著者
崔 東寿 戸田 浩人 李 忠和
出版者
日本緑化工学会
雑誌
日本緑化工学会誌 (ISSN:09167439)
巻号頁・発行日
vol.36, no.3, pp.416-422, 2010 (Released:2011-09-27)
参考文献数
37

土壌酸性化により衰退現象が確認された韓国の安山工業団地内の森林土壌に石灰を添加し(0,2.0,3.0,4.0 ton/ha),森林土壌とチョウセンゴヨウの成長及び生理反応に及ぼす影響を調査した。石灰添加3 年後,石灰添加量の増加と共に土壌pH は4.0 から4.9 付近まで有意に増加し,土壌呼吸量も有意に増加した(p<0.05)。土壌に添加した石灰量の増加と共に針葉中のリン濃度とクロロフィル(a+b)の含有量が有意に増加し,チョウセンゴヨウの光飽和時とCO2 飽和時の光合成速度が高くなった。さらに,チョウセンゴヨウの成長パラメータである,3 年生針葉の残存率と3 年生シュートの長さと根元直径は土壌に添加した石灰量の増加と共に有意な増加が認められた(p<0.05)。チョウセンゴヨウの根と共生する外生菌根菌の感染率は土壌に添加した石灰量の増加と共に低下した。
著者
今西 亜友美 柴田 昌三 今西 純一 寺井 厚海 中西 麻美 境 慎二朗 大澤 直哉 森本 幸裕
出版者
日本緑化工学会
雑誌
日本緑化工学会誌 (ISSN:09167439)
巻号頁・発行日
vol.34, no.4, pp.641-648, 2008 (Released:2009-11-30)
参考文献数
36
被引用文献数
1 1

ヒノキ林化した都市近郊二次林をアカマツまたは落葉広葉樹主体の林相に転換させることを目的として,母樹を残した小面積 (0.06~0.09 ha) の伐採を行った。3 つの伐採区 (上部,中部,下部) のいずれにおいても伐採後に消失した種はなく,伐採後3 年目には10 種以上の種数の増加が確認された。中でも,落葉広葉樹林の主要構成要素を含むブナクラスの種が上部と中部では6 種,下部では4 種増加し,林相転換に一定の効果が得られたと考えられた。前生稚樹は伐採後にほとんどの個体が枯死し,伐採後の林相には大きく寄与していなかった。散布種子についてはその大部分がヒノキで占められており,風散布種であるヒノキはプロット内に多量の種子を散布することで伐採後の林相に大きな影響を与えると考えられた。また,伐採後3 年目には新たな種の出現がほとんどみられなかったことから,林相が単純なヒノキ林では周囲からの新たな種の供給は少ないと考えられた。伐採面積の最も大きかった上部の伐採区 (0.09 ha) では,相対日射量が60% 以上あり,ヒノキの発芽と生存率が抑制されたと考えられ,アカマツとヒノキの混交する林相への転換が期待された。一方,中部と下部の伐採区では,全実生個体数のうちヒノキが50% 以上を占めており,今後,選択的除去などの人為的な管理が必要であると考えられた。
著者
大手 信人 鈴木 雅一 小橋 澄治
出版者
日本緑化工学会
雑誌
日本緑化工学会誌 (ISSN:09167439)
巻号頁・発行日
vol.15, no.4, pp.20-30, 1990-07-20
被引用文献数
4

中国, 毛烏素沙地における緑化樹種, 旱柳(Salix matsudana Koidz.)の生育形態に及ぼす土壌水分条件の影響を考察するため, 気象観測データから土壌水分条件と蒸散特性の経時変化を推定する数値計算モデルを考案した。本モデルは, (1)沙地面蒸発-乾砂層消長モデルと, (2)土壌水分・根系吸水分布モデルからなり, (1)により算定れる沙地表層以下への浸透水量を入力とし, (2)によって水分と根系の吸水特性の鉛直分布と蒸散量を算定する。1986年から日中合作による沙漠緑化研究の一環として現地観測されている, 微気象, 土壌水分, 沙地面蒸発, 旱柳の蒸散特性等のデータを基に, 本モデルによって地下水面位置の異なる2ヶ所に生育し, 体制や葉面の組織が異なる旱柳の, 乾燥期における土壌水分消費特性の経時推定を試みた。両者の形態の相違は, 各々の立地における水分環境への適応の結果と考えられ, 地下水面から毛管上昇によって水分が根域に供給されるか否かで形態に大きな相違が現れると考えられた。また推定の結果, その適応戦略は両者とも乾燥期に吸水阻害を最小限に抑えうるものと考えられた。
著者
阿部 智明 中野 裕司 倉本 宣
出版者
日本緑化工学会
雑誌
日本緑化工学会誌 (ISSN:09167439)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.344-347, 2004 (Released:2005-11-22)
参考文献数
8
被引用文献数
2 2

