査では, トウネズミモチは1960年代から都市部の都市公園を中心として大量に植栽され, さらに都市近郊でも植栽されたことと, 1970年代以降, 実生による繁殖が著しくなり, 都市部から都市近郊の各地で分布拡大したことが明らかにされた。生活史の調査では, トウネズミモチの生活史の特性が, 都市環境に適応しやすいものであることが明らかにされた。以上のことから, トウネズミモチが都市において著しく分布を拡大させた主要な要因は, 種の生活史が都市環境に対して適応しやすいものであることと, そのような適応しやすい種であるトウネズミモチを東京都内に大量に植栽したことであると考察された。
著者
米村 惣太郎 井原 寛人
出版者
日本緑化工学会
雑誌
日本緑化工学会誌 (ISSN:09167439)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.45-50, 2008-08-31
被引用文献数
2

調整池の水辺に植生基盤を造成し,タコノアシを導入した。管理作業として,初期3年間は競合種と考えられた草本の選択的除草,5年目から8年目まで春先に全面的刈取りと除去を行ったが,9年目以降は管理作業を実施しなかった。その結果,タコノアシは3年目以降減少し,9年目にはほとんどの区画で生育がみられなくなった。これに対し,新たに実験区を植栽基盤に追加し,春先のリターの除去と初夏に他の植物種の刈取りを行った結果,タコノアシの増加がみられた。タコノアシを継続的に生育させるためには,出芽をしやすくし,成長期に被圧を受けなくすることが重要と考えられた。植栽基盤にはタコノアシの種子が残存しており,土壌を耕転してタコノアシを生育させることができた。またタコノアシの種子は水中でも発芽可能だが成長はできなかった。
著者
渡邊 郁夫 井汲 芳夫 大塚 紘雄
出版者
日本緑化工学会
雑誌
日本緑化工学会誌 (ISSN:09167439)
巻号頁・発行日
vol.28, no.2, pp.363-368, 2002-11-30
被引用文献数
1 1

産業廃棄物としての石炭灰を,未利用資源の有効活用の観点から,農業,緑化分野へ利用することを目的として,クリンカアッシュ(以下Cアッシュ)を用いた樹木による播種試験および苗木植栽試験を行った。樹木は,マテバシイ,アラカシ,ウバメガシ,シャリンバイ,トベラの5種,試験に供した用土は,対照区(赤玉土50%+ピートモス50%),試験区-1(Cアッシュ50%+ピートモス50%),試験区-2(Cアッシュ50%+赤玉土20%+ピートモス30%)の3区分である。播種試験では,樹種間にはバラツキが見られるものの,試験区-1<対照区<試験区-2の順に発芽率が高く,用土のpHの影響が考えられた。苗木植栽試験は,試験区間の成長率から,対照区<試験区-2<試験区-1の順に好生育を示し,特にD^2Lにおいてその傾向が強く現れた。また,Cアッシュ添加区では葉色の良化が認められ,微量要素の効果が示唆された。しかし,発芽に及ぼすpHの影響,一部のアラカシの葉に見られたホウ素過剰障害,土壌へのホウ素溶出の問題もあり,利用に際し,配合・施用量,化学組成および土壌中でのその動向について,更なる検討が必要である。
著者
藤田 洋輔 森本 幸裕
出版者
日本緑化工学会
雑誌
日本緑化工学会誌 (ISSN:09167439)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.266-269, 2007-08-31

環境アセスにおけるミティゲーション(自然環境保全措置)において,総量としての自然環境の水準を維持することを目的とした,代償ミティゲーションの制度であるミティゲーション・バンキングは,軽微な自然環境のロスの集積を代償し,開発圧力を利用して戦略的な生態系の保全を目指す社会システムのひとつとしてアメリカで長年の実績があるが,日本では導入が進んでいない。日本ではこの制度について賛否両論があることから,実態を調べるため, 2つのミティゲーション・バンクのケース・スタディを行った。その結果,二次的自然のミティゲーション・バンクや,絶滅危惧種を対象としたコンサベーション・バンク,クレジット計算方法の実態などが明らかとなり,日本においても里地里山の保全など,維持管理を必要とする自然環境の保全にも応用できることを指摘した。
著者
小林 達明
出版者
日本緑化工学会
雑誌
日本緑化工学会誌 (ISSN:09167439)
巻号頁・発行日
vol.30, no.2, pp.396-398, 2004 (Released:2005-11-22)
被引用文献数
5 3
著者
西村 尚之 白石 高子 山本 進一 千葉 喬三
出版者
日本緑化工学会
雑誌
日本緑化工学会誌 (ISSN:09167439)
巻号頁・発行日
vol.16, no.4, pp.31-36, 1991-07-25
被引用文献数
3 2

