- 著者
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厳 善平
- 出版者
- Japan Association for Comparative Economic Studies
- 雑誌
- 比較経済体制学会年報 (ISSN:13484060)
- 巻号頁・発行日
- vol.40, no.1, pp.62-74,121, 2003-01-01 (Released:2009-07-31)
- 参考文献数
- 17
本稿では,市場化,産業化,国際化という角度から,中国経済の構造変化を明らかにした。その要点を簡単にまとめよう。(1)固定資産投資,都市部従業者および工業生産額に占める国有部門の割合が過去20年間に大幅に低下したことから,中国経済の市場化が著しく進んだと結論づけられよう。(2)産業構造の変化は基本的にペティ〓クラークの法則に従っているが,計画経済時代の重工業化政策などの影響もあって,就業構造の高度化は産業構造のそれに大きな遅れを取っている。(3)高度成長は経済の国際化を伴っていることが明らかである。大国でありながら,対外依存を強めてきていることは大きな特徴として挙げられる。(4)二重経済構造は依然存在している。農業の過剰就業・低労働生産性・農民の低収入という構造問題は深刻な状況にある。都市・農村間の格差は政府の制度差別によったところが大きい。(5)経済の高度成長を牽引した製造業の構造はここ20年間小幅な変動に留まっているが,構造変化のテンポが近年速まっている。(6)貿易の規模拡大と構造の高度化が同時に実現されている。一次産品を中心とする輸出構造は工業製品に代わられつつある。