著者
片桐 由希子 川戸口 雄太 清水 哲夫
出版者
首都大学東京 大学院 都市環境科学研究科 観光科学域
雑誌
観光科学研究 = The international journal of tourism science (ISSN:18824498)
巻号頁・発行日
no.9, pp.15-23, 2016-03

鉄道ファンは,趣味を通じて長い距離を移動し,一般に観光地として認知度が高くない地域にも足を運ぶなど,地方の観光振興に関わる場で活動する機会が多いと考えられるが,その行動が観光に及ぼす影響については明らかにされていない。本研究ではサークル活動として鉄道研究会に所属する大学生を対象としたアンケートを実施し,鉄道ファンの旅行・観光の消費動向や鉄道目的とする旅行での観光行動を把握,鉄道ファンとしての興味分野や活動との関連性を分析した。鉄道ファンは一般と比較して,旅行回数が多いが1回あたりの旅行の消費額は変わらないこと,「乗り鉄」「撮り鉄」「複合型」のそれぞれの時間的な制約と選択される観光行動の傾向を明らかにした。
著者
菊地 俊夫
出版者
東京都立大学大学院都市環境科学研究科観光科学域
雑誌
観光科学研究 = The International Journal of Tourism Science (ISSN:18824498)
巻号頁・発行日
no.14, pp.9-16, 2021-03-15

摘要 観光地誌学を学ぶことで,身近な地域の生活や文化,あるいは世界の異なる生活や文化を総合的に理解できるようになる。そして,総合的に地域や世界の様相を理解することは,さまざまな視点に立った見方や考え方を身につけることにもなる。このように,地域や世界をさまざまな視点から見たり考えたりすることは,複雑化した現代社会において,地域や世界のさまざまな課題を解決するための方法を見出すことに役立つ。現代社会においては,「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」として国際社会共通の目標が17ある。それら1つ1つの目標に関する課題の発見と解決に観光地誌学の見方・考え方は間違いなく役立つ。
著者
保坂 哲朗 栗本 実咲 沼田 真也
出版者
首都大学東京 大学院 都市環境科学研究科 観光科学域
雑誌
観光科学研究 = The international journal of tourism science (ISSN:18824498)
巻号頁・発行日
no.10, pp.57-64, 2017-03

昆虫は地球上の生物多様性の大部分を占め、生態系のサイクルにおいて重要な役割を担うにも拘らず,世界一般的に認知度や好感度の低い生物である.昆虫に対するネガティブなイメージは欧米社会で特に顕著であり,人々が昆虫の保全に関心を持たない大きな要因となっている。一方で,日本は古くから昆虫に親しむ世界でも稀な文化を持ち,現在も昆虫に関連した多くのツーリズムが存在する「昆虫文化先進国」である.したがって本稿では,日本における昆虫を対象とした鑑賞文化の歴史,現代の昆虫ツーリズムの内容,海外の鑑賞文化との比較によって,日本の昆虫文化の特徴を浮き彫りにする.さらに、日本の昆虫ツーリズムの課題と世界の昆虫保全に向けた可能性について展望する.
著者
飯塚 遼 矢ケ﨑 太洋 菊地 俊夫
出版者
東京都立大学大学院都市環境科学研究科観光科学域
雑誌
観光科学研究 = The International Journal of Tourism Science (ISSN:18824498)
巻号頁・発行日
no.14, pp.87-96, 2021-03-15

摘要 本研究はフランス・ノール県ダンケルク郡を事例としてビールツーリズムの展開にともなうロカリティの再編について考察することを目的としている。ダンケルク郡におけるビールツーリズムは農村景観や集落景観などの農村を構成する要素が観光資源となり,それらが観光プロモーションプログラムを通じて結合されることにより存立していた。また,ダンケルク郡におけるビールツーリズムの空間は,同様のプログラムが設定されているベルギー側のウェストフーク郡にまで広がりをみせていた。そこでは,両地域の文化の共通性が観光資源に内包されていた。いわば,ダンケルク郡でフランスという国家的枠組に組み込まれたことで失われつつあったフランデレンのロカリティが,ビールツーリズムを通じて回復されていた。
著者
矢追 錬 直井 岳人
出版者
首都大学東京 大学院 都市環境科学研究科 観光科学域
雑誌
観光科学研究 = The international journal of tourism science (ISSN:18824498)
巻号頁・発行日
no.9, pp.109-118, 2016-03