下層にヒサカキ等の常緑広葉樹が優占する成熟したコナラ林内に, 低木層を除去した区(L区)と低木層及びリター層を除去した区(C区)の地床処理区と無処理区(N区)を設け, コナラ実生の発生, 生残を3年間定期的に調査した。林床の相対照度はどの時期も地床処理区で高かった。実生の発生数はC区で最も多かった。無処理区での実生の発生は地床処理区に比べ約1カ月遅かった。どの区も早く発生した実生の初期死亡率は低く, 地床処理区では最終調査時のその生残率は遅く発生した実生に比べ高かった。発生当年の実生の生残率は無処理区で有意に低く, 翌年の生残率はL区, C区, N区の順で高かった。無処理区では発生後3年間ですべての実生が死亡した。分枝した実生の出現率は地床処理区で高く, 分枝個体の生残率は未分枝個体に比べ有意に高かった。本林分では自然状態の地床でのコナラ実生の定着はきわめて困難であるが, 低木除去の処理によりコナラ実生の生残に有利な環境が形成されることがわかった。
著者
サロインソン ファビオラ ベイビ 坂本 圭児 三木 直子 吉川 賢
出版者
日本緑化工学会
雑誌
日本緑化工学会誌 (ISSN:09167439)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.15-20, 2006-08-31
参考文献数
15
被引用文献数
1 9

拡大しつつあるハチク林の動態を明らかにするため,落葉広葉樹二次林に隣接するハチク林で稈のセンサス調査を12年間継続した。落葉広葉樹二次林と接する部分では,稈の葉群が林冠木の樹冠より高い場合や樹冠と接する場合があり,ハチク林の拡大を可能としていると考えられる。ハチク林では,落葉広葉樹二次林へ稈を侵入させることによって,林分の稈密度と地上部バイオマスが増加し,最前線の稈の位置は落葉広葉樹二次林の方向へ12年間で7m距離を伸ばした。侵入している稈のサイズは,竹林内部の稈のサイズと異なっていなかった。一方,ハチク林拡大の過程で,ハチクによる被圧のため下層木の枯死が著しかった。
著者
戸田 浩人 花岡 功大 江原 三恵 佐々木 龍一 生原 喜久雄 亀谷 行雄 崔 東寿
出版者
日本緑化工学会
雑誌
日本緑化工学会誌 (ISSN:09167439)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.21-26, 2008-08-31
被引用文献数
3 2

2000年の噴火で森林植生に著しい被害のあった地域に,8箇所の植生調査区と3箇所の植栽試験地を設け,2003-2006年の植生変化と植栽木の成長を調査し,土壌の理化学性の影響について考察した。多量の火山灰が固結した地域では,地表面の火山灰にはN供給力がなく貧栄養であり,草本の侵入が抑制されるため,根粒菌と共生するオオバヤシャブシの成長が旺盛であった。火山灰に厚く覆われた鉱物土壌は,N供給力が高く保たれ,今後の緑化基盤として重要である。火山灰の薄い地域では,鉱物土壌が酸性化し,火山灰層・鉱物土壌層ともにN供給力が低く,ハチジョウススキやユノミネシダが繁茂したため,木本の侵入が遅れていた。
著者
吉田 寛
出版者
日本緑化工学会
雑誌
日本緑化工学会誌 (ISSN:09167439)
巻号頁・発行日
vol.29, no.2, pp.331-342, 2003-11-30
被引用文献数
15 17

