著者
和田 浩二 上原 真希子 高良 健作 當銘 由博 矢野 昌充 石井 利直 太田 英明
出版者
Japan Association of Food Preservation Scientists
雑誌
日本食品保蔵科学会誌 (ISSN:13441213)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.29-33, 2006-01-31 (Released:2011-05-20)
参考文献数
18
被引用文献数
2 4

シークヮーサー果汁中のノビレチンの定量法を設定するとともに, 果汁製造工程におけるノビレチン含量の変化について分析した。果汁試料を遠心エバポレータで濃縮し, 抽出溶媒にMeOHを用いることで高いノビレチンの抽出効率が得られた。さらにHPLC分析では定量下限0.1mg/100g, 変動係数1.8%と十分な正確さ, 精度を有することを明らかにし, 本法がカンキツ果汁全般のノビレチンの分析法として応用可能であることを示した。一方, ノビレチンはシークヮーサー果実の果肉部位にはほとんど含まれていないことから, 全果搾汁方式による果皮から果汁への移行成分であることを確認した。また, ノビレチンは果汁中では液体部分と含有するパルプなどの不溶性固形部分の両方に存在することから, その含量は果汁製造工程でのパルプ除去に関連する遠心分離処理の影響を大きく受けることが明らかになった。
著者
塩見 慎次郎 丁野 久美 西川 美穂 岡部 真美 中村 怜之輔
出版者
Japan Association of Food Preservation Scientists
雑誌
日本食品保蔵科学会誌 (ISSN:13441213)
巻号頁・発行日
vol.28, no.5, pp.235-241, 2002-09-30 (Released:2011-05-20)
参考文献数
15
被引用文献数
2 3

パイナップル果実の収穫後のガス代謝および果皮色の変化に対するエチレンの関与について, エチレンの作用阻害剤である1-メチルシクロプロペン (1-MCP) を用いて調べた。緑熟段階で収穫した果実の炭酸ガス排出量およびエチレン生成量は貯蔵中に上昇し, 末期上昇型パターンを示したが, エチレン生成量は最大でも1nl g-1 h-1に達しなかった。1-MCP処理によって呼吸量は減少し, エチレン生成量は一時的に上昇した。プロピレン処理は呼吸を一時的に増加させたが, エチレン生成を促進しなかった。果実をクラウンと果実部に分けてガス代謝を調べたところ, 末期上昇パターンはクラウンではなく, 果実部に依存していた。未熟果・緑熟果・適熟果に1-MCP処理を複数回行うと, いずれの熟度においても処理直後にエチレン生成が一時的に促進された。呼吸およびエチレン生成は樹上で発育に伴って増加し, 収穫後も増加し続けた。果皮の着色は収穫熟度に関係なく進行したが, 未熟果になるほど1-MCP処理によってその進行が遅延した。以上より, パイナップル果実のエチレン生成はエチレンによるネガティブフィードバック調節 (自動抑制作用) を受けること, 果皮色の変化にエチレンが関与しているごとが示され, 収穫後のガス代謝や果皮色の変化が樹上での変化と同様であることからパイナップルは少なくとも一部追熟性をもつことが明らかになった。
著者
茶珍 和雄
出版者
一般社団法人 日本食品保蔵科学会
雑誌
日本食品保蔵科学会誌
巻号頁・発行日
vol.26, no.3, pp.173-178, 2000
被引用文献数
21

