著者
緒方 邦安 岩田 隆 茶珍 和雄
出版者
THE JAPANESE SOCIETY FOR HORTICULTURAL SCIENCE
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.28, no.3, pp.143-148, 1959-09-30 (Released:2008-12-19)
参考文献数
11
被引用文献数
2

1. The present study was carried out to confirm the effect of gamma radiation on the inhibition of sprouting of onions during the storage and to investigate the physiological changes following the treatment. Onion bulbs were irradiated with the doses of 3000, 7000, and 12000 r. soon after the harvest (June 28) and at the presprouting period when the dormancy ends, i.e., Sept. 20. 2. The sprouting of onion bulbs was completely inhibited even at the dose as low as 3000 r., and the storage period of treated bulbs was eventually prolonged so long as 4-5 months over ordinary storage period. 3. Inner buds of onion bulbs which were inhibited the sprouting by the irradiation were browned and dead, but the injured parts did not extend to the outside of the buds. In the bulbs which had been irradiated on September 20, the browned parts were somewhat larger than that of the bulbs treated soon after the harvest. It means that the elongation and/or differentiation of the inner buds might have occured during the period, so the irradiation in theearly stages (during the rest period) would be preferable for practical use. 4. The oxygen uptake in the disk part (bottom part) of the bulbs was not directly influenced by the gamma radiation, while, when the control bulbs had increased the respiratory activity after the presprouting period, the increase of respiration in the treated bulbs was remarkably suppressed. 5. Also the contents of sugar and ascorbic acid in the bulbs were not immediately affected by any dose of radiation used in this study. However, when the non-reducing sugar content in the untreated bulbs was gradually decreasing after the bulbs had commenced sprouting, the contents in the treated bulbs were not affected for any change. 6. The characteristic flavor of onion bulbs did not appneciably alter by the irradiation. 7. No significant differences of the concentra-tions of growth promoting and inhibiting substances in the inner buds were found to exist between the irradiated bulbs and the untreated ones.
著者
平田 貴美子 茶珍 和雄 岩田 隆
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品工業学会誌 (ISSN:00290394)
巻号頁・発行日
vol.34, no.9, pp.566-573, 1987
被引用文献数
8

(1)ヒユ,キンサイ,ツルムラサキ,ヨウサイ,サイシン及びパクチョイを厚さ0.03mmの低密度ポリエチレン袋(26cm×38cm)に密封し,1℃,6℃,20℃と30℃に貯蔵して品質の変化を調べた.20℃と30℃区では,いずれの野菜においても品質低下の要因となったのは主に葉の黄化であったが,緑色保持期間が比較的長かったのはツルムラサキとパクチョイであった.ヨウサイ及びヒユでは1℃と6℃区で低温障害の褐変が発生し,ツルムラサキでは1℃で葉にpittingと軟化という低温障害の症状が認められた.他の野菜では低温ほどよく鮮度が保たれた.<BR>(2)ヒユ,キンサイ及びパクチョイは貯蔵温度が低いほどアスコルビン酸(ASA)含量をよく保持していた.低温障害を生じたツルムラサキとヨウサイは低温区でのASA含量の減少が速やかであったが,ヒユではよく保持されていた.またツルムラサキは30℃においてもASAの減少が非常にゆるやかであった.<BR>(3)貯蔵中のクロロフィル含量を調べたところ,キンサイでは各温度区の間に明らかな差が認められなかったが,その他の種類では低温に貯蔵したものほどよく保持されていた.<BR>(4)遊離アミノ酸含量は,貯蔵温度が高いほど増加する傾向にあった.<BR>(5)総フェノール含量は,ヨウサイの低温区とキンサイの全温度区で,貯蔵中いったん増加した後減少した.その他の葉菜類においてはほぼ一定であった.
著者
譚 新平 上田 悦範 今堀 義洋 茶珍 和雄
出版者
THE JAPANESE SOCIETY FOR HORTICULTURAL SCIENCE
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.68, no.3, pp.683-688, 1999-05-15 (Released:2008-01-31)
参考文献数
25
被引用文献数
2

本研究ではツルレイシ果実の発育中ならびに貯蔵中の果実および種衣の色素の同定と量的変化を調べた.1. 果実の発育段階におけるカロテノイドの組成は, 果肉では主にルテインで, その他, β-カロテンとα-カロテンから構成されていた.種衣でも少量のカロテノイドを含み, 検出された色素組成は果肉と同じであった.この段階では, 果肉のクロロフィルとカロテノイドともに減少した.2. 果実の成熟段階では, 果肉のクロロフィルはほとんど消失したが, カロテノイドとしてクリプトキサンチンとリコピンが現れ, 特に前者が著しく増加して, 主要な色素になった.種衣の主なカロテノイドはリコピンで, その含量は最高64.7mg/100gに達した.3. 貯蔵中の果実の果肉におけるクロロフィル含量の変化は, 貯蔵温度が高ければ減少が速く, 一方, カロテノイド含量は温度が高いほど増加が大きかった.種子の種衣のリコピン含量は30℃で著しく増大した.
著者
阿部 一博 棚瀬 匡彰 茶珍 和雄
出版者
園藝學會
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.67, no.1, pp.123-129, 1998-01-15
参考文献数
17
被引用文献数
5 15

