著者
山田 至康 市川 光太郎 伊藤 泰雄 長村 敏生 岩佐 充二 許 勝栄 羽鳥 文麿 箕輪 良行 野口 宏
出版者
一般社団法人 日本救急医学会
雑誌
日本救急医学会雑誌 (ISSN:0915924X)
巻号頁・発行日
vol.23, no.2, pp.65-81, 2012-02-15 (Released:2012-03-20)
参考文献数
8
被引用文献数
2 1

小児救急医療においては初期・2次救急への対応策が取られてきたが,平成21年度からは厚生労働省による検討会が持たれ,3次救急への対応が検討されるようになった。今回の調査では9割近くの救命救急センターは,常に小児救急医療に対応していたが,施設の特徴により受診数や入院数,入院病名には差異が見られた。小児の年間ICU入院数は平均19.3名で,CPA数平均4.0名,死亡退院数平均2.7名が示すように重篤患者は少なかった。小児の利用可能なICUは20.3%にあったが,そのうちで救命救急センター内にあるものが7.2% で,病床数は平均1.6床であった。時間外における小児科医の対応は72%で可能であったが,救命救急センターの常勤小児科医によるものは15%であった。救命救急センターは施設間に偏りがあるものの小児の3次救急に可能な範囲で対応していた。小児の内因性疾患に対応可能な施設は,小児科医と救急医が協力し,重篤小児の超急性期の治療を進めていく必要がある。
著者
瀬藤 乃理子 坂下 裕子 黒川 雅代子 井上 ひとみ 山田 至康 森島 恒雄
出版者
甲南女子大学
雑誌
甲南女子大学研究紀要. 看護学・リハビリテーション学編 = Studies in nursing and rehabilitation (ISSN:18825788)
巻号頁・発行日
no.1, pp.87-93, 2008-03-20

子どもの突然の死は,その家族にとって極めて外傷的な喪失体験であり,回復に向かう悲嘆過程は非常に困難なものとなる。その影響は,両親の感情面や世界観,生活や人生そのもの,家族システム,遺された子どもたちなど,多方面に多大な影響を与える。本稿では,小児救急における家族援助の重要性について述べ,子どもの死が予測された時点から死後まで継続的に行われることが推奨される医療従事者によるグリーフケアについて考察した。特に,インフルエンザ脳症のグリーフケアガイドラインの中で提唱した具体的な援助方法と,遺族に手渡す「グリーフカード」を紹介した。
著者
西村 あをい 山田 至康
出版者
順天堂大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010-04-01

1.調査研究の実施【目的・方法】2011年12月、救急外来トリアージの現状と課題を明らかにすることを目的に、全国の救急認定および小児救急認定看護師が所属する全国440施設を対象として、救急外来看護師トリアージの現状をアンケート調査により実施した。【結果】有効回答は155施設(回収率35.2%)であり、トリアージナースの導入施設は75施設(48%)だった。75施設のうち小児トリアージの実施施設は12施設(16%)であり、以下この12施設の結果を報告する。小児トリアージ導入の動機は、救急外来混雑の改善目的が7施設、診療報酬改訂が3施設だった。ガイドラインを有するのは11施設(92%)と高率であるが、CTAS/JTAS改訂版の使用は4施設(42%)のみで、他5施設(50%)は自施設独自に作成したものを使用していた。トリアージの事後評価体制があるのは4施設(33%)と低率であり、各施設では教育・研修上の問題やトリアージナースの質の問題、事後検証の必要性等を問題点として自覚していた。【考察】小児トリアージを実施している施設では、ガイドラインの使用率は高いが独自のものが多いため、事後検証の普遍性を保つには標準化が望まれる。また、トリアージナースの教育や研修体制に課題を有する施設も多く、教育研修プログラムの改善が必要である。2.トリアージナース養成プログラムの作成と運用関東地区の大学病院救急外来に勤務するトリアージナース候補者を対象にして、トリアージナース養成のための研修会を2013年3月に千葉県浦安市内で開催した。研修内容は、院内トリアージの概要(トリアージの概念、目的、意義、過程)、トリアージナースの役割、トリアージの過程に関する講義と、成人患者及び小児患者のトリアージプロセスに関する演習問題のグループワークである。
著者
山下 雅知 明石 勝也 太田 凡 瀧 健治 瀧野 昌也 寺澤 秀一 林 寛之 本多 英喜 堀 進悟 箕輪 良行 山田 至康 山本 保博
出版者
一般社団法人 日本救急医学会
雑誌
日本救急医学会雑誌 (ISSN:0915924X)
巻号頁・発行日
vol.19, no.7, pp.416-423, 2008-07-15 (Released:2009-07-25)
参考文献数
17
被引用文献数
9 9

日本救急医学会救急科専門医指定施設に対してアンケート調査を行い,ER型救急医療の実施状況を調査した。408施設中283施設からアンケートの回答が得られ,有効回答は248施設であった(有効回答率88%)。このうち24時間または一部の時間帯でER型救急医療を行っていると回答した施設は150存在した(248施設の60%,24時間82施設,一部の時間帯68施設)。150施設中,救命救急センターは64施設,日本救急医学会指導医指定施設は23施設,大学病院は38施設存在した。150施設の病床数,年間救急患者数,救急搬送患者数の最頻値は,それぞれ501~750床,10,001~20,000人,2,001~4,000人であった。救急医及びER型救急医数は 1 ~16人以上と広い分布を示したが,最頻値はともに 1 ~ 3 人であった。ER型救急医療は,150施設中139施設で初期臨床研修に活用されていた。ER型救急医の後期研修プログラムは68施設で実施され,36施設で準備中であった。24時間ER型救急医療を実施している施設では,一部の時間帯で実施している施設に比して,救急医数・ER型救急医数ともに有意に多かった。以上から,日本救急医学会救急科専門医指定施設の60%でER型救急医療が実施されていること,ER型救急医療を実施している施設において救急医及びER型救急医の人的資源は十分とはいえないこと,が明らかとなった。今後も増加が予想される救急患者に対応するために,救急科専門医及びER型救急医をどのように育成していくかについて,国家的な戦略が必要であると考えられた。