バナナ (MUSA SPP.) は熱帯地域において重要な経済果実である。他の熱帯果実のように, バナナ果実は熟成中に生理的障害をしばしば現す。老化斑点はバナナの生理的障害のなかでも広く分布してみられる。老化斑点はバナナ果実が望ましい食味になる果実熟成の後期に発展する。AAグループのバナナ果実は最も老化斑点を示す。CarbendazinやProchloraz溶液を袋をかけた, あるいはかけないバナナの房に収穫前に噴霧するか, あるいは収穫後にbenomylやprochloraz溶液に浸漬しても, 老化斑点の程度は軽減しなかった。果実先端に緑色を残した黄色果 (グリーンティップ) 対する大気組成の変更, 果皮表面の塗布, 低温, 高温などの処理は老化斑点を非常に抑制したが, 果実の熟成過程や食味はとくに変わることはなかった。
著者
丸山 佳美 岡田 早苗
出版者
Japan Association of Food Preservation Scientists
雑誌
日本食品保蔵科学会誌 (ISSN:13441213)
巻号頁・発行日
vol.32, no.2, pp.59-66, 2006-03-31 (Released:2011-05-20)
参考文献数
15
被引用文献数
1 2

パネトーネはイタリア北部で伝統的につくられているサワードゥブレッドである。スターターは小麦粉と水を加えて継続的に植え継ぐことによって維持されており, このような伝統的サワードゥは他の地域での維持管理が難しいとされてきた。そこで日本において, 伝統的手法により維持されているスターターおよびパネトーネ発酵工程に関与している微生物の調査を行った。その結果, 全工程を通して酵母菌数106-107cfu/g, 乳酸菌数107-108cfu/gが維持されており, 優勢菌種として酵母Candidamilleriと乳酸菌Lactobacillus sanfranciscensisの生息が確認された。イタリアでの調査でもパネトーネサワードゥにおけるC. milleriとL. sanfranciscensisの優位性が確認されており, 日本においてもこの独自の微生物叢が発酵に関与していることが明らかとなった。またL乳酸を生成するL. sanfranciscensisの存在が明らかとなり, 異性体タイプの違いに乳酸脱水素酵素の関与が示唆された。
著者
東尾 久雄 廣野 久子 佐藤 文生 徳田 進一 浦上 敦子
出版者
日本食品保蔵科学会
雑誌
日本食品保蔵科学会誌 (ISSN:13441213)
巻号頁・発行日
vol.37, no.1, pp.3-7, 2011-01 (Released:2012-12-06)

イチゴ果実の着色は供試した白色蛍光ランプ,食肉展示用蛍光ランプのいずれを照射しでも着色し始めた果実の着色を促進した。その着色促進には,UVのみならず可視光線も関与していた。また,UVの作用は処理する果実熟度で大きく異なり,着色し始めた果実ではアントシアニン合成に促進的に作用し,着色が果実表面の1/2程度およびそれ以上に進むと抑制的に作用することが推察された。一方,イチゴ未熟果実の着色促進に有効なUV強度は供試した蛍光ランプのUV領域の総放射エネルギー量より,0.14W・m-2程度で十分と思われた。
著者
小崎 道雄
出版者
日本食品保蔵科学会
雑誌
日本食品保蔵科学会誌 (ISSN:13441213)
巻号頁・発行日
vol.28, no.3, pp.139-146, 2002-05-31 (Released:2011-05-20)
参考文献数
11
著者
小出 章二 福士 祥代
出版者
日本食品保蔵科学会
雑誌
日本食品保蔵科学会誌 (ISSN:13441213)
巻号頁・発行日
vol.33, no.3, pp.127-130, 2007-05-31 (Released:2011-08-17)
参考文献数
17
被引用文献数
2

近年, 玄ソバは低温貯蔵されるケースが増えている。本研究は, 玄ソバを5, 15, 25℃の貯蔵温度かつ種々の相対湿度の条件で玄ソバを貯蔵し, 水分収着等温線を求め, 玄ソバの低温貯蔵時の水分管理に必要な貯蔵環境条件 (温度・湿度) に関する基礎的知見を収集した。これより, 水分活性と温度を軸とした水分等高線をプロットし, 玄ソバの水分活性について検討した。その結果, 水分15%の玄ソバは温度15℃において, 0.66以下の水分活性を示し, 微生物的観点からも低温貯蔵の有効性が示された。