日本産のコマツナギと中国産のコマツナギをアロザイム分析して対立遺伝子の構成を比較した。対立遺伝子の構成は日本の4つの産地では類似していたが,中国産の種子は大きく相違していた。自生種の使用が求められる地域において中国産コマツナギを用いることには慎重になるべきである。
著者
門田 有佳子 井上 密義
出版者
日本緑化工学会
雑誌
日本緑化工学会誌 (ISSN:09167439)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.279-282, 2001-08
参考文献数
3
被引用文献数
1

広島県の世羅台地にある社叢緑部において、治山工事に伴い失われたマント群落の復元ならびに創出を試みた。照葉樹と郷土種・草本類を混播して施工し、その後4年間に渡り追跡調査を行った。調査項目は、復元区域と創出区域の2地点における、導入種の成立本数・被度・樹高と侵入種実態調査である。その結果、復元区域では約4年でマント群落が復元し、創出区域では先駆草本・低木による小規模なヤブが出現した。これに、施工地の自然回復力による復元が併せて進行することによって、工事によって森林に与える負荷を早期に軽減させることが可能である。
著者
村上 大輔 下村 孝
出版者
日本緑化工学会
雑誌
日本緑化工学会誌 (ISSN:09167439)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.152-157, 2007-08-31
参考文献数
18
被引用文献数
3 4

ビルの緑化された屋上で,緑化形態の異なる3地点(芝生地点,アスファルト地点,パーゴラ地点)を対象に,温熱環境要素の計測及び主観申告実験を行ない,物理量と心理量の双方がそれぞれの地点で異なることを明らかにした。特に,夏季に,パーゴラ地点では,他の2地点に比べ,気温とグローブ温度が低く,涼しい側と快適側の申告頻度も高かった。温度と快適性評価の2次回帰線と中立評価軸の交点より求めた快適範囲はパーゴラで最も広く,次いで,芝生,アスファルトの順になった。夏季にパーゴラのもたらす緑陰が屋上空間での快適性導入に有効であることが明らかにされた。
著者
勝川 健三 下村 孝
出版者
日本緑化工学会
雑誌
日本緑化工学会誌 (ISSN:09167439)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.38-43, 2006-08-31
参考文献数
9

グラウンドカバープランツとして有望なイモカタバミ(Oxalis articulata Savigny)の生育習性の解明を目的に,日長および温度条件が生育と開花に及ぼす影響を検討した。その結果イモカタバミは長日植物で,20℃における限界日長は12時間から13時間の間にあることが示唆された。また長日処理は,暗期中断法で代替できた。一方,露地栽培において梅雨明け後にみられる休眠現象は,人工気象室によるコンテナ栽培での試験の結果,高温による多発休眠と考えられ,自発休眠ではないことが示唆された。
著者
田中 健 村上 大輔 下村 孝
出版者
日本緑化工学会
雑誌
日本緑化工学会誌 (ISSN:09167439)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.133-138, 2008 (Released:2009-04-10)
参考文献数
15
被引用文献数
4 4

