- 著者
-
Inoue Hiroshi
- 出版者
- 東京昆蟲學會
- 雑誌
- 昆蟲 (ISSN:09155805)
- 巻号頁・発行日
- vol.23, no.2, pp.71-"74-1", 1955
松村(1927)によつて台湾の標本に基づいて記載された新属新種Aoshachia virescens Matsumura(シャチホコガ科)は, 丸毛(1920)が種子島と屋久島でとれた2♀♀によつて発表したDoratoptera(?)virescens Marumo(シャクガ科ホシシャク亜科)と同一種であることがわかつた.従つて, 沢本(1938)がD. virescens Marumoをtypeとして発表した新属Marumonaは, Aoshachiaの異名となり, 学名はAoshachia virescens (Marumo)とよぶのが正しいことになる.本種は, 雄交尾器の形態・脈相そのほかの特徴から, エダシャク亜科のCompsopteraに近縁である.和名は, はじめ松村(1931)によつてアオシャチホコと名付けられたが, 堀及び野村(1937)は既に同一の名が他のシャチホコに用いられているという理由で, ウスアオシャチホコと改めた.沢本(1938)はキイロトガリシャクと付け, のちに位置をエダシャクに移してき(1939)キイロエダシャクと語尾を変更した.新鮮な個体は薄緑色で, 古くなると黄色に変るが, 私はこの最後の名称を採用したいと思う.分布は, 今日迄の資料によると, 台湾・屋久島・種子島・九州鹿児島となるが, 最近私は中村正直氏の好意で, 黒子浩氏が英彦山で1954年4月25日に採集された1♂を手に入れることができた.Descoreba simplex Butlerハスオビエダシャクは, 従来Compsoptera(=Prosopolopha)に入れてあつたが, この属やAoshachiaに近縁であつても, 別属とした方が良いので, simplexをtypeとしてButler(1878)の創設したDescorebaを復活させることにした.従つて今日のところCompsopteraに属するものは, わが国に分布していないことになる.なお, Compsopteraの模式種jourdanaria (de Villers)は, フランス南部・スペイン・サルヂニア・アルジェリーに分布し, 成虫は秋に出現する.一方キイロエダシャクとハスオビエダシャクは何れも春に発生することがわかつている.