著者
ニャダワ モーリス 小葉竹 重機 江崎 一博
出版者
THE JAPAN SOCIETY OF HYDROLOGY AND WATER RESOURCES
雑誌
水文・水資源学会誌 (ISSN:09151389)
巻号頁・発行日
vol.8, no.1, pp.93-100, 1995

ケニアは大きく5個の流域に分けられ,その第3番目の流域はAthi川流域で流域面積約7万km2で,そのうち65%がAthi川本川である。残り35%は直接インド洋に注ぐそれぞれ独立したいくつかの河川から構成される。Athi川本川の上流域は3月~5月と10月~11月にかけての2回の雨期をもつが,とくに3月~5月の雨期では雨のピークは4月にあるにもかかわらず,流量のピークは5月になってから現れる。この現象は流域面積が数十km2の小流域でも顕著に認められ,水文学的に大きな流域とみなすことができる。このような性質をもつ流域からの流出をタンクモデルによってシミュレートした。タンクは3段直列であるが,1段目のタンクの浸透孔を底部より高い位置に開口し,土壌に取り込まれ蒸発散のみで失われる土壌水分成分を表現した。蒸発散量は蒸発皿の値に一定の係数をかけた値を用いた。1960年~1988年の資料を用いてシミュレーションを行った結果,良好な結果が得られた。
著者
丸山 茂徳
出版者
水文・水資源学会
雑誌
水文・水資源学会誌 (ISSN:09151389)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.110-116, 2002-03-05 (Released:2009-10-22)
参考文献数
1
著者
田中 幸夫 中山 幹康
出版者
水文・水資源学会
雑誌
水文・水資源学会誌 (ISSN:09151389)
巻号頁・発行日
vol.23, no.2, pp.144-156, 2010-03-05 (Released:2010-04-08)
参考文献数
59
被引用文献数
2 5

本稿では,中東に位置するティグリス・ユーフラテス川流域を事例に国際河川紛争の解決要因の検討を行う.同流域では主にトルコ・シリア・イラクによる水争いが20世紀後半以降顕在化し,流域国間での合意形成が幾度にもわたって試みられたが,いずれも不調に終わり,現在に至っている.このような膠着状態を脱却する要件として,本稿では「イシューのパッケージ化」に着目した.特定の争点の妥協を誘引するためにその他の争点を交渉に導入する(イシューをパッケージ化する)という手法は意識的または無意識的に様々な資源交渉もしくは国際交渉の場で行われている(本稿では米国とメキシコの間のコロラド川水質汚染問題におけるイシューのパッケージ化を例示した).ティグリス・ユーフラテス川の事例においても,流域国間でトレードオフが可能な争点としてエネルギー,国境貿易および経済開発,民族(クルド人)問題などが挙げられた.これらを水資源配分の問題と合わせて流域国間交渉に導入することにより,流域国の協調が達成可能となることが期待される.
著者
菊地 慶太 風間 聡
出版者
THE JAPAN SOCIETY OF HYDROLOGY AND WATER RESOURCES
雑誌
水文・水資源学会誌 (ISSN:09151389)
巻号頁・発行日
vol.22, no.4, pp.277-285, 2009-07-05
被引用文献数
1

GPSを用いて2006年から2007年の冬季から春季にかけて,山岳域(宮城蔵王)における積雪深分布を観測した.山間部において積雪期から融雪期にかけて標高-積雪深分布データを得ることはこれまでほとんどなされておらず,これらのデータは,貴重である.観測には干渉測位の一つである連続キネマティック測位を用いた.この測位方法は任意点のデータを一定時間間隔で取得できるのが特徴である.位置データ補間には最近隣法,2点幾何補間法を用いた.そしてGPS測位および補間結果から地表面標高に対する詳細な積雪深分布データを得ることが出来た.測定誤差には,姿勢誤差,計算誤差,実地誤差,観測誤差がある.それらの合計は,最近隣法が0.25 m~0.41 m,2点幾何補間法が0.25 m~0.40 mである.測深棒とGPS測位による積雪深の比較では2点幾何補間法の場合,両者の差は0.34m~1.10 m,最近隣法の場合は0.12 m~0.30 mとなった.最近隣法の場合,積雪深が3 m以上であれば相対誤差は10 %以下であり良好な値が得られた.つまり雪の多い場所,特に山間部において最近隣法を用いたGPS観測は有効な手段である.