京都市内を事例として,好ましい屋上緑化のデザインを明らかにするため,市内の屋上から撮影した4種類の景観写真と4パターンの屋上緑化写真を組み合わせた合成画像を用いて景観評価実験を行なった。その結果,同一の背景で緑化形態(緑量)を変化させた場合に,緑量が増える程評価が向上することが示され,さらに,和風庭園風緑化が高い評価を得ることが示された。また,アイマークレコーダ(EMR)による眼球運動の測定を行い,画像内の緑量が増える程,被験者が人工物を探索する傾向があることが示された。以上の結果から古都の景観を残す京都では和風の屋上緑化が望ましいと推測された。
著者
吉田 寛 古田 智昭 福永 健司
出版者
日本緑化工学会
雑誌
日本緑化工学会誌 (ISSN:09167439)
巻号頁・発行日
vol.28, no.4, pp.512-519, 2003-05-31
参考文献数
6
被引用文献数
3 3

貝殻廃棄物を利用した酸性雨対策や強酸性土壌地における緑化手法「アルプラスエ法」の概要について紹介する。本緑化工法は,酸性矯正材(中和材)として臨海施設や養殖産業から排出される貝殻廃案物を調整加工したリサイクル資材「シェルレミディ」を用いることを特徴としている。この資材は,中和効果が長期間持続するほか,多くのミネラルを含んでいることから一般的な中和剤である炭酸カルシウムを使用した場合と比較して植物の成長を促進することができ、植生基材や酸性矯正層の材料として使用することにより,酸性雨や強酸性土壌が原因で植生の回復が困難な法面等における良好な緑化が期待できる。
著者
倉本 宣 古賀 陽子
出版者
日本緑化工学会
雑誌
日本緑化工学会誌 (ISSN:09167439)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.340-343, 2004 (Released:2005-11-22)
参考文献数
10
被引用文献数
2 3 2

減少し続けていた多摩川のカワラノギクに新しい局地個体群が発見されたので,保全の観点からどのように対応すべきか検討した。局地個体群の発達と衰退の過程および生育地という生態学的評価からは重要な局地個体群であると考えられた。しかしながら,発見された個体群が自生か植栽起源によるものかの判断はむずかしく,保全の対象とすべきか否かは更なる検討が必要である。
著者
西村 尚之 山本 進一 千葉 喬三
出版者
日本緑化工学会
雑誌
日本緑化工学会誌 (ISSN:09167439)
巻号頁・発行日
vol.18, no.2, pp.95-103, 1992-10-30
被引用文献数
4 2

岡山市内の約40年生のコナラ林において, リターフォール量の調査を約4年間定期的に行った。調査林分の胸高直径5cm以上の樹木の胸高断面積合計は18.1m^2・ha^<-1>で, コナラはその71.5%を占めていた。年間の全リターフォール量は5.94〜8.07ton・ha^<-1>・yr^<-1>であった。また, その64.7〜76.6%を落葉が占めていた。年落葉量は4.55〜5.22ton・ha^<-1>・yr^<-1>で, その年変動は小さかった。コナラの年落葉量は全落葉量の約60%を占めており, 2.59〜3.08ton・ha^<-1>・yr^<-1>であった。落枝量の年変動は落葉量に比べて大きく, この原因は台風の襲来によるものであった。生殖器官の年落下量の約80%はコナラの雄花と果実であった。コナラの果実の年落下量は189〜744kg・ha^<-1>・yr^<-1>で, その年変動は大きかった。落葉量の季節変化は, 11〜12月に落葉の最盛期があり, 4月下旬〜6月上旬にも落葉量がやや増加するパターンを示した。また, コナラは他樹種に比べて落葉期がやや遅く, 短期間に落葉する傾向があった。落枝量は, 落葉量のような明らかな季節変化を示さず, 台風などの強風の影響によって激増した。
著者
吉田 寛 森本 幸裕
出版者
日本緑化工学会
雑誌
日本緑化工学会誌 (ISSN:09167439)
巻号頁・発行日
vol.31, no.2, pp.269-277, 2005 (Released:2007-03-12)
参考文献数
37
被引用文献数
2 3

