著者
小原 博
出版者
拓殖大学
雑誌
経営経理研究 (ISSN:02878836)
巻号頁・発行日
vol.70, pp.1-18, 2003-02-15

歌舞伎十八番のうち「外郎売」は,「ういろう」を売りさばきながら,仇討ち相手を探すという筋立てで,セリフの中に,商品名,商品の効能を分かり易くしたコピーを仕込んでいる。ういろうは当初万能薬として、またその後に和菓子名ともなって,広汎に普及したが,その名称について,ブランド資産保護の立場から,最近になって裁判になった。しかし誰もが知っている菓子の名,いわば普通名詞と常識的に認知されている現状で,固有名詞であると主張をした原告は敗訴した。ういろう(外郎)を課題とした時,ブランド管理はどうあるべきなのか,また,裁判事例からは「庇を貸して母屋を取られた」のか,「マーケティングに秀でたものが勝った」のか,興味ある関係がみられる。
著者
中村 綱雄
出版者
拓殖大学
雑誌
経営経理研究 (ISSN:02878836)
巻号頁・発行日
vol.64, pp.121-154, 2000-03-30

日本に開国を要求したのが旧世界の外交に批判的であった米国であったということも幸いし, 日本は幕末から明治にかけての内政改革を成功させることができた。日米両国はやがて通商面で深い関係を築く。条約改正交渉も米国は他国に比べ好意的であった。日清戦争後, 政治面では両国間には若干の波風が立つが, 第一次大戦後はワシントン体制の協調的関係に戻る。この間, 経済面では両国は通商・資本関係において緊密度を深める。満州事変以後は米国の対日貿易政策は厳しいものとなるが, 経済制裁に踏み切るのは1940年以後となる。そして日本は戦後再び米国による「開国」要求を受けることになる。
著者
増田 英敏
出版者
拓殖大学
雑誌
経営経理研究 (ISSN:02878836)
巻号頁・発行日
vol.63, pp.19-31, 1999-12-22

本稿は, 拙著『納税者の権利保護の法理』(成文堂, 1997年刊)の記述内容に関する新井隆一教授(前租税法学会理事長・1999年9月現在理事長)の専門誌『税研』誌上の批判に対して, 反論を加える形で租税調査の法的性格を再検討したものである。租税調査は, 処罰が存在する間接強制調査であることを確認し, であるからこそ調査手続を法的に整備する必要があることを, 本稿は問題提起するものである。租税調査をめぐる納税者と租税行政庁の紛争は後を絶たない。その理由は, 調査手続規定があまりにも抽象的で, 手続規定がないに等しいところに存在する。間接強制を伴う任意調査であるとの性格付けは, 通説として学界において受入れられてきたが, 間接強制という点ではなく任意調査であるという点が強調されてきたところに, 法的整備が遅々として進むことがない原因のひとつがあると筆者は考える。間接強制調査であるから, 納税者の権利は厚く擁護されなければならないことを主張することを本稿執筆の背景としながら, 改めて租税調査の法的性格を確認することを本稿の目的としている。
著者
絹巻 康史
出版者
拓殖大学
雑誌
経営経理研究 (ISSN:02878836)
巻号頁・発行日
vol.70, pp.19-42, 2003-02-15

国際ビジネスやグローバル・エコノミーを論ずる際に,安易に「グローバル化」とか「グローバル・スタンダード」と云う言葉が使われている。言葉の定義付けないし概念規定を行わないままに,それらの言葉を使用することは論述の曖昧さに繋がり,社会科学としての存在理由が問われる。本橋では「グローバル・スタンダード」の意義を,その形成面と機能面から考察し,その結果として規範概念と事実概念とに分けて規定することで,実践と理論の分野に神益しようとするものである。
著者
小原 博
出版者
拓殖大学
雑誌
経営経理研究 (ISSN:02878836)
巻号頁・発行日
vol.66, pp.1-29, 2000-12-22

100年前, いわゆる世紀転換期にアメリカで生成したマーケティングは, (第2次世界大戦前に, それも)両大戦間期とくに1920年代に日本でも生成したとみる。アメリカほどにドラスティックではないものの, 日本においても革新的な流通変革がこの時期に実態から把握でき, そこにマーケティングの初期的な展開がみられる。当時, (1)消費財分野では「新興企業による徒手空拳の起業家的経営・マーケティングの実践」が少なからずみられ, 他方(2)農産物分野では「法的規制・行政主導による上からの革新」の中で流通整備が行なわれていたなど, 日本でのマーケティングの生成はこうした二重構造ともいうべき構図を指摘できる。
著者
秋山 義継
出版者
拓殖大学
雑誌
経営経理研究 (ISSN:02878836)
巻号頁・発行日
vol.69, pp.37-54, 2002-06-10

地方自治の確立には, 権限と財源の国から地方への委譲が必要である。特に権限と財源がセットで委譲されなくては真の地方分権は進まない。形式的に地方の裁量範囲が拡大されても, これまでと同じように補助金を通じて図るコントロールが続くことになり, 中央省庁のスリム化も進まない。しかし, 直ちに権限と財源を地方へ委譲せよといっても, 地方の小さな自治体には受け皿としての能力もない。国の地方分権推進計画では, 市町村合併の促進がうたわれている。市町村合併によって誕生した自治体には, 経済性や経営感覚を取り入れることが望まれる。自治体経営には, 経営資源の効率的な活用と民間企業の経営感覚を持つことが重要である。
著者
絹巻 康史
出版者
拓殖大学
雑誌
経営経理研究 (ISSN:02878836)
巻号頁・発行日
vol.68, pp.1-30, 2001-12-30

国際商取引が多様化, 大型化, 長期化するにつれて, 契約を伝統的な典型契約の枠にはめ込むことが不適切となった。経済的(商的)合理性と法的正義の一体的な実現を可能とする契約観が必要とされ, lex mercatoriaの重要性が増した。lex mercatoriaは, 国際商取引の当事者が繰り返し反復する取引慣習から生み出された説得性の高いルールである。それらをリステイト(restate)したものがユニドロワ国際商事契約原則である。この原則の適用事例を合理的なADRとされる商事仲裁に求め, 新しい契約法の流れを考察する。
著者
小原 博 林 紅
出版者
拓殖大学
雑誌
経営経理研究 (ISSN:02878836)
巻号頁・発行日
vol.67, pp.59-90, 2001-03-30

高度成長期の時期から長らく日本の医薬品メーカー(製薬企業)は, 他の産業と同様に外国企業からの技術導入を図ることで, 医薬品を製造してきた。他方で, 外国製薬企業は日本企業との合弁, あるいは完全子会社化して, 日本市場で展開してきており, その1つにファイザー製薬(旧・台糖ファイザー)がある。このファイザー製薬は, 製品の優位性によって, さらに医療用医薬品では必要不可欠なMR(医療情報担当者)を養成しながら, 日本的な取引慣行や販売問題に十分に対応しつつ, オーソドックスにしてスタンダードなマーケティング戦略により, 確固たる地歩を築いた。