- 著者
-
加藤 和生
丸野 俊一
- 出版者
- 九州大学
- 雑誌
- 基盤研究(C)
- 巻号頁・発行日
- 1999
2年間の研究を通して,次のような実績を得た:1.甘えタイプの理論化と尺度構成Kato(1995)の甘え過程モデルを展開しながら,甘えタイプのモデルを提案した.理論では,自己観と他者観のポジティブ・ネガティブの組み合わせにより,4つのタイプを区別した:甘え上手タイプ(A),甘え難いタイプ(B),気兼ねする甘え屋タイプ(C),混乱型甘え屋(D).これらのタイプを測定するために,甘えタイプ尺度を構成した.次に,自己観・他者観の測度の得点の違いから,理論的妥当性を検討した.2.甘えタイプによる甘え行動・交流での態度,認知過程,感情の違いの検討Kato(1995)の甘え過程モデルにもとづき,甘え態度,認知過程,情動体験を測定するための尺度を構成し,理論化した4つの甘えタイプによって甘え行動・交流の間で甘え態度,認知過程,情動体験にどのような違いがあるかを検討した.AタイプとBタイプは,多くの要因得点で対局をなしていた.C・Dタイプは,その中間に来ることがおおく,それらのタイプに特徴的な幾つかの要因得点では,独特の反応を示していた.3.甘え・甘えさせの素朴概念の分析従来の甘え研究者は限られた観察から甘え行動の一側面について議論することがおおく,甘え・甘えさせが実際にどういう行動や心理的過程を含んでいるかを分析していない.そこでそれらの素朴概念(自由記述)の内容分析をすることにより,一般の人が甘えや甘えさせることをどのように理解しているかを質的に分析した.4.大学生の愛着行動の質的分析甘えの研究意義を明らかにするために,類似概念と思われている愛着行動の分析を通して,逆に甘えの特徴を明らかにすることを試みた.そのために,Kato(1995)の甘え過程モデルの枠組みを用いながら,愛着行動の内容,動機,状況,および対象を自由記述の質的分析をとおして解明を試みた.