著者
加納 啓良 Hiroyoshi Kano
出版者
同志社大学人文科学研究所
雑誌
社会科学 = The social sciences (ISSN:04196759)
巻号頁・発行日
vol.49, no.2, pp.1-28, 2019-08

1998年5月のスハルト政権崩壊後20年間の民主化(レフォルマシ)時代におけるインドネシア経済の変容を、農林水産業、鉱業、製造工業の各分野について概観したうえ、建設業、運輸・通信業、金融業に代表される新しい高成長部門の内容に触れ、対外貿易、外国直接投資、国際収支などの推移についても検討を加えて、その構造的特徴を解明する。論説(Article)
著者
福田 智子 フクダ トモコ Fukuda Tomoko
出版者
同志社大学人文科学研究所
雑誌
社会科学 = The social sciences (ISSN:04196759)
巻号頁・発行日
vol.48, no.4, pp.23-41, 2019-02

研究ノート(Note)『古今和歌六帖』は、約四千五百首の歌を、二十五項目、五百十七題に分類した類題和歌集である。収載歌には、『万葉集』『古今集』『後撰集』など、出典の明らかな歌もある一方、現在では出典未詳と言わざるを得ない歌もある。本稿では、「鳥」から「鶴」までの題に配されている出典未詳歌、十首について注釈を施す。
著者
金 杭
出版者
同志社大学人文科学研究所
雑誌
社会科学 = The social sciences (ISSN:04196759)
巻号頁・発行日
vol.44, no.2, pp.109-122, 2014-08

記録(Proceeding)「植民地主義のなかの帝国」同志社大学人文科学研究所国際学術シンポジウム「磁場としての東アジア」第2回記録Empires at the heart of colonialism, Proceedings of International Symposium "East Asia as a Magnetic Field" (2)翻訳:沈正明
著者
鍛冶 博之 カジ ヒロユキ KajiHiroyuki
出版者
同志社大学人文科学研究所
雑誌
社会科学 = The social sciences (ISSN:04196759)
巻号頁・発行日
vol.45, no.4, pp.159-188, 2016-02

論説(Article)本稿は、商品史の事例分析のひとつとして、近世以来の徳島の代表的な特産品である阿波藍を取り上げることを目的とする。第1章では、藍の起源、阿波藍の出現経緯、阿波藍の生産方法、近世に大量生産された諸要因、阿波藍をめぐる商業活動、消費方法について言及する。第2章では、徳島藩による阿波藍の保護奨励政策を概観する。第3章では、阿波藍が近世の徳島社会に及ぼしたさまざまな影響を10項目列挙し考察する。The purpose of this paper is to analyze the detail of the Awa-Indigo from a view-point of Commodity History (For example, studies on the process of the appearance and spread, the way of production and consumption, the factors of mass production, and social influence), which has been the one of special products since the modern times in Tokushima.
著者
根津 朝彦 ネズ トモヒコ Nezu Tomohiko
出版者
同志社大学人文科学研究所
雑誌
社会科学 = The social sciences (ISSN:04196759)
巻号頁・発行日
vol.42, no.4, pp.113-136, 2013-02

論説(Article)これまで看過されてきた1950年代の多田道太郎の仕事のもつ意味に注目し、彼に有する「非・反アカデミズムの視座」の特徴と変容を明らかにした。多田がこの視座を培ったのは、京大人文研と『思想の科学』、桑原武夫と鶴見俊輔との出会いが大きい。そして多田は学問に発想を重んじていくが、60年安保以降、アカデミズムへの志向はかげりを見せ、50年代に多田が目指していた研究者と実作者を橋渡しする学問の模索を断ちきってしまった。
著者
米原 謙 ヨネハラ ケン Yonehara Ken
出版者
同志社大学人文科学研究所
雑誌
社会科学 = The social sciences (ISSN:04196759)
巻号頁・発行日
vol.47, no.1, pp.107-136, 2017-05