厚層基材吹付工により中国産コマツナギ(Indigofera spp.)と常緑広葉樹(イボタノキ(Ligustrum obtusifolium Sieb. et Zucc.),シャリンバイ(Rhaphiolepis umbellata Makino),ヤブツバキ(Camellia japonica L.),サザンカ(Camellia sasanqua Thunb.))が混生する植物群落を形成した切土法面について,施工後約9年間の追跡調査を行った。その結果,これらが混生する植物群落を早期に形成させることにより,1)発芽・成立した常緑広葉樹は,林冠が中国産コマツナギに鬱閉された場合でも林床植生を形成して法面表層を保護できること,2)中国産コマツナギと常緑広葉樹との競合により,中国産コマツナギの密度と基底面積が低下する傾向が認められ,常緑広葉樹主体の群落への遷移を促す効果が示唆されること,3)林床植生として形成された常緑広葉樹は,イボタノキのような半常緑性の種を除いて,中国産コマツナギの落葉期においても緑量を持続できることから,特に周辺の森林が常緑性の樹木で構成されている場合には景観保全という観点からも有効であることが確認された。こうした改善効果は,今回使用した中国産コマツナギのほか,法面緑化で広く用いられているヤマハギ(Lespedeza bicolor Nakai.)やイタチハギ(Amorpha fruticosa L.)等を使用した場合においても発揮されると考えられ,マメ科低木群落が有していた,林床植生の衰退,単純林化,遷移の停滞,および落葉期の景観保全上の問題等を比較的容易に改善する手段のひとつとして有望と思われる。
著者
阿部 智明 中野 裕司 倉本 宣
出版者
日本緑化工学会
雑誌
日本緑化工学会誌 (ISSN:09167439)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.344-347, 2004-08-31
被引用文献数
4 2

日本産のコマツナギと中国産のコマツナギをアロザイム分析して対立遺伝子の構成を比較した。対立遺伝子の構成は日本の4つの産地では類似していたが,中国産の種子は大きく相違していた。自生種の使用が求められる地域において中国産コマツナギを用いることには慎重になるべきである。
著者
米村 惣太郎 井原 寛人
出版者
日本緑化工学会
雑誌
日本緑化工学会誌 (ISSN:09167439)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.45-50, 2008 (Released:2009-04-10)
参考文献数
18
被引用文献数
2

調整池の水辺に植生基盤を造成し,タコノアシを導入した。管理作業として,初期3年間は競合種と考えられた草本の選択的除草,5年目から8年目まで春先に全面的刈取りと除去を行ったが,9年目以降は管理作業を実施しなかった。その結果,タコノアシは3年目以降減少し,9年目にはほとんどの区画で生育がみられなくなった。これに対し,新たに実験区を植栽基盤に追加し,春先のリターの除去と初夏に他の植物種の刈取りを行った結果,タコノアシの増加がみられた。タコノアシを継続的に生育させるためには,出芽をしやすくし,成長期に被圧を受けなくすることが重要と考えられた。植栽基盤にはタコノアシの種子が残存しており,土壌を耕耘してタコノアシを生育させることができた。またタコノアシの種子は水中でも発芽可能だが成長はできなかった。
著者
唐沢 明彦 土田 保
出版者
日本緑化工学会
雑誌
日本緑化工学会誌 (ISSN:09167439)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.205-208, 2001-08
被引用文献数
7 10

耐踏圧性の向上や土壌の流出防止等を目的として, 人工軽量骨材を使用したポーラスコンクリートの連続空隙内に植生基材を充填し, これを基盤として植物を生育させる屋上緑化システムを開発した。このシステムを埼玉県熊谷市内の集合住宅屋上に施工し, 階下の室内の熱環境に及ぼす効果を1999年夏季と2000年冬季に測定した。その結果, 本システムを施工し屋上を緑化することにより, 夏季と冬季における階下の室内気候を緩和でき, 冷暖房エネルギーを節約できることを確認した。
著者
梅迫 泰年 長野 修
出版者
日本緑化工学会
雑誌
日本緑化工学会誌 (ISSN:09167439)
巻号頁・発行日
vol.30, no.4, pp.607-610, 2005-05-31
被引用文献数
2

関西電力奥多々良木発電所(兵庫県)多々良木ダム上流のダム湖畔においてモリアオガエルの新たな産卵場所の創出を主要目標としてビオトープ池が整備された。モニタリングの結果, 整備後3年目において成体, 卵塊, 幼生, 幼体が確認された。成体の天敵のニホンイモリが確認されたことから, 当整備箇所を中心とした生態系が形成されつつあると考えられた。