本研究は工場景観が観光対象に変容する過程を分析することを目的とする。本研究における調査では,「新聞記事に見られる,『工場を利用した観光』を振興する目的と背景」と「新聞記事,工場景観写真集,及び自治体の発行する観光パンフレット中の,工場景観を修飾する語と句」の出現頻度の時系列変化が分析された。その結果,工場景観の観光対象としての認識の急速な広がりと,観光対象としての工場景観の特性が産業観光のそれとは異なる可能性が示唆された。
著者
齋藤 竜太
出版者
東京都立大学大学院都市環境科学研究科観光科学域
雑誌
観光科学研究 = The International Journal of Tourism Science (ISSN:18824498)
巻号頁・発行日
no.14, pp.43-50, 2021-03-15

摘要 地理学を志すきっかけと,東京都立大学地理学科で学んだことを振り返るとともに,高等学校地理教科書の編集という仕事のなかで実際に行った地域調査の事例と,その際に製作した主題図を紹介する。具体的には,2000年度の卒業論文における地域調査の事例,および,2009年(平成21年)に告示された高等学校の学習指導要領のもとで発行した,2冊の地理A教科書に掲載した4つの地域調査事例をもとに,地域調査における地図制作の手法と,地域資源の発掘方法の変遷について考察している。これらの事例をもとに,地理教育における地域調査により,地域資源を発掘する経験がもたらす教育的な効果について,GISなどの技術的な進歩も踏まえて展望を記した。
著者
賀 佳惠 川原 晋 岡村 祐
出版者
首都大学東京 大学院 都市環境科学研究科 観光科学域
雑誌
観光科学研究 = The international journal of tourism science (ISSN:18824498)
巻号頁・発行日
no.11, pp.19-25, 2018-03

本研究は、観光地化する歴史的町並み地区において、地域外資本の店舗が過度に入ることにより個性が喪失する問題に注目し、次のことを明らかにした。第一に、観光地化の進行する重要伝統的建造物群保存地区をねらって出店する、伝建チェーンと名付けた企業5社の存在を確認した。第二に、川越一番街商店街を対象とした調査から、地域内の様々な組織の主活動が町並み保全か、商業振興か、観光振興かの違いが、どのような店舗を外部資本店舗と捉えるかに違いがあること、第三に、外部資本店舗に対して、地区の個性を損なわないように誘導し、むしろ支える側の役割を期待する地域側の巻き込みが見られ、これに外部資本店舗も協力する「外部資本店舗の地域化」と考えるべき状況が見られたことである。
著者
倉田 陽平 相 尚寿 真田 風 池田 拓生
出版者
首都大学東京 大学院 都市環境科学研究科 観光科学域
雑誌
観光科学研究 = The international journal of tourism science (ISSN:18824498)
巻号頁・発行日
no.9, pp.103-108, 2016-03

本研究ではWeb上で地域の「仮想ツアー」を作成・発信できるツール「だれでもガイド!」を開発した。このツールでは,GoogleストリートビューやWeb上の任意の画像に案内役キャラクター,セリフ,効果音を付加し,紙芝居形式で観光案内を行うことができる。ブラウザ上で動くGUI 形式の編集ツールを用意し,利用可能な案内役キャラクターや効果音を予め用意するなどの工夫を行い,徹底的にコンテンツ作成の敷居を下げた。学生を対象とした実験の結果,本ツールの評価は概ね良好であり,バラエティに富むコンテンツが得られた。本ツールは観光教育の現場で学生が企画した観光コースの発信や,駐車場や施設への道案内,マラソンコースやハイキングコースの案内などへの応用も期待できる。
著者
相 尚寿 前澤 由佳 本保 芳明 阿曽 真紀子
出版者
首都大学東京 大学院 都市環境科学研究科 観光科学域
雑誌
観光科学研究 = The international journal of tourism science (ISSN:18824498)
巻号頁・発行日
no.9, pp.83-91, 2016-03

地方の人口減少や産業構造の変化に対する活性化策として観光振興が注目されている。特に、外国人旅行者の誘致は日本人旅行市場が縮小傾向にあるため、重要性を増している。本研究では外国の旅行会社やメディア関係者を観光資源に招き、旅行商品造成やメディア露出増を期待するファムトリップに着目し、いかなる施策が効果的なのかを議論する。対象地は近年全国傾向以上に訪日外国人宿泊者が増加している岐阜県とし、県職員へのヒアリングによる施策の整理、他の自治体や旅行会社へのアンケートを通じた岐阜県の施策の特徴づけと評価を行ったところ、岐阜県は他の自治体においても実践されている各種の施策を、その一部を深化させ徹底することにより戦略的、総合的に実施している点において先進性を有し、それが外国の旅行会社からも評価を得ていることが明らかとなった。