研究ノート(Note)日本型社会民主主義とは、英国労働党やドイツ社会民主党のような西欧社会民主主義、ボルシェヴィキのような前衛党を否定し、マルクス主義を堅持しながら民主主義の拡充を通じて社会主義革命を実現しようとする考えかたである。それは1920年代の山川均が試行錯誤の末にたどり着いた結論だった。山川は1920年代初めにはロシア革命とレーニンを支持し、第一次日本共産党の理論的中心だったが、20年代半ばから徐々に小ブルジョアを含む「協同戦線」を主張し、前衛党という考えかたを批判するようになる。
著者
戸田山 祐 トダヤマ タスク Todayama Tasuku
出版者
同志社大学人文科学研究所
雑誌
社会科学 = The social sciences (ISSN:04196759)
巻号頁・発行日
vol.46, no.1, pp.33-64, 2016-05

論説(Article)本稿は,1940年代末から50年代にかけての米墨両国政府の移民・国境警備政策およびテキサスからの反応について論じた。メキシコ人非合法移民の流入を抑えるため,米墨両国はメキシコ人短期移民労働者の雇用を同州の農場経営者に促す一方で,米国移民帰化局は1954年に大規模な非合法移民の送還を実施した。1950年代後半には,短期移民労働者プログラムの拡充と国境警備の強化を両輪とする両国合同の政策枠組みにテキサスは完全に組み込まれたのである。This paper examines immigration and border control policies of Mexico and the United States from the late 1940s to the 1950s as well as reactions from Texas to such policies. While the United States and Mexico encouraged Texan growers to employ temporary workers from Mexico instead of undocumented workers, the U.S. Immigration and Naturalization Service initiated mass deportations of undocumented immigrants in the mid-50s. By the late 1950s, Texas was fully incorporated into the binational policy framework, which was comprised of expansion of the temporary worker program and stricter control of the U.S.-Mexico border.特集 ラテンアメリカにおける国際労働移動の比較研究(Special issue: Comparative study of international labor migration in Latin America)
著者
佐藤 夏樹 サトウ ナツキ Sato Natsuki
出版者
同志社大学人文科学研究所
雑誌
社会科学 = The social sciences (ISSN:04196759)
巻号頁・発行日
vol.46, no.1, pp.121-146, 2016-05

研究ノート(Note)1980年代に「ヒスパニック組織」となったLULACの視野はラテンアメリカ全域へと広がった。LULACは外交分野、特にエルサルバドル問題で合衆国政府を痛烈に批判し、そうした姿勢はラテンアメリカとの関係改善を望むイスラエル政府からの接触へとつながった。一方、LULACはイスラエル政府との関係を利用して合衆国内のユダヤ系コミュニティとの関係構築を目論んだ。「ヒスパニック組織」となったことで、LULACは新たな活動を展開していくこととなった。In 1980s, League of United Latin American Citizens (LULAC), the oldest and largest Mexican American Civil Rights Organization, expanded the scope of their activities to Latin America because they became "Hispanic" organization. LULAC criticized Reagan Administration's Foreign Policy in Latin America. LULAC's critical attitude to the U.S. policy in El Salvador attracted Israeli government's attention because they wanted to improve relations with Latin American Countries. Hispanic leaders including president of LULAC, Tony Bonilla, were invited by Israeli government and they planned to utilize this opportunity to build relations with Jewish community in the United States.特集 ラテンアメリカにおける国際労働移動の比較研究(Special issue: Comparative study of international labor migration in Latin America)
著者
渡辺 恭彦 ワタナベ ヤスヒコ Watanabe Yasuhiko
出版者
同志社大学人文科学研究所
雑誌
社会科学 = The social sciences (ISSN:04196759)
巻号頁・発行日
vol.46, no.1, pp.239-258, 2016-05