本四連絡橋尾道〜今治ルート(西瀬戸自動車道)の伯方島で1975年に行われた植生基材吹付工の試験施工地において,客土種子吹付工により導入されたヤマハギ(Lespedeza bicolorvar.japonica Nakai)群落とイタチハギ(Amorpha fruticosa L.)群落についてこれまでの調査記録を整理し,施工25年後の植生調査を行った。その結果,客土種子吹付工で導入されたマメ科低木群落は,施工後約17年以降に自然侵入した木本植物の成長が進むことが確かめられ,イタチハギ群落やヤマハギ群落は,施工後25年間という長期スパンで観察すると,主に鳥散布や小動物の貯食によると思われる木本植物の自然侵入には有効に働いていると考えられた。また,客土種子吹付工と同時期に同じ法面に施工した厚層基材吹付工の24年後の調査結果をもとに比較すると,客土種子吹付工は導入したイタチハギ群落の持続性が厚層基材吹付工よりも低く,先駆性の落葉広葉樹やアカマツ(Pinus densiflora Sieb. et Zucc.)の自然侵入が早くからみられるのに対し,厚層基材吹付工は生育基盤の土壌化学牲などの違いからイタチハギ群落の持続性が高く,自然侵入種には先駆性の落葉広葉樹が少なく,常緑広葉樹のネズミモチ(Ligustrum japonicum Tunb.)とウバメガシ(Quercus phyllyraeoides A. Gray)が多くなることが確かめられた。マメ科低木群落を造成した場合の植生遷移は,主に先駆性の木本植物の自然侵入には導入群落の持続性が高い厚層基材吹付工より客土種子吹付工の方が有効と思われる。しかし,厚層基材吹付工を適用する場合において,導入種の高い持続性から得られる動物散布種の自然侵入促進効果を発揮させるために,マメ科低木類の発生期待本数を大幅に減量することにより,これらが単層で高密度に形成するのを回避したり,施工後早期に客土種子吹付工の施工後25年後にみられたような,先駆性落葉広葉樹と常緑広葉樹が混生した比較的疎な状態の多層の群落を形成することにより,客土種子吹付工が有する導入植生の早期衰退という法面防災上のリスクを伴うことなく,植生遷移をさらに早めることが可能ではないかと考えられた。
著者
額尓 徳尼 堀田 紀文 鈴木 雅一
出版者
日本緑化工学会
雑誌
日本緑化工学会誌 (ISSN:09167439)
巻号頁・発行日
vol.35, no.2, pp.338-350, 2009 (Released:2010-07-27)
参考文献数
54
被引用文献数
2 1

内蒙古自治区全域における砂漠化と緑化事業がもたらした植生変化の実態を把握するために,NOAA/AVHRR の衛星リモートセンシングデータから求めたNDVI(正規化植生指数)を用いた検討を行った。まず,文献から植生変化の実態が明らかな地域において,NDVI の変化と植生変化について比較し,1982~1999 年までの約18 年間における植生の変動を調べた。植生変化が少ない地域でのNDVI の変動から,植生増減を判断するNDVI 変化の閾値を検討し,1982~1986 年と1995~1999 年の夏季NDVI の差を ΔNDVI とし,植生の増減を8km 分解能のピクセル毎に求めた。そして,ΔNDVI により植生が変化した地域を抽出して図化した。その結果,内蒙古自治区全体としては,NDVI が増加した地域の割合が減少した地域の割合を大きく上回り,植生増加の傾向が示された。赤峰市(特に敖漢旗)の植生増加が顕著であり,次いでシリンゴル盟,フフホト市,バヤンヌール市の一部にまとまったNDVI 増加が示され,内蒙古全域においてNDVI が増加した面積が約20 万km2 程度見られた。北半球の高緯度地域では温暖化によるNDVI の増加が報告されているが,行政区毎に求めたNDVI が増加した地域の面積と,統計資料に基づいて集計した造林面積と耕地化された面積の合計に良好な比例関係が見られ,内蒙古自治区における夏季のNDVI 増加は主に緑化と農耕地の拡大という人為的な要因による植生増加である。一方で,NDVI 減少が抽出された内蒙古自治区西部(アラシャ盟),東北ホルチン砂地周辺などでは,もともと植生が乏しい地域であり,これらの地域では砂漠化による植生減少が指摘された。
著者
小野 芳 柳 雅之 工藤 善 手代木 純 輿水 肇
出版者
日本緑化工学会
雑誌
日本緑化工学会誌 (ISSN:09167439)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.74-79, 2006-08-31
被引用文献数
7 9