本研究では, バナナ果実(熟度;グリーンチップ段階)から種々の形状の切片を調製し, 切片の生理・化学的特性を調べた.ポリエチレン包装した切片では, 実験期間(96時間, 20℃)には明らかな糸状菌を伴った腐敗はみられなかったが, 果皮と果肉の切断面の褐変ならびに果肉の軟化がみられた.これらの変化は切断角度が大きくなるに従って顕著であった.果皮と果肉の切断面のハンター測色値(L値)の低下は0度切片で最も少なく, 切断角度が大きくなるに従って低下が明らかとなり, 縦切り切片で最も顕著であった.果肉硬度の変化は0度切片で最も少なく, 切断角度が大きくなるに従って硬度の低下が明らかとなり, 縦切り切片での軟化が最も顕著であった.C<SUB>2</SUB>H<SUB>4</SUB>生成量は貯蔵に伴って多くなり, 増加は縦切り切片が最も顕著で, 切断角度が小さくなるに従ってC<SUB>2</SUB>H<SUB>4</SUB>生成量も減少した.縦切り切片のCO<SUB>2</SUB>排出量は他の切片より多かったが, 0度, 30度, 60度切片間の差は小さかった.バナナ果実切片の貯蔵性とC<SUB>2</SUB>H<SUB>4</SUB>生成量には関連性がみられた.貯蔵環境中のC<SUB>2</SUB>H<SUB>4</SUB>を除去したり, C<SUB>2</SUB>H<SUB>4</SUB>濃度を高めても(20μl・l<SUP>-1</SUP>), L値ならびに果肉硬度の低下は0度切片で最も少なく, 切断角度が大きくなるに従ってこれらの低下が明らかとなり, 縦切り切片での低下が最も顕著であった.
著者
茶珍 和雄
出版者
一般社団法人 日本食品保蔵科学会
雑誌
日本食品保蔵科学会誌
巻号頁・発行日
vol.26, no.3, pp.173-178, 2000
被引用文献数
21

バナナ (MUSA SPP.) は熱帯地域において重要な経済果実である。他の熱帯果実のように, バナナ果実は熟成中に生理的障害をしばしば現す。老化斑点はバナナの生理的障害のなかでも広く分布してみられる。老化斑点はバナナ果実が望ましい食味になる果実熟成の後期に発展する。AAグループのバナナ果実は最も老化斑点を示す。CarbendazinやProchloraz溶液を袋をかけた, あるいはかけないバナナの房に収穫前に噴霧するか, あるいは収穫後にbenomylやprochloraz溶液に浸漬しても, 老化斑点の程度は軽減しなかった。果実先端に緑色を残した黄色果 (グリーンティップ) 対する大気組成の変更, 果皮表面の塗布, 低温, 高温などの処理は老化斑点を非常に抑制したが, 果実の熟成過程や食味はとくに変わることはなかった。
著者
石丸 恵 茶珍 和雄 上田 悦範
出版者
日本食品保蔵科学会
雑誌
日本食品保蔵科学会誌 = Food preservation science (ISSN:13441213)
巻号頁・発行日
vol.29, no.2, pp.89-93, 2003-03-31
参考文献数
11
被引用文献数
1 2

刀根早生'果実は脱渋後の肉質が緻密で柔らかく最も人気のある渋ガキ品種の一つである。'刀根早生'果実の主な脱渋方法は固形アルコールによる樹上脱渋とCO, 脱渋 (CTSD法) であり, 樹上脱渋とCO<SUB>2</SUB>脱渋後の軟化速度は異なっている。そこでその違いをCO<SUB>2</SUB>排出量とエチレン生成の変化ならびに果実の軟化に密接に関係するヘミセルロース構成糖の分解酵素の一つであるβ-D-galactosidase活性の変化から検討した。<BR>(1) CO<SUB>2</SUB>脱渋処理果実の呼吸量およびエチレン生成量は貯蔵後期に増加する傾向を示し, 樹上脱渋果実は無処理およびCO<SUB>2</SUB>脱渋処理果実より低く, 貯蔵期間中低いレベルを維持した。<BR>(2) 貯蔵期間中のβ-D-galactosidase活性は, 無処理果実およびCO<SUB>2</SUB>脱渋処理果実において収穫後2日から3日に活性が増大し, 収穫後7日にはその活性は収穫直後の約1.6~2倍になった。樹上脱渋果実は, 貯蔵期間中無処理およびCO<SUB>2</SUB>脱渋処理果実より低い活性であった。<BR>以上より, カキ'刀根早生'果実の収穫後の急速な軟化とβ-D-galactosidaseの活性は関係があると思われた。また, β-D-galactosidaseの活性とエチレン生成量は同様の傾向を示したことからエチレンによって誘導されたβ-D-galactosidaseがヘミセルロースを分解し, 最終的に指で押すと組織が崩壊しそうになる軟化現象を引き起こしていると思われた。