論説(Article)本論では、戦後日本の哲学者廣松渉の著作『生態史観と唯物史観』(1986)を扱った。同書は、1957年に梅棹忠夫が発表した「文明の生態史観」を批判的に検討したうえで、廣松渉自身の歴史観を打ち出したものである。生態学の遷移(サクセッション)理論を文明論的な歴史の展開に援用した梅棹の生態史観を、廣松は人間社会と自然環境との相互作用を対象化していないとみている。廣松は、両者を媒介するのは人間の歴史的営為であるという。We are concerned with "The ecological view of the history and the historical materialism" (1986) by Japanese philosopher Hiromatsu Wataru. This writing describes his perspective of history, examining " an ecological vie of the history" (1957) by Umesao Tadao. Umesao applies the ecological succession theory to development of the history. However, Hiromatsu points out that Umesao's theory doesn't explain how the human society and the environment interact each other. Hiromatsu claims that what mediate both of them is historical action of human kinds.
著者
岡本 真希子 オカモト マキコ Okamoto Makiko
出版者
同志社大学人文科学研究所
雑誌
社会科学 = The social sciences (ISSN:04196759)
巻号頁・発行日
vol.42, no.4, pp.73-111, 2013-02

論説(Article)本稿の課題は,日本統治期台湾の官僚組織における通訳育成について,台湾語学習の教材を提供した月刊誌『語苑』を主な対象としながら,1930-40年代を中心に検討することである。1930年代前半は、台湾総督府が「国語」普及政策を推進するなかで,台湾語通訳育成問題は政策と矛盾し複雑な様相を帯びていった。また,1930年代後半以後の「皇民化」政策期には,『語苑』は「同化」・「教化」のための台湾語通訳育成を主張するなど,いっそう複雑で矛盾した状況が生じていった。本稿では,戦時期植民地統治下における台湾語通訳育成という検討課題を通して,植民地主義と密接な関係を持つ通訳育成問題の諸相を明らかにするものである。本研究主要透過日治時期發行於台灣的語學(台語)雜誌《語苑》,探討台灣總督府官僚組織內部的培養通譯問題,以1930-1940年代為中心。1930年代前半臺灣總督府推動<國語>(日本語)普及政策下,其政策和培養臺灣語通譯問題發生矛盾和複雜的樣貌。然後1930年代後半<皇民化>政策期後,《語苑》主張為了<同化>、<教化>的培養台灣語通譯,出現更複雜和矛盾的狀況。本研究透過戰爭時期殖民地統治下培養台灣語通譯的課題,探討和殖民主義有密切關係的培養通譯問題樣貌。
著者
矢野 環 岩坪 健 福田 智子 ヤノ タマキ イワツボ タケシ フクダ トモコ Yano Tamaki Iwatsubo Takeshi Fukuda Tomoko
出版者
同志社大学人文科学研究所
雑誌
社会科学 = The social sciences (ISSN:04196759)
巻号頁・発行日
vol.43, no.3, pp.27-51, 2013-11

資料(Material)竹幽文庫蔵『源氏千種香』は、『源氏物語』五十四帖にちなんだ五十四種類の組香の作法を記した伝書である。安永二年(一七七三)の自叙をもつ。菊岡沾涼著『香道蘭之園』所収本は、元文二年(一七三七)頃の成立だが、桐壺香・夢浮橋香がない。そこで、箒木香・梅枝香・玉鬘香・若菜下香について、さらに両者を比較したところ、組香の方法は、蘭之園本に比べ、竹幽本の方が総じて複雑になっていることがわかった。また、物語の内容と合わない箇所が少なくない蘭之園本に対し、竹幽本は、物語に合わせて手直ししていることが認められる。すなわち、蘭之園本は、『源氏小鏡』(第一系統)を参照して作成されているようであるが、竹幽本は、『源氏小鏡』(第二系統)、あるいは『源氏物語』そのものに拠っていると考えられるのである。