本研究では,屋上緑化の熱環境への負荷低減効果を定量的に算定するための基礎データとして,屋上緑化の蒸発散量の測定を行った。使用した土壌は黒土とパーライト系の人工軽量土,土壌厚は7cm,14cm,21cmの3種類であり,各土壌厚につき裸地と3種の植物の計4試験区を設け,夏・秋・冬・春の4シーズンの蒸発散量を小型ライシメータの重量減少によって測定した。その結果,黒土区で人工軽量土区より植物生育が悪いものが多く,蒸発散量が抑えられ,黒土区のペチュニアの8月の蒸発散量は裸地より少なかった。各土壌厚の中で8月の蒸発散量が最大だったものは,人工軽量土区のローズマリー(Rosmarinus officinalis L.)が7.2kg/m^2/day,人工軽量土区のバーベナ(Verbena.×hybrids)が12kg/m^2/day,黒土区のオオムラサキツツジ(Rhododendron pulchrum Sweet cv. Oomurasaki)が14kg/m^2/dayであった。
著者
湖東 朗 大沼 洋康 角張 嘉孝 Suhail A.ITANI HAFFAR Imad
出版者
日本緑化工学会
雑誌
日本緑化工学会誌 (ISSN:09167439)
巻号頁・発行日
vol.15, no.4, pp.12-19, 1990-07-20

アラブ首長国連邦(UAE)は極乾燥地に属し, 年平均雨量は100mm以下でしかも年変動がかなり大きい。したがって, UAEの農業は井戸水などによる灌がいに依存しているが, 無計画な農業開発は貴重な水資源の枯渇を招くおそれもあり, 潅がい水の有効利用のためには圃場に於ける水収支の研究が非常に重要である。本研究は(1)灌がい頻度がアルファルファの蒸散速度や葉温の日変化及び季節変化に及ぼす影響, (2)これらの因子がアルファルファの生長に及ぼす影響, 及び(3)気象因子がアルファルファの蒸散速度に及ぼす影響などを検討するために行った。ポロメータを用いてアルファルファの蒸散速度及び葉温の日変化及び季節変化を1988年4月, 8月, 11月及び1989年1月に測定した。毎日灌水する高頻度潅がい(F)区及び2日に1日灌水する対照(N)区の2つの区を設定した。灌水頻度が蒸散速度及び葉温に及ぼす影響は11月や1月の比較的寒い時期よりも, 4月や8月の暑い時期の方が大きかった。F区とN区の差は, N区の灌がいをしない日に大きく, 4月と8月におけるN区の蒸散速度はF区のそれよりも小さかった。葉温はN区よりもF区の方が低く, 両区の最大葉温差は4月及び8月にそれぞれ4℃及び6℃であった。アルファルファの草丈及び乾物収量は, 両区における蒸散速度や葉温の違いを反映してF区のほうがN区よりともに10%ずつ高かった。灌がいしない日におけるN区の推定蒸散量(TRn)はF区のそれ(TRf)よりも少なく, TRnとTRfの比は4月, 8月, 11月及び1月についてそれぞれ77%, 72%, 70%及び92%であった。F区の測定データを用いて蒸散速度と光量子量(QU), 飽差(VPD), 相対湿度(RH), 葉温(LT), ポロメータチェンバー温度(CT)との相関を調べた結果, QUとの相関が最も高いことがわかった。また, 光強度を変えて蒸散速度を測定した別の実験でも両因子間に高い相関関係がみられた。さらに, 重回帰分析により上記因子による蒸散速度の予測モデルを検討した。各月のデータについては, かなり高い相関が認められたが, それぞれの回帰係数については季節により違いがみられた。