著者
石川 健
出版者
Japan Association for Comparative Economic Studies
雑誌
比較経済体制学会年報 (ISSN:13484060)
巻号頁・発行日
vol.40, no.2, pp.1-15,75, 2003-06-30 (Released:2009-07-31)
参考文献数
14

本稿では,体制転換後ロシアの電力・石油・ガス部門において進行している生産減と雇用増の同時進行がなぜ可能なのかについて,公式統計と簡単な推計結果を利用しつつ検討し,これらの部門が雇用増を可能とする特殊な条件(費用構造と収益性)を備えていることと,体制転換後に固有の賃金未払いが同部門で大規模に見られるということもこれと関係する要因であることを示す。
著者
長岡 貞男 岩崎 一郎
出版者
Japan Association for Comparative Economic Studies
雑誌
比較経済体制学会年報 (ISSN:13484060)
巻号頁・発行日
vol.40, no.1, pp.1-17,120, 2003-01-01 (Released:2009-07-31)
参考文献数
21
被引用文献数
1

市場経済移行と経済開放は,旧社会主義諸国の研究開発体制に変革を迫ってきた。本稿は,中欧諸国に焦点を当てて,その技術パフォーマンスを分析する。主要な結論は以下の通りである。これらの国はバルト諸国とともに,ハイテク輸出の拡大,情報技術の普及で証拠付けられるように外国技術の吸収という面で大きな成果がもたらされている。研究開発は縮小したが経済の基礎条件から見て過小な水準ではなく,他のOECD諸国の経験から外国直接投資は長期的には研究開発の水準を減少させる可能性も否定できないが,少なくとも国内企業がその効率的な企業体制を整備するまではそれを下支えする効果がある。しかし,これらの国々の特許生産性で評価した研究開発効率は依然著しく低く,グローバルに競争的な研究開発体制の構築は今もなお時間を要する課題であることも同時に明らかとなった。
著者
小森 吾一
出版者
Japan Association for Comparative Economic Studies
雑誌
比較経済体制学会年報 (ISSN:13484060)
巻号頁・発行日
vol.40, no.1, pp.30-38,120, 2003-01-01 (Released:2009-07-31)

最近,業績が良好なロシアの石油およびガス産業がさらなる発展を遂げるには,いくつかの課題がある。石油産業については経営体質の強化に向けた上・下流両部門への投資,新規輸出市場(対アジア)の開拓,ガス産業については国内市場での収益強化と新規輸出市場(対アジア)の開拓が課題である。これらの課題解決にはロシア石油・ガス企業の競争力強化とともにロシア政府による外資導入のための投資環境の整備が必要となる。
著者
和田 正武
出版者
Japan Association for Comparative Economic Studies
雑誌
比較経済体制学会年報 (ISSN:13484060)
巻号頁・発行日
vol.40, no.1, pp.39-52,121, 2003-01-01 (Released:2009-07-31)

移行経済下,産業構造は大きく変化する。それは社会主義時代に人為的に作られた産業構造が新しい市場ニーズにみあったものへ変化する過程である。ここではポーランドにおける経済改革の10年の中で,産業構造の変化の実態を見,また事例として繊維産業,鉄鋼産業の内部でその生産構造がどのように変化したかを検討する。次ぎに,その変化をもたらした要因を貿易面,企業の発生面,さらにFDIの実績から分析し,最後に新たに形成された産業構造がポーランドにとって望ましいものであったかどうかの評価を産業構造の高度化の観点から論じる。
著者
吉井 昌彦
出版者
Japan Association for Comparative Economic Studies
雑誌
比較経済体制学会年報 (ISSN:13484060)
巻号頁・発行日
vol.40, no.1, pp.53-61,121, 2003-01-01 (Released:2009-07-31)
参考文献数
8

本稿では,まず産業連関表を利用して,ルーマニアの産業構造が1990年代にどのように変化したのか,あるいは変化しなかったのかを定量的に把握する。次に貿易構造がどのように変化したのかを分析し,産業構造の変化が競争力構造の変化とどのように結びついてきたのかを検討する。そして最後に,輸出競争力のある産業構造を創造するため,ルーマニア政府は産業政策を策定,実施する必要があるとの提言が行われる。
著者
厳 善平
出版者
Japan Association for Comparative Economic Studies
雑誌
比較経済体制学会年報 (ISSN:13484060)
巻号頁・発行日
vol.40, no.1, pp.62-74,121, 2003-01-01 (Released:2009-07-31)
参考文献数
17

本稿では,市場化,産業化,国際化という角度から,中国経済の構造変化を明らかにした。その要点を簡単にまとめよう。(1)固定資産投資,都市部従業者および工業生産額に占める国有部門の割合が過去20年間に大幅に低下したことから,中国経済の市場化が著しく進んだと結論づけられよう。(2)産業構造の変化は基本的にペティ〓クラークの法則に従っているが,計画経済時代の重工業化政策などの影響もあって,就業構造の高度化は産業構造のそれに大きな遅れを取っている。(3)高度成長は経済の国際化を伴っていることが明らかである。大国でありながら,対外依存を強めてきていることは大きな特徴として挙げられる。(4)二重経済構造は依然存在している。農業の過剰就業・低労働生産性・農民の低収入という構造問題は深刻な状況にある。都市・農村間の格差は政府の制度差別によったところが大きい。(5)経済の高度成長を牽引した製造業の構造はここ20年間小幅な変動に留まっているが,構造変化のテンポが近年速まっている。(6)貿易の規模拡大と構造の高度化が同時に実現されている。一次産品を中心とする輸出構造は工業製品に代わられつつある。
著者
吉野 悦雄
出版者
Japan Association for Comparative Economic Studies
雑誌
比較経済体制学会年報 (ISSN:13484060)
巻号頁・発行日
vol.40, no.1, pp.75-88,122, 2003-01-01 (Released:2009-07-31)
参考文献数
10

ポーランドは1999年1月1日より新しい年金制度を導入した。第一の特徴は、従来の年金賦課方式から年金積み立て方式に転換したことである。第二の特徴は、積み立て金の一部の運用を民間の年金基金に委ねたことである。第三の特徴は、企業別の年金組合の設立を認めたことである。しかしながら現存する年金受給者や高齢層従業員への年金財源の確保のため、、事実上の賦課方式も存続させる折衷策を採りつつ、長期のスパンで積み立て方式への移行をめざすことになった。なおポーランドの年金改革は日本における確定拠出年金(401K)の検討にとっても参考となる点があると考える。